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mespesadoさんによる1億人のための経済談義(87)マンデル=フレミング・モデル講座(3) [mespesadoさんによる1億人のための経済講]

大雑把な頭にはすごくいい訓練になります。マンデル=フレミング・モデル講座の第一回からもう一度じっくり読んでみます。

・マンデル=フレミング・モデル講座(1) https://oshosina.blog.so-net.ne.jp/2019-06-09-3
・マンデル=フレミング・モデル講座(2) https://oshosina.blog.so-net.ne.jp/2019-06-09-2

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675:mespesado:2019/06/11 (Tue) 22:07:56

>>657
 さて、そろそろマンデル=フレミング・モデルによる分析のどこが間違っているかの種明かしをしましょう。
 ざっと今までの復習をすると、「財」に関する国民所得 Y と金利 r を変数に持つ方程式:

 Y = C(Y-T(Y)) + G + I(r) ……… ⑦

と、「貨幣」に関する Y と r を変数に持つ方程式:

 M = L1(Y) + L2(r) ……… ⑬

があって、Y を横軸に、r を縦軸に取ったグラフにすると、⑦ に対応するグラフを「IS-曲線」、⑬ に対応するグラフを「LM-曲線」と言うのでした。そして、「IS-曲線」は右肩下がり、「LM-曲線」は逆に右肩上がりとなり、方程式 ⑦ の「政府支出」G を増やすと「IS-曲線」は上(右と言っても同じ)にシフトし、方程式 ⑬ の「貨幣総量」M を増やすと「LM-曲線」は下(右と言っても同じ)にシフトするのでした。
 そして、⑦ と ⑬ を同時に満たす Y と r の組が実際の国民所得と金利になるのですが、この連立方程式の解は、対応する「IS-曲線」と「IM-曲線」の「交点(=均衡点)」として求められるのでした↓
https://ja.wikipedia.org/wiki/IS-LM%E5%88%86%E6%9E%90



 そして、「金融(量的)緩和」とは、⑦ の政府支出 G は変えずに ⑬ の貨幣総量 M を増やすことに相当するから「LM-曲線」だけ右方にシフトし、その結果、均衡点の位置は右下に移動し、これは Y すなわちGDPが増加して景気が良くなることを示していること、また「財政出動」とは逆に ⑬の貨幣総量 M は変えずに ⑦ の政府支出 G を増やすことに相当するから今度は「IS-曲線」だけ右方にシフトし、その結果、均衡点の位置が今度は右上に移動し、これは Y すなわちGDPが増加して同じく景気は良くなるのだが、今度は金利 r も同時に上昇してしまうので、GDPの増加の効果を少し削いでしまう(クラウディングアウト)、ということなのでした。
 ところが、これに対してMMTでは全く逆に、

(1) 財政出動するとGDPが増加して景気が良くなるのは確かだが、クラウディングアウトは発生しない。
(2) これに対し、金融(量的)緩和を行ってもGDPは増加せず、景気は良くならない。

と主張しているのです。どちらが正しいのでしょう?
 正解はMMTの方なのですが、それではマンデル=フレミング・モデルのどこが間違っているのでしょう?というのが前回までの宿題なのでした。
 さて、みなさん、おわかりでしょうか?
 ヒントは「貨幣総量」というときの「貨幣」とはどの定義によるオカネを指すのか?という部分にあります。     (続く)

676:mespesado:2019/06/11 (Tue) 22:56:41

>>675
 オカネの定義には、既に開設したように、紙幣と硬貨、つまり「現金」に日銀当座預金を合わせたマネタリーベース(MB)と、現金に預金通貨を合わせた上で銀行が保有するMBを差し引いたマネーストック(MS)の2種類があるのでした。
 では方程式 ⑬ に出てくる M はどちらでしょうか?
 それには、この式の右辺にある「取引に使われる貨幣」である L1(Y)が所得 Y が増えるときに同じく増えること、「取引に使われない貨幣」である L2(r) が金利 r が増えるとき逆に減少すること、という2つの条件があったことを思い出してください。
 今日では現金だけでなく、銀行預金で直接買い物や口座引き落としなどで決済が行われますから、この「貨幣」に銀行預金が含まれることは明らかです。半面、銀行が保有する現金が取引に用いられることはありません。また取引に使われない銀行預金も、金利が高ければもったいないから高金利の金融商品にシフトするでしょうが、金利が低ければそのままです。他方で銀行が保有する現金は逆に金利が低い方が融資のニーズが多くなるので銀行の外に流出するので、L2 とは逆にかえって減少します。
 つまり、L1 や L2 の定義における「貨幣」とは預金通貨を含み、銀行の保有する現金は含まない、言い換えるとマネーストック(MS)のことに他なりません。従って、これらの合計である M もマネーストックの意味でなければならないことがわかります。   (続く)

