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mespesadoさんによる1億人のための経済談義(50)「日本衰退論」(5) 日本人よもっと自信を持て! [mespesadoさんによる1億人のための経済講]

821:mespesado:2019/01/27 (Sun) 11:49:55
>>784
 またまた間が空いてしまいましたが、「日本衰退論」の続きです。
 一番最初に参照した↓

7つのデータで検証! 日本の衰退がひどすぎる件と衰退の原因
https://www.shameless1.com/entry/2018/09/22/7%E3%81%A4%E3%81%AE%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%81%A7%E6%A4%9C%E8%A8%BC_%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E8%A1%B0%E9%80%80%E3%81%8C%E3%81%B2%E3%81%A9%E3%81%99%E3%81%8E%E3%81%A6%E6%82%B2%E3%81%97%E3%81%8F

では、GDP以外でも、企業の生産力を「企業の研究開発力」「企業のブランド力」「大学の研究開発力」という観点から各種のランキングを参照して日本の順位が下がっていることを論じています
 しかし、これらは業界の経営者に対するアンケート結果の集計であったり、調査の中身について書かれていなかったりするので、それらがどのような客観的データに基づく調査なのかがわからず、これでは評価のしようがありません。
 そこで、ここで挙げられているランキングそのものではないですが、IMD(International Institute for anagement Development)というところが作成している「世界競争力年鑑(World Competitiveness Yearbook)」というランク付けについてやや詳しく解説している三菱総合研究所のサイトがあったので、そちらを見てみることにしましょう:

IMD「世界競争力年鑑」からみる日本の競争力(第1回)
IMD「世界競争力年鑑」とは何か?
https://www.mri.co.jp/opinion/column/trend/trend_20180802.html

IMD「世界競争力年鑑」からみる日本の競争力(第2回)
日本の競争力の弱点はどこにあるか?分野別に見た日本の競争力
https://www.mri.co.jp/opinion/column/trend/trend_20180911.html

IMD「世界競争力年鑑」からみる日本の競争力(第3回)
日本の競争力向上に向けて
https://www.mri.co.jp/opinion/column/trend/trend_20180919.html

  これによると、IMD「世界競争力年鑑」というのは「企業が競争力を発揮できる土壌を競争力の源泉とみなし、多様な側面から国の競争力を評価している」の だそうで、日本のバブル期の終盤である1989年から公表されおり、日本の総合順位は公表開始時からバブル期終焉後の1992年まで1位を維持し、 1996年までは5位以内の高い順位で推移したが、拓銀の破綻や山一證券の廃業が相次いだ1997年には17位に急落し、その後は20位台で推移してい る、とのことです。

図1 IMD「世界競争力年鑑」日本の総合順位の推移

図1 IMD「世界競争力年鑑」日本の総合順位の推移

出所:IMD World Competitiveness Yearbook 各年版より三菱総合研究所作成

 これはまあ、(第1回)の最初に掲げられている「図1」を見れば一目瞭然で、要するに1997年からガクッと順位が落ちているわけですね。この順位の低下は、まあ我々が思っているような日本の地盤沈下のイメージとも大変よく合っていると言えると思います。
 では早速、この「総合順位」とやらがどうやって計算されているのかについて追っていくことにしましょう。
 まず、その中身を具体的に見ていく前に、世界各国それぞれの順位の推移を比較した「図2」を見てみることにしましょう。

図2 主要国の競争力総合順位の変遷

図2 主要国の競争力総合順位の変遷

出所:IMD World Competitiveness Yearbook 各年版より三菱総合研究所作成


  なんと、米国が1位なのはともかくとして、シンガポールが米国と1,2位を争っています。また、よく日本で理想郷のように言われることの多いスウェーデン が上位にいます。確かに、スウェーデンは寒冷地で農業が困難であるため製造業に依存するウェイトが高く、かつて私が述べたような、生産力の強さの指標とな る「全要素生産性(TFP)が成長率に占める割合」がスウェーデンも高いです↓

日本がスウェーデンから学ぶこと
https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/research/r100901point.pdf
 しかしながら、先進国だけの比較でなく、ランキング上位に登場する国名を(第1回)リンク先における次の「表1」で見ると、

