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mespesadoさんによる1億人のための経済談義(58)「日本衰退論」(13) eコマースの本質 [mespesadoさんによる1億人のための経済講]

eコマースの出現によって最も影響を受けたのは「書籍」だった。アマゾンが「書籍」に目を付けたのはなぜか。eコマースの本質に斬り込む今日の議論、実にスリリングです。

*   *   *   *   *

211 名前: mespesado
2019/03/17 (Sun) 23:06:10

>>209 「日本衰退論」の続きです。

 さて、いよいよ「電子商取引」あるいは「eコマース」と呼ばれるオンライン・ショッピングサイトの出現です↓
eコマースの歴史がわかる!EC業界年表まとめ(1996年~2015年)
https://ecnomikata.com/blog/9682/

 今でこそ、我々は eコマースと言えばアマゾンと脊髄反射的に名前が出て来ますが、日本においては、この eコマースの先駆けとなったのは1997年、日本の企業「楽天株式会社(旧名はエム・ディー・エム)」による「楽天市場」でした。次いで1999年に「Yahoo!ショッピング」が、そして、2000年になってAmazonが「書籍」に限定した販売サイトを開設しました。
 さて、アマゾンが米国で最初に手掛けたのはやはり書籍で、1995年にサービスを立ち上げています。
 この eコマースですが、ここに至って、ついに、最初に消費者がネットで商品を選択してから購入した商品を事業者が消費者の自宅(や、指定された受取場所)まで配送する、という形になり、「消費者の選択」が先、「輸送」が後、という、従来の小売店での購入とは全く逆の手順を取ることになります。これは順番が逆になったというだけでなく、消費者は自宅に居ながらにして商品を受け取るという「究極の楽」ができることになり、また「商品の選択」という観点から見ても、今までならいくら大規模店舗といえども、すべてのメーカーの全ての商品を取りそろえるということは不可能でしたが、eコマースではネットの画面に商品を表示しておくだけでよいのですから、「商品の選択の幅」は原理的には「無限大」ということになります。これは、消費者にとってはまさに「究極」の利便性ということになるのではないでしょうか。
 さて、これだけのメリットにもかかわらず、日本で第一次流通革命のときのようなリテール(小売業)の世界の劇的な変化は生じているでしょうか?
 私の目には、一つの例外を除いてそれほど劇的な変化が生じているようには見えません。その例外とは、アマゾンが手掛けた「書籍」の世界です。この書籍の分野については後で詳述しますが、それ以外の分野では、 eコマースが従来の店舗での売り上げを脅かす存在になっているとは認識されていないようです↓
https://www.cbre.co.jp/ja-jp/about/media-centre/brick-and-mortar-retail-in-the-digital-age

 よく考えると、それもそのはずで、ネット上ではいくら選択の幅が広いといっても、やはり商品を「手に取って」選びたいというニーズは大きいですし、何よりも購入した商品の消費者宅への配達が「個別」であり、生産者から店舗への「大量の」商品運搬に比べて配送コストの一商品への転嫁がコスト高になるため、消費者にとっては、商店で購入する場合より値段がかなり「割高」になってしまう、という問題が大きいと思います。
 実際、日本で最初に eコマースを開始した楽天については、Wiki↓
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A5%BD%E5%A4%A9

に あるように、当初の eコマース以外にも手を伸ばし、「オンライン株式販売やクレジットカード等の金利・手数料収入がグループ営業利益の過半数を占めるオンライン金融事業者で もある。」とあるように、収益をもともとのeコマースよりも金融事業にかなり依存している様子がうかがえます。
 さて、もし eコマースがこの程度のものなら、わざわざ「第二次流通革命」ともてはやされることもないでしょうが、当初「書籍」に絞って eコマースの世界に進出したAmazonについてはGAFAの一角として今ではリテールの世界に大きな影響を及ぼしています。これはどうしてでしょうか?
 そういうわけで、「書籍」という商品に、他の商品と違う「何か」があって、そこを起点にAmazonはブレイクスルーを得ることができたのではないかと想像することができます。さて、このAmazonについては、Wiki↓
https://ja.wikipedia.org/wiki/Amazon.com

に よると、「ベゾスはオンラインで販売できる20種類の商品のリストをつくった。次にベゾスは、このリストから最も有望と思われる5種類の商品を絞り込ん だ。それらの商品は、コンパクトディスク、コンピュータハードウェア、コンピュータソフトウェア、ビデオ、そして書籍だった。最終的に、文学への大きな世 界的需要、書籍は低価格であること、膨大なタイトルが出版されていることなどを考慮し、ベゾスは自身の事業をオンライン書店とすることを決めた。」とあり ます。う~む。これだけでは、ベゾスが「なぜこれらの候補を最も有望と考えたか」という疑問の核心がわかりません。
 ベゾスが挙げた当初の候補だった「コンパクトディスク、コンピュータハードウェア、コンピュータソフトウェア、ビデオ、書籍」には、コンピュータハードウェアを除けば、誰でもわかるように、「著作権物」という共通項があります。著作権というのは、Wikiによれば、「知的財産権(知的所有権)の一種であり、美術、音楽、文芸、学術など作者の思想や感情が表現された著作物を対象とした権利である。」と定義されていますが、経済活動の観点からすれば、この定義はあくまでも「タテマエ」であり、実質的には「コストを掛けずにコピーが容易に作成できるため、何らかの法的な保護をしないと製作者に消費の対価が入って来ない危険がある商品」ということに他なりません。
 このように考えると、著作権物である、というところに核心がありそうですが、そもそも「著作権物」であるということと「eコマース向きである」ということの間には、一体どういう関係があるのでしょうか?
 そこで、書籍のもう一つの特質として「委託販売」と「再販制度」という特質が浮かび上がります。この問題については、長くなるので稿を改めて論じることにします。     
(続く)

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