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mespesadoさんによる1億人のための経済講座Ⅲ(3) 金融緩和によって有り余るモノやサービスが国民全体に行き渡る [mespesadoさんによる1億人のための経済講]

実質民間最終消費支出と実質賃金の減少は民主党政権の消費税増税路線によるのであって、アベノミクスのせいにするのは「濡れ衣」です。アベノミクスによる金融緩和がなかったら、モノやサービスはたっぷりあってもお金がなくて国民に行き渡らない、というバカげた事態になってしまうというmespesadoさんの主張に納得です。

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179 名前:mespesado 2018/04/14 (Sat) 23:53:08 host:*.itscom.jp
 さて、スレッドも変わってしまい、かなり間が空いてしまいましたが、前スレッドで開始した『アベノミクスによろしく』の書評:
http://grnba.bbs.fc2.com/reply/16422161/949/の続きです。
 今回は第3章「国内実質消費は戦後最悪の下落率を記録」です。
 この章の最初の話題は「実質GDPの伸び率」についてです。
 冒頭に名目GDPと物価上昇率を考慮した実質GDPについての説明があり、最近このGDPの計算方法が変更になったことに言及しながら、その変更自体の問題については第5章で詳しく述べると前置きして、変更前の定義による実質GDPの推移について論じます。
 著者は変更前の実質GDPは2015年度までしか公表されていないことから、2015年度までの実質GDPの6割を占める「実質民間最終消費支出」の推移グラフを示して、これが安倍政権に政権交代した後の2014年度と2015年度の2年連続で対前年で低下したことに注目し、こんなことは戦後初の現象であり、そもそも単年度で対前年で低下したこと自体が過去22年間でたった4回しかなく、1997年度(消費税の3%→5%増税)と2008年度(リーマンショック)以外はすべて安倍政権に集中していると強調し、更に2015年度が2年前の2013年度をも下回っていることを指して「そんなことは過去22年で5回しか起きていない」と畳みかけます。そしてアベノミクスを3年間で比較すると、民主党政権時代の3分の1しかGDPを伸ばせていない、しかも民主党政権下では東日本大震災があったから経済にダメージがあったにもかかわらず、その民主党政権時代より安倍政権のアベノミクス時代の方がひどい、と述べ、いかにアベノミクスがGDPに悪影響しか与えていないかという印象を読者に与えようとしています。
 さて、盗人猛々しい議論というのはこのような議論のことを言うのではないでしょうか。著者も指摘しているように、「実質民間最終消費支出」が前年度を下回ったのはリーマンショックを除けばいずれも消費税の増税が行われた1997年度と2014年度の直後です。特に2014年度の増税は影響が大きかったために影響が2年に渡って続いたというだけのことです。そして安倍政権時代の2014年度における消費増税の法案を可決したのは民主党の野田政権時代の2012年6月のことなのです!2014年度に消費増税が施行されたのは、この民主党時代に法定されたことを単に実行しただけのことに過ぎません。安倍政権は、この2014年度の消費増税は対策準備不足で阻止できませんでしたが、その後の8%から10%への増税については2015年10月施行予定と2017年4月施行予定を2度にわたって延期するという快挙を成し遂げており、もしこの更なる増税が延期されなかったらもっと悲惨なことになっていたはずです。財務省利権に過ぎない緊縮財政に則って消費税増税を法案可決してしまった民主党の罪を差し置いて、その第一弾である5%→8%は準備不足で施行せざるを得なかったものの、その後の8%→10%の増税を2度にわたって延期し続けた安倍政権の方を非難するなど、合理的な評価とは思えません。
 さて、この章で次に取り上げられているのは「実質賃金の低下」についてです。上記の「実質民間最終消費支出」の議論の関連で、著者は2015年度までの「実質賃金指数」の推移グラフを掲げて、1996年度以降基本的に下落傾向ではあるものの、特に2014年度の下落が激しいことを捉えて前年度から2.9ポイントも下落したのは過去22年間で最悪だと指摘します。そしてその原因について「非正規雇用が増えて平均値が下がったから」とする説を批判して、①今度は物価上昇率を考慮しない名目賃金の推移グラフを示して、もし非正規が増えて平均値が下がっているのなら名目賃金指数も下がるはずなのに、名目賃金は下がっていないこと、②パートタイム労働者などを除いた一般労働者だけのグラフを示して、これもやはり2014年度に大きく下落していることから、この説は成り立たないと述べています。つまり①によると実質賃金が低下したのはひとえに物価上昇が原因だと結論付けているわけです。
 しかしこれって「だから何?」という話ですね。2014年度に実質賃金が急激に落ちたが、それは物価上昇が原因だ、というのですが、2014年度は消費税増税の年で、それが2014年度の物価上昇の主要因だ、というのですが、消費増税を法定したのが民主党政権時代なのですから、これをアベノミクスが奏功していない理由として挙げるのは濡れ衣もいいところではないでしょうか。
 次に著者はエンゲル係数を取り上げ、2014年度から2015年度にかけて急上昇していることに注目し、
> エンゲル係数というのは、家計の消費支出に占める飲食費の割合のこと
> だ。この数値が高くなればなるほど、「食べていくのがやっと」の状態
> になっていく。
と述べています。しかしこれも「だから何?」という話で、やはり2014年度の消費税増税の影響による「生活防衛」の一環と考えられますから、上記の実質賃金の話と同じです。ちなみに上で引用したエンゲル係数の解釈それ自体も必ずしも正しくなく、エンゲル係数については様々な解釈があることについては、前々スレの #333:
http://grnba.bbs.fc2.com/reply/16340424/333/
で述べたとおりです。
 著者は、このあと
> 物価を無理やり上げて起きる消費の伸びは一時的なものに過ぎない。こ
> んなものに頼って安定的な経済成長ができるわけがないんだ。リフレ派
> は長い目でものを見ることができていない。
と述べていますが、この「リフレ理論」批判については私も実はまったく同感なのです。すなわち「金融緩和」→「インフレ」→「景気改善」というストーリーが間違いだ、という著者の意見は正しい。ですが、いわゆるリフレ派の言う上記の機序とは異なる別の機序:「金融緩和」→「内部留保の増大」→「企業の将来の不安減少による雇用の改善・賃上げ」→「失業率の改善・景気改善」という機序で景気にはプラスに働いているので、結果で評価される経済政策としてのアベノミクスは、やはり奏功していると認めざるを得ないと思うのです。
 また、著者は、名目賃金がG7の国の中で日本だけ下がっている状況を見て、それを解決するのに
> 少なくとも金融緩和がその解決方法にならないのは確かだ。
などと言っていますが、とんでもないことです。日本以外の先進国では、自国の生産力だけでは自国の需要を賄うことができないのに対し、一人日本だけが需要より供給力がはるかに上回っているという事実を無視しています。そんな日本が、もし金融緩和政策をやめたら、その国民全体に配分してもまだ有り余るモノやサービスを、オカネを持たないために手に入らない人が続出するという、まことにバカバカしい不況に突入する、ということのナンセンスさに著者は気付いていないようです。     (続く)

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