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★現金廃止と近現代の終わり 田中宇 [現状把握]

田中宇氏の今回配信分、いつものことながらずっしり重い記事で、ちょうど1ヶ月前の記事「ドル覇権の終焉」のコメント欄にでもメモしておこうと思ったのですが、前回ちょうど「現状把握」のカテゴリーを設けたところなので、そのカテゴリーで新しい記事としてメモしておくことにしました。

 

1.「ナショナリズム」は終焉に向かうのか

2.「民主主義」は終焉に向かうのか

3.現金は廃止に向かうのか

4.「近現代の終わり」の後に来る世の中は

 

以上、4つの問いが突きつけられています。「パラダイムの変換」というのでしょうか。頭の中の図式を変えることが迫られているようです。田中氏の記事、これまで無料分だけ読んできたのですが、今有料分(半年3,000円)を申込んだところです。あわせて金融世界大戦 第三次大戦はすでに始まっている』も購入しました。


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田中宇の国際ニュース解説 無料版 2015422日 http://tanakanews.com/

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現金廃止と近現代の終わり

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 1年ほど前に「世界の決済電子化と自由市場主義の衰退」という記事を書いた。イスラエルやフランスなどが、現金を廃止してすべての決済を電子化する計画を進めていると知ったのが、この記事を書いたきっかけだった。その後、イスラエルからは報道が出てこないが、フランスでは今年9月から、現金決済の法定上限額が3千ユーロから1千ユーロに引き下げられる。


世界の決済電子化と自由市場主義の衰退

http://tanakanews.com/140627cashless.php


 外国人観光客の現金利用の上限も、1万5千ユーロから1万ユーロに下がる。銀行は、1カ月間に1万ユーロ以上の現金の預金化や預金の現金化について当局に通報する。イタリアやスペインも、現金決済の制限を強化しつつある。南欧では「多額の現金を使うのは悪い人」になりつつある。今年1月の、大騒ぎになったパリの「イスラム」テロ事件以来、フランスでは「テロ対策」の重要性が喧伝され「テロ対策のために現金を廃止しよう」という政策が人々に受容されるようになっている。


http://tanakanews.com/150303terror.htm

テロ戦争を再燃させる


 米シティ銀行の分析者(Willem Buiter)は、最近の欧州のようなマイナス金利の時こそ現金を廃止する好機だと説いている。欧州ではQEなど金融緩和策によって金利がマイナスになり、銀行に多額の預金をおいておくと金利を取られて元本が減る。多くの投資家が、できるだけ資産を預金でなく、できるだけ現金にしようとする。当局が、投資家の資産現金化を放置すると、マイナス金利策の効果が薄れる。現金を廃止し、資金のやり取りを電子的な口座間取引だけにすれば、人々は資金をどこかの口座に入れておくしかなくなり、口座から金利または手数料の形で徴集することで、当局がマイナス金利策を確実に実行できる。


 EUが今の時期に現金廃止・決済総電子化を進める、これ以外のもっと大きな理由があると、私は考えている。それは、EU統合による国民国家制度の終了(縮小)との関係だ。今後EU統合が進むほど、EUにおける徴税は、各国家でなくEUが統括して行う傾向が強まる。フランス革命で国民国家が発足して以来「納税」は、兵役と並び、国民が国家の主権者であることに付随する、愛国心に基づいて喜んで行うべき義務だった。国民国家は、教育や世論形成(マスコミ)によって国民の主権者としての自覚(愛国心、ナショナリズム)を涵養し、喜んで納税や兵役を行うようにする。国民国家制度がうまく機能していると、国民は喜んで納税するので、国民の収入が現金という匿名性の高い資産の形で得られる状況でも、収入の現金を秘匿して脱税を試みる国民が少なく、高い徴税効率を維持できる(実際はそんなにうまくいかないが)。


http://tanakanews.com/080814hegemon.htm

覇権の起源


 欧州諸国がEUに国家統合される際、同時に愛国心も統合し、従来の各国の愛国心の代わりにEU全体の愛国心「愛欧心」を人々に植えつけられれば(愛国心が統合可能なものか疑問だが)、人々が喜んで納税する状態を維持できる。しかし現実を見ると、EU当局は、国家統合をいくら進めても、新たなEUナショナリズム(愛欧心)の創造を試みていない。EU統合は、愛国心やナショナリズムの統合を含んでいない。


