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折り返しの時。「もう一度の敗戦」から [現状把握]

マスコミに載らない海外記事「民営化運動と規制緩和運動は失敗だった」とあった。官的企業運営は非効率的との指摘からはじまった「民営化」。しかし今や民営化は官的利権の温床化。かえって「高価格とサービス低下」を招いている。

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国民は民営化と規制緩和で略奪されている

Paul Craig Roberts  2016223

民営化運動と規制緩和運動は失敗だった。/サッチャー政権のもとでの、イギリスにおける民営化は、利益でもうけようという幹部や株主がおらず、現代の巨大民間銀行の損失同様、損失は政府に面倒をみて貰えるため、国営企業運営は非効率的になるという考え方が、その発端だ。サッチャー政権は、国有企業の民営化が、イギリス財政赤字を減らし、イギリス・ポンドへの重圧を軽減すると考えていた。/現在、民営化は、政権が貴重な公的資産を、お仲間連中に安い値段で売り、見返りを与える方法の一つだ。イギリス政府が郵政を民営化した際、ロンドン内の郵政不動産の一つだけでも、全郵政購入価格の価値があったというニュース記事が出た。/民営化は、社会年金や国民健康保険に反対する保守派が“納税者による福祉の支持”を止めさせる方法でもある。アメリカでは、保守派が社会保障とメディケアを民営化したがっている。イギリスでは、保守派が国民保険サービスNHSを民営化したがっている。/イギリス保守党政権は、イギリス史上最大の改革の一つ、国民保険サービス民営化の方向で進んでいるように見える。https://www.rt.com/uk/333270-nhs-professionals-privatized-deloitte//アメリカには国有林の民営化を擁護する連中がいる。民間製材会社は、有利な価格で、木を“伐採すること”を認められており、連中のために政府が道路を建設することも多いのだから、ある意味、森林は既に民営化されているようなものだ。/アメリカでは、規制緩和は高価格とサービス低下を招いた。航空会社が規制されている時代には、企業はサービスで競った。機材トラブルで、便がキャンセルにならないよう、航空会社は予備機を用意していた。乗り継ぎ滞在で、追加費用はかからなかった。/AT&Tが規制された通信の独占をしていた頃は、サービスは素晴らしく、価格も安かった。現在は、多数の規制されない地方独占企業があり、価格は高い。利益と幹部ボーナスが、サービスより重要なのだ。ユーザーは頻繁なサービス停止を経験させられている。保守とブロードバンドの品質向上は@幹部給与の犠牲になっているのだ。/アメリカとイギリスでは、公立大学の学費は余り高くなっていて、大学は事実上、民営化されている。私が大学に通っていた頃は学費ローンなど存在していなかった。州内出身者用学費は、わずかなもので、大学には安価な寮があり、食事も安く食べられた。州立大学の学生の大半は、州の住民だった。/アメリカ軍の多くの部分が民営化されている。軍が以前は自前で提供していたサービスが、今では外部の民間企業に高い経費で外注されている。/民営化と規制緩和の妥当性は、証拠と、それが推進されている本当の理由を踏まえて見直しが必要だ。

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1980年代、PHP刊VOICE』の熱心な読者だった。当時の主論調は、何もかも「民営化と規制緩和」だった。義務教育の民営化まで話題に上った。『ジャパン・アズ・ナンバーワン』(1979)が70万部のベストセラーになった時代だ。あの頃の空気を思い起こそうとしたら、徳田虎雄徳洲会理事長との出会いが思いうかんだ。1981年の春だった。徳洲会の病院がまだ9つの時だった。徳田理事長は、「獅子の会」結成をよびかけながら全国をかけまわっていた。「獅子」は「志士」に通じた。それにわれわれも呼応した。当時30代の仲間だった。それなりの社会経験を積んだ者同士だった。世の中の仕組みもそれなりにわかりもした上で、燃えることのできた時代だった。つい闘病の徳田さんと重なってしまうが、はるか遠い時代に思えてしまう。

