mespesadoさんによる1億人のための経済講座〈Ⅲ〉(4)(5) 支離滅裂、的外れなアベノミクス批判 [mespesadoさんによる1億人のための経済講]
アベノミクスが成功しているように見せかけるための「GDPかさ上げ疑惑」があるという、よく耳にする反安倍派の主張への反論です。《何かの指標を民主党政権時と安倍政権で比較して、民主党政権の方が高ければアベノミクスが失敗した証拠だと言い、逆に安倍政権の方が高ければ改竄したからそうなった、アベは悪いやつだ、と言うんですから、もうアベノミクスの評価としては支離滅裂》というのが結論です。
* * * * *
200:mespesado : 2018/04/15 (Sun) 20:13:59 host:*.itscom.jp
>>179
明石順平著『アベノミクスによろしく』、次は第4章の「GDPかさ上げ疑惑」です。
この章で、著者は2016年12月に内閣府により計算方法が変更され、その変更された算出法に基づいて過去(1994年~)に遡って変更されたGDPの算出方法について説明します。その変更点は4点から成り、
① 実質GDPの基準年を、それまでの平成17(2005)年から平成23(2011)年に変更し、それに併せて2015年に確定版が公表された最新の「平成23年産業関連法」を取り込んだ。
>>179
明石順平著『アベノミクスによろしく』、次は第4章の「GDPかさ上げ疑惑」です。
この章で、著者は2016年12月に内閣府により計算方法が変更され、その変更された算出法に基づいて過去(1994年~)に遡って変更されたGDPの算出方法について説明します。その変更点は4点から成り、
① 実質GDPの基準年を、それまでの平成17(2005)年から平成23(2011)年に変更し、それに併せて2015年に確定版が公表された最新の「平成23年産業関連法」を取り込んだ。
② 統計法によれば、GDPの内訳や計算法については国連の定める国際基準に則るものとしているが、その国際基準を従来の「1993SNA」から最新の「2008SNA」に変更した。
③ 各種の概念・定義を変更したり、推計方法の開発も行った。
● 国際比較可能性を踏まえた経済活動別分類の変更(サービス業の詳細化等)
● 供給・使用表(SUT)の枠組みを活用した新たな推計方法
● 建設部門の産出額の新たな推計方法 等
④ 平成6(1994)年に遡って20年超の系列を再推計・公表
と纏められています。
③ 各種の概念・定義を変更したり、推計方法の開発も行った。
● 国際比較可能性を踏まえた経済活動別分類の変更(サービス業の詳細化等)
● 供給・使用表(SUT)の枠組みを活用した新たな推計方法
● 建設部門の産出額の新たな推計方法 等
④ 平成6(1994)年に遡って20年超の系列を再推計・公表
と纏められています。
さて、このGDP算出方法の改定により、GDPの数値は全期間に渡って10~30兆円ほど「かさ上げ」されることになります。そして著者は、このかさ上げ幅が一定ではなく、この改定前と改定後の数値に基づいてそれぞれの名目GDPのグラフを重ねることにより、改定前の数値によると最新の2015年の数値が過去のローカルなピークであった1997年も2007年も下回っているのに対し、改定後の数値では逆に最新の2015年の数値が1997年も2007年も上回っている、という事実を指摘して、これをアベノミクスが成功しているように見せかけるための「GDPかさ上げ疑惑」と呼んでいます。
そして、この「かさ上げ疑惑」を追及するため、改定後と改定前の差を時系列でグラフにすると、その差額の対前年伸び率が、2012年までは4%以下でほぼ一定だったのに、2013年から先の3年間では急遽5%を超える急激な伸びになっていることを突き止めます。
著者は更にその「かさ上げ」の内訳を見ることにより追求を進めていきます。名目GDPの両計算方法の差である改定幅については、年度別にその内容内訳と額が一覧表に纏められています。それによると、例えば2010年度以降の6年間の数値を横に並べると(単位は兆円)、
改定幅
├ 2008SNA対応 16.4 19.8 19.6 21.0 23.0 24.1
│ ├ 研究・開発の資本化 16.4 16.6 16.6 17.3 18.5 19.2
│ │ ├ 市場生産者分 13.1 13.3 13.3 14.0 15.1 15.8
│ │ └ 非市場非生産者分 3.3 3.3 3.3 3.4 3.4 3.4