 EU統合の目的の一つは「欧州諸国間の戦争抑止の恒久化」だ。戦争は、各国が自国を強化しようとして敵対的な愛国心を相互に扇動する時に起こりやすい。愛国心の涵養と扇動は、強い国民国家を作るための策であると同時に、せっかく作った国民国家を破壊する戦争を引き起こしやすい諸刃の剣だ。EU統合の際、欧州各国の愛国心を統合すると、欧州諸国間は戦争しにくくなるが、代わりにEUは、ロシア、イスラム世界、米国など外部勢力との間で相互のナショナリズムを扇動して戦争になりやすくなる。EU上層部の人々は、ナショナリズムなしでEUを統合し、各国の旧来のナショナリズムを長期的に弱めることを画策していると考えられる。


 ナショナリズムや愛国心、民族意識の超越は、究極の戦争抑止策であり、人類史上、近現代(モダン)の終わり(まだ名前もついていない新たな時代の始まり)を意味する。これは人類の「進化」だが、同時に、人々に喜んで納税させてきた徴税制度はどうなるのかという問題を含んでいる。何も策をとらないと、愛国心の低下と反比例して脱税が増える。現金廃止と決済電子化を進めれば、国民が愛国心を発露して納税の手続きをわざわざとらなくても確実に徴税でき、とりあえずの対策ができる。


 欧州内でも、ドイツや英国は、現金利用について規制を設けていない。EUを主導する独仏のなかで、現金利用について放任派のドイツと規制派のフランスが齟齬をきたしている。これが過渡期の役割分担なのか、フランスの試みに対してドイツが否定的であるのかはわからない。


 米欧マスコミでは、現金廃止・決済総電子化が、テロ対策(犯罪防止)や、徴税効率の向上の観点から好意的に語られることが多いが、政治的な観点からは、与党や当局が、反政府的な野党や活動家の行動を監視してスキャンダルを起こしたり言論封殺に使うことが考えられるので、民主主義の阻害要因になる。与党や当局は、全国民がいつどこで何にお金を使ったかデータベースを検索し、野党や反政府派の行動を監視することが容易になる。与党は、台頭しそうな野党政治家を事前に潰し、政権交代を防げる。野党は、電子決済のデータベースを検索できないので与党のスキャンダルを暴けず、この点で民主主義が弱体化する。


 電子決済は、誰と誰の間でいついくら決済されたか政府当局が把握できるが、これは当局が決済システムを運営もしくは監督している場合だ。電子決済の中でもビットコインなど、決済当事者以外の人が決済の内容を知ることができないよう暗号化をほどこしてある場合は、むしろ現金よりも当局による決済の把握が困難だ。だから、ビットコインに対して人々が悪い印象を持つような策が、諜報機関やマスコミによって行われている。ウィキリークスが、正義感に基づく当局関係者の悪政暴露の匿名性を暗号化技術によって高め、米当局がウィキリークスを攻撃しているのと同じ構図だ。


 業界別に見ると、すでにレンタカー代金やホテルの宿泊代といった人々の移動(旅行)に関する決済は世界的に、犯罪防止策としての個人特定を理由に現金払いが歓迎されずカード決済が奨励され、人々の移動が監視されている。インターネットや携帯電話など通信の分野も同様だ。現金廃止は、こうした監視をさらに強化する。米国ルイジアナ州では、中古品の売買を現金で決済することを禁止する州法が2011年から存在している。中古品は誰でも売れるので、徴税と治安維持(監視)の両面から、記名式決済が義務づけられてる。この傾向は今後広がるだろう。