あんな時代、30年前との比較で思い当たったことが2つある。ひとつは「モラルの喪失」。もうひとつが「格差の拡大」。

「モラルの喪失」。「民営化」と言うとき、モラルにおいて「民」の方が「官」に優っているという意識が前提だった。今はどうか。「民」のモラルは、あの頃「民」が見ていた「官」のモラルのレベルどころか、それ以下に堕ちてしまってはいまいか。国を挙げての利益一辺倒への傾斜。民の企業において「利益重視」以外のモラルの居場所はどんどん狭められている。そんな「民」に任せたら大変なことになる、そういう意識に変わってきた。

「モラルの喪失」の裏には

「格差の拡大」がある。経済格差を根底に、教育格差やら、精神格差やら、身体格差やら、情報格差やら、もろもろの領野で格差の広がりが認められる。おそらくその格差は広がる一方にちがいない。

いったいこれからどうなるのか。『限界費用ゼロ社会』(1で引いた箇所を思い起こした。



《幸福に関する科学的研究はほぼ例外なく、幸福度は古典的なベルカーブ(釣り鐘形曲線)に沿って上下すると結論する。極度の貧困のなか、一日ニドル以下で暮らし、その週その週をどうにか凌いでいる人類の四割超の人々が、ひどく不幸であることは理解できる。彼らは生きるために最低限必要なものにさえ事欠き、我が子に食事や衣服、簡素な住まいすら与えられずに、その生活からは活力も希望も奪われ、失望の日々を送っている。貧しい人々が貧困から抜け出すと、幸せを実感し始める。収入や財産、安全が増すごとに、幸福感も高まる。だが、ここで驚くべきことが起こる。快適で安全な最低限の生活を営めるだけの所得水準に達すると、各人の幸せの度合いは横ばいになり始める。富とそれに伴う消費のさらなる増加は、幸福度全体の限界収益(1ユニット追加で生産したときの収益増加分、この文脈では、富と消費が増したときの幸福度の追加分)の減少を引き起こし、ある段階を境に、幸福度はなんと反転して、人々はしだいに幸せでなくなってゆくのだ。富の蓄積は心の重荷となり、浪費が常習化し、その精神的見返りがわずかで短命になる一方であることをこうした研究は示している。けっきょくは、所有物が持ち主を所有する始末になる。/快適な水準を超えた富の増大が不満や失望につながる理由を詳細に検証してみると、他者との関係がしだいに社会的地位の介在を受け、羨望や嫉妬によって動かされるものと化してゆくことがわかる。人間関係が皮相的になり、純粋に物質的な意味での損得勘定によってのみ評価されだすという回答が、調査では得られる。/それにもかかわらず、物欲に囚われた人々は、不満の高まりを実感していても、問題は富への執着にあるのではなく、むしろ富が不十分だからだと信じて、物質的利益の追求を加速することのほうがはるかに多い。あと少しだけ物質的な成功を収められれば、地位が向上して他者から揺るぎない称讃が得られ、さらなる消費行動に耽ることで望みどおり心が満たされるはずだという理屈で、これは心理学者が「快楽の踏み車」と称する現象だ。ところが実際には、彼らはこの快楽の幻想に足を踏み入れるたびに不満が増し、逃れようのない中毒の悪循環へと引きずり込まれてゆく。踏み車から降りて、幸せへと続く別の道を歩み始めないかぎりは。》430p)


釣り鐘型曲線.jpg

「幸福度」を表すグラフとして見ていただきたい。横軸が貧富の度合い。縦軸が幸福度。貧しい人々が貧困から抜け出すにつれて、幸せを実感し始める。快適で安全な最低限の生活を営めるだけの所得水準に達するまで幸せの度合いは高まってゆく。ところがある段階に達すると、幸福度は反転して幸せ感が減ってゆく。「富の蓄積は心の重荷となり、浪費が常習化し、その精神的見返りがわずかで短命になる一方である」「人間関係が皮相的になり、純粋に物質的な意味での損得勘定によってのみ評価されだす」。物欲に囚われ、ひたすら物質的利益追求に走り、それがさらに幸福度の減少をもたらす。「快楽の踏み車」「逃れようのない中毒の悪循環」。アベノミクスに問いたい、どんな幸せを望んでいるのですか?

