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「令和」をめぐって [メモがわり]

数日前、竹さんと詩吟の総会の打合せで熊野大社證誠殿に行って宮司と会ったら、「いま思いついた」と言って披露してくれたのがこれ ↓
  「初春令月、三兎遊ぶ。御熊野の気、淑として風和らぐ。」
宮司は漢詩のつもりではなかったのだが、「初春令月三兎遊 御熊野気淑風和」を起承とする七言絶句ができそう。一日頭をめぐらしているうちにできたのが、一応韻を踏んだつもりで、
  初春令月三兎遊 熊野気淑風和邑  
       (初春令月、三兎遊ぶ。熊野の気、淑として風邑を和らぐ。) 
  宮民決然挑次代 先人勇魂応結集       
       (宮民決然として次代に挑む。先人の勇魂、応えて結集(けつじゅう)す。)
竹さんに「できた」と見せたものの、平仄とやらが気になり出して見つけたのが「漢詩のための押韻平仄チェックツール」。これでチェックしてみると、  
  初春令月三兎遊  熊野気淑風和邑  ○○△●△?○  ○●?●△△●
  宮民決然挑次代  先人勇魂応結集  ○○●○△●●  △○●○?●●
   (○は平声、●は仄声、△は平仄どちらも持つ漢字、?はデータ未収を表します。)
これを「漢詩の作法」にしたがって点検すると、
◎押韻の規則
    • 韻は偶数句で踏むのが通例で、七言詩は一句目も押韻します。→×(「遊」はダメ?)
    • 韻は平声で踏むことが通例です。→×(転結ともに●)
    • 押韻句の平仄と韻を踏まない句の平仄は対にします。→×
    • 一韻到底が適用されます。一韻到底とは同じ韻を最後まで貫く規則です。→×
◎平仄の規則
    • 平仄とは中国語(中古音)の声調で、平声と仄声(上声・去声・入声)をいいます。
    • 二六対が適用されます。二六対とは一句の中の二字目と六字目の平仄を同じにする規則です。→×
    • 二四不同が適用されます。二四不同とは一句の中の二字目と四字目の平仄を不同にする規則です。→×(起?承○転○結○)
    • 一三五不論が適用されます。一三五不論とは一句の中の一字目と三字目及び五字目の平仄を論じない規則です。→○
    • 孤平不許が適用されます。孤平不許とは五言では二字目、七言では四字目の平声が単独になることを禁じる規則です。ただし、他の位置においても平仄関係なく孤独になることは好まれません。→?
    • 下三平の禁が適用されます。下三平の禁とは一句の中の下三字を平声で連続させない規則です。ただし、仄声の三連も避けるのが通例です。→?
    • 反法が適用されます。反法とは奇数句⇒偶数句で各々二字目の平仄を違える規則です。(起承○転結×)
    • 粘法が適用されます。粘法とは偶数句⇒奇数句で各々二字目の平仄を同じにする規則です。→×
    • 挟平格が適用されます。挟平格とは押韻しない句末の平仄仄を仄平仄に換えることを許す規則です。この場合、二六対・二四不同は適用外になります。→○

ということで、「せっかくつくった漢詩は、まったく漢詩の作法には合っていなかった」という結論なのですが、改元がいろんな論議を巻き起こしているのがおもしろい。以下、その中でメモしておきたい二つ。

1.mespesadoさん

305 名前: mespesado
2019/04/06 (Sat) 12:06:37

>>303

>  新元号(しんげんごう)が、「令和(れいわ)」だそうだ。何だ、こ
> のヘンな元号(日本式の年号)は。まっすぐ読むと、「上の命令をよく
> 聞いて、下の者たち(国民、大衆)は、仲良く働け」という意味にしか、
> 取れない。 

>  もっと頭のいい専門家が、何とか知恵を絞って、皆が、納得する、年
> 号が他に有っただろうに。「平成」は、国民が自然に受け入れた。今度
> のはダメだ。皆で使用を拒否すべきだ。

 副島氏の↑の意見ですが、確かに「平」も「成」も「和」も年号によく使われる字なのに「令」は一度も使われたことがないというのですから、今回の新年号はある意味「異例」であることは確かですね。
 そこで、「令」の字の由来を漢和辞典(『大漢語林』)で調べると、

> 会意。(「人」の下に「一」)+(「卩」の中に点)。「人」の下に「一」
> は、集めるの意味とも、頭上に戴く冠の象形とも言う。「卩」の中に点
> は、ひざまずく人の象形。人がひざまずいて神意を聴くさまから、いい
> つけるの意味を表す。