 グーグルなどが、全人類の電子メールやブラウザの閲覧履歴、スマホ保有者の今いる場所の位置情報などを盗み見することを、米当局(NSAなど)に許可している(もしくはグーグル自身が諜報機関として機能している)ことも含め、全人類の活動の全体が、米国や自国の当局によって監視される状況が強まっている。


http://tanakanews.com/150117google.php

覇権過激派にとりつかれたグーグル


http://tanakanews.com/120125SOPA.htm

米ネット著作権法の阻止とメディアの主役交代


http://tanakanews.com/130617NSA.htm

全人類の個人情報をネットで把握する米軍諜報部


 人類は、この状態に「慣れる」「がまんする」しかない。年寄りにとっては「とんでもない」ことだろうが、若い世代は生まれた時から監視されるのが当然なので違和感が少ない。「プライバシーは死んだ。二度と戻ってこない」と、情報工学のハーバード大教授(Margo Seltzer)が今年のダボス会議で語っている。人類は「進化」でなく「退化」している(進化、退化という二元論はインチキくさいが)。なぜこんな状況になっているのか。一つ考えられるのは「経済成長の鈍化」との関係だ。


 18世紀末以来、国民国家革命(諸国の独立)と産業革命(経済成長)という2つの革命が、欧州から世界に広がったのが人類史上の近現代だった。ナショナリズムで強化された民主主義の国民国家が、匿名決済の現金利用に象徴される自由市場経済を維持して経済成長するのが近現代の世界のモデルであり(自由市場経済の対照物として計画経済の社会主義も発案された)、これらが失敗して経済成長が鈍化するとナショナリズムの扇動が悪化して戦争が起きる仕掛けだった。しかし近年、先進諸国はもはや成熟して経済成長できない。米国や日本では、通貨を無制限に増刷して株価を吊り上げ、これを経済成長だと偽っている。


http://tanakanews.com/150301bank.php

QEやめたらバブル大崩壊


 近現代モデルの発祥の地である欧州では、国民国家やナショナリズムを捨てるEU統合が進められ、現金の廃止が試みられている。もう一つの先進国で、覇権国でもある米国は、世界の経済成長の主軸が中国などBRICS・新興諸国に移転することに合わせ、国際政治の構造を多極型に転換する隠れ多極主義を推進している(近現代は「米英覇権の時代」でもあった)。これらの転換はおそらく、近現代のモデルに基づく先進諸国の経済成長の時期が終わりつつあることと関係している。


 BRICSや新興諸国の多くは一応、国民国家のモデルを使っているが、先進諸国よりモデルに対するこだわりが少ない。多民族なので国民国家モデルに適合しにくい国も多い。中国は民主主義でないし、自由市場主義だが社会主義を掲げている。BRICSが主導する今後の世界の経済成長には近現代のモデルが適用しにくく、長期的に別のモデルが形成されていく可能性がある。その意味で今後、近現代が終わりになるかもしれない。


(私は以前、ナショナリズムを統合しないのでEU統合は近現代の終わりを意味しないとか、BRICSの勃興は近現代の範疇を出ない「モダンの出戻り」だといった趣旨を書いた。しかし今考えると、EUがナショナリズムを放棄すると考えれば近現代の終わりだと言えるし、BRICSが今後もずっと近現代の規範を重視し続けるかどうかわからない。今は多極型世界への転換の初期であり、転換した後の状態がまだ見えてこない)


http://tanakanews.com/100907modern.php

多極化とポストモダン


 現在、国民国家の重要性が低下するとともに、民主主義が重視される傾向も低くなっている。米国の2大政党制は911以来、両党が好戦策を競い合って違いが減り、無意味になっている。日本は鳩山政権が倒されて以来、自民党が官僚傀儡化を強めて政権に戻り、官僚独裁制が強化されている(311震災は官僚復権のまたとない好機となった。「がんばれ東北」が延々と喧伝されるのは、その本質が「がんばれ官僚」だからだ)。米国も日本も民主主義が形骸化しているが、これは民主主義の国民国家制を維持しても経済成長できなくなったことと関係している。


