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mespesadoさんのによる1億人のための経済談義(84)マンデル=フレミング・モデル講座(2) [mespesadoさんによる1億人のための経済講]

mespesadoさん、怒涛の書き込み、ここで「種明し」まで一休みです。フーッ

*   *   *   *   *

655:mespesado: 2019/06/09 (Sun) 09:19:18

>>654
 さて、ここで財政出動の話に戻ります。財政出動の効果について解説したときに参照したリンク先:
https://blogs.yahoo.co.jp/wbsqm839/1878568.html

では、本文の中に「クラウディング・アウト」について説明されていました。
 その部分を引用しておきましょう:

> クラウディング・アウト

>  政府支出を行い、IS曲線を増加させた場合、均衡点を見ると利子率も
> 増加していることがわかります。利子率の増加は投資を下げるというの
> が原則ですから、投資が下がった分、効果が薄れてしまうということで
> す。最初のグラフを見てください。利子率がr1のまま一定であれば、所
> 得Y3まで上昇するはずが、Y2までしか上昇しません。このことをクラウ
> ディング・アウトといいます。
 確かに財政出動を行うと、「IS-曲線」は上にシフトするので「LM-曲線」との交点は右にズレるので、Y すなわちGDPは増えるのだけれど、同時に金利 r も上昇してしまい、金利の上昇というのは金融政策としては金融引き締めのときに使う手段ですから、このファクターが財政出動の効果を削いでしまう、というわけで、この副作用のことをクラウディング・アウトと呼ぶわけです。


 さて、以上は貿易の影響を無視した「鎖国モデル」で説明しました。本当なら「開放モデル」で論じた方が現在の日本の経済モデルとしては正確になるのですが、ことの本質はさほど変わりません。ただ、変数が Y と r のかわりに、横軸の Y の方はそのままですが、もう一方の縦軸の変数に、金利 r ではなく為替レート e を採用する、という点が違います。この場合の「IS-曲線」に対応する曲線を「IS*-曲線」と呼び、「LM-曲線」に対応する曲線を「LM*-曲線」と呼ぶわけですが、「IS*-曲線」は逆に「右肩上がり」になり、一方の「LM*-曲線」の方は、完全に垂直な線になっています。
( http://www.econ.kobe-u.ac.jp/student/pdf/15kiso-macro10.pdf の6頁のグラフ参照。)

15kiso-macro10(15)-6.jpg 

このため、この「開放モデル」で変動相場制を採用している場合には、財政出動の効果は「LM*-曲線」が動かない場合に対応しますから、「IS*-曲線」との交点は、「IS*-曲線」がシフトすると確かに移動はしますが、垂直な「LM*-曲線」との交点が移動するだけですから、Y の値は変わりません。

15kiso-macro10(15)-8.jpg
( http://www.econ.kobe-u.ac.jp/student/pdf/15kiso-macro10.pdf の8頁のグラフ参照。)

 つまりこの場合は、財政出動という経済政策は、クラウディング・アウトのような「効果が減じてしまう」などという生易しいものではなく、「全く効果が無い」という結論が導かれてしまうのです!       (続く)


657:mespesado: 2019/06/09 (Sun) 09:39:48 host:*.itscom.jp

>>655
 以上が「従来派」の経済学者による「マンデル=フレミング・モデル」という「計量経済モデル」を使った景気対策に対する定説

# 閉じたモデルでは、財政出動も金融の量的緩和も景気向上に効果がある
# が、財政出動ではクラウディング・アウトによりその効果が減じてしま
# う。一方変動相場制を採用している開いたモデルでは、財政出動は景気
# 向上に効果が無く、金融の量的緩和には効果がある。

の理論的な正当化の概要です。
 ところが、MMTを主張する人たちは、上記の定説に真っ向から異を唱えています。つまり

% 閉じたモデルではクラウディング・アウトは起きず、財政出動は効果が
% あるのに対し、逆に金融の量的緩和は効果が無い。一方変動相場制を採
% 用している開いたモデルでは、財政出動は効果があり、逆に金融の量的
% 緩和は効果が無い。

と主張しているわけです。これに対して従来の定説に沿った経済政策を提言するリフレ派の経済学者やエコノミストはこの反論に更に異を唱えているわけですが、確かにMMTの支持者は「IS-LM分析」の結果と正反対のことを主張しているわけですから、「数学もわからんトンデモ理論だ!」と言いたくなる気持ちはわかります。
 ですが、今まで解説してきた内容をよ~く観察すると、数式(つまり「定量的」な議論)ではない地の文章で書かれた部分(つまり「定性的」な議論)の所で致命的な誤りがあるのです!
 それがどこだかおわかりになったでしょうか?まあ、経済学者でも気が付かなかったりするわけですから、わからなくても悩む必要はありませんが、ここまで怒涛のように書き込みが続いて読者の方も消化不良になっているかもしれないので、「種明かし」はもう少し時間が経ってからやりたいと思いますので、読者の皆様におかれましては、その間に今までに投稿した内容をよく吟味していただくことをお願いして、この連投は一旦ここで一休みさせていただきます。
 なお、今までの所で質問などありましたら、一休みとは関係なくいつでも対応させていただきます。(続く)


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