│ ├ 特許等サービスの扱いの変更 1.3 1.5 1.4 2.1 2.8 3.1
│ ├ 防衛装備品の資本化 0.6 0.6 0.6 0.6 0.6 0.6
│ ├ 所有権移転費用の取扱い精緻化 0.9 0.9 0.8 0.8 1.0 0.9
│ └ 中央銀行の産出額の明確化 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2
└ その他 -0.8 -0.1 0.6 4.0 5.3 7.5
といった感じです。
さて、著者は、対話形式で書かれた本書の相方に、「2008SNAによるかさ上げ率を見ると、1~3位までをすべてアベノミクス以降が占めているんだね。なんだか怪しいな~」と語らせ、続けて「その他」の数値に着目して、「何これ・アベノミクス以降だけ数字が全然違うじゃん。数字がプラスになっているものが22年度中6回しかなくて、その半分をアベノミクスが占めてるよ。額も桁違いじゃん」と語らせています。
そして、特にこの「その他」に対して執拗に喰らい付き、
そして、この「かさ上げ疑惑」を追及するため、改定後と改定前の差を時系列でグラフにすると、その差額の対前年伸び率が、2012年までは4%以下でほぼ一定だったのに、2013年から先の3年間では急遽5%を超える急激な伸びになっていることを突き止めます。
著者は更にその「かさ上げ」の内訳を見ることにより追求を進めていきます。名目GDPの両計算方法の差である改定幅については、年度別にその内容内訳と額が一覧表に纏められています。それによると、例えば2010年度以降の6年間の数値を横に並べると(単位は兆円)、
改定幅
├ 2008SNA対応 16.4 19.8 19.6 21.0 23.0 24.1
│ ├ 研究・開発の資本化 16.4 16.6 16.6 17.3 18.5 19.2
│ │ ├ 市場生産者分 13.1 13.3 13.3 14.0 15.1 15.8
│ │ └ 非市場非生産者分 3.3 3.3 3.3 3.4 3.4 3.4
│ ├ 特許等サービスの扱いの変更 1.3 1.5 1.4 2.1 2.8 3.1
│ ├ 防衛装備品の資本化 0.6 0.6 0.6 0.6 0.6 0.6
│ ├ 所有権移転費用の取扱い精緻化 0.9 0.9 0.8 0.8 1.0 0.9
│ └ 中央銀行の産出額の明確化 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2
└ その他 -0.8 -0.1 0.6 4.0 5.3 7.5
といった感じです。
さて、著者は、対話形式で書かれた本書の相方に、「2008SNAによるかさ上げ率を見ると、1~3位までをすべてアベノミクス以降が占めているんだね。なんだか怪しいな~」と語らせ、続けて「その他」の数値に着目して、「何これ・アベノミクス以降だけ数字が全然違うじゃん。数字がプラスになっているものが22年度中6回しかなくて、その半分をアベノミクスが占めてるよ。額も桁違いじゃん」と語らせています。
そして、特にこの「その他」に対して執拗に喰らい付き、
> アベノミクス以降と以前でこれほど異常な差が出るのか、政府に納得の
> いく説明をしてもらいたいところだね。説明できなければ「改ざんした
> と批判されても仕方ないだろう。なお、現在政府が公表している資料で
> は、この異常な差が出る理由が説明されていない。
と、えらい疑いようですw
更に、本書の担当編集者が内閣府にこの「その他」項目の内訳を直接確認したら、「そのような内訳はない」との回答があった!などという話もあります↓
https://ameblo.jp/et-eo/entry-12345171838.html
しかし、これは勘ぐりすぎというものでしょう。そもそも「その他」の内訳がどのようなものであるかについては内閣府自身による説明資料
> いく説明をしてもらいたいところだね。説明できなければ「改ざんした
> と批判されても仕方ないだろう。なお、現在政府が公表している資料で
> は、この異常な差が出る理由が説明されていない。
と、えらい疑いようですw
更に、本書の担当編集者が内閣府にこの「その他」項目の内訳を直接確認したら、「そのような内訳はない」との回答があった!などという話もあります↓
https://ameblo.jp/et-eo/entry-12345171838.html
しかし、これは勘ぐりすぎというものでしょう。そもそも「その他」の内訳がどのようなものであるかについては内閣府自身による説明資料