ということだそうで、いわゆる「良い」の意味については、

> ①命ずる。いいつける。… ②みことのり。君主の命令。… ③のり。お
> きて。… ④いましめ。おきて。… ⑤おさ。長官。…

ときて、6番目と7番目にようやく、

> ⑥よい。立派な。すぐれた。… ⑦よくする。立派にする。… ⑧他人の
> 親族に対する敬称。… ⑨文体の名。皇后・太子・諸侯などの命令文。

と出てきます。明らかに「神の意向」から生じた派生的な意味ですね。
 ところで「明治」から「令和」までの年号を、発音のモーラ(拍)を〇で表すと、
 明治 = メイ+ジ   = 〇〇 + 〇
 大正 = タイ+ショウ = 〇〇 + 〇〇
 昭和 = ショウ+ワ  = 〇〇 + 〇
 平成 = ヘイ+セイ  = 〇〇 + 〇〇
 令和 = レイ+ワ   = 〇〇 + 〇
という風に「〇〇+〇〇」と「〇〇+〇」が互い違いに登場しています。
 そして文字の普通の意味も、前者のグループは、順に「明らかに治める」「和を明らかにする」「和を命じる」という“能動的”な意味合いになっているのに対し、後者のグループは、順に「大いに正しい」「平らに成る」という、どちらかというと“受動的”な意味合いが強い文字選択になっているように見えます。
  そして、その時代背景も、「明治」は明治新政府のスタートを皮切りに、日清・日露戦争などがあり、そして「昭和」も大東亜戦争があり、他方で「大正」は第 一次大戦と関東大震災があり、「平成」は日本は戦争こそなかったものの各種経済ショックに流されました。これを見ても、「明治」「昭和」は自ら積極的に 打って出た(明治維新派もちろん、日清・日露戦争も大東亜戦争も日本から打って出た)のに対し、「大正」の第一次大戦は完全に「他人の起こした戦争」に便 乗して儲けただけだし、関東大震災は勝手に起きた自然災害であり、平成の経済ショックも「流れ弾」に過ぎません。ということは、今度の「令和」は「日本が何らかの行為に積極的に打って出る時代」になるのじゃないか、ということをにおわせています。これが「戦争」のことではなく(というか、従来型の「戦争」はもはや時代遅れ)、経済の本質的なところで「日本が世界のイニシャティブを取ることに打って出る」時代となれば、単に日本人だけでなく、人類にとっても望ましいことになるのではないかと思わずにはいられません。一部、本当に一部ですが、MMTの本質を理解している人たちが増えてきていることや安倍さんの真の意味での「全方位外交」の凄さを評価する人が増えてきていることに希望が持てます。

 実は万葉集「梅花三二首」の序文は中国の張衡『帰田賦』からの「本歌取り」であった。
《万葉集の「梅花三二首」の序文は漢字だけで書かれており、漢字だけを並べると以下のようになる。
  ――初春令月、気淑風和。梅披鏡前之粉、蘭薫珮後香。
これを見た瞬間、中国のネットユーザーが反射的に連想したのが張衡の『帰田賦』にある次の句だ。
  ――仲春令月、時和気清。原湿郁茂、百草滋栄。
さて、前半の8文字を見てみよう。
  万葉集:初春令月、気淑風和。
  帰田賦:仲春令月、時和気清。
最初の2文字は万葉集より遥か前にあった『帰田賦』における「仲春」が「初春」に置き換えられているだけだ。「仲春」は「春半ば」の意味で、それが「初春」と表現されているが、「令月」=「佳い月(2月)」であることに変わりはない。
次に「気淑風和」と「時和気清」を比較してみよう。
「気淑」は「気(き)淑(よ)く」(=きよく)と、ひらがなを交えて菅官房長官も安倍首相も説明しているが、「気淑」は「気清」に対応しており、「清く」(=きよく)なのである。
残りの2文字は、万葉集では「風和」となり、「帰田賦」では「時和」となっている。
「風 和」は「風(かぜ)和(やわ)らぎ」と説明されている一方、張衡が用いた「時和」の意味は「時(とき)和(やわ)らぎ」なので、万葉集では張衡の「時」を に置き換えたことになる。「時」は「流れゆく時間」「流れゆく季節」でもあるので、それは「流れる風」と対応させることは容易だろう。
・・・・・・・・・・・・・
菅官房長官の発表や安倍首相の説明において、意図的か否かは分からないが、省略された文字がある。
それは万葉集の「初春令月、気淑風和」の前にある「于時」という2文字だ。
原典では「于時、初春令月、気淑風和」となっているようで、この「于時」は日本では「時(とき)に」と読まれているようだ。
この「于」は「於」と同じ文字で、「于」は「於」の、中国における現在の簡体字。中国では今では「于」という文字しか使わないが、昔は「於」を用い、時に簡略的に「于」を用いることもあった。
張衡の『帰田賦』では、「仲春令月、時和気清」の前に同様に「於是」という2文字がある。
中国人なら誰でもわかるが、「于時」も「於是」も発音は [yu shi]だ。
同じ発音なのである。[yu]は同じ文字でもある。
万葉集を詠んでいた頃の歌人は中国語の発音や漢文を非常によく理解していたことだろう。だから『帰田賦』の「於是(yu shi)」を万葉集では同じ発音の「于時(yu shi)」に置き換えたのかもしれない。
中国のネットユーザーの多くは、1980年後に生まれた「80后(バーリンホウ)」たちで、彼らは日本のアニメと漫画で育った世代である。日本語を読める者が多い。
多くのネットユーザーが、菅官房長官の発表や安倍首相の説明において、この「于時」を省いたことを指摘している。
万葉集に関してあまり知らない筆者は、後追いで当該部分の原文を画像などで検索してみたところ、たしかに「初春令月、気淑風和」の前に「于時(時に)」があるのを発見した。
すなわち、
  万葉集:于時(yu shi)、初春令月、気淑風和。
  帰田賦:於是(yu shi)、仲春令月、時和気清。
と、10文字がきれいな対を成しており、明らかに「本歌取り」であったことは否めないだろう。》

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