mespesadoさんによる経済談義(105)【シリーズ:検証!消費税⑫⑬⑭⑮】 [mespesadoさんによる1億人のための経済講]
「今後10年は消費税を上げる必要が無い」と言う安倍首相に対し、石破氏、いかにももっともらしく異議、「10年間で高齢化が進む。どのように医療や介護を支えるのか議論が必要だ」「いい話をしていれば政治家は助かるかもしれないが、国民は助からない」。騙されてはなりません。小沢氏はどっちにつくか。小沢氏評価の分かれ目です。
* * * * *
893:mespesado:2019/07/07 (Sun) 10:46:24
【シリーズ:検証!消費税⑫】
さて、欧州を中心に、消費税導入の裏事情と税率引き上げ競争の実態を縷々述べてきましたが、もう一度
諸外国における付加価値税の標準税率の推移
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/103.pdf
【シリーズ:検証!消費税⑫】
さて、欧州を中心に、消費税導入の裏事情と税率引き上げ競争の実態を縷々述べてきましたが、もう一度
諸外国における付加価値税の標準税率の推移
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/103.pdf
のグラフを見てみると、一時的な減税でない、段階的な「減税」をしている国があります。北米の「カナダ」です。
増税反対論者は、このカナダが「減税」している例や、マレーシアが消費税を廃止した例をもって、「日本もやればできる」などと期待を持たせますが、果たしてどうでしょうか?
まずカナダですが、例によって、カナダの貿易相手国のランキングを確かめてみましょう。
世界経済のネタ帳 カナダの貿易
https://ecodb.net/country/CA/trade/
リンク先に輸出/入相手国のシェアの円グラフが載っていますが、輸出相手国の一位は米国、それもシェアで76%を超えています!
このような状況で、付加価値税を導入せずしかも同税制に批判的な米国の圧力を受けないと考えることの方が難しい。まあ、日本も外圧には弱い国ですから、米国の圧力もあるにはあると思いますが、カナダと違って地理的にも離れていますし、逆の、税率引き上げが官僚自身の手柄になる財務省や、輸出免税に伴う利権を持つ輸出大企業主体の経団連や、通貨発行権が無く地方消費税が欲しくてたまらない自治体や、軽減税率適用のマスコミなどによる引き上げ圧力もあり、むしろ圧力はそちらの方が強いですから、同列には論じられないでしょう。
一方、マレーシアが付加価値税を廃止した例もよく取り上げられます。
しかし、マレーシアでは付加価値税の導入が2015年で、導入してから日が浅いことと、劇的な政権交代の目玉として「消費税廃止」は実行しやすかった、という事情がありますから、導入してから年数も長い日本が一挙に廃止に持っていくのは相当難しいでしょう。
さて、諸外国における付加価値税の状況はこれくらいにして、肝心の日本の消費税導入の経緯について見ていきたいと思います。
なぜ日本の消費税率はOECD平均を下回っているのか?
https://www.nippon.com/ja/in-depth/a05702/
これによると、戦後の税制について、
(1) 戦前の日本は、戦費調達の容易さから酒税などの間接税が主体。
(2) 終戦で、GHQはシャウプ使節団を派遣し、税制の近代化を大義名分に、
所得税を税制の中核とするよう勧告。1950年の税制改正で実現。
(3) GHQが去り、税制の主導権は主税局に。政府税調も事実上主税局の配
下に。1954年にフランスで付加価値税が導入されても所得税中心主
義を守り、1966年、戦後初の国債発行を受けた税制改正でも所得税
減税を実施。
(4) いわゆる55年体制で自民党の一党優位時代になると、族議員が暗躍し、
自民党の「党税調」が租税政策の主導権を握る。
(5) 「国債発行の常態化に伴う安定した税収の必要性」から、主税局は間接
税(個別間接税)の増税を目指すが、関連業界の反対と族議員の圧力で
難航。主税局は全商品を対象とした「一般消費税」の導入に方針変更。
(6) 主税局は首相をターゲットに説得し、大平・中曽根両首相も導入をもく
ろむが有権者の強い反発を受け選挙で敗北。導入を断念。
(7) 次の竹下首相のとき、党税調が一般消費税の導入に「理解を示し」、反
対する業界を次々エサで釣って手懐け、1988年、遂に「消費税法案」
が可決。しかし翌年の参院選で自民党は大敗。
(8) なお、党税調はその後も権勢を保持し、各首相は不関与を続ける。