平成23年基準改定によるGDP統計の改定
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/statistics/05/shiryo_01.pdf
の6ページに
> 5.平成23年基準改定による改善点
>
> 1.最新の国際基準(2008SNA)への対応
> ・R&D資本化 :設備投資の動向がより包括的に捕捉
> ・特許使用料の取扱変更 :輸出入の動向がより包括的に捕捉
> ・防衛装備品の資本化 :公共投資の動向がより包括的に捕捉
>
> 2.その他基準改定での改善
> ①建設部門の産出額の推計手法の開発(費用から出来高ベースへ)
> ・設備投資の動向がより正確に捕捉
> ②サービス分野の利用データ(※)の拡充
> (※)「サービス産業動向調査」(総務省)
> ・サービスの家計消費の動向がより正確に捕捉
> ③役員報酬の見直しを含む雇用者報酬の推計手法の改善
> ・雇用者報酬の動向がより正確に捕捉
> ④生産側・支出側GDPの整合性と推計精度の向上(※※)
> (※※)新たに「供給・使用表(SUT)」の枠組み活用
> ・生産側GDPと支出側GDPの間の不突合の縮減(12月下旬公表分)
として項目が列挙されています。また、ニッセイ研究所のリポート:
GDP統計の改定で変わった日本経済の姿
http://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=54810&pno=3?site=nli
には直近3年間の大幅な成長率について次のような記述があります:
> 直近3年間の成長率は比較的大幅な上方改定となった(2013年度:2.0%
> →2.6%、2014年度:▲0.9%→▲0.4%、2015年度:0.9%→1.3%)。
> 2013年度は建設部門の産出額の推計手法の変更により設備投資が大幅上
> 方改定、2015年度は速報から年次推計への改定による民間消費が大幅上
> 方改定というように、2008SNAへの移行にそれ以外の要因が加わったこ
> とがその原因と考えられる。
これによれば、「建設部門の産出額の推計方法」や「速報から年次推計への改定」が主要因でそのような結果になったということのようです。ただし、上記の記述だと、例えば「2013年度は建設部門の産出額の推計手法の変更により設備投資が大幅上方改定」という文は、(a)2013年度から推計方法を変えた、という意味なのか、それとも (b)推計方法を変えた結果として建設部門の2013年度が大幅に増えた、という意味なのかはっきりしません。ただ、最初のGDP算出方法変更点の最後の④で、過去に遡って改定したと言っているのですから (a)の意味ではないはずですが、もし万が一 (a)の意味だったとしたら、明石さんのいうようにアベノミクスを忖度した“ずるい”算出方法の改定だ、と言われても言い訳できないですよね。
そこで、念のため、もっと詳しい資料を探すと、次のような資料が見つかります↓
国民経済計算の平成23年基準改定について
-変更の主なポイントと推計結果-
http://www.yoshizoe-stat.jp/ecstat/2016/ecst(2)-12.pdf
そして、例の「その他」の項目については、この資料の43ページ以降にその説明があります。それによれば、まず建設部門の産出額の推計方法の見直しについて、次のように、より詳しい説明があります:
> ● JSNAの建設部門の産出額:
> ・基準年:「産業連関表」の建設部門の産出額(業務資料等から詳細
> に推計された工事出来高ベース)に基づく
> ・中間年・延長年:基準年前後について、各種基礎統計の動きを用い
> て推計
> ● これまでは、中間年・延長年について、建設活動に要したインプット
> (中間消費、雇用者報酬等)の動きを活用
> → 延長推計値が、結果として、事後的にわかる次の基準年の値と乖
> 離する傾向
> ● 平成23年基準では、過去分を含めて、工事出来高ベースの基礎統計
> (建設総合統計等)の動きを活用して推計
この3番目の ● に「過去分を含めて」とはっきり明記されており、これで、新しい基準によるGDP算出では、きちんと過去から最近に至るまで同じ計算方法を用いたことがわかります。ですから、アベノミクスに忖度して最近の数字だけ計算法を変えてインチキしたんだろうなどという下衆の勘ぐりは不当な難癖だったと言えるでしょう。
