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mespesadoさんによる1億人のための経済談義(38)白川理論のどこが誤りなのか [mespesadoさんによる1億人のための経済講]

亀さんのブログ一連の放知技でのmespesadoさんと堺のおっさんの投稿を、一冊の本にまとめるという話が持ち上がっている。是非、実現して欲しいと心から願う。》とあった。同感です。

最上川舟下り記念3年4組.jpg21日村山市碁点温泉、古稀以来毎年やることになった中学校クラスの同級会、男4名女5名、宴席を引き揚げて一部屋に9人集まって、なにやらかにやら語っているうちに論客スミヤの独演会が始まった。こっちは横になってウトウト、口も挟まず夢うつつで聞いていたのだが、「あと3年もすればなんでもタダになる」と弁じ始めた。何を根拠にと思っていたのだが、孫氏の演説を聴いて得心。そういえばスミヤ、40年位前孫氏出現の頃から注目していた。亀さんブログ、先の文の後の【追記】で紹介された下記記事、それぞれありがたいです。

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【追記1】
AIと言えば、思い出すのが孫正義の講演だ。
孫正義氏「OneWebで情報通信革命を」12億ドル出資する“宇宙ベンチャー”の未来を語る
拙ブログでも孫正義を取り上げている。
若き日の孫正義
【追記2】
シリコンバレーで見たAIとIoTビジネスの未来

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mesさんによる、白川理論の丁寧な検証です。

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106:mespesado :
2018/10/23 (Tue) 07:29:07
 例の白川総裁が2009年にTV出演した際の話を池田信夫氏がブログで記事にしています。↓
白川総裁、デフレを語る
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51333370.html
 それによると、
> 日銀の白川総裁が、テレ東のWBSに出演した。おもしろかったのは、冒
> 頭の「あなたはインフレとデフレのどっちがいいですか?」という街頭
> アンケートで、答が半々だったことだ。老人は「年金は増えないので値
> 段が下がったほうがうれしい」と言っていたが、インフレがいいという
> 若者は「賃金が上がるから」と答えていた。どっちが正しいだろうか?

> 正しいのは老人のほうである。これは実質残高効果(ピグー効果)とい
> って、デフレによって資産が実質的に増えるので需要も増え、経済を安
> 定化させる効果がある。ユニクロのような価格競争は望ましいのである。
> 他方、若者は名目賃金と実質賃金を取り違えており、これは貨幣錯覚と
> 呼ぶ。

 以上の話が白川氏の主張そのものなのか池田氏の意見なのかははっきりしませんが、何とも単純すぎる理解です。
 まずそもそもデフレになっていくプロセスで、力の強いものは収入を減らさないように企んで実行できますが、その分弱者にしわ寄せがいくので、弱者ほど物価の低下率より収入の低下率が大きくなるので弱者がますます弱者になる、という一番大きな問題を 無視しています。一般的に若者は最初は弱者ですから、そういう意味で、上の話は「若者の意見の方が正しい」のです。何が「名目賃金と実質賃金を取り違え て」ですかw。そんな次元の話をしているわけではないのに。なお、デフレスパイラルについては次のように述べられています:

> デフレ自体は善でも悪でもなく、それが実質債務を増やして企業収益を
> 悪化させる債務デフレ(デフレ・スパイラル)に陥るのを防げばいいの
> だ。現在のCPIは-2%程度(エネルギー価格を除けば-1%未満)で、
> 心配することはない。日銀も基本的にはそういう立場だが、このごろ政
> 府や外野がまたうるさいので、あらためて問題を説明しようということ
> だろう。