(9) 2009年、政権交代で政権に就いた民主党は「党税調」を廃止し「政
府税調」に一本化。民主党政権は当初は消費税引き上げには消極的。
(10)菅政権では「リーマンショック後の税収の急速な落ち込み」により消費
増税に方針転換。2011年経済財政担当大臣に起用した与謝野馨が財
務省のバックアップを受け、「2015年度までに段階的に10%に引
き上げる案」をまとめ、首相も合意。以後官邸が主導権を握り、次の野
田政権も「ガス抜きの場として党税調を復活」させたが官邸主導で推進。
(11)この動きに下野していた自民党も「党税調」を中心に同調。「2014
年4月から8%、2015年10月から10%」の案で民主・自民・公
明の三党合意。消費税増税法案は2012年8月に可決、成立。
(12)その年、自民党は政権に復帰。第二次安倍内閣では、官邸スタッフに経
産官僚が重用。アベノミクスが増税で景気腰折れとなることを懸念し、
8%への引き上げに消極的。
(13)財務省が党税調を蚊帳の外に置いて、官邸や経産省と折衝し、首相にも
「8%に引き上げてもGDPのプラス成長が見込まれる」という予測を
報告。しかし実際はマイナス成長となる。
(14)安倍首相は財務省への不信感を募らせ、2014年、「消費税の10%
への増税を18カ月延期すること」で信を問い、衆院を解散し、与党は
ほぼ現有議席を維持。さらに安倍首相は2016年6月にも税率引き上
げを再度2年半延期する方針を表明。この間、税制は「官邸」と「経産
官僚」が主導。「財務省」、「党税調」は政策決定過程から外された。
(15)2017年の総選挙で安倍首相は予定通りの引き上げを宣言。しかし2
%引き上げで生じる5兆円強の増収分の半分程度を子育て支援などに充
てることを公約。「借金を返済する予定だった増収分が政策経費に回る。
財務省が目指す財政再建は遠ざかる。」
ファクトとしての経緯はざっと以上のとおりです。
なお、リンク先の冒頭に
> 「日本の消費税率は将来的に、経済協力開発機構(OECD)の加盟国平均
> の19%程度まで段階的に引き上げる必要がある」。今年4月、OECDのグリ
> ア事務総長は、麻生財務相にこう提言した。日本の厳しい財政事情にあ
> って、なぜ日本の消費税率はOECD平均を下回っているのか。
とあります。「日本の厳しい財政事情」という表現からして筆者の木寺元さんが管理貨幣の本当の仕組みに無知(あるいは知ってて財務省のポチ?)の「緊縮財政論者」であることは明らかで、冒頭のOECDの提言を「神託」のように扱っていますが、このOECDの実態については以下の記事↓
国際機関が「日本は消費税26%必要」発表の大ウソ。黒幕は財務省
https://www.mag2.com/p/news/396886/2
の中に
> OECDの勧告というのは、「国際世論」などでは決してありません。OECD
> は、これまでも何度か日本に対し消費税引き上げの勧告をしています。
> 何も知らない方は、これを見ると「やはり日本は消費税を上げるべきな
> のだろう」と思うでしょう。しかし、騙されてはなりません。これは日
> 本の財務省の常とう手段なのです。OECDは一応、国際機関です。しかし、
> 日本の財務省はOECDに対し、強い影響力を持っています。日本のOECDへ
> の拠出金がアメリカに次いで第2位です。そして、OECD内の事務方トッ
> プであるOECD事務次長には、日本の財務省出身の河野正道氏が就任して
> いるのです。またOECDの要職には、日本人がたくさん就いています。
とあるとおりですから、あまり気にすることではありません。
上記のように(緊縮論者によるバイアス付きで)整理した日本における消費税導入の経緯に対する論評は次回で。 (続く)
894:mespesado:2019/07/07 (Sun) 17:36:11
【シリーズ:検証!消費税⑬】
消費税増税の責任者論が喧しいですが、ツイッター界隈におけるそういった論争の一例を挙げたいと思います↓
https://twitter.com/aquablau/status/1147006244684611584
芝田 佳代@sivawits
> 私はこの数年、役員報酬を固定してるので、一目瞭然でわかるんですが、
> 社会保険料、どんどん上がってます。
> 自分の手取りも減ってますが、会社の負担はそれ以上に増えてます。
> 役員報酬をUPする根拠に乏しい経済状態の中、安倍政権は消費税率を5%
> から10%まで、倍増させようとしています。暴挙ですよ
↓ ↓ ↓
海紺@aquablau
> えーと、5%から10%に上げたのは民主党なんですけど大丈夫?
