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mespesadoさんによる1億人のための経済談義(51)「日本衰退論」(6) 中央銀行の本能 [mespesadoさんによる1億人のための経済講]

なんとなく刷り込まれている「日本衰退」感覚。ほんとうにそうなのか。mesさんによる解明の結論は、ひとつには「国内消費の落ち込みの結果」であり、もうひとつは「グローバル化がなかなか進まない」ことへの評価。後者は「日本らしさ」がまだ大丈夫の証しだから問題ない。前者は潜在的な需要はあるのにオカネが無くて二の足を踏んでいる事業や古くなったインフラの改修にジャンジャン オカネを刷って渡せばよく、またそうするしか解決の方法は無い》。ところがそれをさせないのが、本来的に「インフレ防止」のために在る日本銀行。そのための財政法の縛りの中の財務省。mesさんの講義、以上の仕組みが見事に理解できました。こうして問題が明らかになれば、明るい未来が見えてきます。イハトビラキ。

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822:mespesado:2019/01/27 (Sun) 17:12:55
>>821
 最後の(第3回):
IMD「世界競争力年鑑」からみる日本の競争力(第3回)
日本の競争力向上に向けて
https://www.mri.co.jp/opinion/column/trend/trend_20180919.html
では、統計分析の一手法である「クラスター分析」によって、世界の国々をその強みと弱みが類似したいくつかのクラスターに分類しています。
 その結果によると、世界の国々は全部で7つのクラスターに分かれ、そのうち先進国は3つのクラスター(A、B,C)に分類できるようです。
 そして、日本は米国、ドイツ、中国、韓国と同じクラスターAに分類され、北欧諸国(オランダ、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、スイス等)や豪州や 東南アジアの新興勢力(香港、シンガポール、台湾)はクラスターBに、そしてフランス、イタリア、スペイン、ベルギー、ポルトガルなどのラテン系西欧諸国 やオーストリア、フィンランドやチェコ、ポーランドなどの東欧諸国がクラスターCに分類されるようです(「表1」参照)。

表1 競争力順位の構成に基づくクラスター分類

A B C D E F G
日本 カナダ フランス マレーシア インド ブルガリア ロシア
米国 英国 ベルギー タイ インドネシア ハンガリー ウクライナ
ドイツ オランダ イタリア UAE フィリピン クロアチア ルーマニア
中国 デンマーク スペイン カタール カザフスタン スロバキア モンゴル
韓国 スウェーデン ポルトガル   トルコ スロベニア メキシコ
  ノルウェー オーストリア チリ キプロス ブラジル
スイス フィンランド   ギリシャ コロンビア
ルクセンブルク チェコ サウジアラビア ベネズエラ
アイスランド エストニア   ペルー
アイルランド ラトビア ヨルダン
香港 リトアニア 南アフリカ
シンガポール ポーランド  
台湾  
オーストラリア
ニュージーランド
イスラエル