横軸を時間軸として戦後70年を上のグラフにあてはめると、0がちょうど1980年(昭和55年)。日本もあの頃がいちばん舞い上がっていた時期だ。そして終戦直後と現在日本の幸福度が同レベル。稼ぎの大半を宗主国に注ぎ込まされながら「経済第一」で闇雲に突っ走って、気づいたら「幸福度」は走り出す前と同レベル。「幸せさ」の感覚はどこかに置き忘れていた。「そうか!」と今気づく。小宮山量平氏の言う「もう一度の敗戦」とはこのことだったのか。

「格差の極大化」「モラルの完全喪失」、そうしてはじめて心底から湧き上がる「何が幸せか」の問い。まさに今それに向けて折り返すべき時だ。



 


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めい

マスコミに載らない海外記事
2016年3月10日 (木)
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2016/03/post-605f.html

金融体制はテロより大きな脅威

Paul Craig Roberts
2016年3月8日

21世紀、アメリカ人は、途方もなく金のかかる“対テロ戦争”で邪魔されている。何兆ドルもの納税者負担が増やされ、タリバンのように取るに足りない外国の“脅威”との戦いで、何十億ドルもが軍安保複合体利益の利益になったが、タリバンは15年後もうちやぶられていない。この間、金融体制は政治家と協力して、アメリカ人に対し、テロリストが与え得るものより遥かに大きな損害を与えた。

連邦準備金制度理事会と、アメリカ財務省のゼロ金利政策の目的は、規制されない金融体制が絶えず作り出す、借り入れすぎの詐欺的金融商品の価格を維持することだ。もしインフレを適切に評価すれば、このゼロ金利は、マイナス金利で、つまり退職者は、退職後の蓄えから収入が得られないのみならず、貯蓄が意味を失いつつあるのだ。貯蓄の利子を受け取る代わりに、利子を払わされ、貯蓄の本当の価値は減少する。

中央銀行、ネオリベラル経済学者と売女経済マスコミは、人々に、貯蓄せずに、消費するよう強いるため、マイナス金利を擁護している。経済実績のまずさは、経済政策の失敗のためではなく、 人々がお金をためるせいだという考えかただ。連邦準備金制度理事会とお仲間の経済学者や売女マスコミは、連邦準備金制度理事会自身、アメリカ人の52%が、個人財産を売却するか、お金を借りることなしには、400ドル用立てることができないという報告書を発行しているにもかかわらず、貯蓄のし過ぎという虚構を維持している。http://www.federalreserve.gov/econresdata/2013-report-economic-well-being-us-households-201407.pdf

スイスなどの国々で既に導入され、他の国々でも導入されようとしているマイナス金利は、銀行預金に対する税金を避けるため、人々が自分の貯蓄を銀行から高額紙幣で下ろすようになっている。スイスでは、例えば、1,000フラン紙幣(約1,000ドル)の需要が急増している。今やこうした高額紙幣が、流通しているスイス通貨の60%を占めている。

マイナス金利に対する預金者の反応から、ラリー・サマーズなどのネオリベラル経済学者たちが、人々が銀行外で現金を保持するのを困難にすべく、高額紙幣廃止を要求する結果となっている。

ケネス・ロゴフのような他のネオリベラル経済学者は、現金をすっかりなくし、電子マネーだけにしたがっている。電子マネーは、使う以外には、銀行預金から下ろすことができない。電子マネーが唯一のお金になれば、金融機関は、預金者たちから貯蓄を盗むため、マイナス金利が使えるのだ。

人々は、金、銀や、他の形の私的通貨に逃げようとするだろうが、他の支払い方法や貯蓄方法は禁止され、厳しい処罰で電子マネー回避を弾圧すべく、政府がおとり捜査を行うようになるだろう。

この構図が示しているのは、国民が個人貯蓄で、何らかの財政的自立を実現しないよう、政府、経済学者と売女マスコミが同盟しているということだ。政治家連中は狂気じみた経済政策を進め、あなたの人生価値観に対する支配力を持つ連中には、あなたの福祉よりも、自分たちの構想のほう重んじている。

