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mespesadoさんによる1億人のための経済談義(番外15) 「MMT理論」のこと [mespesadoさんによる1億人のための経済講]

「MMT理論」とは?

《Modern Monetary TheoryMMT(あるいは新表券主義〈しんひょうけんしゅぎ、Neo-Chartalism〉)とは、不換貨幣を 通貨単位として用いることによる過程と結果とを特に分析する経済学の理論のひとつ。ここでいう不換貨幣とは、例えば政府発行紙幣が挙げられる。 Modern Monetary Theoryの主張は次のようなものである。すなわち、「貨幣的主権を持つ政府は貨幣の独占的な供給者であり、物理的な形であれ非物理的な形であれ任意の貨幣単位で貨幣の発行を行うことができる。そのため政府は将来の支払いに対して非制限的な支払い能力を有しており、さらに非制限的に他部門に資金を提供する能力を持っている。そのため、政府の債務超過による破綻は起こりえない。換言すれば、政府は常に支払うことが可能なのである」》(wiki)

こう言われるとつい構えてしまいますが、要するに「不換貨幣発行の主権者は自由に貨幣を発行できる」というあたりまえのこと。しかつめらしく「MMI理論」などと言うまでもない。その時々の裁量をもって貨幣を発行するのは、「MMI理論」を信奉するからなのではなくて、「不換貨幣」とは元来そういうものなのです。

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193 名前:suyap
2019/03/14 (Thu) 18:13:41

おカネのこと、ケーザイのこととなると頭が朦朧として理解拒否を起こすタチなのですが、ここ放知技でmespesadoさんら諸先達から「MMT理論」について、多少は聞き(読み)かじっていたおかげで、下の記事がイカに「失笑」もんであるか、また筆者の立ち居地が透けて見えてオモシロかったです:

日本の借金拡大は問題なし?世界が苦笑するトンデモ理論「MMT」を
真顔で実験するアベ・クロ=今市太郎
https://www.mag2.com/p/money/651055?utm_medium=email&utm_source=mag_W000000204_thu&utm_campaign=mag_9999_0314

ところで昨今お騒がせの各省庁統計不正(偽装)疑惑は、安倍ちゃんが、
「やっぱ景気悪いみたいだから消費増税やめるわ」と言い出すための地ならしじゃないかにゃ...と思ったり。


195 名前:mespesado
2019/03/14 (Thu) 22:14:01

>>193

 MMT理論ってのは、実質トートロジーなわけで、この「理論」が「間違ってる」っていう主張が意味不明なわけでして…。
 この「トートロジー」ってのは、論理的に自明な主張のことですが、例えば生物学/進化論の世界でも「トートロジー」っていうのはあります。
 例えばドーキンスの「利己的遺伝子」というのがそれです。
  遺伝子というのはもちろん人間のような意味では「意思」を持ちませんから、この「利己的」というのはもちろん比喩的表現で、「利己的遺伝子」とは、「遺伝 子は(他の“ライバル”遺伝子との比較で)自分のコピーを大量に繁殖させることに成功したものが圧倒的多数派を占める」という主張のことで、これはすぐに わかるように、明らかに論理的に自明な主張ですよね?
 つまりトートロジーなわけですが、それにもかかわらず、この「学説」に「反対」する生物学者はいるんですね、これが。
 ましてや経済学のように、あまり科学の心得の無い人たちが議論に参加している世界では、「MMTは間違ってる!」などと平気で主張する人が、日本だけでなく米国にもいます。
 ただ、このMMT理論(私は「理論」と呼ぶのもおこがましいと思いますが)のことを Wiki↓
https://ja.wikipedia.org/wiki/Modern_Monetary_Theory
のように、簡単な概念をわざわざ複雑怪奇に説明するよ うなことをしていると、シロウトというのは「自分の専門外の学問分野の概念を基礎知識なしで理解できるわけがないんだから、MMTが正しいのかどうか自分 では判断できない」と思い込んでしまって、suyapさんがリンクしたサイトのように、一見専門家風情の人が「いやぁ、あんな理論トンデモですよ」などと したり顔で決めつけると「やっぱりそうか。だって常識に反するもんな」などと納得してしまうのが世間というものでしょう。
 さて、このMMT理論、あるいは私がかねがね主張しているような、「税金は国家の収入なんかじゃない。インフレを防ぐために自ら発行した通貨を回収してるだけだ」という「事実」について、小学生にもわかるように解説しているサイトを見つけましたので、ご参考のためにどうぞ↓