 デフレだと実質債務が増えるからよくないのでそれを防げばいい??
 そういう問題じゃないでしょう?
 デフレになれば、弱者はますます実質所得が減るので消費しなくなり、従って企業も物が売れなくなって不況になっていくのです。企業がかかえている負債の実質額が増えるなどという問題は副次的な話で、それよりも企業の売上自体が激減するのですから、仮に企業が負債ゼロだったとしても企業収益が減って経営が成り立たなくなっていくのです。ですから、一旦デフレになると、デフレスパイラルを防ぐことはできません。
 まあ、この記事が書かれたのが2009年で後だしジャンケンになってしまいますが、経済を語る人って、ほんっっっとうにものごとの一面しか見ていないのですね。まあ、これを他山の石として自分も思考が一面的にならないように注意していこうと思います。
*   *   *   *   *
以上を受けて「白川理論のどこが誤りなのか」の議論です。
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111 名前:mespesado
2018/10/23 (Tue) 22:19:04
 今月の22日に白川前日銀総裁が記者会見したというので、その内容が報道されています↓
「根本原因はデフレではない」 白川・前日銀総裁が5年半ぶりに語った
https://www.j-cast.com/2018/10/22341777.html

> 会見は1時間にわたって白川氏が自著について語ったが、とくに熱を帯
> びたのは、自身が総裁時代に浴びた「批判」についてだった。批判の内
> 容を「日本経済の根源的な原因はデフレであり、それは貨幣的現象だか
> ら、日銀の大胆な金融緩和政策によって脱却できる。日銀は物価目標を
> 掲げ、達成を約束すべきだが、それをしていない」というものだったと
> 総括。2012年12月の総選挙で民主党から政権を奪還した安倍晋三・自民
> 党総裁がこうした主張を掲げて、圧倒的な国民の指示を得たことにも触
> れた。

> こうした日銀批判に対して、白川氏は「日本経済の根源的な原因はデ
> フレではないと思っていた」と反論。そのうえで「急速な高齢化や人口
> 減少に適合していないことが大きな原因」と述べ、社会保障を含めた財
> 政の持続可能性の方が重要だという考えを示した。

> その後、日銀は後任の黒田総裁のもとで、2%の物価上昇を目標に、
> 「異次元の緩和」と呼ばれる金融政策で大量の国債やリスク資産を日銀
> が買い取って資金を市場に供給する体制を取るようになった。これには
> 中央銀行の政策としては中央銀行自身や国の財政の健全さを損なうとし
> た批判も強い。

> この後、会場からの質問で、現在の黒田総裁の政策について評価を聞
> かれた白川氏は「他の中央銀行総裁にならい、足元の金融政策について
> 直接的なコメントは控えたい」と述べつつ、「過去5年の経験が示すよう
> に、日本経済の直面する問題の答えが金融政策以外にないということで
> はないし、物価が上がらないことが低成長の原因という立場でもない」
> と語るとともに、2013年の政府と日銀の共同声明の精神に立ち返るべき
> だ、と語った。

 また、毎日新聞によれば、
白川氏「金融緩和の効果長続きしない」
https://mainichi.jp/articles/20181023/k00/00m/020/090000c

> 「金融緩和は、本質的には明日の需要を今日に持ってくる政策であり、
> 効果は長続きしない」と指摘。

 要するに、白川さんの主張としては、
(1)低迷する日本経済の根源的な原因はデフレではなく少子高齢化が原因
(2)異次元の緩和は中央銀行自身や国の財政の健全さを損なう
(3)物価が上昇しないことが低成長の原因ではない
と いうことです。また、毎日新聞における主張の意味は、リフレ派が金融緩和を是とする理由が「カネを刷ると国民はインフレになると考えて早く消費しないと損 をすると考えて消費の前倒しが起きて消費が拡大する」という理論にもとづいていることを指していて、要するにこれは単なる需要の先食いに過ぎないではない か、という意味だと思われます。つまり
(4)リフレ派の主張は需要の先食いなので、緩和策は長続きしない
と主張していることになります。
 さて、これらの白川さんの発言に対する批判がいくつかなされています。
 まず高橋洋一さんは、
(A)白川さんは金融政策が雇用政策であることを理解していない
と批判。また金子洋一さんは
(B)白川総裁自身による誤った金融引締め政策がリーマンショック後の超
  円高を産み、日本のものづくり産業を空洞化させたことでどれだけ国民
  が苦しんだことか。なんの反省もない。
と批判。また、もりちゃんさんも
>  何が「過剰な債務」だよ。白川がどれだけの人を自殺に追いやったか。
> よくもおめおめと人前に顔を出せたな。