これが、いわゆる民主主義における人々の運命だ。自分たちの暮らしに対して残されて持っている支配力も、奪われつつある。政府は、ごく少数の強力な既得権益集団のために仕えており、彼らの狙いは、宿主経済の破壊をもたらすことになる。中流階級雇用の海外移転は、収入と富を、中流階級から、企業幹部や所有者へと移転するが、海外移転された商品とサービスの国内消費者市場も殺してしまう。マイケル・ハドソンが書いている通り、それは宿主を殺す。経済の金融化は、宿主も企業所有者も殺す。上場した企業株を買い戻して、株価と自分たちの業績手当てを押し上げるために、企業幹部が銀行から借金すると、将来の利益は銀行への利子支払いに転換される。企業の将来収入の流れが金融化されるのだ。もし将来収入の流れが途絶えれば、住宅所有者同様、企業も担保差し押さえられる可能性があり、銀行が企業の所有者になる。

雇用の海外移転と、益々多くの収入の流れが銀行への支払いに転換することにより、商品やサービスに使える金額は益々減少する。かくして経済は成長し損ね、長期的低落に落ち込む。現在多くのアメリカ人は、クレジット・カード未払い分の最少金額しか支払えない。結果は、決して完済できない未払いの膨大な増加だ。こうした人々は、過酷な手数料に見舞われて、到底、債務返済できないのだ。今のクレジット・カード会社のやり口は、もしも、一度支払い遅延をするか、支払いが銀行から返された場合には、以後六カ月間、29.49%という懲罰的年率を課されることになる。

ヨーロッパでは、全ての国々が担保を差し押さえられつつある。ギリシャとポルトガルは、国有財産と社会保障制度の精算に追い込まれた。そこで多数の女性が貧困と売春を強いられ、売春婦の時給は4.12ドルにまで押し下げられている。

欧米世界の至る所で、金融制度は、人々の搾取者、経済に対する重荷になっている。ありうる解決策は二つだ。一つは、大銀行を、規制緩和が助長した集中の前にあったような、より小さな地方の組織に分割することだ。もう一つは、大銀行を国有化し、もっぱら国民一般の福祉のためになるよう運用することだ。

銀行は、いずれかの解決策が行われるには、現在余りにも強力すぎる。だが政府に支援され、ほう助された、欧米金融体制の強欲、詐欺、利己的な振る舞いは、経済活動の破綻をもたらしかねず、将来、私的金融制度という考え方は、現在ナチズムがそうであるように、忌まわしいものになるだろう。

Paul Craig Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリプス・ハワード・ニュー ズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼 の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、とThe Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。

記事原文のurl:http://www.paulcraigroberts.org/2016/03/08/the-financial-system-is-a-larger-threat-than-terrorism-paul-craig-roberts/

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宗主国の干渉はテロより大きな脅威。

暴力団抗争やら北朝鮮核兵器の小型化より、大本営広報部電気洗脳箱が全くウソしか報じないTPPが恐ろしい。暴力団抗争やら北朝鮮核兵器とは違って、大変なとばっちりから、日本人全員逃げられないこと確実。

2016/03/07 日本農業新聞を含むほぼすべての大手メディアが取り上げないTPPの衝撃の真実! 岩上安身による山田正彦・元農水大臣インタビュー(動画)

農協、日本農業新聞も完全に取り込まれている深刻悲惨な状況。

インタビュー内容、生きる気力がなくなる、とは言わないが何とも恐ろしい売国政治家・官僚。こういう情報を隠している大本営広報部、本当に罪深いと思う。同罪だ。

会員になられて、全編をご覧になるよう強くお勧めする。

全く意見があわない知人の一人に、山田正彦氏の『TPP秘密交渉の正体』、強引に郵便ポストに投げ込んでおいたところ、さすがに「TPPはまずいな」と言い出した。

by めい (2016-03-10 06:03) 

めい

「「ほぼすべての大手メディアが取り上げないTPPの衝撃の真実!」山田元農水相インタビュー:岩上安身氏」
http://www.asyura2.com/16/senkyo202/msg/584.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 3 月 10 日 00:02:05:
     

「「ほぼすべての大手メディアが取り上げないTPPの衝撃の真実!」山田元農水相インタビュー:岩上安身氏」
http://sun.ap.teacup.com/souun/19618.html
2016/3/10 晴耕雨読

https://twitter.com/iwakamiyasumi

これより本アカウントで、岩上安身による山田正彦元農水相へのインタビュー「ほぼすべての大手メディアが取り上げないTPPの衝撃の真実!」の模様を実況します。 ( #iwakamiyasumi live at http://ustre.am/eOVh )