↓ ↓ ↓
リフレねこ@豚バラ巻ーく運動(*ΦωΦ)@hayashi_r
> もう、貼るのも飽きてきたんだけど。
> そもそも今の増税路線のレールを敷いたのは麻生政権。
> 三党合意を主導したのは谷垣自民党だよ。そして、実際に増税を決行し
> たのは安倍自民党。
> ほれ。自民党公式動画だよ。
> 見なw
> (*ΦωΦ)
> https://youtu.be/PC5RbcupypI
↓ ↓ ↓
海紺@aquablau
> で、法案提出したのは民主党だけど、もうボケたの?
↓ ↓ ↓
リフレねこ@豚バラ巻ーく運動(*ΦωΦ)@hayashi_r
> その後6年もあったのに廃止凍結の法案すら提出しなかったのは安倍自民
> 党なんだけど。
> もうボケたの?
> (*ΦωΦ)
↓ ↓ ↓
海紺@aquablau
> 山本太郎も立憲民主党も共産党も出しませんでしたけど何か?
> ちなみにそれでも2回延期したのは安倍政権です。
↓ ↓ ↓
リフレねこ@豚バラ巻ーく運動(*ΦωΦ)@hayashi_r
> HAHAHA。
> 延期じゃ8%+復興税2%のダメージは残り続けるから意味無いんだよ。
> 結局8%、10%と増税を実際に「決行」するのは安倍自民だよね。
> 実行犯だよね。
> 擁護できないよね?さすがに。
> なんで反対しないの?
> (*ΦωΦ)
↓ ↓ ↓
海紺@aquablau
> いえ、決行したのは民主党政権ですよ。民主党政権が作った法律によっ
> て、たまたま自民党政権下で増税のタイミングとなったという話です。
> 現実を正しく認知する能力ぐらい身につけてください。
↓ ↓ ↓
リフレねこ@豚バラ巻ーく運動(*ΦωΦ)@hayashi_r
> すげえなお前。
> 2019年に民主党は存在しないのに、前回の衆院選で「消費増税」を掲げ
> て勝った自民党が増税するのに、それも
>「民主党のせい」
> なのか。
> 今後、12%、15%に増税されても民主党のせいにするつもりか?
> (*ΦωΦ)w
↓ ↓ ↓
海紺@aquablau
> すごいのはあなたですよ。民主党政権下で定められた法律によって増税
> されることも知らなければ、その法律では12%や15%への増税が定められ
> ていないのも知らないのですから。
> 無知は罪ですよ。
↓ ↓ ↓
リフレねこ@豚バラ巻ーく運動(*ΦωΦ)@hayashi_r
> 知ってるよそれくらい。
> あんたのバカさ具合を揶揄してるんだよ。
> 国会議員の仕事は法律をつくること、改正すること、廃止することなん
> だよ。
> なんで民主党が2、3年で作った法律を自民党が6年以上かけても廃止でき
> ないのか。
> それ自体がおかしいんだよ。
> 中学公民から勉強し直せ
> (*ΦωΦ)
↓ ↓ ↓
海紺@aquablau
> 単にあなたが消費増税法を「全くなかったことにする」のがいかに大変
> か理解していないだけじゃないですか。
> だから無知は罪だと言っているのです。
↓ ↓ ↓
リフレねこ@豚バラ巻ーく運動(*ΦωΦ)@hayashi_r
> 無知で結構。フロントの自民党なんてマリオネットでしかなくて本丸が
> 財務省なのは誰よりも承知。
> で、あなたは消費増税には賛成なの?反対なの?
> それだけ教えてよ
> (*ΦωΦ)
↓ ↓ ↓
海紺@aquablau
> 財務省のマリオネットはマスコミと野党とあなたですよ。
> だから無知だと言われるんですよ。
↓ ↓ ↓
リフレねこ@豚バラ巻ーく運動(*ΦωΦ)@hayashi_r
> んなこたーどーでも良い。
> あなたは消費増税に賛成なの?反対なの?
> どっち?