 民主主義が必要ないなら、政府や与党が国民への監視を強め、政権交代を抑止してもかまわないことになる。経済成長が鈍化すると暴動や犯罪が増えるので、それを抑止する「防犯」のためにも国民への監視強化が必要だ。次の時代の経済成長を担う中国など新興諸国は全体的に、強い政府が国民を監視する体制が好きなので、監視強化は大歓迎だ。新興諸国は徴税体制が弱いので、現金の禁止で徴税効率を上げられるのも歓迎だ。民主主義や言論の自由、プライバシーの尊重は今後、近現代から次の時代への移行とともに、終わっていく可能性がある。


 とはいえ、現金廃止・決済総電子化は、人々の「できるだけ実体がある、自立した価値を持つかたちの財産を好む」という経済行動原理に反しており、失敗するという指摘もある。現金廃止は、超モダンな電子マネーによる資産備蓄につながるのでなく、近代以前の金地金備蓄を煽りかねないという見方だ。次回はそれについて有料配信で分析する。



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めい

田中宇インタビュー:岩上「加速崩壊する米国の覇権」
2015-05-15
http://bator.blog14.fc2.com/blog-entry-2839.html

 普段の論調は慎重婉曲な田中宇氏ですが、岩上氏が直裁で大胆な発言を引き出しています。
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「「鳩山・小沢のコンビが対米従属をやめる最後の可能性でした。」田中宇氏インタビュー:岩上安身氏」  5/15  「晴耕雨読」から

5月14日「岩上安身による国際ジャーナリスト・田中宇氏インタビュー」の模様を実況します。
新刊『金融世界大戦』の内容を中心にお話をうかがいます。
本日の配信は会員限定(http://iwj.co.jp/wj/member/limited … …)での配信となります。

岩上「本日は田中宇さんをお招きしました。あの硬質で情報量の多いメルマガを読んでいますと、田中さんは機械ではないか、とも思えてきます。世界は今どうなっているのか、ウォッチし続けている田中さんにお話をお聞きしたいと思います」

田中氏「私の関心の中心は、米国の覇権についてです。そのことをずっと見てきたし、これからもずっと見ていくことになると思います」

岩上「本日は、新刊『金融世界大戦~第三次世界大戦はすでに始まっている』の内容に沿ってお話をお聞きします。こちらの本は、後ほど田中さんにサインしていただいて、『IWJブックショップ』で会員の皆様がお買い求めいただけるようにします」
「まず、昨日配信されたメルマガの内容からおうかがいしたいと思います。カナダ人が国境の検査官によってこれまでに25億ドルを没収されている、と。没収されたカネは、米当局の予算の一部になっているそうですね」
「また、ファーグソンやボルチモアでの暴動から、数年以内に米国内で武装蜂起が起きる可能性もある、とのことですが」

田中氏「ファーグソン市民の7,8割が警察によって送検されています。市民のほぼ全員が犯罪者扱いされてしまっています」
「防衛のために銃を持っているわけですが、株価が1万5千円を割ったら、自宅に銃弾を用意するように、という記事もあります。
 ファーグソンやボルチモアでは、資本家が黒人の対立を煽るようなことをしています」

岩上「米国では50州のうち、22州が財政赤字、とのことですが」

田中氏「リーマン・ショックの直後は45州でした。いまだに、リーマンショックから立ち直れていない州がほとんど。米国は実体経済が弱り、どんどん金融だらけになっています」
「米国は先進諸国の中で、医療費が最も高く、医療の質が最も低い国。
 オバマ・ケアは大変掛け金が高いので、若い人は入りたがりません。しかし日本はどんどん、米国のようになっています。国民健康保険の崩壊や非正規雇用の拡大など」

岩上「日本でも、救急車に乗ったら3万から5万取ろう、という話になっています」

田中氏「日本のアメリカ化ですね。しかし、米国には市民メディアがたくさんあって結構ギャギャ―言いますが、日本はそうならないですね。『汝、臣民』だらけですからね」

岩上「2033年には公的社会保障制度の基金が底をつく、と」

田中氏「ハーバードは、2020年代に立ちいかなくなる、と言っています。
米国も何度も公的な保険制度を作ろうとしましたが、医者や製薬会社などのロビイストの抵抗で実現しませんでした」