インタビュー開始。

岩上安身「TPPの問題は憲法問題でもありますよね」

山田正彦氏「憲法13条(幸福追求権)、25条(生存権)、21条(知る権利)を侵害。そして立法権も大きく侵害。そして司法権もです」

山田氏「先日、岩城法務相は最高裁判決とISD条項とどちらが優先されるのか?という質問に答えられませんでした。もし日本が最高裁判決によってISD条項に従わなかったら、米国は関税分野で報復措置を取る。その意味では、ISDの仲裁機関の方が政府より上位にきてしまうのです」

岩上「今日は、TPPの多岐にわたる問題の中で、テーマを絞ります。メディアが取り上げない衝撃の事実。まずはTPPには農産品の関税撤廃の『除外』規定がなく、『聖域』を含めたすべての農産品がいずれ関税撤廃される可能性がある、という事実。これは例外的に、東京新聞が報じました」

岩上「こうした事実はIWJはずっと取材し、報じてきました。山田さんが農水大臣時代に『TPPを慎重に考える会』を立ち上げましたが、その勉強会をIWJは最初からずっと取材し続けました」

山田氏「勉強会は144回やったのですが、ずっと来てくれていたのはIWJだけでしたね」

岩上「私が最初からTPP反対をしてきたのは、これが安全保障の問題でもあるからです」

山田氏「私が甘利TPP担当大臣(当時)の番記者に、TPPのメリットについて話しているのか?と聞いたら、その番記者は答えられず、『(大臣は)安全保障の話をずっと話していました』と」

山田氏「かつて私が国会議員多数の反対署名を持って訪米ロビイングした時、同行してくれた外務省の若い外交官は、『これまで日本に来た政治家や政府高官は「どうずればTPPに参加できるのか」と言って回っていたが、山田さんは反対と言って回ってくれた。胸がスッとした』と言っていました」

山田氏「今回は、『除外』規定について東京新聞が報じましたが。実は最初に話を持っていったのは日本農業新聞だったのです。しかし報じませんでした。かつては積極的にTPPの問題に切り込んでいましたが、最近は変わってしまいました」

岩上「私が2013年にインタビューした自民党・大西英男議員は、『聖域』について『すぐにではなく、いずれ関税撤廃ということ。自民党の多くの議員も同じ考えだ』と証言しました。これを農業新聞の連載コラムに書いたら大反響。しかしモンサント批判をしたら掲載拒否になりました」

山田氏「私も今回の『除外』規定の件で農業新聞が取り上げなかったとき、『私が書くから載せて欲しい』と言ったら、それも拒否されました」

岩上「本日はこの『除外』規定の他、TPPは遺伝子組み換え食物の貿易を『促進』するものだったという事実、そして『遺伝子組み換え』『国産』などの食品表示がTPP違反になる可能性、さらに日本の食の安全基準・表示を決定する場に米モンサント参加の可能性が!という事実もうかがいます」

山田氏「『国産』表示に関して先に言いますと、TPPでは第8章(TBT)で、その表示を決める際に他国の『利害関係者』を入れることが定められています。米カーギルなどが国産表示に反対して、その意見が通る可能性があるのです」

岩上「政府はTPP承認案とTPP関連法案を3月8日に閣議決定し、今国会に提出予定です。3月中に衆参両院のTPP特別委員会が設置され、4月に審議を開始し、今国会での承認・成立を目指す予定。関連法案は計11本を束ねた一括法案です」

岩上「そして3月2日、参院予算委で安倍総理は『ほとんどの国々が98%の関税を撤廃したのに対し、日本の関税の撤廃率は82%にとどまるという交渉の勝利を得た』と強調しました」

山田氏「成果ではありません。『聖域』(586品目)についても、3割が関税撤廃の対象なのです」

山田氏「本来2国間協定では関税撤廃の『除外』ないし『将来的に見直し』という規定があり、例えば日豪EPAはコメは『除外』です。しかしTPP には一切この規定がないのです。東京新聞が外務省と経産省に確認し、私も農水省に確認しましたが、いずれも『規定はない』と答えました」

山田氏「つまりTPP協定文は、すべての農産品が『例外なく』関税撤廃の対象となるということを定めているのです。さらに日本は名指しで『聖域』について7年後に『関税撤廃』を前提とする再協議をすることを義務づけられているのです。しかも7年以内でも要請があれば再協議があります」