なお、建設部門において、なぜこのような推計方法の変更が行われたかに
ついては、↓
http://www.esri.go.jp/jp/archive/snaq/snaq151/snaq151d.pdf
にやや専門家向けの説明があり、従来の推計方法の持つ問題点は以前から指摘されていたことがわかります。
さて、著者は、民間最終消費支出の新旧の差額と「その他」における差額を比較して、両者が2013~2015年にかけてピタリと重なるからアヤシイとか、この差額のおかげで「実質民間最終消費支出」の2013年から2015年にかけての2年連続の下落が「解消」しているからアヤシイとか、「2020年を目途に名目GDP600兆円達成」という目標に合わせた改定だったんだ、とか思いっきり根拠の無い妄想を繰り広げていますが、そもそも上で解説したように、政府は「その他」項目の内訳が「ない」なんてことはなく、上で見たように、ちゃんとその内訳を公表しているんですから、そんな「陰謀説」が成り立つ余地はないのです。悪意を持っていろんな数値での計算を大量に試行錯誤すれば、偶然「いかにも改竄した」かのような結果が見つかったとしたって不思議ではありませんから。
また著者は、民主党政権下の2010~2012の3年間と、安倍政権下の2013~2015の3年間の新旧基準での実質GDP伸び率を計算して、いずれも民主党政権下の方が伸び率が高いことを示して、「これだけかさ上げしてるくせに民主党政権時より成長率が低い」などとディスっています。しかしこれは民主党政権の置き土産である2014年の消費税増税を含む安倍政権の3年間と、法定しただけで施行はされていなかった民主党政権の3年間を比較すれば、民主党政権の方が成長率が高いのは当たり前です。そもそも何かの指標を民主党政権時と安倍政権で比較して、民主党政権の方が高ければアベノミクスが失敗した証拠だと言い、逆に安倍政権の方が高ければ改竄したからそうなった、アベは悪いやつだ、と言うんですから、もうアベノミクスの評価としては支離滅裂です。 (続く)
> 1.最新の国際基準(2008SNA)への対応
> ・R&D資本化 :設備投資の動向がより包括的に捕捉
> ・特許使用料の取扱変更 :輸出入の動向がより包括的に捕捉
> ・防衛装備品の資本化 :公共投資の動向がより包括的に捕捉
>
> 2.その他基準改定での改善
> ①建設部門の産出額の推計手法の開発(費用から出来高ベースへ)
> ・設備投資の動向がより正確に捕捉
> ②サービス分野の利用データ(※)の拡充
> (※)「サービス産業動向調査」(総務省)
> ・サービスの家計消費の動向がより正確に捕捉
> ③役員報酬の見直しを含む雇用者報酬の推計手法の改善
> ・雇用者報酬の動向がより正確に捕捉
> ④生産側・支出側GDPの整合性と推計精度の向上(※※)
> (※※)新たに「供給・使用表(SUT)」の枠組み活用
> ・生産側GDPと支出側GDPの間の不突合の縮減(12月下旬公表分)
として項目が列挙されています。また、ニッセイ研究所のリポート:
GDP統計の改定で変わった日本経済の姿
http://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=54810&pno=3?site=nli
には直近3年間の大幅な成長率について次のような記述があります:
> 直近3年間の成長率は比較的大幅な上方改定となった(2013年度:2.0%
> →2.6%、2014年度:▲0.9%→▲0.4%、2015年度:0.9%→1.3%)。
> 2013年度は建設部門の産出額の推計手法の変更により設備投資が大幅上
> 方改定、2015年度は速報から年次推計への改定による民間消費が大幅上
> 方改定というように、2008SNAへの移行にそれ以外の要因が加わったこ
> とがその原因と考えられる。
これによれば、「建設部門の産出額の推計方法」や「速報から年次推計への改定」が主要因でそのような結果になったということのようです。ただし、上記の記述だと、例えば「2013年度は建設部門の産出額の推計手法の変更により設備投資が大幅上方改定」という文は、(a)2013年度から推計方法を変えた、という意味なのか、それとも (b)推計方法を変えた結果として建設部門の2013年度が大幅に増えた、という意味なのかはっきりしません。ただ、最初のGDP算出方法変更点の最後の④で、過去に遡って改定したと言っているのですから (a)の意味ではないはずですが、もし万が一 (a)の意味だったとしたら、明石さんのいうようにアベノミクスを忖度した“ずるい”算出方法の改定だ、と言われても言い訳できないですよね。