↓ ↓ ↓
海紺@aquablau
> 私の個人的意見なんか関係ないですよ。
> 話をそらしてごまかさないように。
↓ ↓ ↓
リフレねこ@豚バラ巻ーく運動(*ΦωΦ)@hayashi_r
> いえ。そこが核心だから聞いているんですよ。僕の興味も最初からそ
> こにしか無い。
> 僕の「消費増税に賛成か反対か?」というシンプルな質問をずっと逃
> げ回っているのはあなたです。
> さあ、消費増税に賛成なのか反対なのか。どちらですか?
> YES or NO ですよ。
> 簡単でしょ?
> (*ΦωΦ)
↓ ↓ ↓
海紺@aquablau
> 核心でも本論でもなく、あなたが論旨の把握すらできていないか、ご
> まかしているかのどちらかです。
↓ ↓ ↓
リフレねこ@豚バラ巻ーく運動(*ΦωΦ)@hayashi_r
> 僕の問いはただひとつ。
> 「あなたが消費増税に賛成なのか、反対なのか」
> だけですよ。
> いつまで逃げ回るんですか?
> (*ΦωΦ)
↓ ↓ ↓
海紺@aquablau
> 話の発端は「誰が消費税増税をしたか」です。
> 私の個人的な消費税増税賛成・反対は関係ありません。
> 話をごまかさない様に。
↓ ↓ ↓
ちくわ@w0i8CRbpcvGD4Jr
> 景気条項削除したのって自民党じゃないんですか?
> このタイミングでの増税は止めるべきと言っているのが元民主党の人た
> ちで、増税しますと言っているのが自民党ですよね?
↓ ↓ ↓
板橋哲@日本SF読者クラブNo.001@satosiTS
> 消費税を導入したのは自民。
> 消費税増税を仕掛け続けたのは自民。
> 5%に増税したのもある8%に増税したのも自民。10%に増税しようとしてい
> るのもある自民。
> 事実は変えられない。
> それどころか、自民が消費に課税しようとしたのは1970年代に遡る。
↓ ↓ ↓
海紺@aquablau
> 消費税増税法案は、民主党が提出して成立したもの。
> 既に決まっていた消費税が上るタイミングが、安倍政権だったというだ
> けの話。
> 嘘をつくのはやめましょう。
↓ ↓ ↓
ちくわ@w0i8CRbpcvGD4Jr
> 「既に決まっていた消費税が上るタイミングが、安倍政権だったという
> だけの話。」
> 景気条項を削除したのは自民党ですよね?
> しかも三党合意はあなたの中ではなかったことになっているんですか?
↓ ↓ ↓
海紺@aquablau
> 民主党が増税法案を出さなければ三党合意もありませんが。
> 景気条項も2回の延期を経ての話。
> 事実を都合よく歪曲するのはやめましょう。
↓ ↓ ↓
ちくわ@w0i8CRbpcvGD4Jr
> 事実を歪曲している部分ってどこでしょう?
>
> 合意をしたけれど自民党には責任がないと?
> 景気条項を削除したのが2回の延期を得ての話って、だから何なんでしょ
> う?
> ぜーんぶ民主党のせいで、自民党には責任はありませんと言いたいので
> すか?
> すごいですね
↓ ↓ ↓
ちくわ@w0i8CRbpcvGD4Jr
> 私は、増税には反対なので今増税しようとしている自民党を批判してい
> ます。
> もちろんそれが別の党ならその党を批判します。
> あなたは消費税増税に賛成のようですので勝手にされたらよろしいと思
> いますが、言っていることが支離滅裂だなぁと思いました。
> では。
↓ ↓ ↓
海紺@aquablau
> 支離滅裂なのは、事実をツイートしただけの人は消費税賛成とか言い出
> す人ですよ。
> 増税を決めたのは民主党。
> 本気で延期すべきだと言うなら、元民主党はなぜ延期法案を出さなかっ
> たのでしょうね。
> 口先だけの元民主党に何回騙されるつもりなんですかね。
↓ ↓ ↓
海紺@aquablau
> 本気で延期させたいのであれば、山本太郎も共産党も元民主党も、延期
> 法案を出すだけではなく、消費税を財源とする政策をどうするかまで議
> 論しなければならない。
> でも野党がやっていたのは、モリカケに始まる週刊誌ネタの追求。
> その結果、消費税を上げたい財務省のアシストしかしてないんですよ。
↓ ↓ ↓
ちくわ@w0i8CRbpcvGD4Jr
> 元民主党、結果として財務省のアシストしかしてないと私も思いますよ。
> でもそれは自民党もそうですよね。
> なのでそれ以外のところへ票を入れます。
> 財源の話ちゃんとしているところありますので調べてみては。
> ではもう結構ですので失礼します。
↓ ↓ ↓
海紺@aquablau
> 民主党はガソリン税を下げる(廃止する)と言いましたが、下がりまし
> たか?