表1 IMD「世界競争力年鑑」2018年 総合順位

順位 国名 順位 国名 順位 国名
1 米国 22 マレーシア 43 インドネシア
2 香港 23 ニュージーランド 44 インド
3 シンガポール 24 アイスランド 45 ロシア
4 オランダ 25 日本 46 トルコ
5 スイス 26 ベルギー 47 ハンガリー
6 デンマーク 27 韓国 48 ブルガリア
7 UAE 28 フランス 49 ルーマニア
8 ノルウェー 29 チェコ 50 フィリピン
9 スウェーデン 30 タイ 51 メキシコ
10 カナダ 31 エストニア 52 ヨルダン
11 ルクセンブルグ 32 リトアニア 53 南アフリカ
12 アイルランド 33 ポルトガル 54 ペルー
13 中国 34 ポーランド 55 スロバキア
14 カタール 35 チリ 56 アルゼンチン
15 ドイツ 36 スペイン 57 ギリシャ
16 フィンランド 37 スロベニア 58 コロンビア
17 台湾 38 カザフスタン 59 ウクライナ
18 オーストリア 39 サウジアラビア 60 ブラジル
19 オーストラリア 40 ラトビア 61 クロアチア
20 英国 41 キプロス 62 モンゴル
21 イスラエル 42 イタリア 63 ベネズエラ

出所:IMD World Competitiveness Yearbook 各年版より三菱総合研究所作成

日本より上位には欧州の小国や、アジアでも香港、シンガポール、中国、台湾、マレーシアが来ているので、このIMDという指標がどのように計算されているかは興味深いところです。
 そして、その中身は、「経済状況」「政府の効率性」「ビジネスの効率性」「インフラ」という4つの分野について、統計データ143指標、アンケートデータ115指標、背景データ82指標の計340指標による総合評価だそうです。
 ちなみにこの4分類それぞれにおける日本の順位は「経済状況」が15位、「政府の効率性」が41位、「ビジネスの効率性」が36位、「インフラ」が15位となっています。
  また、このIMD指標が「1人当たりのGDP」や「雇用者1人当たりのGDP」や「雇用者1人1時間当たりのGDP」と強い相関があるのを示したのが(第 2回)の「図1」です。ただし中国や東南アジア諸国などは、このGDP関連指標に比べると「過大評価」されていることも同時に示されています。

図1 IMD競争力総合順位(2018年)と各種生産性指標との相関

図1 IMD競争力総合順位(2018年)と各種生産性指標との相関 図1 IMD競争力総合順位(2018年)と各種生産性指標との相関 図1 IMD競争力総合順位(2018年)と各種生産性指標との相関

出所:OECD Main Economic Indicators, IMF World Economic Outlook, World Bank, IMD World Competitiveness Yearbook 2018より三菱総合研究所作成

  また、上に挙げた4分類ごとの順位の今世紀に入ってからの推移については「図2」のとおりで、「インフラ」はかなり上位にいるが、最近になって下がり始め ていることや、「経済環境」については長らく「総合順位」と同じ流れだったのが、最近2016年以降再び上昇し始めていること、これとは逆に「ビジネス効 率性」は最近になって下がり始め、残る「政府の効率性」についてはずっと低いままになっていることがわかります。

図2 IMD「世界競争力年鑑」の日本の順位変遷(総合順位と大分類項目)

図2 IMD「世界競争力年鑑」の日本の順位変遷(総合順位と大分類項目)

出所:IMD World Competitiveness Yearbook 各年版より三菱総合研究所作成

 次に、上の4分類を更に分割した小分類ごとに最近の2014~2018年までの順位の推移を見ていきます。

表1 IMD「世界競争力年鑑」における日本の大分類・小分類別競争力順位の推移

  2014 2015 2016 2017 2018
1. 経済状況 25 29 18 14 15
1.1 国内経済 4 17 15 10 11
1.2 貿易 51 43 36 32 41
1.3 国際投資 22 15 14 8 15
1.4 雇用 8 8 7 5 5
1.5 物価 55 59 54 57 55
2. 政府効率性 42 42 37 35 41
2.1 財政 58 61 59 61 61
2.2 租税政策 36 40 39 42 46
2.3 制度的枠組み 12 15 15 14 18
2.4 ビジネス法制 23 31 28 25 31
2.5 社会的枠組み 21 26 29 28 27
3. ビジネス効率性 19 25 29 35 36
3.1 生産性・効率性 24 43 42 48 41
3.2 労働市場 30 37 34 28 30
3.3 金融 9 12 15 19 17
3.4 経営プラクティス 16 23 27 45 45
3.5 取り組み・価値観 33 36 36 40 39
4. インフラ 7 13 11 14 15
4.1 基礎インフラ 25 29 30 40 42
4.2 技術インフラ 17 23 10 19 13
4.3 科学インフラ 2 2 2 2 5
4.4 健康・環境 13 15 15 12 7
4.5 教育 28 38 35 36 30