そこで、念のため、もっと詳しい資料を探すと、次のような資料が見つかります↓
国民経済計算の平成23年基準改定について
-変更の主なポイントと推計結果-
http://www.yoshizoe-stat.jp/ecstat/2016/ecst(2)-12.pdf
そして、例の「その他」の項目については、この資料の43ページ以降にその説明があります。それによれば、まず建設部門の産出額の推計方法の見直しについて、次のように、より詳しい説明があります:
> ● JSNAの建設部門の産出額:
> ・基準年:「産業連関表」の建設部門の産出額(業務資料等から詳細
> に推計された工事出来高ベース)に基づく
> ・中間年・延長年:基準年前後について、各種基礎統計の動きを用い
> て推計
> ● これまでは、中間年・延長年について、建設活動に要したインプット
> (中間消費、雇用者報酬等)の動きを活用
> → 延長推計値が、結果として、事後的にわかる次の基準年の値と乖
> 離する傾向
> ● 平成23年基準では、過去分を含めて、工事出来高ベースの基礎統計
> (建設総合統計等)の動きを活用して推計
この3番目の ● に「過去分を含めて」とはっきり明記されており、これで、新しい基準によるGDP算出では、きちんと過去から最近に至るまで同じ計算方法を用いたことがわかります。ですから、アベノミクスに忖度して最近の数字だけ計算法を変えてインチキしたんだろうなどという下衆の勘ぐりは不当な難癖だったと言えるでしょう。
なお、建設部門において、なぜこのような推計方法の変更が行われたかに
ついては、↓
http://www.esri.go.jp/jp/archive/snaq/snaq151/snaq151d.pdf
にやや専門家向けの説明があり、従来の推計方法の持つ問題点は以前から指摘されていたことがわかります。
さて、著者は、民間最終消費支出の新旧の差額と「その他」における差額を比較して、両者が2013~2015年にかけてピタリと重なるからアヤシイとか、この差額のおかげで「実質民間最終消費支出」の2013年から2015年にかけての2年連続の下落が「解消」しているからアヤシイとか、「2020年を目途に名目GDP600兆円達成」という目標に合わせた改定だったんだ、とか思いっきり根拠の無い妄想を繰り広げていますが、そもそも上で解説したように、政府は「その他」項目の内訳が「ない」なんてことはなく、上で見たように、ちゃんとその内訳を公表しているんですから、そんな「陰謀説」が成り立つ余地はないのです。悪意を持っていろんな数値での計算を大量に試行錯誤すれば、偶然「いかにも改竄した」かのような結果が見つかったとしたって不思議ではありませんから。
また著者は、民主党政権下の2010~2012の3年間と、安倍政権下の2013~2015の3年間の新旧基準での実質GDP伸び率を計算して、いずれも民主党政権下の方が伸び率が高いことを示して、「これだけかさ上げしてるくせに民主党政権時より成長率が低い」などとディスっています。しかしこれは民主党政権の置き土産である2014年の消費税増税を含む安倍政権の3年間と、法定しただけで施行はされていなかった民主党政権の3年間を比較すれば、民主党政権の方が成長率が高いのは当たり前です。そもそも何かの指標を民主党政権時と安倍政権で比較して、民主党政権の方が高ければアベノミクスが失敗した証拠だと言い、逆に安倍政権の方が高ければ改竄したからそうなった、アベは悪いやつだ、と言うんですから、もうアベノミクスの評価としては支離滅裂です。 (続く)
・
【追記 30.4.20】
怒濤の書き込みに対応しきれなくて1件見逃していたのを、次回のコメント欄でmespesadoさんにご指摘いただき、ここに嵌め込むことにしました。民主党政権から安倍政権に代わって、確実に就業者数が増えて雇用状況の改善が見られ、「非正規だけが増えた」(野党)のではなく、確実に正規雇用も増えている。野党による批判(たしか舟山議員も言っていた)が的外れであることが立証されます。244追記にともない、この記事の題も「支離滅裂なアベノミクス批判」を「支離滅裂、的外れなアベノミクス批判」に代えました。
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244:mespesado : 2018/04/17 (Tue) 07:41:05 host:*.itscom.jp