> やるやる詐欺の連中は、言ったことをやらないどころか、もっと無責任
> ですよ。
> そんな無責任な議員を選んで、またモリカケ騒動や2000万円騒ぎみたい
> なので財務省のアシストをしたい訳ですか。
↓ ↓ ↓
pepe@pe_garden
> 山本太郎は消費税の代わりの財源をきちんと提示してますので調べてく
> ださい。
↓ ↓ ↓
海紺@aquablau
> 国会に法案提出したり、法案提出しようとしたりして、議論している形
> 跡は全くないですよ。
> やるやる詐欺にまた騙されるんですか?
やれ民主党が悪い、いや自民党が悪いと、自分の贔屓する政党を擁護して批判する政党のせいにするのにどちらも必死です。しかし日本における消費税導入と引き上げにかかる経緯を調べると、そのような単純なものでないことがわかります。次回はその経緯について考察します。 (続く)
895:mespesado:2019/07/07 (Sun) 17:38:22
【シリーズ:検証!消費税⑭】
歴代内閣の消費税に対するイベントを見るだけの目的なら、次のサイト:
消費税「導入」と「増税」の歴史
https://www.nippon.com/ja/features/h00013/
が便利です。しかし、それらのイベントが生じるに至った裏事情などを知るにはやはり >>893 でリンクを貼ったサイト(要約は >>893 参照)の方が役に立ちます。さて、この要約によると、戦前は戦費調達のために種々の個別間接税が利用されていたわけですが、GHQにより、二度と戦争ができないようにするために、財源面からは戦費の調達ができないようにするために、間接税を極力廃止して所得税中心に日本の税制を作り変える方針が実行されたものと思われます。シャウプ勧告の大義名分である「税制の近代化」は、あくまで米国の本音を隠すためのタテマエでしょう。ちなみにこのシャウプ勧告について Wikipedia の同項目↓
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%82%A6%E3%83%97%E5%8B%A7%E5%91%8A
を見ると、その内容が更に詳しく解説されていて、所得税の最高税率が高すぎるのは脱税を誘発するという大義名分で最高税率を下げ、法人税は法人の収益は株主にとって所得税の先取りのようなものであるからという大義名分で平均税率によるもののみとする、つまり税率を下げることが主張されていたようです。所得税や法人税の改革案を見る限り、いかにも企業に関する米国流の「企業は(もともとの日本式の考え方である従業員のため、ではなく)株主のためにある」という考え方を反映していますね。
やがてGHQが去り、日本は税制の主導権を取り戻しますが、そこで主導権を持った大蔵省主税局は、当初はフランスで付加価値税が導入されたにもかかわらず、素直にシャウプ勧告に従って所得税中心主義を取り、必要とあれば所得減税も実施していたようです。まあ、戦後まもなくは、財務省も国益を考える余裕があったのかもしれません。
その後、自民党の一党優位時代になって、族議員、つまり「財界」を中心とした利益誘導の仕組みが出来上がり、彼らの意見を吸い上げる「党税調」が力を持ち始めます。
すると、プライドの高い大蔵省は、所得税の実権を政治に握られたのが悔しいのか、「間接税」に権限の活路を求めたようです。
ところが既に存在する「個別」間接税を充実させようとしても、個別品目が対象ですから、増税しようとした品目の関係業界は当然反対します。当時は財界の意向を受けた「党税調」が力を持っていますから、財務省の魂胆は実現できず、潰されてしまいます。
そこで大蔵省主税局は、全商品を対象とした「一般消費税」の導入に方針変更することで個別の業界から反対されるのを防ぎながら、「党税調」を飛び越えて直接時の首相に「一般消費税」の必要性を説く、という作戦に切り替えます。
しかし、せっかく大平・中曽根両首相をその気にさせたにもかかわらず、有権者の反発を食らって時の政権が選挙に負けることが続きます。
次の (7) では、時の竹下首相を説得していた時に、党税調が一般消費税の導入に「理解を示し」た、とあります。党税調は個人じゃないんですから、「理解を示す」とは、個人的に納得した、とかそういう意味ではなくて、党税調を牛耳っている族議員の票田である業界の利害と一致した、ということを意味します。つまり財務省は、うまく財界にとってオイシイ話を持ち掛けることで業界を懐柔したものと思われます。その内容というのは、おそらく現在でも経団連が消費税増税に賛成するのと同じ理由、すなわち法人税減税とセットにした輸出企業優遇の消費税の仕組みであろうと思われます。