岩上「米国の倫理の低下も著しい、ということですね。NSAの職員が知り合いの異性のメールなどを漁って盗み見している、と。これはストーカーと変わらないですよね」

田中氏「飛行場の検査でも、そういうことをやっている連中がいますね」

岩上「米国内で内戦の危機、ということですが。テキサス州の右派や言論人が『米政府がテキサス州を軍事支配しようとしている』と大騒ぎになった、と」

田中氏「これは明らかな、テキサス州の右派に対する煽動ですよね」

岩上「日本は、政治的にも軍事的にも米国にぶらさがっています。米国債を買い支えているわけですね。ドルが崩壊したら、日本国債がダメになってしまいます。まず、FRB議長が『QE3』が失敗した、と発言しました」

田中氏「QEというのは量的緩和のこと。これが個人消費を押し上げる、と日銀などは言っています。経済が弱い国がこれをやると、数ヶ月で破綻します。しかし米国は、ドルが基軸通貨なので、これを延々とやっている訳ですね」

岩上「なぜ日銀は、アベノミクスなどと言って、米国がやめたタイミングでQEを始めたのでしょうか」

田中氏「日本は、米国がやめたのとほぼ同日にQEを始めた。日本としては、米国が危険になることを救ってあげた、ということです」

岩上「日本の『出口』はどうなるのでしょうか」

田中氏「出口はないですよ。
米国は日本がいたから、出口があったわけですね。
日本の金融関係者は、ブルームバーグやロイターなどの取材に応じて、『出口はない。早くやめるべきだ』と発言しています」

岩上「苦しいから、麻薬を打って一時的に苦しさを紛らわせている状態ですね。しかし、『出口』がないということは、この麻薬をやめることができない、ということですよね」

田中氏「キャッシュをなくそう、という動きが世界的に出ています。
フランスでは、数百万ユーロ以上の決裁は、キャッシュですることができない、ということになっています。
口座で取引をしなさい、と。日本は世界で有数の現金大国ですが」

岩上「グリーンスパン元FRB議長が、長期的な金相場の上昇を予測しました。QE3は失敗だった、とも宣言しています」

田中氏「彼は、額は言わなかったものの、世界の中央銀行に対して『今のうちに金を買っておきなさいよ』という意味で言ったのだと思います」

岩上「今はNISAをやっている人も多いです。FXをやっている人も多い」

田中氏「非常に危険です。QEをやっている限り、株価は上がります。しかし、QEには終わりはないので、もう崩壊しかありません。終わる時は、全部終わります」

「米国の雇用統計や経済統計はおかしい。粉飾されています。
労働参加率が低いということは、失業率が高いということですが、そのことが統計に出てきません。統計上は失業率は6%ですが、実際は20%ぐらいに達しています」

「ハーバードに留学したことがありますが、米国の知的エリートは非常に頭がいい。世界中から留学生が来ていますから、中東の問題でも、彼らが失敗するとは思えません。
現在は、金融崩壊を防ぐということが、全員のコンセンサス」

「米国は自滅的なところがあり、バブル崩壊にしても、イラク戦争に関しても、わざとやっていると思います。この仮説(世界の多極化)が正しいとしか思えない方向に、世の中は動いていると思います」

岩上「私は正直、『多極化』については分からないところがあります」

田中氏「イラク戦争についても、大量破壊兵器が無いことは、誰でもしっていました。これは、『多極化』ということを考えないと、説明がつきません」

岩上「日本の大メディアに対して、不信感をお持ちですよね」

田中氏「私は日本語の新聞は読みません。英米初の情報に接すると、日本の情報は頼りないと思います。共同通信では、経済部にいましたが」

岩上「今回の『金融世界大戦』を読んでいて感じたのは、国際情勢を、帝国の論理と資本の論理の相克として描いているところです。資本主義は差異を前提としたものですが、グローバル化によりフロンティアがなくなり、均質化した後はどうなるか、ということです」

田中氏「そうです。多極化の後、どうなるか、ということが問題なのです。
時代が今に近づけば近づくほど、発展の角度が急です。50年というスパンで考えると、中国の西域の人もかなり豊かになっていると思います。
問題は、その後どうなるか、ということです」