出所:IMD, “World Competitiveness Yeabook2018”より三菱総合研究所作成

図1 主要国の競争力構成の比較

①クラスターA

図1 主要国の競争力構成の比較 図1 主要国の競争力構成の比較

②クラスターB

図1 主要国の競争力構成の比較 図1 主要国の競争力構成の比較

③クラスターC

図1 主要国の競争力構成の比較

出所:IMD, “World Competitiveness Yearbook” 各年版より三菱総合研究所作成

 そして、クラスターAの特徴は「科学インフラ」や「技術インフラ」に相対的な強みがあり、それらを補完する要素、特に「ビジネス効率性」分野の指標の強さで順位が決まっているようです。
 次にクラスターBの特徴は「政府効率性」「ビジネス効率性」「インフラ」が満遍なく強いことが特徴であり、クラスターCは、特に「ビジネス効率性」を構成する項目や「雇用」、「租税政策」などが極端に弱いということです。
 これらを一言で言うと、日本を含むクラスターAの諸国は生産力のベースとなる技術開発能力が優れているが、「ビジネス効率性」(というか、これは“表向き”の表現であって、実は「グローバル化」)が進んでいる国ほど
順 位が高くなっているということを示しており、クラスターBの諸国は、まさにこの「グローバル化」が武器となって経済発展している諸国である(だから小国が 多い)、そしてクラスターCの諸国はヨーロッパ人(白人)として他の先進欧米諸国と共通の価値観を持つが、生産力の観点で実力が伴っていない国々、と総括 することができると思います。
 さて、以上、一例ではありますが、「国家の競争力」という観点で日本の現状を見てきました。
  ともすると、我々は、「先進国の中でただ一人成長率が止まってしまった、これは技術力などで中国や韓国に脅かされているからだ」と思い込み、今後技術力で どう対抗していったらいいのか、という方向に目が向きがちですが、そしてそのことはアンケート項目には色濃く反映しているのですが、現実には「国内の消費 の落ち込み」と「グローバル化の進展度合い」こそが日本の衰退問題の要であるということが客観的な統計分析の結果として明らかになったと思います。それと アンケート調査の結果ではありますが、「インフラ」の中でも「高等教育達成度」は評価されているものの、「大学教育」の評価が低いのも気になるところで す。
  さて、これらのうち、「国内の消費の落ち込み」については原因ははっきりしていて、既に何度も繰り返し説明してきたことですが、生活必需家電などの大型耐 久消費財が全家庭に行き渡り、企業は増産しても売れないので設備投資が鈍化して高度成長が終焉し、替わりの投資先であった不動産もバブルの崩壊を通じて値 上がり信仰が崩壊して投資先も無くなり、企業も収益を上げるには賃金でコストカットするよりなく、更に派遣制度の拡充やタテマエ上の留学生による外国人労 働者の活用などで追い打ちをかけるように賃金は抑制され、企業も家計も将来が不安だから貯蓄に走り、市場で要求されるマネーサプライと現実のオカネの流通 量に著しいギャップが生じてデフレが定着してしまったのが原因ですから、この「経済史上最大のデフレ」を克服するためには、せっかく「円」が管理通貨制度 であることを最大限利用してオカネを刷りまくり、潜在的な需要はあるのにオカネが無くて二の足を踏んでいる事業古くなったインフラの改修にジャンジャン オカネを刷って渡せばよく、またそうするしか解決の方法は無いといっても過言ではありません。
  とは言っても、そもそも貨幣経済の歴史の大半は「インフレをいかに克服するか」が最大の課題でした。なせなら、産業革命以前は言うまでもないですが、産業 革命は、生産性を向上させた効果よりも「大量生産という方法で今まで高根の花だと諦めていたものが手に入るんだ!」と人間の欲望に火をつけた効果の方が大 きく、産業革命後もしばらくはこの肥大化した人間の欲望に少しでも追いつこうと、工員がベルトコンベアーに張り付いて流れ作業で必死でモノを作っていまし た。ですからすべての人が欲しいものを手に入れられる時代が来るなどということは非現実的、全くあり得ないことでした。
 つまり、オカネというモノが登場して以来、需要に供給が追い付かないインフレの時代がずっと続いてきたのです。
  もちろん、過去何度も供給過多が生じた時代はありました。しかしそれは特定の商品に対する一過性のモノであることがほとんどで、いつでも時間と共に解消し ていきました。それほどに人間の消費欲というものは限りの無いものだったのです。これに対してインフレの方は、戦争や天変地異などの一大イベントが生じる と、生産施設の壊滅でたちまち極端な供給不足に陥り、大規模なハイパーインフレを引き起こすことが何度もありました。
 こういったわけで、いつの世でもどこの国でも「いかにすればインフレを克服できるか」が至上命題であり、そのために国家の仕組みというのは「インフレを阻止するための仕組み」が何重にも張り巡らされています。
 その最大のものは、「中央銀行の存在」です。
  中央銀行、すなわち日本では日銀ですが、この中央銀行の最大の目的は、「お札を刷る」ことです。造幣局が財務省にあるのですから政府が自らお札を刷ればよ いものを、なぜ中央銀行に刷らせるのか。それは政府がオカネを刷ってよいことにすると、選挙でいい顔をするために政治家はオカネをバラ撒きたくてしようが ないのでとにかくオカネを刷ろうとしますし、特に戦争の時は戦費が必要なのでどうしてもオカネを刷り過ぎて(製造業の供給限界も相まって)たちまちハイ パーインフレになりますから、これを防ぐためにオカネを刷る権限を政府から独立させたわけです。こういう設立趣旨ですから、現在でも日銀プロパーの総裁 は、金融緩和のような、オカネを増やすことには慎重になりがちです。
 次の仕組みは財政法第4条と第5条の縛りです。
  いくらオカネを刷る権限を政府から取り上げたとは言え、国には国債を発行する権限がありますから、どうしてもオカネが足りなければ国債を発行するという形 で市場から「借金」をしてその場を凌ごうとします。ところが戦後、GHQの要請もあったのでしょうが、政府は戦争を引き起こさないための抑止効果を狙って 安易に公債を発行できないような縛りを設けたのです。これが次の財政法第4条です:
--------------------------------------------------------------------
(財政法)第4条
 