MMT(現代金融理論)のエッセンス! ウオーレン・モズラー
               「命取りに無邪気な嘘 1/7」
http://econdays.net/?p=9414

P.S. 上記のサイトは嘘1~嘘5までありますが、私が力説しているある重要な事項について触れていないので、そこだけは注意が必要です。この欠点が顕在化してい るのが「嘘5」です。この件に関しては、今の連載が終わったら、MMTに関する連載をやりたいと思っているので、そのとき詳しく解説します。


【追記 3.16】

《日本のMMT反対者は2重の意味でアホである》

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204:mespesado:
2019/03/15 (Fri) 22:31:23

>>201

 米国のMMT批判者たち↓
 まずはガンドラック氏:
現代金融理論MMTは「完全なナンセンス」-ガンドラック氏
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-13/POA9WH6K50XT01

 次いでスコット・サムナー氏
経済学における話題の新しいアイディアが実際には悪いアイディアである理由
https://himaginary.hatenablog.com/entry/20181020/Sumner_on_MMT

 前者は「ドルを刷るとドルが暴落する可能性がある」と主張し、後者は「ドルを刷るとハイパーインフレになる可能性がある」と言って、いずれもMMTそのものを批判している(つもりでいる)。
 しかし、これらの批判内容が仮に正しかったとしても、そのことがMMTが誤りであることを意味するわけではない。なぜなら、MMTでは「オカネをいくら刷っても自国に通貨発行権がある限り、デフォルト(すなわち債務が払えなくなる)ということはない」と主張しているだけであって、「インフレが起きたり他の通貨と比べて通貨安になることはない」などと主張しているわけではないからだ。
 で、問題は、なぜ彼らがやれハイパーインフレが起きるだのドルが暴落するだのと騒いで躍起になってMMTを批判するのか。
 そりゃ、答えはハッキリしていて、少しのインフレや少しのドル安でも彼らのような莫大な資産を持つ金持ちにとっては資産価値が目減りしたり輸入物価が上がって海外からの買い物で損をするから。だから、その「ほんの少し」のインフレや「ほんの少しの」通貨安すらを防ぐために、やれ「ハイパー」とか「暴落」とか、その度合いを誇張して、資産を持たない一般庶民にも不利益があるかのように煽って多数の国民を味方に付けようとしているわけだ。
 ところで、今「少しのインフレ」や「少しの通貨安」と書いたが、「少し」とは言えどもインフレや通貨安が生じる可能性があるというのは、こと米ドルに対しては事実で、なぜかというと、これは米国の(品質を含んだ)生産力が日本ほど十分でないから。つまり、彼らの主張は「インフレや通貨安の程度を誇張していること」と「それがMMT批判になっているかのように偽っていること」を除けばある程度正しいことを主張していると言ってもいい。
 ところが、今市某のような日本人によるMMT批判は2重の意味でバカげている。
 なぜなら、日本では生産能力が著しく過剰なため、米ドルの場合と違って、少しのインフレも少しの円安も生じない。事実、あれだけ金融緩和で円を刷ってるのに、少しの気配もないではないか。つまり、日本人のMMT批判者は、「事実を誇張する米国人による評論」を、単にそのまま(ドルと円の違いを無視して)結果だけ「受け売り」してMMTを批判しているだけに過ぎない、という意味で「自分の頭で考えてない」という点が一つ。
 そしてもう一つは、「いくら円を刷っても少しのインフレにも通貨安にもならない」のだから、日本の金持ちは自分の資産が目減りするわけではないし、輸入物価も上がらないから米国の場合と違って何も損することはない。つまりオカネをいくら刷っても「利己的な意味」でも少しも困らないわけである。つまりここでも「自分の頭で考えてない」わけだ。
 というわけで日本のMMT反対者は2重の意味でアホである、ということになりますわな(まあ、アメリカ人の金持ちから袖の下を貰ってMMT批判の言論活動をしている、という可能性もあって、こっちが正解かもね)。