> やはり白川は金融緩和を分かってなかった。リーマンの後に世界各国が
> 緩和政策で対応した。日本だけは指をくわえてデフレを放置した。その
> 結果多くの失業者と自殺者が出た。彼らに何か言う事はないですか。
とボロクソです。

 これらのやり取りを見ての私の感想ですが、確かに白川総裁下での民主党政権によるデフレスパイラルやその後のアベノミクス+黒田総裁下での経済の復活を見ていると、白川さんの政策が失敗したことは明らかですが、高橋さんにしろ金子さんにしろ、もりちゃんさんにしろ、いずれも「結果を見ての批判」に過ぎず、いわば「後だしジャンケン」です。なぜ白川理論ではうまくいかなかったのかの説明がありません。
 なので、私がかわりにここで白川理論のどこが誤りなのか解説しておきましょう。
                              (続く)

112 名前:mespesado
2018/10/23 (Tue) 22:21:04
>>111
 まず(1)ですが、もし国民が全員満足に消費生活を営んでいるのなら、少子高齢化による人口減で、消費者の絶対数が減少するのですから全体の消費も減少し、経済は縮小していきます。しかし現状の経済の低迷はそうではなく、デフレスパイラルにより所得が減少し、消費者は買いたくてもオカネが無いから買えないために消費が減って経済が委縮しているのですから、まさにデフレが経済委縮の最大原因です。
 次に(2)ですが、「国の財政の健全さ」などと、財務省と同じく通貨発行権を持つ国家財政と家計や企業の財政を同一視しています。まさに「白川よ、お前もか」状態です。何度も言うように、高度成長が終わったら、国家財政は「赤字である方が健全」なのです。
 さて、残る(3)と(4)ですが、多分リフレ派の人には真っ当な反論ができないと思われます。なぜなら金融緩和は正解だけれども、その根拠とされているリフレ派の理論そのものが間違っているからです。
 まず(3)ですが、「物価が上昇しないことが低成長の原因ではない」というのは実際そのとおりなんです。ただし「物価が下落することは低成長の原因」な のです。わからない人にはワケワカメだと思いますが、高度成長が終わると、経済は「定常状態」になるか「デフレ」になるかどちらかしかありません。なぜな ら消費者が欲しがる耐久消費財は一通り行き渡り、企業は右肩上がりにモノが売れなくなり、借金も必要なくなり、販売網が全国規模で拡充したため販売店は値 上げすると売れなくなる、という経済環境の変化により、いくら経済が復調しても、物価が上昇する要因が無くなってしまったからです。なので、「物価が上昇 しない」というのは事実なのですから、これが低成長の原因でないのは当然のことですw。だからこの命題を否定できるはずがありません。しかし白川さんは 「だから物価が下落してもいいんだ」と言いたいんでしょうが、今説明した理由で「物価が上昇する」の否定が「物価が下落する」ではない(正しくは「物価が定常」の否定が「物価が下落する」)のですから、白川さんの思惑も実は正しくないのです。
  そして最後の(4)ですが、リフレ派は確かにインフレを気にした消費者が早く消費しようとするから経済が好転する、という理論でインフレを起こそうとして オカネを刷ることを正当化します。しかし現実はこの理論通りにはいかない。なぜなら現実にはオカネをあれだけ刷っているのに一向にインフレになる気配も無 いからです。つまり、「オカネを刷るとインフレになる」という理論が最早成り立たないわけです。ではなぜオカネを刷ったら経済が持ち直した(特に雇用が改善した)のか?
 円が刷られて増えたので、それまで異常に円高だった為替が平常に戻ったから輸出産業が息を吹き返したからです。これにより、まず輸出企業の収益が改善して雇用が回復し、それに伴い派生的な需要が回復し、有り余る労働者をこき使っていた産業が人手不足で悲鳴を上げ始めたからです。また、大量に刷られたオカネはこうした企業の内部留保として積み上がり、将来の倒産の危険が弱まったと判断した企業から順に、徐々に労働者に還元され、景気が回復基調に乗った、というのがその正しいカラクリです。決してリフレ派の主張するような機序で景気が回復したのではないのです。
 そういう意味では白川さんだけでなく、彼を批判するリフレ派の人達も間違っているのです。

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