岩上「日本というのは、米国の覇権というものを見て、一極化された世界に過剰適応してきた国です。AIIBで各国が中国についていっている時、日本は相変わらず対米従属を続けています」

田中氏「日本は、米国の崩壊につきあうことで、日本も崩壊していくのだ、ということです。
しかし、日本の報道を見ていると、日本が世界でも稀に見るほどの対米従属国であることを、しっかりと報じていません。これは、官僚による独裁を続けるためです」

「安倍政権ほど、官僚の言いなりになっている政権はありません。自民党は、官僚の言いなりになることによって、民主党を倒して復権しました。
官僚の対米従属システムをどうにかするしかありません。外務省が、米国の意志を代表しています」

「明治維新は、国民が支持した革命ではありません。薩長は英国の傀儡です。
しかし、第一次世界大戦でヨーロッパが自滅し、『勝手にしろ』ということになって、日本は大東亜共栄圏ということになりました」

「鳩山・小沢のコンビが対米従属をやめる最後の可能性でした。これが、官僚とマスコミによって潰されました。このことによって、日本が対米従属をやめる可能性はなくなりました。もう、米国が崩壊してリセットするしかないと、私は思っています」

岩上「先日、ニューヨーク・タイムズ東京支局長のマーティン・ファクラー氏が、いずれ米国は日本に核武装を許す、ということを言っていました」

田中氏「外務省からすれば、核武装をしたら対米従属の終わり。日本が核武装をするのは、米国から見捨てられる時です」

岩上「リーマン危機以来、世界の億万長者の総数が倍増した1646人になりました。これは、地球規模で起きていることです」

田中氏「しかしこれは、暴動によって解決すべき問題ではありません。マネーゲームを禁止するしかありません」

岩上「QEでお金がジャブジャブなのに実体経済が回復しないのは、自社株を買っているからではないでしょうか」

田中氏「企業が自社株を買うということは、株を償却するということ。株価が上がると投資家に褒められます。釣り上げて見せているだけ」

「QEから自社株が全部つながっていて、もう崩壊するしかない。
ウォルマートが理由を言わずに、色々なところから撤退しています。理由を言うと、小売がダメだ、ということが分かってしまうから。
ショッピングモールのフィアット化が進んでいる」

「サブプライムローンの時より、今のほうが状態が悪い、と言えます。昨年末の時点では、リスク軽視が如実になり、ジャンク債の利回りが史上最低を更新しています。
バブル崩壊まで、こういうことが続きます。早ければ、今年中にバブル崩壊が起きる」

岩上「今の日本経済、特に株高は、かなり政治的です。この目的は、日米ガイドラインの改定と集団的自衛権行使容認、そしてTPP。このために株高を演出して、政権の支持率を維持したいのでは」

「QEはもはやポリティカルな問題ではやめられません。乱高下みたいなかたちになっていって、いつか制御不能になる。
債券よりも先に、株が暴落すると思います。株のほうがリスクが高い」

岩上「安倍総理は、この夏までに安保法制をやる、ということを米国に約束しました」

田中氏「日本の政治的意思でどうこう、ということにはなりません。
米国が崩壊した時に、日本も『しっかりと』崩壊します。今年中ですね。『焼けるがまま』の状態になる」

岩上「米国債は世界最大のネズミ講だ、と書いていますね」

田中氏「米国のQE3や日銀のアベノミクスは金融市場を金余り状態にして、相場をつり上げる政策です。これをやらないと、ドルが潰れてしまう、という話です」

「米中戦争はあり得ません。なぜなら、中国は米国債を持っているから。米国は、日本やフィリピンに軍事品を売ることには関心がありますが、戦争をする気もないし、戦争に巻き込まれたくない、と思っています」

岩上「金地金は、現物で世界的に需要増ですが、米金融界が先物で価格操作をしている、と言われています」

田中氏「買っても上がらない状態です。金地金がドルに勝つというのは、一種の信仰のような状態になっています」

「米国の銀行の金庫に、金は預けてはいけない、ということになっています。
キャッシュを禁止するのと同じように、債券システムの中に取り込もうとしているのです。これは、日本でも起こるかもしれません。金地金については、先行きが分からない」