こうして竹下内閣の時、大蔵省は晴れて消費税の導入に成功します。
しかし、これが原因で自民党は選挙で敗れ、以後の首相は消費税の問題からは距離を置くようになるわけです。
やがて政権交代が起こり、民主党が政権を握るわけですが、当初の鳩山由紀夫内閣では業界に懐柔されて財務省の片棒を担いでしまった「党税調」を廃止し、消費税の引き上げにも否定的でした。
ところが鳩山政権失脚後に政権に就いた菅政権は、(10) によれば、「リーマンショック後の税収の急速な落ち込み」により、増税に方針転換、とありますが、こんなもん、もちろん表向きの理由でしかなく、実際は官僚の意向を無視して理想を追うだけのボンボン政治を実行しようとして官僚にシカトされて自滅した鳩山政権の轍を踏まないように怯えた菅政権が財務省の意向を積極的に酌んで増税に方針転換したことは明らかです。しかもこの当時、サミットでもギリシャ危機で先進各国の財政赤字対策が大きく問題視されていたことも、この傾向に後押しをしたと思われます。このときの事情については松尾匡『この経済政策が民主主義を救う』の186頁~187頁に説明がありますが、ハーバード大学で出た論文で「国の借金の対GDP比が90%を超えると、経済成長率が急落する」という計算結果が示されていたことがこういった風潮を引き起こしたことが述べられています。
松尾さんは、この論文が実は「エクセルの集計ミス」だったと発覚した、というオチでこの論文の悪影響を力説していますが、実は「エクセルの集計ミス」は本質ではなく、むしろ「国の借金の対GDP比が90%を超えた」ことと「経済成長率が急落する」ことの間に確かに相関はあるが、因果関係があるという主張が間違いであった、というのが真相のようです。すなわち供給不足が改善途上にある高度成長期には「経済成長が順調」で、しかも企業はオカネを借り続けていますから民間は赤字、従って「民間」+「国」の収支はプラスマイナス・ゼロですから、これは「政府が黒字」であることを意味します。ところが技術の進歩で供給不足が解消すると、「経済成長は鈍化」すると同時に企業の収益が右肩上がりでなくなるので企業は借金をしなくなり、民間の赤字が解消し、その結果国の財政が赤字になる、というわけで、確かに「国の借金の対GDP比が90%を超えた」ことと「経済成長率が急落する」ことの間には正の相関がありますが、一方が他方の「原因」になっているというわけではなかったわけです。
ちょっと横道に逸れました。その後、消費増税の方針は財務省のポチである野田政権に引き継がれ、「2015年度までに段階的に10%に引き上げる案」が着々と進行していきます。そして当時下野していた自民党も、民主党とは違って財界(経団連)の意向を受けた「党税調」は健在ですから、彼らの意向を受けて、自民党を含む消費増税の「三党合意」に至るわけです。そして財務省の計略どおり、野田政権は「消費増税の信を問う」形の衆院解散ではなく、先に消費増税を国会で議決してから解散するわけです。
この後、政権奪回した自民党の安倍政権は、財務省や外務省が本来なら政治が仕切るべきところを官僚が牛耳っていることを問題視し、対抗勢力として官庁の中では強力な経産省を味方に引き入れ、別名「経産省内閣」を発足させます。
財務省も黙って見過ごすことは無く、「党税調」を飛び越えて官邸と経産省を相手に説得工作に勤しみます。そして安倍首相を財務省に都合の良い予測結果で信じ込ませ、まんまと消費税の8%への引き上げに成功します。
そして蓋を開けたら財務省の予測とは正反対。怒った安倍首相は経産省を味方に、「財務省」も財界の意向を受けた「党税調」も蚊帳の外に置いて、景気条項を盾に「合法的に」2度の10%への引き上げを延期。