【追記 3.27】
268:mespesado:
2019/03/26 (Tue) 21:45:40

>>266
 リンク先の記事↓
https://toyokeizai.net/articles/-/271977
アメリカで大論争の「現代貨幣理論」とは何か
「オカシオコルテス」がMMTを激オシする理由

 MMTに関する説明で英語記事の翻訳でない日本人による解説で、まともなものを初めて見たような気がします。
 前にも言ったように、MMTの骨格部分は「(統合)政府に通貨発行権がある通貨はいくらオカネを刷ってもデフォルトしない」ということですが、これって「不換紙幣」の定義そのものだから、理論でも何でもなくて、単なるトートロジーですよね。
 なのに、何で今まで日本でここまではっきり明確に解説する人が現れなかったか、という理由を考えるに、この記事の筆者である中野剛志氏「経済産業省の現役官僚」だ、というところにヒントが隠れていると思う。
  つまり、日本で表立って活動する経済学者もエコノミストもみんな財務省の息がかかっていて、財務省の推進する緊縮財政にとって都合の悪い事実を暴露するこ とができない。例えばいつも散々財務省に(表向き)批判的な記事を書き続けている高橋洋一氏ですら、出身母体である財務省に忖度して、MMTを完全否定こ そしていないが、「必要が無い」という言い方で同理論に人々の注意がいかないように誘導しようとしているし…↓
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/190323/soc1903230004-n1.html
米財政赤字容認する「MMT」は数量的でなく“思想優先”の極論日本財政は標準理論で説明可能
 ところが、今の安倍政権が財務省に対抗するために味方に付けているのが経産省であることからもわかるように、経産省だけは、数ある省庁の中でも財務省に「抵抗する」気骨が残っている。だから経産省の中の人である中野さんも、安心して真実を暴露できるんだ、と思う。

269:mespesado:
2019/03/26 (Tue) 23:00:14

>>268
 ちなみに、今回の中野剛志氏の記事でも、以前 >>195 で紹介したMMT解説のオススメ記事:
MMT(現代金融理論)のエッセンス! ウオーレン・モズラー「命取りに無邪気な嘘 1/7」
http://econdays.net/?p=9414
で もそうですが、これらの解説するMMTには、>>268 で指摘した骨格となる部分(=不換紙幣の定義そのもの)の他に、「貨幣負債論」と「租税貨幣論」がセットになって解説されており、いずれの記事においても これら2つの理論(この二つはトートロジーではなくて、確かに「理論」というか、単なる「仮説」です)がMMTにもれなく付いてきていますが、これらは MMTにとって本来どうでもいい話です。なのに何でいつもMMTの解説に引っ付けてくるかというと、MMTは「現代貨幣理論」と呼んでいるように、不換紙 幣がどういう性質を持つかというだけでなく、そもそも「不換紙幣は何で貨幣として機能するか」という理由も説明しなきゃいけないと思ってるからだと思うん ですね。
 でも私の目から見ると、これらの「貨幣負債論」も「租税貨幣論」も学者が頭の中で無理くり考えた机上の空論であって、本質とズレまくってると思うんですよ。これ、いいネタだから、今度「新しい金融理論」の連載で取り上げて解説しようと思っています。


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めい

mesさんの「日本のMMT反対者は2重の意味でアホである」論、追記しました。
by めい (2019-03-16 05:02) 

めい

副島隆彦重掲板。http://www.snsi.jp/bbs/page/1/
《(1)アメリカの左翼経済学者(ケインズ左派の伝統を正しく、復活させている)と、(2) トランプたち「このまま、金融緩和で突っ込め。引き締めなんかするな」が、やろうとしている方向は、同じだ。大きくは、なんの変わりもない。・・・主張と結論は、一致している。それが、今の、米、欧、日の3大先進国地域の現状、現実だ。》 
このアメリカの動きの中で、「MMT理論」をめぐる論議も活発化しているという。以下、紹介されている報道記事。

