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mespesadoさんによる1億人のための経済談義(23) 見栄や虚栄から自由になれた時代 [mespesadoさんによる1億人のための経済講]

20代後半、当時就いていた仕事への自分の適性に疑問を持つようになっていたとき、祖父の夢を見せられて家に戻り今の仕事になりました。祖父の仕事は印染でした。ハンナ・アーレントの言う「仕事(work)」そのものでした。次男に生まれながら、幼くして亡くなった長男の代わりをやむなく引き継ぐことになった父は、祖父に対して批判的でした。時代も味方して、商家から嫁いだ母とともにキモノ商売で一時代をつくりました。私が戻った時もその時代がつづいていました。しかし私は何の疑問もなく、家に戻る以上祖父の仕事を継がねばならないと思い、半年そこそこでしたが大漁旗が中心の染物屋で一応一通り仕事を覚えさせてもらって家に戻りました。大漁旗を染める筒描きというやり方は印染のいわば原点だったのですが、その後何段階かのイノベーションを経て今のデジタル化に至ります。その変遷については5年前に自分なりにたどってみたことがあります。(→3Dプリンター革命) それはそれ、なぜこんなことを書き出したかというと、今みんなどうしていいかわからなくなっているキモノのことを思ったからでした。軸足は印染に置いていましたが、金額的には断然キモノでした。キモノに関しては母親の助手的役割でしたが、おかげでいい思いもさせてもらいました。あの当時、あんなによく売れたものだと思いますが、あれから30年、40年、一度も袖を通されることのなかったような高価なキモノが行き場を失ってうめき声をあげているのが聞こえてくるのです。いい思いをさせてもらった分、つらいです。《必需品でないものにはいつまでも付き合えるほど消費者は余裕がない》、その「必需品でないもの」の代表例として、自分も関わったキモノを思ったのでした。必要なものと必要でないものとがきっちり峻別される時代、豊かな時代なのだと思います。貧しさと裏腹の見栄や虚栄から自由になれたのです。

*   *   *   *   *
266:mespesado :2018/07/19 (Thu) 00:25:55
host:*.itscom.jp

 今度は経済の話題です。
 アベノミクスによる「リフレ政策」が、オカネをジャンジャン刷っているのに一向にインフレにならないことが問題視されていますが、「インフレになるわけないじゃん」ということを論より証拠で示した記事があります:

鳥貴族、値上げで業績悪化へ。
値上げ組の企業が軒並み苦戦、遠のく脱デフレ=斎藤満
https://www.mag2.com/p/money/491497

> 政府日銀の後押しもあって、価格引き上げ戦略に出る企業が出てきた一
> 方で、旧来のスーパー・コンビニではむしろ価格引き下げ戦略に出まし
> た。

> どちらが功を奏すのか注目されましたが、ここへきて「値上げ組」の苦
> 戦情報が続々と伝わってきます。

> 居酒屋チェーンの「鳥貴族」が値上げ戦略に出て市場の注目を集めまし
> たが、決算の不振を受けて、株価が大きく下げました。値上げ当初は、
> 客の減少は限定的で、採算の改善が収益改善に寄与すると見られ、期待
> の下に株価は大きく上昇しました。しかし、次第に値上げが客離れを引
> き起こし、業績はむしろ悪化する事態となり、株価は値上げ前の水準に
> 戻ってしまいました。

 ね、やっぱり思った通り。

> スーパー業界には、値上げは経営危機に追い込むリスクがある、との認
> 識が浸透していて、よほどのことがない限り、値上げ策は回避する傾向
> があります。

> 人手不足で賃上げをしても、そのコストを価格転嫁できないことが分か
> っているので、賃上げをしてまで無理に人を採らず、むしろレジの機械
> 化などでコストの抑制を進めています。

 つまり必需品でないものは「買い控える」という方法で生活防衛しますから、少なくとも日本では、本来のリフレ政策は機能しない、という私がかねがね主張している理論どおりの展開になっています。
 で、それじゃあどうすればよいの?ということで、

> そこで価格を引き上げるためには、他社との製品差別化を進め、価格引
> き上げを消費者が納得して受け入れるような状況にするしかありません。

というのが真っ先に頭に浮かびますが、それでも

> 典型例が、スイスの時計ロレックスであり、フランスのエルメスとなり
> ます。しかし、このブランド戦略は容易でありません。あのアップルで
> さえ、高額スマホの販売不振に陥り、日本でも「日本一高い、しかし日
> 本一旨い」をうたった老舗の花園饅頭が経営破綻しました。

 そう。必需品でないものにはいつまでも付き合えるほど消費者は余裕がないのです。
 会社の内部留保だけでなく、消費者にカネを回し、それも消費者が将来の不安が無くなるほど貯金をため込めるようにしないと消費なんて増えるわけがありません。
 究極の解決策はベーシックインカムですが、すぐには無理だというなら、今のタテマエであるインフレを狙うという「リフレ政策」ではなく、とにかく消費者にオカネをばらまくヘリコプターマネー政策(これは金融緩和と財政出動を同額同時に行うことで事実上実行できます)を進めるしか解決方法はありません。

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