678:mespesado:2019/06/11 (Tue) 23:23:19

>>676
 そうなると、マンデル=フレミングの議論のどこが間違いなのかはもう明白ですね。
 まず金融(量的)緩和の場合を考えます。
 これは日銀が銀行の国債を購入してその代金を銀行に振り込みますが、その振込先は銀行ですから、これは「銀行の保有するMB」ということになりますから、マネーストックである ⑬ の左辺の M には含まれません。つまり、金融(量的)緩和をいくら行っても M は増えないわけです!
 ということは、「LM-曲線」はシフトせず、元の曲線のままです。これでは「IS-曲線」も「LM-曲線」も動かないのですから、両曲線の交点である均衡点も動かず、従ってGDPである Y は変化しません。つまり「金融(量的)緩和は景気拡大には効果が無い」というMMTの主張に沿った結論が得られます。
 次に財政出動の場合を考えます。
 この場合、政府支出 G は確かに増えるので、「IS-曲線」が右方にシフトするという結論は間違いありません。では「LM-曲線」の方はどうでしょうか?
 以前解説したことがあるように、政府が財政出動するとき、例えば公共事業をある企業 A が落札したとき、国は支払いを現金で行うわけではなく、「政府小切手」を発行します。企業 A がこれを取引銀行に持ち込むと、銀行は企業 A の預金口座に政府小切手の額面を万年筆マネーで残高を追加し、政府小切手を日銀に持ち込みます。すると日銀は政府と同銀行の日銀当座預金の間で小切手の決済を行いますが、この額と、同額の政府発行新規国債を銀行が購入したときの日銀当座預金決済とは振り込む向きが逆なので、両者が丁度相殺されます。その結果、マネーストックは、ちょうど銀行に開設した企業Aの預金口座の残高分だけ増加することがわかります。
 そうなんです。政府支出 G が増えると、貨幣総額 M も同額だけ増えてしまうんです!
 その結果、どうなるかというと、「IS-曲線」だけでなく「LM-曲線」も右にシフトし、両方のグラフが同時に右にシフトするので、それらの交点はほぼ真右に移動します。つまり単にGDP Y が増加するだけでなく、金利の上昇もほとんど生じません。つまりクラウディングアウトは起きないわけです。
 以上のようなわけで、マンデル=フレミング・モデルにMMTが主張するような「事実」、つまりMBとMSの違いや信用創造によるMSの増加を加味すると、通説のような結論は得られずに、代わりにMMTの主張どおりのことが起きるわけです。
 つまり、従来説論者のいうように、「MMTは数式の裏付けが無い」のではなくて、従来説の方が、貨幣の定義を雑に扱っていたから結論を間違えていただけで、マンデル=フレミング・モデルという「正しい式」を使って得られるのは従来説ではなくMMTの方だったのです!
 以上で「種明かし」は終わりです。あとは、貿易の影響を含んだ「開いたモデル」における「IS*-曲線」と「LM*-曲線」の話を補足として説明して今回のシリーズを終了したいと思います。   (続く)


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679:猿都瑠 :2019/06/11 (Tue) 23:27:45

色々な人と話してて感じることは、とにかく黒字が良いことだということです。
家計も企業も経済も貿易も国家財政も全て黒字でなければならないと思っている。
その為に生産力を上げ、労働者も極限まで使って良いとさえ考えている節があります。
単純に大雑把に国家財政の赤字=国民の資産の黒字である、つまり国家財政の赤字が増えるほど国民の財産が増えるって理解させるのに、手っ取り早い方法を流布する簡単な方法は無いだろうかって事ですね。
国家財政の無駄を省いて健全化する、家計の延長線上でしか見れない人をどう説得するか。
無駄を省いて貯蓄を最善のように信奉する日本人には、無駄こそが利益を産んでるんだと言う経済のイロハも理解できているかどうか。
骨の髄まで染み込んだ、風雪に耐えるとか石にかじりつくような意識が180度転換出来るような、ワンフレーズポリティクスを考えないとと思います。
例えば日本のデフレはインフレマイナス500%のような数値が欲しいですね。

680:mespesado:2019/06/12 (Wed) 00:09:08

>>679
「国債は、国の借金ではなく、国が発行する有効期限付きの政府紙幣である」なんてプロパバンダはどうですかね?



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