岩上「アメリカの実体経済はマイナス成長です。大学新卒者の83%が仕事に就けない状態です。長期的な電力需要がマイナスだから、というわけですね」

田中氏「昔の中国のような状態ですね。政府の統計が信用できないから、電力需要を見るしかない」

岩上「BRICsと非ドル化の動きについて」

田中氏「米国は、こうした動きをわざと軽視しますよね。上海協力機構に対しても同じ態度です。日本のメディアは米国発の情報を鵜呑みにしているので、BRICsの台頭や中露の接近なんて、あり得ないと思っています」

岩上「サウジアラビアがイエメンを侵攻しました。中東の専門家である臼杵陽先生によると、サウジはかなり場当たり的になっている、ということですが」

田中氏「イランと和解するんじゃないですか。しかし、イスラエルがそれに反対する」

「ネタニヤフはもう、右派との連携よりも、和平とやりたがっている中道派と組みたがっているのではないか。しかし、イスラエルはなかなか転換ができない。イエメンについては、なぜサウジはあんな戦争をするのか、と思っています」

岩上「イエメンについて、米国の動きがおかしい、と指摘されていますね。米国は、サウジの侵攻前にイエメンから撤退しています」

田中氏「サウジのあの戦争は、米国の撤退によって引き起こされました。そもそもあれは、国際法違反です」

「イエメンの停戦は、ロシアとイランが中心となるでしょう。ここにも、ロシアとイランによる多極化を見てとることができます」

岩上「サウジも従米国家ですが、米国は中東からは撤退するのでしょうか」

田中氏「イランからは撤退しましたが、中東からは撤退しない、と言っています。『撤退ではない』と米国は言い続けると思います」

岩上「最初の世界的な覇権国家はイギリスだ、と言われていますね」

田中氏「そうです。他方でロシアは、シベリア鉄道を使った、ランドパワーとしての帝国でした」

「ドイツに資本を提供したのは誰か、というのが重要です。ドイツとイギリスを拮抗させるわけですね。そして、問題を解決するための会議を設けて、イギリスが背後で調停者の位置に居座るわけですね」

「ドイツがすごいのは、戦争責任をすべて認めたうえで、EUに参加していることです。
先日、メルケル首相が来日して、安倍総理に歴史認識についてアドバイスしましたが」

岩上「今後、中国を中心としたユーラシアに覇権が移る時、ユダヤ人は米国から中国に移るのでしょうか」

田中氏「上海に住むと目立つので、ユダヤ人が覇権掌握者として脱皮するのではないでしょうか。そこに住んでいなくても、掌握できる、というように」

「ユダヤ人は、もう一度隠然としたネットワークに戻るのかもしれませんね。新しい多極化の時代は、『ユダヤーチャイナ主義』と呼ばれるかもしれませんね。
日本人も、対米従属をやめて、そこに入ればいいのに、と思います」

by めい (2015-05-31 14:54) 

めい

《デマンド(需要)創出派 と サプライ(供給)重視派の闘いで、サプライ派が負けたのだ。彼らは、これからの新しい世界の動きから取り残されてゆく。このことが、決まった》http://www.snsi.jp/bbs/page/1/

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7月31日に、ハワイで TPP(ティー・ピー・ピー、環太平洋経済協力パートナーシップ)が大失敗して、合意見送り=交渉の無期限延期、すなわち交渉の決裂、崩壊になった。 

 ところが、アメリカ代表のフロマンは、自分の責任を自覚せずに、かつ、責任追及の動きが米議会にもない。実に不思議な感じだ。 フロマンのUSTR代表の地位は、米議会が政権に送り込んだ閣僚であり、各業種の製造業者たちの圧力団体の受け皿である。 誰も責任を取るものがいない、というのは不思議な感じだ。

 ニュージーランドが、乳製品の低関税を一切受け付けなかった、ということでニュージーランドのせいにして、12カ国の代表たちは、皆、嬉しそうに、ニコニコしながら飛行機に乗って帰った。誰も責任を取らない。 