>>200
明石順平著『アベノミクスによろしく』、次はいよいよこの本のハイライトとも言える第5章の「アベノミクスの『成果』を鵜呑みにしてはいけない」です。この節は国が公表している統計の数値を駆使して、各種指標において景気が向上している理由がアベノミクスによるのではない、ということを証明しようと試みています。では早速具体的に中身を読んでいくことにしましょう。
>>200
明石順平著『アベノミクスによろしく』、次はいよいよこの本のハイライトとも言える第5章の「アベノミクスの『成果』を鵜呑みにしてはいけない」です。この節は国が公表している統計の数値を駆使して、各種指標において景気が向上している理由がアベノミクスによるのではない、ということを証明しようと試みています。では早速具体的に中身を読んでいくことにしましょう。
まず最初の節では「雇用が改善したのとアベノミクスは関係ない」と題して「有効求人倍率」「有効求人数」「完全失業率」の3つの指標について、2002年から2016年までの推移のグラフを示して、これらはすべて、確かに改善されているが、実はその改善は2009年後半あたりで底を打ち、それ以降は直線的に改善し続けており、安倍政権になってからも特にその傾向が変わったわけではないから、これらの改善はアベノミクスとは関係ない、というのです。
この主張はグラフを載せていて視覚的にも一目瞭然ですから、一見尤もらしく見えます。もしこの本「だけ」を読み込んでこの議論に異を唱えようとしたら、それはかなり難しいでしょう。
実は、この手の議論については既に専門家による反論が出されています。例えば Newsweek日本版の野口旭氏による「アベノミクスが雇用改善に寄与した根拠」の3ページ目↓
実は、この手の議論については既に専門家による反論が出されています。例えば Newsweek日本版の野口旭氏による「アベノミクスが雇用改善に寄与した根拠」の3ページ目↓
とか、HARBOR BUSINESS Onlineの山本博一氏による「『アベノミクスは失敗』に反論。どうみても雇用は改善している」↓
にその詳しい説明があります。グラフが分かりやすいのは後者なので、この山本博一氏の論文で説明しましょう。このリンク先の最初のグラフが示すように、確かに2009年下半期から直線的に失業率は改善しています。これだけ見ると明石さんの主張は正しいように見えます。
ところがこの論文の2番目のグラフを見てください。オレンジの「完全失業者数」にブルーの「労働力人口」を重ねたグラフです(ちなみに「労働力人口」とは15歳以上で労働する能力と意思がある人の総数です)。このグラフを見ると、完全失業者数は失業率と全く同様な傾向で2009年下半期以降直線的に下がっているのに対し、労働力人口も失業者数と同様に直線的に下降していたのが、2013年の1月で底を打ち、以後反転上昇しています。一方、最初の野口旭氏の論文リンク先の中の「図1」のグラフによると、2013年1月頃まで就業者数は6300人前後で低迷していましたから、要するにこの時点までは就業者数が改善したからではなく、単に分母の労働力人口が減り続けたから失業率が改善されただけだったのです。
ところがこの論文の2番目のグラフを見てください。オレンジの「完全失業者数」にブルーの「労働力人口」を重ねたグラフです(ちなみに「労働力人口」とは15歳以上で労働する能力と意思がある人の総数です)。このグラフを見ると、完全失業者数は失業率と全く同様な傾向で2009年下半期以降直線的に下がっているのに対し、労働力人口も失業者数と同様に直線的に下降していたのが、2013年の1月で底を打ち、以後反転上昇しています。一方、最初の野口旭氏の論文リンク先の中の「図1」のグラフによると、2013年1月頃まで就業者数は6300人前後で低迷していましたから、要するにこの時点までは就業者数が改善したからではなく、単に分母の労働力人口が減り続けたから失業率が改善されただけだったのです。
ところがこれに対し、民主党から安倍政権に政権交代した後の2013年1月以降は、一転して就業者数が増加し始めます。つまりこれより以降は分母の労働力人口が増えたにもかかわらず、就業者数がその上昇率を上回って増えたために失業率が改善しているのです。これは、求人も増続けたということですから、明らかに雇用状況が改善されたわけです。これがアベノミクスの成果でなくて何でしょうか?