山田氏「さらに、例えば牛肉は15年後までに大幅削減となっていますが、協定文を見ると、この削減ないし撤廃までの期間を繰り上げて、前倒しすることもできる、と書いてあるのです」

山田氏「米国は(私が調査した時は)2兆円もの不足払いを農家に行い、3000億円の輸出補助金で保護している。すると生産コスト60kgあたり1万5000円ほどのコメが3000円で入ってくる。これでは太刀打ちできない。日本の農家でコメを作る人はいなくなります」

岩上「『除外』規定の話について。山田さんや内田聖子さんら『分析チーム』がTPP協定文(英文)を独自分析しました。そもそも日本政府が仮約を発表するまでに2カ月かかったのですが、交渉で日本側はTPPの正文に日本語を加えることを要求すらしていなかったことを政府が認めました」

山田「TPP協定文『第2.4条(関税の撤廃)』を見ると、『別段の定め(=除外規定)』がない限り、締約国は『附属書2―D』に従って『漸進的に関税を撤廃する』と書かれている。2年半前にUSTRのカトラーに『コメだけは例外にできないのか?』と聞いたら、はっきり『できない』と」

岩上「米韓FTA(12年3月)ですら韓国側にコメの『除外』が認められていますね」

山田氏「カトラー氏は私に『米韓FTAを見ろ。TPPではそれ以上のものを求める』と言いました。コメも例外ではなく、すべての品目が関税撤廃の対象になるという事ですね」

岩上「WTO協定でも農業交渉で『非貿易的関心事項(食料安全保障・環境保護など)』の考慮を義務づけている。しかしTPPは、今度は非貿易的関心事項を考慮したら、ISDで訴えられる仕組みになっているわけですね」

岩上「そして『付属書2ーD』を見ると、『オーストラリア、カナダ、チリ、ニュージーランド又は米国』の要請で、『日本国』は発効7年後に関税撤廃を前提とした再協議に応ずる』ことが義務付けられている。名指しで再協議のターゲットになっているのは日本だけ。いったい何の懲罰なのか」

山田氏「農業でここま譲歩し、(日本が勝ち取ったという)自動車分野でも、日本車の関税撤廃は最長30年と長く、さらに日本側に『違反』があったら撤廃までの期間をもっと延ばしても良い、となっている。経済分野でもメリットがありません」

岩上「再協議の問題について民主党の福島伸享議員が国会で追及したところ、石原伸晃TPP担当相は『日本は(7年後に要請があっても)再協議には臨まないんだと思います』などと嘘を連発」

山田氏「息を吐くように嘘をつくとはまさにこのことですね。再協議は義務づけられているのですから」

岩上「一番影響を被っている畜産業界――日本酪農政治連盟の副委員長は昨年12月の民主党のヒアリングで『瞬間的な緩和策と努力の結果だということで納得させられている』『今は悲しいながら、国にお守りいただきたいというスタンスを私たちもとらざるを得ない』と悲鳴をあげています」

山田氏「ここで副委員長は『今なら離農して転職できると考える30代半ばの農家も相当多い』と言っているが、それも難しいだろう。畜産農家は設備等々で3~4億円の借金を抱えていますから」

岩上「米韓FTAで韓国政府は廃業した農家へ補助金を出した。一方の日本は、IWJが農水省に取材したところ『廃業支援は現在もないし、今後も考えていない』と」

山田氏「私は大臣在任中からずっと廃業できるようにする法整備が必要と訴えてきました。農林中金などを使えばできるんです」

山田氏「農家は農家をやめられないシステムになってしまっている。しかし政府試算では廃業農家が100%転職できる前提になっている。これは自殺者が出ますよ」

第二部として、TPPは遺伝子組み換え食物の貿易を「促進」するものだった!「遺伝子組み換え」などの食品表示がTPP違反になる可能性!…といった事実について触れる予定でしたが、インタビューが長時間となってしまったため、本日はここで終了し、続きは後日再度インタビュー致します。

TPPの問題について、日本農業新聞ですら追及しなくなった今、様々な事実を報じているのはIWJのみという状況になってしまっています。

 
by めい (2016-03-10 06:05) 

