SSブログ

mespesadoさんの経済談義(2)本格的「財政出動」への期待 [mespesadoさんによる1億人のための経済講]

「これからの日本経済はどうあるべきか」の道筋が、1990代以降のこれまでの流れをふまえた上で、見事に示されます。本格的「財政出動」への期待が膨らみます。必要なところには金は惜しみなく行き渡る世の中になるはずです。いい時代です。これからは、クヨクヨケチケチせず、思いっきり夢を描く能力が問われます。若者がんばれ!おれたちもまだまだがんばるぞー!

*   *   *   *   *

191:mespesado : 2018/05/13 (Sun) 11:05:40 host:*.itscom.jp
>>189
 私の手元に野口旭氏の『アベノミクスが変えた日本経済』という本があります。この第1章は、日本の「失われた20年」と呼ばれる大不況時代をどのように克服しようとしてきたかを巡る歴史を振り返りながら、最後に登場したアベノミクスの効用を説明しているものですが、その中から一部を引用しておきましょう:

> 日本経済が長期不況に陥った一九九〇年代に成立した、宮沢喜一政権か
> ら森喜朗政権にいたる各政権は、経済政策としてはもっぱら財政政策に
> 依存していた。それら歴代政権による「総合経済対策」や「緊急経済対
> 策」の内実は、基本的には財政政策に尽きていた。
 (中略)
>  しかし、一九九〇年代全般を通じて巨額の公共投資が毎年のように行
> われたにもかかわらず、日本経済は結局、十分な回復にいたることはな
> かった。他方で、膨れ上がった政府財政支出と景気低迷による税減収の
> 相乗効果によって、日本の財政赤字は拡大し続けた。そのことはやがて、
> 「公共事業性悪論」といった形での、ケインズ主義的赤字財政政策に対
> する大きな疑念を生み出した。
>  そこに登場したのが、「構造改革なくして景気回復なし」をスローガ
> ンとして二〇〇一年四月に成立し、日本中に一大構造改革ブームを巻き
> 起こした小泉純一郎政権である。(中略)それは、「日本経済の低迷の
> 原因は単なる需要不足ではなく、供給側の構造問題にある」という把握
> に基づいていた。
 (中略)
> とはいえ、当時の小泉政権およびその周辺では、デフレの原因について
> は、日銀による金融政策の問題というよりは、金融機関の持つ不良債権
> による信用機能の不全に求める見方が一般的であった。(中略)金融再
> 生プログラム、通称「竹中プラン」は、まさにそのような考え方に基づ
> いていた。そのプランの意図は、銀行への圧力を通じた不良債権処理
> あった。

 「長期不況」というのは、消費者がオカネを使わないから企業は物が売れず、従って企業は満足な給料が払えないので消費者はますますオカネが使えなくなり…、というスパイラルが定着してしまうことですから、民間がオカネを使わないかわりに政府がオカネを使って消費を維持しようという「財政政策」を取るのは当然の流れです。
 ところが1990年代に入ると、いくら財政政策を進めても一向に景気が回復しなくなります。この原因を、当時の人達は「これでは『財政赤字』が膨らむ一方だ。財政政策が機能しないのは既得権者が抵抗するせいだ!」と間違った分析をして「新自由主義」の世界に突入したというわけです。
 しかし、財政政策が機能しなかった理由を正しく捉える論もありました。リチャード・クー氏などが主張していた「バランスシート不況」という考え方です。つまり、各企業は、バブルの崩壊で悪化した資産を補うように、負債側すなわち借金を大急ぎで返すことでバランスシートを修復しようとするので、せっかく企業の借金による信用創造で増えていたオカネが借金返済で激減し(信用収縮!)せっかく財政出動で増えたオカネをチャラにしてしまった、というわけです。
 しかし、この機序は、バブルの崩壊だのリーマンショックだのという劇的なイベントがあった場合に目立つだけで、そんなものが発生しなくても、世の中が供給過多の世界になれば、設備投資も要らなくなり、従って企業も借金をしなくなり、内部留保を積み上げ、残る借金もどんどん返し始めるので、急激ではないけれど、早晩「バランスシート不況」が起きるのは技術革新による必然の流れだったわけです。
 さて、以上の教訓から何が分かるか?
 市中のオカネを増やすには、金融機関の国債等の買い上げによる「金融緩和」と昔ながらのバラマキである「財政緩和」があります。ところが「財政緩和」の方は、バブル崩壊に伴う急激なバランスシート不況のせいで効果が無かった。ところが当時の人は、この機序に気付かずに、「財政緩和政策」そのものが機能しないものだ、と勘違いしてしまい、残る「金融緩和」の方で、デフレを退治しようとした。そこにはシムズ理論を初めとする「インフレになると早く消費しようとする傾向がある」という理論で正当化できる、という安心感があった。
 ところが現実には、「金融緩和」は最初に「超円高の是正」が生じたために輸出企業が息を吹き返して、それに内部留保の増加が相まって機能したものだったので、今後「金融緩和」だけを継続しても、既に円高は是正されてしまっているので、当初の頃のような劇的な効果は出にくい。
 一方、アベノミクスの第二の矢である「財政出動」は、過去の事例は急激なバランスシート不況の影響で相殺されてしまったから機能しなかっただけであり、現在のバランスシート不況は当時よりはるかに緩やかなレベルで生じているので、今「財政出動」を本格的に行えば明らかに効果がある。しかも、「財政出動」は「金融緩和」と違って「直接」市場にカネをばら撒く分だけ効果は出やすい。だから今後は「財政出動」を主体に(それも本格的に)実行した方が効果があるはずだ、ということになります。
 思うに、経済理論の多くは過去のデータによる経験則であるものが多く、なぜそうなるかという機序の説明は取って付けただけであるということが往々にしてあります。過去の経験則は、あくまで当時の経済環境に依存しているので、今の経済環境のもとで同じことが言えるかどうかということは、絶えず一から考え直しながら検証する必要があると思います。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。