mespesadoさんによる1億人のための経済談義(59)「日本衰退論」(14) 書籍販売のしくみ [mespesadoさんによる1億人のための経済講]
「書籍」の特殊性のゆえに出版界は保護されてきた。しかし、デジタル化の波によって、これまでの「既得権」が大きく脅かされることになる。今回はここまで。次回、日本の書店衰退の真の理由が解き明かされます。
* * * * *
242:mespesado:
2019/03/21 (Thu) 17:54:57
>>211 「日本衰退論」の続きです。
前回の予告通り、「委託販売」と「再販」の話をします。
まず「委託販売」制度ですが、『ブリタニカ国際大百科』:
https://kotobank.jp/word/%E5%A7%94%E8%A8%97%E8%B2%A9%E5%A3%B2-31103
によれば、
> 商品の製作者,所有者が,問屋,小売業者に期限を定めて販売業務を委
> 託する商いの方式。期限時に残品の返品,売上代金の決済で商いが完了
> する。出版社が取次会社に委託し,取次会社から書店に配本され,売れ
> 残れば返本できるという日本の出版物の流通制度がその典型的な例であ
> る。問屋,小売業者にすれば資金の回転が比較的楽であり,残品在庫の
> 危険が少いが,一方仕入れ,販売の自主性が制限される。また商品を提
> 供する側からいうと,再販売価格の維持,見込み商品の市場開発などが
> 容易であるが,反面,返品・返本率を高くする原因ともなっている。
とあります。また「再販」制度については、同じく
https://kotobank.jp/word/%E5%A7%94%E8%A8%97%E8%B2%A9%E5%A3%B2-31103
によると、
> 正式には再販売価格維持制度といい、独占禁止法上は原則として禁止さ
> れている再販売価格の指定を例外的に認める制度。独占禁止法は自由な
> 価格競争を促進する立場から、商品の製造業者(供給者)が販売店に対し
> てその商品の小売価格を指定することを、不公正な取引方法として禁止
> しているが、書籍、雑誌、新聞及びレコード盤、音楽用テープ、音楽用
> CDの6品目については例外的に、言論の自由や文化の保護という見地から、
> 1953年以来、再販売価格の指定が認められてきた(著作物再販制度)。か
> つては化粧品なども例外とされてきた時代があったが、自由競争の見地
> から例外の範囲が狭められ、出版物についても廃止を検討しようとする
> 考え方が70年代末に公正取引委員会から提起され、特に90年代に入って
> 本格的な検討がすすめられてきた。これに対して、日本新聞協会が新聞
> の戸別配達の維持や質の低下の回避などを主張し、日本書籍出版協会、
> 日本雑誌協会なども全国同一価格の維持や活字文化の振興などを主張し
> て、強く反対している。
と詳しく解説されています。
この後者には「言論の自由や文化の保護という見地から」とありますが、もちろんそんなのは「利権」を隠すための大義名分によるカモフラージュに過ぎないことは明白ですが、それじゃあ「再販」制度が誰のどういう利権になっているのか?
2019/03/21 (Thu) 17:54:57
>>211 「日本衰退論」の続きです。
前回の予告通り、「委託販売」と「再販」の話をします。
まず「委託販売」制度ですが、『ブリタニカ国際大百科』:
https://kotobank.jp/word/%E5%A7%94%E8%A8%97%E8%B2%A9%E5%A3%B2-31103
によれば、
> 商品の製作者,所有者が,問屋,小売業者に期限を定めて販売業務を委
> 託する商いの方式。期限時に残品の返品,売上代金の決済で商いが完了
> する。出版社が取次会社に委託し,取次会社から書店に配本され,売れ
> 残れば返本できるという日本の出版物の流通制度がその典型的な例であ
> る。問屋,小売業者にすれば資金の回転が比較的楽であり,残品在庫の
> 危険が少いが,一方仕入れ,販売の自主性が制限される。また商品を提
> 供する側からいうと,再販売価格の維持,見込み商品の市場開発などが
> 容易であるが,反面,返品・返本率を高くする原因ともなっている。
とあります。また「再販」制度については、同じく
https://kotobank.jp/word/%E5%A7%94%E8%A8%97%E8%B2%A9%E5%A3%B2-31103
によると、
> 正式には再販売価格維持制度といい、独占禁止法上は原則として禁止さ
> れている再販売価格の指定を例外的に認める制度。独占禁止法は自由な
> 価格競争を促進する立場から、商品の製造業者(供給者)が販売店に対し
> てその商品の小売価格を指定することを、不公正な取引方法として禁止
> しているが、書籍、雑誌、新聞及びレコード盤、音楽用テープ、音楽用
> CDの6品目については例外的に、言論の自由や文化の保護という見地から、
> 1953年以来、再販売価格の指定が認められてきた(著作物再販制度)。か
> つては化粧品なども例外とされてきた時代があったが、自由競争の見地
> から例外の範囲が狭められ、出版物についても廃止を検討しようとする
> 考え方が70年代末に公正取引委員会から提起され、特に90年代に入って
> 本格的な検討がすすめられてきた。これに対して、日本新聞協会が新聞
> の戸別配達の維持や質の低下の回避などを主張し、日本書籍出版協会、
> 日本雑誌協会なども全国同一価格の維持や活字文化の振興などを主張し
> て、強く反対している。
と詳しく解説されています。
この後者には「言論の自由や文化の保護という見地から」とありますが、もちろんそんなのは「利権」を隠すための大義名分によるカモフラージュに過ぎないことは明白ですが、それじゃあ「再販」制度が誰のどういう利権になっているのか?
