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mespesadoさんによる1億人のための経済談義(42)問題は「全要素生産性の伸び方」の如何 [mespesadoさんによる1億人のための経済講]

日本の「供給余剰能力」を見るには「全要素生産性」を見るのが一番その本質を捉えている。ただし、その数値そのもののトレンドを追うだけではその特徴を十分把握しているとは いえず、潜在成長率鈍化の中で、その「全要素生産性」の増加が占めるウェイトが激増している点こそが、我が国の「供給余剰能力」の高さを示している》http://grnba.bbs.fc2.com/reply/16492748/541/ だいぶ前、8月20日のmesさんの議論です。日本の供給能力の大きさを示す指標として「全要素生産性」が登場します。(私が「よもやま歴史絵巻」のためにネット断ちしていた時でした。)このたび、mukuさんの537に発してさらに議論が深まります。(537539541546547549550551552557) 

計算式が出てくると私の頭では飛ばし読みになってしまうのですが、551↓の火事場の馬鹿力で「本気」を出したときの全要素生産性の伸び方の強さこそが、その国の真の生産力のポテンシャルを表している》は、私の体験からもよくわかります。切羽詰まってみないと新しい取組みは始まらない。染物のデジタル化は、将来を予見してのことではなく苦し紛れからでした。

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551:mespesado:2018/12/24 (Mon) 11:37:48
>>549
 はい、私の連載では全要素生産性の重要性をるる説明させていただきました。しかし、そのときはまだ説明していませんでしたが、実はこれでもまだ日本の「底力」を表す指標としては不十分なのです!
 というのは、確かにこの指標は、生産性向上における、労働力や資本の生産性以外の生産性向上要素、つまり機械化の進展による生産性の向上が占める割合を表しているので、これが高ければその国の生産性向上のポテンシャルが高いと いうことになるのですが、機械化の進展には新たな設備投資が必要だし、新しい技術を導入してうまくいく保証もないわけで、企業経営者の立場から考えると、 できればそんな危険なカケをしなくて済むのならわざわざそんな冒険的な投資をしようとしません。すると、機械化の進展、つまり技術革新ってのは人材もオカ ネもかかりますから、カネを払うスポンサーがいないと技術革新も進まない、ということになります。
 つまり、この全要素生産性がハネ上がるのは、企業が労働者や普通の資本投下だけでは経営を維持できなくなり、やむに已まれず今まで人力でやっていた部分を機械化しなきゃならないという場面に出くわして初めて起きることです。なので平素はこの全要素生産性は(いくら技術革新のポテンシャルがあっても)実際に増加することがなく、人手不足とかでやむに已まれない状態が生じたときだけ「火事場の馬鹿力」として「発現」するわけです。そして、この火事場の馬鹿力で「本気」を出したときの全要素生産性の伸び方の強さこそが、その国の真の生産力のポテンシャルを表している、ということになるわけですね。このことをグラフで確かめてみましょう。

全要素生産性(TFP)の推移を確認して、国士様になってよ!
http://www.anlyznews.com/2017/10/tfp.html
と いうサイトがあります。この記事は「日本が凋落している」ということを主張したいという意図を持った記事で、最初のグラフでは全要素生産性(TFP)の値 そのものを、1989年を100として国際比較して、日本が他の先進国と比較してどん底のビリになっていることを強調しています。
TFPの水準の推移(1989年=100).png しかし、このグラフをよく見ると、日本のTFPが凋落しているのは1990年代です。この時期は、バブル崩壊直後の「平成不況」の時代で、このバブル崩壊に伴う不良債権問題で、銀行が本当に資金が必要な事業所には資金を貸さず、それどころか貸した金を回収することに徹した時代(いわゆる「貸し剥がし」によるバランスシート不況の時代) でした。こんな時代に企業は新しい技術への投資どころか通常の設備投資すらままならず、全要素生産性は一挙に奈落の底に落ち込んだわけです。この傾向は 21世紀に入っていわゆる「小泉改革」という、過った不況の原因の究明による方向性の間違った「構造改革」により、技術の進歩よりは不況で増えた失業者を 「使いつぶす」ような方法で不況を乗り切ろうとするモードに突入し、全要素生産性を改善するには至りませんでした。派遣労働が解禁され、対象職種が次々に 拡大していった時代に重なりますね。
  そしてこの傾向はリーマンショックまで続きます。地道な製造業をないがしろにし、詐欺のような金融で濡れ手に粟のようなビジネスをしていた先進諸国は、こ こで「悔い改めて」真の生産技術改善に舵を切ります。そんな中で、このグラフの2009年以降のグラフの傾きをよく見れば、その後急激に改善している(グ ラフの勾配が高い)のは、やはりクラフツマンシップ/匠の国であるドイツと日本なんですね。あとの国は復元はしているけれど、その傾きは緩やかです。
TFP成長率の推移.png そしてこのようなTFPそのもののグラフ(この記事の著者はわざわざ対前年伸び率のグラフを絶対値に作り替えたようですけれど)ではなく、最初に説明したように、対前年増加率の方が本質で、それがリンク先の2番目のグラフです。
 記事の著者は「以下になるが、このギザギザから情報を読み取るのは難しい。」などと書いていますが、とんでもない!
 最初に注意したように、TFPでその国の真の生産性の実力が現れるのは、火事場の馬鹿力を出したときです。だから、TFPの対前年増加率のトレンドではなく、「最大値を取った時のその最大値の大きさ」で測るべきものです。ですから、ギザギザであることは問題ない。このグラフを見れば、2010年と2013年にピークを取っている日本はやはり強い。そして重要なことは、この日本の製造業の底力というのはアベノミクスとあまり関係ないということです。アベノミクスは、ただ金融を緩和しただけです。つまりオカネを増やしただけ。このTFP増加のピークを強めるのは、ひとえに研究開発にどれだけ力を入れるかに かかっている。今までは民間の自助努力に完全に依存していた(政治はただただ、小泉改革とかバブル崩壊とかで企業の自助努力を妨害していただけであって、 アベノミクスはそういうことをしてないだけマシである、というだけに過ぎない)、ということですね。今後政治が主導的にこのTFPを高めようと思ったら、産学コラボを主導するとか産学双方に予算をジャンジャンばら撒くとか、今までの暗記優先の教育をイノベーション優先に切り替えていくとかが必要ですが、経産省はともかくとして、緊縮財政の財務省やWGIPとポリコレと西洋崇拝に凝り固まった文科省を何とかしないと、日本は今までのノウハウの貯金を食いつぶし、大変なことになるんじゃないかと危惧します。

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