めい

《自民党の将来がない事を見通したうえで、先がないから今選挙をやるという極端に身勝手な政治手法》がまかり通る安倍政権。
《対立と分断の手法で安倍政権が突き進む以上、その流れを変えるには安倍政権を交代させる以外に方法はない。》

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米国の顔色を伺って米国の対日侮蔑をもたらした湾岸戦争の前例ー(田中良紹氏)
http://www.asyura2.com/16/senkyo203/msg/690.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 3 月 31 日 14:50:05: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU 
 
米国の顔色を伺って米国の対日侮蔑をもたらした湾岸戦争の前例ー(田中良紹氏)
http://www.twitlonger.com/show/n_1sogo4e
30th Mar 2016 市村 悦延 · @hellotomhanks

3月29日安保法が施行された。
その日、安倍総理は参議院予算委員会で「安保法を廃止すれば、日米同盟の絆は大きく毀損される」と答弁し、自公両党は30日に野党5党が提出した廃止法案の審議を行わない事を確認した。国民の理解が十分に進んでいない事を認めながら、安倍政権は安全保障問題で国民的議論を封じ込め、既成事実を積み重ねて自衛隊に米軍の肩代わりを演じさせようとしている。国民に理解させないまま米国に追随する事が、当の米国に対日侮蔑の感情をもたらした湾岸戦争の前例を日本政府は忘れてしまったようだ。

湾岸戦争を巡っては「日本は人的貢献をせずただ金だけ払ったため世界から馬鹿にされた」と言われるが、当時ワシントンを取材していたフーテンに言わせれば、それは一部の人間が作りだしたデマゴーグである。当時の村田良平駐米大使も認めているように、米国は日本の1兆円を超す支援金を本音では大変に感謝していた。ただ当時は日本経済が米国を圧倒し、米国内にジャパンバッシングの感情が高まり、感謝を素直に表明できる状況ではなかった。一方で、米国の指導層は日本が米国と肩を並べる大国になる可能性を意識していたが、湾岸戦争における日本政府の対応に大国としてのふるまいを感じさせるものがなかった。

イラクのクウェート侵攻が起きたのは90年8月2日である。冷戦が終わって初の侵略戦争に国際社会はどう対応するか。各国とも夏休みが明けると議会を開いて対応を協議し、その結果、冷戦のために機能してこなかった国連主導の集団安全保障が行使されることになった。

ところが日本だけは国会を開かず、日本政府は米国政府に支援金の提供を打診するだけだった。これを見て米国はどう思ったか。中東の石油は日本経済の生命線である。その地域で戦争が起きているのに国会も開かず、
国民に問題の重要性を説明し超党派で対応策を議論する事をしない国の姿に大いなる侮蔑を感じた。米国政府は「日本は大国になるかもしれないと思ったがとんでもない。自国の重要な問題を国民的議論にせず、米国の顔色を伺うだけの国は所詮は従属国だ」との結論に達した。そこから日本に対する脅しといじめが公然と始まる。ジャパン・ハンドラーと言われる連中に「ショウ・ザ・フラッグ」とか「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」と上から目線で言われるようになり、日本政府はそれが「トラウマ」となって米国の言いなりになっていく。その最終段階に今回の安保法制はある。

第3次日米ガイドラインが先に作られ、そこに日米同盟のグローバルな展開が明記され、自衛隊に地球規模での米軍の肩代わりをさせる法案が十分な説明もないまま可決された。米軍の狙いは中東でのテロとの戦いに自衛隊を活用する事にある。これまで自衛隊に戦闘で死傷者を出すことはなかったが、これからはその可能性が現実になる。そのため安倍政権は安保法が施行されても新たな任務の実施は当面見送るという。参議院選挙の前に死傷者が出るようなことになれば、選挙への重大な影響が懸念されるからだ。しかし法律が施行された以上新たな任務をいつまでも見送る訳にはいかない。しかも安倍総理が「安保法を廃止すれば日米同盟は毀損される」と発言した事で、日本を「米国の顔色を伺うだけの従属国」と見る米国の意識はさらに強められた。いずれ自衛隊員に犠牲者が出る事は間違いないが、問題はその時点でも国論が分断されている事である。