出所:IMD World Competitiveness Yearbook 各年版

  まずは「経済状況」ですが、やはりアベノミクスによる「金融緩和」の効果が出ていて、特に著しく順位を上げているのが「雇用」です。あと、本文で解説され ているように、「国際投資」が金融緩和で増大した資金による対外直接投資の拡大を反映して少し順位を上げている、ただし同小分類項目に属する対内直接投資 の低迷は持続している、というのですが、要するに、折角金融緩和でオカネを増やしているのに国内の消費が伸びないため国内の設備投資が伸びず、国内への投資先が無いから仕方なく海外に投資している、という実態が見えてきます。つまり真の原因は「国内消費が不調」で あることだと言えそうです。また、このジャンルでは「貿易」と「物価」の順位が異常に低いですが、「貿易」が低いままなのは、プラザ合意以降の生産拠点の 海外移転の影響でしょうし、「物価」が低いのは、相変わらずの緊縮財政により「デフレ」が克服できていないことが原因でしょう。
  次の、日本の順位を悪化させている元凶の「政府の効率性」ですが、中身を見ると、これは指標とすること自体がナンセンスだと思わせるような内容であること がわかります。というのは、「財政」とか「租税対策」とかが足を引っ張っているからです。「財政」には、言うまでもなく「財政赤字の対GDP比率」とかが 入っていますが、管理通貨制度なんですから、一般会計における歳入と歳出を引き算して、差額がプラス(黒字)かマイナス(赤字)かというのは財政の健全性 とは関係のない指標です。つまり通貨発行権を持つ国家財政を家計と同一視する人が多い中、この指標は明らかにミスリーディングです。そもそも今の日本はデ フレなんですから、国家財政は意図的に赤字にしないと経済が死んでしまいます。こんな指標を取り入れるくらいなら、経済規模に比べてマネーサプライが相応に確保されているかという指標の方がよほど大切で しょう。あと、このジャンルの指標で日本の順位が低いのは「高齢化社会の進展」を除けば「法人税率」「制度的枠組み」「ビジネス法制」「海外企業にとって の契約の開放度」「事業開始に伴う必要手続き数」「海外投資家から見た日本の投資先としての魅力」などですが、これ、いわゆる「グローバル化」の指標でも ありますよね。つまり相当数の指標が「グローバル企業が活躍するのに政府が邪魔をしていないか」という視点で定められているのですから、DS(ディープスティツ)の利害によるグローバリズム翼賛のイデオロギーを強く感じるところでもあります。この観点からすると、「財政赤字」が指標に入っているのも、DSの手下どもが知っててわざと入れているのかな、とも勘ぐってしまいます。
  次に政府の効率性に次いで順位の低い「ビジネスの効率性」ですが、このジャンルはすべてアンケート項目なんだそうです。そして、高評価なのは、「消費者満 足の追求」「従業員訓練の充実」「ビジネスリーダーの社会的責任感の強さ」「労使関係」などで、逆に低評価なのは「経営プラクティス」の構成要素で、「迅 速な意思決定」「機会と脅威への対応」「起業家精神」「ビッグデータの活用」などだそうです。まあ、世間で言われているとおりのことで、よく言われる「日 本は現場の職員が優秀でトップに行けば行くほどバカになる」を地で行くようなアンケート結果です。しかし、だからこそ逆にこういったステレオタイプが先入観になったアンケート結果であるのかもしれず、客観的な指標としてはあまり参考にならないような気もします。
 さて、最後は総合評価では低い日本の順位を引き上げてくれている「インフラ」です。これは意外なことに今でも「科学インフラ」がトップクラス、次いで「健康・環境」、「技術インフラ」が高評価となっています。これを
もっと詳細に見ると、「環境関連技術」や「特許数」が1位で研究開発関連は世界でもトップクラスのようです。ちなみに「高等教育達成度」も高順位です。何か、一番最初に挙げたリンク先の主張である「日本の企業の研究開発力はもうダメ」論に反するような結果です。
 ただ、これらの高順位に対して「語学能力」「マネジメント教育」「大学教育」の評価が極端に低いらしいですが、これらの順位が低い項目はすべてアンケート項目なんだそうです!
 なんか、「ビジネスの効率性」でもそうですが、日本人って客観的な指標による評価は高いにもかかわらず、必要以上に「自虐的」で自分を低く評価する傾向にあると言えそうで、日本人よもっと自信を持て!と思わず叫びたくなりますね。
 長くなってきたので一旦ここで切ります。                 (続く)

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