ググっても綺麗ごとばかり書いてあって、本当のところはなかなか書いていません。しかしぶっちゃけて言えば、これは「書店」の利権確保の ためです。なぜなら定価で売らなくてもよくなれば、書店は価格競争に晒され、安く販売できない書店は潰れてしまうからです。そして、まだ eコマースが無かった時代には書店が潰れると本を買うチャンスがそれだけ少なくなるので本の売り上げがトータルでは減少し、ひいては出版社も損を被りま す。
しかし、他の商品だって商店間の競争はあるはずなのに、何で書籍だけ特別扱いされるのか?
それは「書籍」というものが持つ次のような3つの特殊性のためだと思われます。
その一つは、①大量に出版される個々の書籍は、外見だけではどんな内容かわからず、パラパラと中身を見て(いわゆる「立ち読み」ですね)みないと消費者は買う価値があるかどうか判断できないこと。
二つ目は、②他の商品だと同一目的の商品(大根、鰯、鉛筆、傘から冷蔵庫に至るまで何でも)をそれぞれ複数のメーカーが作っていても、どのメーカーのもの でも同じ目的に使えるので、店の展示でメーカーによる選択を制限しても、消費者は提示されたメーカーのものを買うことで用が足せるのに対し、本の場合は一冊一冊すべて異なるので他のメーカーによる代替がきかないこと。
そして最後は、③書籍というのは同じ本を1冊買ったら、その本についてはそれでオシマイで同一消費者によるリピート買いという現象が無い、という特徴です。
まずこの特徴①と②により、書店はその時々に発売されたあらゆる書籍を陳列しておかなければなりません。そのため有限な陳列棚にあらゆる本を陳列すること になるため、それだけでスペースを食い、よく売れる商品を多く陳列して利を稼ぐ、という他の商品では使える戦略が取りにくくなります。
また、特徴③により、商店はリピーター目当てによく売れる商品を「恒常的に」仕入れるという戦略が取れません。
このような厳しい制約がある書店を保護するため、「再販制度」が維持され、また更に各書店は「品切れ」を防ぐために多くの本に対して大量に在庫を抱える必要があることから、店の負担を少しでも軽減するため、売れ残りを引き取るという「委託販売」の制度を出版社が採用しているものと思われます。
さて、これだけ手厚い保護を受けてきた出版界ですが、デジタル化の波とともに、こうした「既得権」が侵害されていきます。そのため書店の経営は厳しくなっていくのですが、確かに「第2次流通革命」や「 eブック」の登場により「再販」や「委託販売」という制度が脅かされるからですが、日本においては実は別の事情があって、むしろこの事情の方が書店衰退の 最大の原因になっているのです。 (続く)
しかし、他の商品だって商店間の競争はあるはずなのに、何で書籍だけ特別扱いされるのか?
それは「書籍」というものが持つ次のような3つの特殊性のためだと思われます。
その一つは、①大量に出版される個々の書籍は、外見だけではどんな内容かわからず、パラパラと中身を見て(いわゆる「立ち読み」ですね)みないと消費者は買う価値があるかどうか判断できないこと。
二つ目は、②他の商品だと同一目的の商品(大根、鰯、鉛筆、傘から冷蔵庫に至るまで何でも)をそれぞれ複数のメーカーが作っていても、どのメーカーのもの でも同じ目的に使えるので、店の展示でメーカーによる選択を制限しても、消費者は提示されたメーカーのものを買うことで用が足せるのに対し、本の場合は一冊一冊すべて異なるので他のメーカーによる代替がきかないこと。
そして最後は、③書籍というのは同じ本を1冊買ったら、その本についてはそれでオシマイで同一消費者によるリピート買いという現象が無い、という特徴です。
まずこの特徴①と②により、書店はその時々に発売されたあらゆる書籍を陳列しておかなければなりません。そのため有限な陳列棚にあらゆる本を陳列すること になるため、それだけでスペースを食い、よく売れる商品を多く陳列して利を稼ぐ、という他の商品では使える戦略が取りにくくなります。
また、特徴③により、商店はリピーター目当てによく売れる商品を「恒常的に」仕入れるという戦略が取れません。
このような厳しい制約がある書店を保護するため、「再販制度」が維持され、また更に各書店は「品切れ」を防ぐために多くの本に対して大量に在庫を抱える必要があることから、店の負担を少しでも軽減するため、売れ残りを引き取るという「委託販売」の制度を出版社が採用しているものと思われます。
さて、これだけ手厚い保護を受けてきた出版界ですが、デジタル化の波とともに、こうした「既得権」が侵害されていきます。そのため書店の経営は厳しくなっていくのですが、確かに「第2次流通革命」や「 eブック」の登場により「再販」や「委託販売」という制度が脅かされるからですが、日本においては実は別の事情があって、むしろこの事情の方が書店衰退の 最大の原因になっているのです。 (続く)
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