安保法が施行された29日に日本記者クラブで会見した山崎拓元自民党幹事長は、米国のアフガン戦争に協力した「テロ特措法」やイラクのサマワに自衛隊を派遣した「イラク特措法」を成立させた経験から、裏舞台では当時の民主党幹部と小泉総理との間で協議を行っていた話を披露し、「安全保障問題は超党派で決めるのが原則である」と述べた。山崎氏によれば小泉元総理も安倍政権が野党と対立したまま安保法を決めた事に反対しているという。そして自衛隊員に死傷者が出れば世論は一気に安倍政権を非難するようになり、自民党は政権を失うとの見通しを示した。であるから安倍総理は衆議院選挙も死傷者が出る前に行って、その後4年間の任期を固め、死傷者が出ても選挙を行わずに持ちこたえようとしているのかもしれない。そのための衆参ダブル選挙だとすれば、それは自民党の将来がない事を見通したうえで、先がないから今選挙をやるという極端に身勝手な政治手法という事になる。

湾岸戦争以来、日本を侮蔑の対象としてきた米国は、米国の国益に協力する安倍政権を歓迎はするが、しかし同時に侮蔑の感情も増大させ、ついには日本無視にもつながる。フーテンには現在の安倍政権の姿勢が日米の両国関係を良好にする道だとは思えない。一定の緊張感を持つ同盟こそが望ましいが、安倍政権にそれを求めても所詮は無理な話である。

対立と分断の手法で安倍政権が突き進む以上、その流れを変えるには安倍政権を交代させる以外に方法はない。その方向に向かって日本の政治は流れの速さが急速に増していくようにフーテンには思える。

by めい (2016-04-01 04:28) 

めい

「もっと大きなところからの方針転換」!

   *   *   *   *   *

382:堺のおっさん : 2016/04/08 (Fri) 23:12:33 host:*.ocn.ne.jp
飯山御大質問です。

甘利の件で、あのアメリカ手羽先の東京地検特捜が動き始めました。
当初、甘利の立件はないと踏んでいたのですが、この方針転換は単なるガス抜きには思えない。

もっと大きなところからの方針転換を感じます。アメリカ内部の力関係の決定的な変化。
あるいは、5月の安部・プーチン会談に向けた路線転換。

まあ、日本の権力が路線転換したとは思えないので、アメリカの事情かと。
アメリカで否決する前に、日本で批准させない。さすれば自動的にTPPは不成立。

アメリカさえも食い物にするコングリマリットに対する静かな反撃かと。
さすれば、アメリカ戦争屋はまた一つ食い扶持を失う。こうした見方はどうでしょうか?

383:飯山一郎 : 2016/04/09 (Sat) 00:43:03 host:*.ocn.ne.jp
>>382 堺のおっさんの推理は,お見事! 正解! 脱帽! 同感です。

安倍の官邸には,ロシアとの関係緊密化を目論む勢力がいて,この親露勢力が(戦争屋を抑えて)
昨年末あたりから優勢になって,安倍総理を主導しています。

つまり,安倍の官邸には,米国戦争屋を抑え込める政治力をもった親露勢力が出現している! と。

そうして,3月初旬,以下のような↓動きが同時期にあって,これは「親露派の勝利」を思わせます。
  ・ 日本政府は唐突に辺野古基地工事の中止を発表
  ・ 安倍側近・甘利明が失脚
  ・ 田母神の失脚工作
  ・ ナベツネの辞任
  ・ 高浜原発3・4号機の運転差し止め仮処分決定

次の「予定」も官邸内の親露派には有利です。
  ・ラブロフ外相の訪日は4月15日
  ・安倍首相のロシア訪問は5月6日か?

あのアメリカ手羽先の東京地検特捜の動きは,2月末でピタリと止まってますが…,ここにきて,
東京地検特捜が動き始めるとすれば,私も,「もっと大きなところからの方針転換」を感じます。

TPPの不成立は既定事項ですが(これに日本の政治家は無知),TPPには関係がない勢力が
アメリカで生まれています。これも親露派です。

すると当然,アメリカ戦争屋はまた一つ食い扶持を失う!と。

こうした堺のおっさんの見方・考え方は↑正解! お見事です。

by めい (2016-04-09 05:43) 

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