   *   *   *   *   *

〇 ブラックロックCEO、現代金融理論を支持せず-「くず」と一蹴
BlackRock CEO Fink Says Modern Monetary Theory Is ‘Garbage’  

2019年3/8(金)  ブルームバーグ)

米資産運用会社ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)は「現代金融理論(MMT)」を支持しない考えを示した。

フィンク氏は7日、ブルームバーグテレビジョンのインタビューで、MMTは「くず」だと一蹴。「財政赤字は非常に重要な問題だと私は確信している。財政赤字は金利をずっと高く、持続不可能な水準に押し上げる可能性があると私は強く信じている」と述べた。

MMTを支持するエコノミストらは、米国は借り入れが自国通貨建てであることから、紙幣を印刷して借金を賄うことができ、破綻はあり得ないと主張する。アレクサンドリア・オカシオコルテス氏ら当選1期目の民主党議員らが、グリーン・ニューディールや国民皆保険など社会政策の原資の1つとして支持に回っている。

米議会予算局(CBO)によると、米財政赤字は数年以内に1兆ドルを突破するとみられている。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は先週、MMTを「誤り」だと指摘。サマーズ元財務長官やノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏も批判している。

一方で否定的に見ていない人がいることも事実だ。パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)の元チーフエコノミスト、ポール・マカリー氏は、自身は「正真正銘のMMT支持者ではない」ものの、強い共感を覚えると述べている。

フィンク氏は、「MMTは財政赤字が害をもたらし多過ぎると分かるまで、借り入れを続けられるという理論だ。親である私からすれば、子どもの素行が悪くてもずっとただそれを見ているだけで、手が付けられなくなるまで放っておくことと同じだ。良いアプローチではないと思う」と述べた。

〇 アングル:「財政赤字は悪くない」、大統領選にらみ米国で経済学論争

2019年3月6日  ワシントン、ロイター  -

 3月6日、ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏とローレンス・サマーズ元米財務長官は過去3週間、ツイッターやテレビ、新聞のコラム欄を活用して、ニューヨーク州立大学のステファニー・ケルトン教授(写真)に反論を重ねてきた。提供写真(2019年 ロイター) Howard Schneider

[ワシントン 3月6日 ロイター] - ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏とローレンス・サマーズ元米財務長官は過去3週間、ツイッターやテレビ、新聞のコラム欄を活用して、ニューヨーク州立大学のステファニー・ケルトン教授に反論を重ねてきた。

 ケルトン教授は、政府予算や財政赤字は完全雇用やインフレを実現するために積極利用すべしという「現代金融理論(MMT)」の強固な提唱者で、2016年の前回大統領選ではバーニー・サンダース上院議員の顧問を務めた。

 ケルトン氏の主張に対し、クルーグマン氏は「支離滅裂」と一蹴し、サマーズ氏はワシントン・ポストのコラムで新たな「ブードゥー経済学(魔術のようで理論的に怪しいとの意味)だ」と批判した。

 サマーズ氏はCNBCテレビで「全ての米国人が支持するはずの考えを1つ挙げるなら、それは算術の法則だ」とも発言。これに対してケルトン氏は5日、ツイッターに「この論争では負ける気がしない」と投稿するなど事態は白熱化している。

 一連のやり取りは単にソーシャルメディア(SNS)上での余興やゲームだとやり過ごすこともできる。だがこれは野党・民主党内で大統領選候補の指名をにらんで強まってきている基本的な議論を反映している面もあり、その点を軽視することはできない。

 具体的には左派を中心に提唱されている国民皆医療保険や温暖化対策の1つである「グリーン・ニューディール」の財源を、どうやって確保するかという問題だ。いずれも大統領選に向けた候補指名争いの主要な論点として浮上。早くもトランプ大統領からは民主党は「社会主義」を受け入れている証拠だと攻撃を浴びている。

 米国政府が抱える債務は22兆ドルに膨らみ、義務的経費や利払いなどで慢性的な財政赤字が生まれている状況を踏まえ、あらゆる政治グループに属する経済学者と米連邦準備理事会(FRB)の専門家は、財政は既に持続不可能な経路をたどっているので、この先は慎重な運営が求められると警鐘を鳴らす。