 1.国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなけれ
  ばならない。但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、
  国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすこと
  ができる。
 2.前項但書の規定により公債を発行し又は借入金をなす場合においては、
  その償還の計画を国会に提出しなければならない。
 3.第1項に規定する公共事業費の範囲については、毎会計年度、国会の
  議決を経なければならない。
--------------------------------------------------------------------
  つまり「公債又は借入金以外の歳入」って、要するに政府自ら発行する硬貨の「通貨発行益」を除けば「税収」しかないわけで、「税収の範囲で予算を組む」と いう伝統は、この財政法第4条に基づくわけです。ただ、高度成長が曲がり角を迎え、信用創造だけでは経済の拡大に必要なマネーサプライが確保できなくなっ たとき、どうしても借金する必要が生じ、1966年からは遂に但し書き条項を適用して、まず「建設国債」を発行し(支出した分は資産評価できるからいい、 という理屈)、それでも賄いきれなくなって、1975年からは「赤字国債」を発行し始めます。
  ところで国債を発行していいとなれば、発行した国債を直ちに日銀が引き受ければ、政府はその「購入代金」として日本銀行券を手に入れることができ、このオ カネを使えば、あたかも政府が政府紙幣を発行したのと同じことになり、中央銀行を作って通貨発行権限を政府から切り離した意味がなくなります。そこで、財 政法ではそういう場合を先回りして禁じています:
--------------------------------------------------------------------
(財政法)第5条

  すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、
 借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。
  但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲
 内では、この限りでない。
--------------------------------------------------------------------
  さて、かように法律でがんじがらめにインフレ防止の手を打っているだけでなく、日銀の設置目的や財務省の設置目的でもインフレを防ぐ方向に頑張るように仕 組まれています。即ち日銀は金融緩和に対して消極的な態度を取り、予算の策定と徴税の権限を持つ財務省は、各省庁が要求してきた予算額を極力絞るように努 め、税金については新しい税を導入したり税率を上げるのが財務官僚の手柄となるように「仕向けられて」いて、これらの「努力」はすべて、インフレを阻止する方向に働きます。
  以上、何重にも張り巡らされた「インフレを防ぐためのバリケード」の存在と、そのバリケードそれ自体を「どんな経済環境の下でも絶対的に正しい」と自らを 洗脳してきた関係者のせいで、今までの経済史上に存在しなかった規模の、今日の日本のデフレを克服するのは絶望的に困難な状態に陥っているのです。   (続く)

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