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出雲行(2)足立美術館(上)横山大観「紅葉」 [メモがわり]

お別れ会を終えてから、I先生、N先生とともに足立美術館に向かった。駅までタクシーのつもりで乗り込んだが、美術館まで一人5,000円でいいということでお願いした。着いたのが2時半ぐらい。2時間の見学を予定したのだが、足りなかった。想像以上の規模。タクシーの運転手さんに聞いた話。「足立全康という人は若い頃から苦労した商売人だったが、大阪でたまたま購っていた土地が万博用地に買い上げられたことで莫大な金を手にし、それを元手に始めたのが足立美術館」。足立美術館のサイト「絵画蒐集のエピソード」にこうある。

雨霽る11031440_5457154588e93.jpg紅葉図113.png《足立全康の蒐集への情熱は定評のあるところですが、中でも一番思い出深い出来事といえば、昭和54年に北沢コレクションの「紅葉(こうよう)」「雨霽る(あめはる)」「海潮四題・夏」をはじめとする大観の作品群を海潮四題・夏02151439_5c6650a7eb3a5.jpg一括購入したことでしょう。昭和53年に名古屋の横山大観展で見た「紅葉」(六曲一双屏風)に言葉も出ないほどの感動を受け、何が何でも手に入れるのだと八方手を尽くしたところ、門外不出の「幻のコレクション」といわれた北沢コレクションの一部とわかりました。当時、管財人の手元にあり、その中には大観の作品が、「紅葉」以外に20点近くもあり、そのほとんどが展覧会出品作だったのです。さらに驚いたことには、長い間、画集から切り抜いて額に入れ毎日飽きもせず眺め続け、夢にまで見た「雨霽る」が含まれていたのです。苦労の末、2年がかりで全ての大観の話がまとまりかけたところ、購入リストから「雨霽る」と「海潮四題・夏」をはずしてくれと言われました。これは黙ってはおれないと「一目惚れの女性に2年も通い続けて枕金も決め、さあ床入りという時に、枕をかかえて逃げられるようなもんだ。そりゃあんまりじゃないですか」と管財委員会の前で一席ぶち、泣き落とすようにして最後は当館に決めてもらったといいます。》全康の孫 足立隆則足立美術館館長の言葉もある。《開館当初は、建物も小さく、所蔵作品も少なくて、走って回れば5分ほどで出てこられるような、こぢんまりとした美術館でした。そんな美術館が、全国的に知られるようになった最初のきっかけは、開館9年目に横山大観の作品を一括購入したことでした。/全康はその前年に、名古屋の横山大観展で大観の「紅葉」という作品を見て、言葉も出ないほどの感動を受けます。なんとか手に入れたいと調べてみると、驚いたことに、あの「雨霽る」を含んだ20点程の大観の作品が、ある管財人の手にあることがわかったのです。》マネジメント誌「衆知」)

「紅葉」が足立美術館の看板作品だとは思っていたが、足立全康の「紅葉」への執心についてはこの度初めて知った。「紅葉」は秋の展示ということで今回は「夜桜」だった。私は東京国立近代美術館でじっくり見ている。「紅葉」について、結城亮一氏が『翠松の丘〜宮内高校人脈物語』に書いている。
二代目亀五郎は日本画を好み、川端龍子や横山大観の絵を集めた。昭和三年には川端龍子の後援会長を引き受け、日本橋三越の画廊で個展を三回開かせ、三回とも全部赤札にして育て上げた。横山大観の絵は、川端から目ききをしてもらって買った。
  昭和六年に大観が屏風絵の名作「紅葉」を描いたとき、木の下の流水を表現するのに当時まだあまり使われていなかった描画材料のプラチナ泥を 使ったため、画壇や画商は工芸品とみなして認めなかったのを、亀五郎が二万四千円で買い取ったので大観はいたく感激し、お抱え表具師を連れて漆山まで訪ね てきたのだった。公務員の月給が五十円のころだから、二万四千円といえばざっとその五百倍にあたり、今の金額に直せば七千万円くらいになるだろうか。
 後年(昭和30年)、多勢家が左翼の教唆による暴力的労働争議によって倒産に追いこまれたとき、多くの書画骨董品とともに「紅葉」も処分された。その後、島根県の足立美術館で問題の屏風絵が所蔵されているのがわかった。同美術館によると、その作品は、倒産した東洋バルブの創業者・北沢国男氏の収集品「北沢コレクション」 から昭和五十四年に購入したとのこと。それより以前の持ち主はわからず、これが多勢家旧蔵の作品であったという可能性も捨て切れない。》私は「紅葉」が多勢家にあった話を、丸一多勢家が実家の山栄酒造の奥様(タマちゃ/昭和2年生)から聞いた。足立美術館まで足を運んで見てこられての話だった。金上多勢家の倒産に伴う大観作品散逸の実態については、錦三郎先生がかなり探求されたはず(佐藤吉栄氏談)だが、発表には差し支える事実もあったらしく、その資料は眠ったままになっている。時間が経っていつか出てくることを期待したい。

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