さて、本の中身の議論に戻ります。続けて正規・非正規問題に話題が移ります。著者はまず直近2年間を除いて日本はずっと正規社員が減り非正規社員が増える傾向が続いていたという事実に言及し、これはアベノミクスとは関係がないと力説します(なぜアンチ・アベノミクスの著者がここを力説するのかよくわかりません。これがアベノミクスのせいではない、というのはアベノミクスを庇ったことになると思いますが)。そして次に、この「例外」である直近2年間に注目して、「ずっと続いていた傾向が急に変わる背景には法改正による強制力があると見るべき」だと推理して、具体的は「労働契約法の改正」のせいではないか、と主張します。そう考える根拠として、著者は直近の2014年と2016年における男女別の正社員数を比べ、次の表:
2014年 2016年 差
男性正社員数 2259 2278 19 万人
女性正社員数 1019 1078 59 万人
を作り、この2年間で、女性の正社員数の増え方の方が3倍近くも多くなっている事実と、これとは別のデータにより、非正規社員では女性の割合が約75%を占めている(すなわち女性が男性の3倍)という事実から、これは2012年8月10日に施行された労働契約法の改正で5年以上雇用されている非正規社員は申し出れば正規社員として雇うことが義務付けられたせいだ、と勘ぐったわけです。つまりこの法律により大量の非正規社員が正規社員に移行したが、絶対数は女性が3倍も多いから、正規社員が女性が3倍増えたのはこのせいだ。そしてこの直近の正社員の増加という雇用の改善は安倍政権以前の法改正によるものだから、アベノミクスとは関係ない、と主張するわけです。
これは本当でしょうか?
本連載の最初の方(前節の #935):
http://grnba.bbs.fc2.com/reply/16422161/935/で、星一つを付けた、あるレビュアーは、この件について言及していて、
> 正社員の増加は労働契約法が原因という部分に至っては完全に憶測でデ
> ータの裏付けが全くありません。
と述べておられました。確かにその通りなんですが、実は単にデータの裏づけが無いだけじゃなくて、実ははっきりこれは間違いだと断言できるのです。
この非正規社員から正規社員に移行した人数についてはデータが公表されています。例えば↓のPDF資料の2枚目(=1ページ)の棒グラフです。
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12600000-Seisakutoukatsukan/roudoukeizaibunseki-report_No.1_1.pdf
① 55歳未満の非正規社員から正規社員への転換者数
2012 2013 2014 2015 2016 年
男 34 36 39 35 37 万人
女 40 40 43 43 47 万人
女-男 6 4 4 8 10 万人
ここでは60歳以上の就労者を含めると定年再雇用のケースが大量に含まれてやっかいなので、55歳未満の就労者に限定された数字になっています。
そこで、55歳未満の正規社員の人数の変遷を知るために、年齢階層別に正規社員の推計を掲載したサイト:
http://www.garbagenews.net/archives/2227337.html
の数字を集計することにより、試みに2013年から2016年までの男女別の55歳未満の正規社員の数字を算出して一覧にしてみましょう。
② 55歳未満の男女別正社員数
2011 2012 2013 2014 2015 2016 年
男 1914 1902 1875 1861 1863 1887 万人
女 877 867 863 832 861 891 万人
ここから更に対前年増加数を計算して、ついでに男女差も計算すると、
③ 55歳未満の男女別正社員数の年間増加数
2012 2013 2014 2015 2016 年
男 △12 △27 △14 2 24 万人
女 △10 △4 △31 29 30 万人
女-男 2 23 △17 27 6 万人
この①と③を比べると、2013年から2015年までは、③の男女差に比べて①の男女差は小さすぎて(それどころか2014年は逆転している!)とても③の男女差が生じた原因と看做すことはできません。しかも2012年と2016年では原因と看做すには逆に差が大き過ぎます。これは要するに両者はほとんど無関係ということを意味します。
それだけでなく、③から判明することは、男女差ではなくて男と女の欄をそれぞれ見れば明らかなように、2014年までは正社員が減少の一路を辿っているのに対し、2015年から反転して正社員も増加し始めたことを示しています。対する①の方に特段の変化がないことと比べれば、アベノミクスにより、単に非正規従業者が増えただけだろう、などという批判は成り立たず、「労働契約法の改正」のせいでもなく、安倍政権になってから、確実に正規社員も増えていることがわかるのです。 (続く)
159:mespesado : 2018/05/12 (Sat) 06:17:35 host:*.itscom.jp
私がメインスレ33の #200↓
http://grnba.bbs.fc2.com/reply/16439363/200/
で解説した「GDPの嵩上げ疑惑」の問題について、ひろ(山本博一)さん
という人が同じ問題について説明してたのでお知らせします↓
GDPが嵩上げされている?