 こうした中で、ケルトン氏の理論を用いれば、米国の債務や財政赤字の活用法、またFRBの果たす役割に関する見方はがらりと変わってくる。つまり民主党の大統領候補指名レースに参加している人々が論じているような政策の実現を後押ししてくれる。

 これほどの発想転換は、平時なら思いもよらないだろう。しかし2007-09年の金融危機から10年が経過し、サマーズ氏や国際通貨基金(IMF)の元チーフエコノミスト、オリビエ・ブランチャード氏らいわゆる主流派の経済学者ですら、政府の財政政策運営について再考を迫られている。

 なぜならFRBによる大規模な債券買い入れや大型減税を実施しているのに物価や金利が跳ね上がらない局面では、もっと借金をして生産的な公共事業に投資しても安心だろう、という意見が一般的になってきたからだ。

 オバマ前政権で大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を務めたジェーソン・ファーマン氏は5日、前政権は野心的な公共事業を策定したものの、それでも政府債務の対国内総生産(GDP)比を一定に保つか、下げるのが得策だと考えていた。ところが今では多くの人から、なぜ対GDP比を低くしなければならないか質問を受け、比率を抑えるべきだという経済的な確信が揺らいできたという。

結局のところ、ファーマン氏もブランチャード氏も、コストに見合うメリットがあるプロジェクトへの支出を米国は敬遠すべきでないという見解を持つようになっている。特にブランチャード氏は、地球環境を救うために債務が膨らませるのは「名案だ」と話す。当然支出に限度はあるが、債務の利払い費用の伸びを経済成長ペースが上回る限り、借金を継続できそうだ。

 ケルトン氏に至っては、政府ができるし、やるべきだと考える範囲はもっと広く、債券市場や外国為替市場が許さないことを地球を救う支出を抑制する理由に挙げるのは、かなり筋が悪いと主張する。同氏は大統領選出馬を決めたどの人物ともまだ連携していないが、求職者全てに政府が仕事を保証するなどの一部のアイデアは、カマラ・ハリス上院議員(カリフォルニア州選出)などと共通している。

 またケルトン氏は、米国の通貨発行権を完全雇用や温暖化対策の財源確保などの実現に活用すべきだと論じている、ただパウエルFRB議長は先週の下院証言でこうした考えを全否定し、サマーズ氏らは他国で物価高騰や通貨危機を招くといった副作用があったと指摘した。

 とはいえMMTは批判的な立場の人々が積極的に反論せざるを得ないほど波紋を広げているのは間違いない。

 オバマ前政権のCEAスタッフだったベッツィ・スティーブンソン氏はツイッターでMMTについて「右も左もない。普通の人々が興奮が冷めた時点で代償を支払うような魔法の考えだけが存在している」と投稿した。

〇 「現代金融理論」、にわかに脚光-米財政赤字拡大や「AOC」効果で

MMT Bursts From Obscurity Helped by Trump Deficits, ‘AOC

2019年3/13(水)  ブルームバーグ

過去30年ほどを振り返ると、「現代金融理論(MMT)」について無名のブロガーがあしざまに言うことはしばしばあった。だが、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長やブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)といった人物が話題にすることはなかった。

MMTを発展させた経済学者は学会でもインターネット上でもおおむね非主流派として活動してきた。しかし今や、彼らの考えはにわかに脚光を浴びている。ウォール街の大物や政策当局の重鎮がMMTについて意見することのない日はほぼ皆無で、否定的な見解が示されるのが通常だが、支持が寄せられるケースもある。

何年も無視されてきたMMTが、なぜ今になって突如、米国の経済論議の焦点となったかを巡っては当然、疑問が生じる。次に幾つか考えられる答えを挙げてみる。

すでに赤字
 MMTの論旨は、自国通貨を持つ政府の支出余地は一般的に想定されるよりも大きく、全てを税金で賄う必要はないというものだ。この見解によれば、米国はいかなる債務返済に必要な貨幣も創出できるため、デフォルト(債務不履行)に追い込まれるリスクはゼロということになる。