そして今回の10月の10%引き上げを目前にした今日に至るわけですが、(15) で「しかし2%引き上げで生じる5兆円強の増収分の半分程度を子育て支援などに充てることを公約。借金を返済する予定だった増収分が政策経費に回る。財務省が目指す財政再建は遠ざかる。」とありますが、ここで、「借金を返済する予定だった増収分」とあるのがいかにも緊縮派で不換貨幣の仕組みを知らない筆者らしい誤解です。「徴税で国の借金を返す」ということは、既存の国債を「税金」で償還する、ということです。これは、貨幣を「マネーストック」のことであると考えても「現金+国債」のことであると考えても、市中に存在する貨幣を消滅させる行為ですから、ただでさえ貨幣の不足でデフレ経済になっているのに、その上更に貨幣を消滅させてしまったら、デフレ経済は一層ひどくなってしまいます。安倍政権がこういった緊縮脳で不換貨幣の仕組みを無視した財務省に対して「2%引き上げで生じる5兆円強の増収分の半分程度を子育て支援などに充てることを公約」したのは、精いっぱいの抵抗と言えるでしょう。
以上のようなわけですから、前回のツイッターでの論争がいかに表面的なもので本質を突いていないかということがわかりますね。 (続く)
896:mespesado:2019/07/07 (Sun) 22:03:26
【シリーズ:検証!消費税⑮】
さて、米国は日本の消費税に対して批判するだけでなく圧力をかけてきた、ということを岩本真弓氏らが主張してきたことは既に述べたとおりです。
例えば
「日本経済の憂鬱と再生への道筋」岩本沙弓 著 後編
https://belalugosi.exblog.jp/22714148/
によれば、
> この著書の中で一番興味を惹いたのは消費税と米国の年次改革要望書の
> 関係である。
> 米国の公文書には「消費税を導入するのなら報復措置と取る、3~5%程
> 度までなら我慢できる範囲だ。」
> この公文書を著者は発見して来た。
> 3%消費税が導入されたのが1987年、5%に消費税へ増税されたのが
> 1994年3月。
> 米国からの年次改革要望書が初めて提出されたのが1994年11月。
> 偶然の一致もあり得るだろう。
> ところが、毎年この年次改革要望書が提出されていたにも関わらず2009
> 年にはパタリと無くなった。
> この頃は日本の政治は民主党政権で鳩山政権の頃である。
【中略】
> 翌年2010年の菅政権で参議院選挙では「消費税を上げないとギリシャみ
> たいになってしまう。」と発言、ここで米国は日本にTPP参加を強制
> し報復に出る。
> 翌年2011年の野田政権では「政治生命を懸けて消費税増税を法案を可決
> させる。」そしてTPPへの参加表明をさせられる始末。
> 安倍政権でも同じである。TPPでは7項目が聖域だ!!と言って政権を
> 奪取したにも関わらず、景気が回復しなければ8%に上げない!!と言っ
> ていたにも関わらず…。
ところが一方で、次のような証言もあります。これは逆に年次改革要望書で消費税を引き上げろ、と主張していた、というものです:
「年次改革要望書」で実現した「カイカク」の内容
https://ameblo.jp/kiho-te7/entry-11936102650.html
> また、「年次改革要望書」によって、アメリカは経営者による従業員
> の解雇をやりやすくするために労働基準法の改訂を要求し、さらに、税
> 制改革として累進課税の緩和、フラット税制の導入、法人税の減税、消
> 費税の増税を要求してきた。これを受けて、日本は2007年度から地
> 方税に一律10%のフラット税制を導入し、2012年3月に法人税減
> 税を実現、8月には消費税増税法案を成立させた。
これら2つの証言は、一見矛盾するように思うかもしれませんが、これら2つの証言を読み比べてみると、別に矛盾はないことがわかります。
なぜなら、最初の岩本氏の主張には、「年次改革要望書」に消費税増税を要望したと書かれている、とは一言も主張していないからです。米国が日本の消費税導入や税率引き上げに反対しているというのは文書名も明らかでない「公文書」に書いてある、とか、日本の消費税導入や税率引き上げに対して報復措置を取った、というのは、その因果関係については単なる憶測でしかありません。
これに対して後者の引用文では、はっきり「年次改革要望書」によって消費税の増税を要求してきた、と書かれています。
つまり、トランプが米国民の立場でDSと戦っていることからわかるように、一口に米国と言っても、一般国民の立場とDSの立場という、相反する立場からの要求が日本に向けて発せられている、ということでしょう。
この件については、2013年11月の産経BIZの記事ですが、例の田村秀男という産経新聞で経済についてよくわかっている記者が書いた次の記事があります:
消費税増税決断の裏側 なぜ欧米は執拗に日本へ催促したのか