https://hirohitorigoto.info/archives/251
私と同じようなことはもちろん指摘していますが、
> たしかに安倍政権に入ってからその他の項目が不自然に伸びていると
> も見えなくもありません。でもねこれはあくまで、今回の2008SNAへの対
> 応以外にもサービス関係において、項目の詳細化や、概念定義の変更、
> 推計、算出方法も変更しているので、それが『その他』の括りで入って
> いるだけです。
>
> この変更理由も2008SNAへの対応と同様に、国際基準に合わせただけで、
> その目的はGDPの国際比較を容易にするためです。(日本は導入が遅れて
> いた)
(中略)
> 特に先進国がそうなのですが、一次産業、二次産業からサービスや小
> 売を中心とした第三次産業への遷移が著しく、日本は第三次産業のシェ
> アが70%を超えています。
>
> サービス業の発展により、以前にはなかった業態が増えてきたため、
> 以前のGDP統計の区分では誤差、齟齬が大きくなってきてしまう。だから
> 正確なGDPを測る事が難しくなるので改定した。ただそれだけのことかと
> 思います。
と、より詳しく説明しています。更に、
> そもそも、今回のGDP改定内容は民主党政権時代でも同じ条件です。
> 要するに、民主党政権は、安倍政権の様に民間の研究投資や、サービ
> ス業の発展に資するような政策を全く打ち出すことができていなかった。
> ただそれだけのことなんだと思いますよ。
>
> 民主党政権も素直にアベノミクスの様に量的緩和を実施していれば、
> 氏の言う『嵩上げ』は同じように発生していたものと思います。
> それでも安倍の陰謀だ~と信じて疑わない人は下記の行程表見てくだ
> さい。
(表略:引用者)
> 今回の改定が閣議決定されたのは2011年、民主党政権の時です。
> その後も改定内容を巡って十数回もの会合が行われています。その会合
> には内閣府だけではなく、外部の有識者も参加しており、その結果は都
> 度公表されていました。
ということでしたとさ。あほらし、あほらし。
ついでに言うと、かの東京新聞の望月衣塑子記者が明石さんの本に同調して次のように呟いていたそうです:
> 自民党や官邸の「名目GDP5年で50兆円増!過去最高水準!」の主張に対
> し 「 #アベノミクスによろしく 」の著者 #明石順平 氏 が政府資料を
> 基に異常な嵩上げを指摘。内閣府は嵩上げ根拠への質問に回答できず
> 「アベノミクス以降、実質GDPは民主党政権時の3分の1しか伸びてない
本当に受け売りばっかだね、この人。本当かどうか確かめずに拡散するだけだったら誰でもできる。ほんと、記者の風上にも置けない人ですな。
by めい (2018-05-13 01:10)
160:mespesado : 2018/05/12 (Sat) 06:27:07 host:*.itscom.jp
>>159
記事を引用した山本博一さんのブログ。「財政破綻論(笑)」というカテゴ
リーにある次の3本の記事:
借金を減らしている国はない
https://hirohitorigoto.info/archives/164
起きるはずのないハイパーインフレをなぜ心配するのかhttps://hirohitorigoto.info/archives/160
すでに日本の財政は健全化してます
https://hirohitorigoto.info/archives/148
は必読です。あと、ネット空間のデマを指摘するのもうまい。例えば
水道事業民営化デマに騙されないように
https://hirohitorigoto.info/archives/269
なんかとても秀逸な記事です。
by めい (2018-05-13 01:12)