 米国はすでに過去10年間にわたり公的債務を積み上げていることから、こうした主張にあまり異論はないかもしれない。公的債務は当初、グレートリセッションへの極めて正攻法的な取り組みとして、金融危機対応の中で急増した。ところが現在では、すでに拡大局面にある景気をさらに加速させるために財政刺激策が講じられ、その規模は1960年代以来の大きさだ。

 このため、MMTの提唱者はこの理論について、いつの日にか採用されるかもしれない政策パッケージと見なすべきではないと指摘する。むしろ、どのような手段が政府に利用可能かを理解するための枠組みのようなものだとされる。しかも、それらの手段の一部はすでに活用されている。

市場は気にせず
 「財政赤字は金利をずっと高く押し上げるだろう」。こう主張するブラックロックのフィンクCEOはMMTを「くず」と一蹴した。

 市場の地合いは急変する可能性があるが、投資家は今のところ財政赤字の規模を不安視していない。米国の財政赤字はすでに国内総生産(GDP)比4%を上回っている。それでも米政府が実施する国債入札で、30年債の落札利回りは3%程度にとどまっている。赤字の危険性を巡る警告には事欠かないものの、市場はそれに同調する様子がない。

低インフレ
 米国の失業率は過去最低水準にあり、本来なら物価高をもたらしているはずだが、現実はそうなっていない。
 この結果、25年前には自明と受け止められていた考えにエコノミストらは自信を失いつつある。そうした中で、他の先進国に比べ米国で一段と極端な所得格差の拡大や、国民皆保険というセーフティーネットの欠如といった21世紀型の懸案に対処することに重点を置く枠組みが新たに求められるようになった。

トランプ効果
 政治的には、MMTの提唱者は左派寄りの傾向があるが、右派・左派いずれの政権でも自分たちの理論を応用することは可能だと主張する。そして、トランプ大統領が財政政策のアプローチで法人減税や国防費拡大などの経済目標にまず優先的に取り組み、財政収支の影響への心配は二の次としている様子に、MMTの提唱者がひそかに称賛を表すこともときどきある。
 
 ホワイトハウスのクドロー国家経済会議(NEC)委員長は10日、「優れた成長政策においては、必ずしも財政赤字を気にする必要はないと思う」と話した。

AOC効果
 米国の政治にMMTを持ち込んだのはバーニー・サンダース上院議員だ。しかし、サンダース議員がMMTをはっきりと支持したことはない。

 支持を明確にしたのはサンダース議員の選挙運動に参加したこともあるニューヨーク州選出の新人議員で、AOCの頭文字で知られるアレクサンドリア・オカシオコルテス氏だ。オカシオコルテス氏はMMTについて、「会話でもっと盛り上げる」べきだとし、議会がその「財政権」を動員するよう呼び掛けている。経済・政治課題についてのアイデア表明の場である同氏のソーシャルメディアは何百万人ものフォロワーを誇る。

日本も大幅赤字
 MMTの措置を本格的に活用したとほぼ言える国は日本だろう。日本では20年前に金利がゼロに達し、日本銀行が一部ファイナンスしている公的債務残高はGDPの約2.5倍の規模にある。赤字続きでもインフレ高進はなく、債券市場からの資金逃避の動きもない。

主流派も動く
 米国トップの大学の著名エコノミストは一斉にMMTを批判している。ハーバード大学教授で元財務長官のラリー・サマーズ氏は「重層的な誤り」があると論評。

 ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏や国際通貨基金(IMF)のチーフエコノミストを務めたオリビエ・ブランシャール氏もMMT攻撃に加わった。と同時にこうした著名人らから、公的債務懸念は行き過ぎだとして赤字拡大の支出に好意的な姿勢が見られるのも最近は多くなってきた。
by めい (2019-03-22 06:20) 

めい

mesさんの《経産省だけは、数ある省庁の中でも財務省に「抵抗する」気骨が残っている》《「貨幣負債論」も「租税貨幣論」も学者が頭の中で無理くり考えた机上の空論》(3/26)を追記しました。(3/27)
by めい (2019-03-27 06:15) 

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