https://www.sankeibiz.jp/macro/news/131113/mca1311131100011-n1.htm
> 「増税しないと日本国債や日本株の相場が急落しかねない」といった欧
> 米メディアの報道姿勢が、安倍首相をすっかり国際包囲してしまった。
> その背景にあるのは、デフレ圧力を強める増税は、日本の余剰資金を海
> 外に流出させることにつながるからだ。そして、その資金流出は米欧の
> 投資ファンドの利益に直結している。
つまり、増税や歳出削減で緊縮財政を続ければ、国内で資金需要が無くなり、しかも将来が不安で貯蓄が増え、この余剰資金は海外への投資に向かわざるを得なくなり欧米投資ファンドがオイシイ思いができる、というわけです。
> 米国ウォールストリートジャーナル紙や通信社のロイター、ブルームバ
> ーグも来年4月からの消費税率3%の引き上げが決まったと断定したり、
> 「増税しないと日本国債や日本株の相場が急落しかねない」とする市場
> エコノミストたちの見解をしきりに紹介した。これら海外メディアの報
> 道ぶりにより、増税について慎重だった安倍首相はすっかり国際包囲さ
> れてしまったようだ。
>
> 欧米メディアは、なぜこうも執拗に日本へ増税を催促したのか。上記
> の欧米メディアはいずれもウォール街など国際金融市場の利害を少なか
> らず代弁している。日本の増税が望ましいというコンセンサスが裏にあ
> ったのだろうか。
>
> 現に、米欧の国際金融マフィアが牛耳るIMF(国際通貨基金)は2
> 年以上前から日本の消費税増税を求めてきた。そしてG7(先進7カ国
> グループ)、先進国に新興国を加えたG20(20カ国グループ)もI
> MFの意向に従っている。
東南アジアの各国が相次いで消費税を導入してきた理由の一つがIMFを通じての「国際金融マフィア」による要求だったわけですね。そして
> FRBマネーはいくらでも刷れる半面で金融政策変更とともに消え去
> る。対照的に、日本が出す資金は家計貯蓄という本物のマネーであり、
> 日本国民の才覚や勤勉な労働の産物である。
ここはちょっとわかりにくいですが、米国はドルが基軸通貨であることを良いことにドルを刷れば刷っただけ実体経済での需要が増えるので、結果的にマネーストックも増え続けていますが、日本の円は緊縮財政のおかげで実体経済が委縮して資金需要が増えず、結果としてマネタリーベースばかり増えてマネーストックが増えないため、円の希少価値が高まって、欧米投資ファンドにとっては「円」を手に入れることは「金貨」がを手に入れるようにオイシイ、ということです。
このような背景の下で、2014年の消費税引き上げの時ですら「安倍首相はすっかり国際包囲されてしまった」というのですから、その後2回も消費税増税を延期した現在の安倍首相に対する「国際金融マフィア」の圧力は想像を絶するものがあります。
単に財務省や経団連だけが敵なのであれば、2回の消費税延期でわかるように対処もしようがあるでしょうが、「国際金融マフィア」に首根っこを掴まれ、財務省も人質に取られているというのでは、まともに対抗するのも限界なのでしょう。安倍首相が正面対決を避け、軽減税率やポイント還元などで何とか景気へのダメージを防ぐ方法で対処しようとしているのは、今の情勢のもとでは最大限の対応なのかもしれません。
おりしも安倍首相は今後10年は消費税を上げる必要が無いと宣言しました↓
消費増税10年不要に再言及 首相、10%への理解訴え
https://www.chunichi.co.jp/s/article/2019070701001315.html
しかし、自民党内でも石破氏がこれに反発するような発言をしています↓
消費税10%後の増税「議論必要」 石破氏、首相に異議
https://www.sankei.com/economy/news/190705/ecn1907050032-n1.html
既に「ポスト10%」の攻防が開始されているのです。我々はこのような日本の消費税引き上げをもくろむ強力な包囲網の背景を理解した上で対策を立てなければならない瀬戸際にいるのだ、ということを国民全員が認識しなければならない時期に来ていると思います。 (おしまい)
このシリーズ、今回で一応終わりますが、新たな事実を見つけたらまた補足していくかもしれませんのでよろしくお願いします。
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