 日本の甘利明大臣も、喉頭がんにかかり、髪が真っ白になるほど苦労したのに、帰ってきても、「ご苦労さん」の労(ねぎら)いもどこからもない。

 あれほどの大騒ぎを、日本の有識者たちもやったのに。「 TPPは、日本の国益に叶う、どうしても合意なければ済まない、重要な経済交渉です」と言って、偉そうな解説をしていた日本の有識者(専門家)たちは、今は、赤っ恥で、黙りこくっている。これも実に不思議な感じだ。

 まるで、大型の台風が来る、で、皆で心配して大騒ぎしていたのに。いつの間にか、台風はどっかに行ってしまって、消えてしまって、「熱帯性低気圧に変わりました」で、誰も騒がなくなるのと似ている。白けるなあ。

 これで、アメリカとヨーロッパが交渉している TTIP(ティー・ティー・アイ・ピー)という、人を喰ったような欧州版のTPPも、雲散霧消する。ヨーロッパ人が、あのISDS(アイ・エス・ディー・エス)条項などという、「アメリカ企業が、進出先の国で 虐(いじ)められたら、その国の政府を、ニューヨークで裁判にかけることが出来る。損害賠償を請求できる 」 などという、アメリカ帝国の傍若無人を受け入れるはずがないのだ。


 TPP の崩壊の原因は、中国主導のAIIB(アジア・インフラ銀行)の設立が3月から騒がれたからだ。中国がぶち上げた AIIB と「一帯一路(いったいいちろ)」構想が、「ユーラシア大陸に これから 新たに10億人分の 巨大な 需要(デマンド)を作る」。 これは、 製造業者とか農業団体(食肉、酪農業者)とかの、商品の供給(サプライ)サイドのことしか考えていない、欧米の先進国の政策立案者(ポリシー・メイカー)たちの歴史的な敗北だ。デマンド(需要)創出派 と サプライ(供給)重視派の闘いで、サプライ派が負けたのだ。彼らは、これからの新しい世界の動きから取り残されてゆく。このことが、決まった、ということだ。 

 それと、金融市場(マネー・マーケット)という 仮想の世界で、実需(じつじゅ)の経済活動を無視して、仮需(かりじゅ)でしかない部分から派生した 金融取引が膨大化して、そこでの金融バクチ(博奕)しか脳がない、強欲金融人間たちが、敗北しつつある。自分たちが今でも、世界の金融の最先端技術(ハイテク)の エリート人間だと、大きく勘違いしていることが、大きな背景にある。

 クレジット・デリバティヴなどという、今やその欺瞞的な手法が満天下に暴かれてしまった、インチキ金融商品で、「お金でお金が生まれる」と信じて疑わない、馬鹿野郎たちの時代が、もう終わっている。 世界は、2008年のリーマン・ショックのあとは、「(うそ臭い)金融 から (中身のある)実物経済(タンジブル・エコノミー)の時代へ 」と大きく変わったのだ。

 だから 世界は、もっと、実需 = 有効需要(イフェクティヴ・デマンド)の創出こそが大事という 偉大なる経済学者のジョン・メイナード・ケインズが言ったとおりに、戻りつつある。マネタリストも 合理的予測派(ラッショナル・イクスペクテイソニスト)も底が割れて、本性が露見して、大敗北したのだ。 そのことが原因で、 米、欧、日の金融市場中心の世界は、いま、激しく再構築 = 変身(メタモルフォーシス)されつつある。 このことに気付かない者たちは、新しい世界の動きから取り残さてゆく。

 アメリカが世界一で、日本はしっかり、お金を払い続けて、アメリカについてゆけば、日本は安泰だ、と考えている程度の人間たちでは、もう、これからの世界( 新興国と途上国が主導する )にはついて行けない。 勝手に自滅するがいい。

by めい (2015-08-19 04:01) 

めい

快哉!待望論さんの見事なリクツです。
《ドル詐欺の株主を追い出さなければ駄目で、中露の肉を切らせてドルを断つ原油安政策のように、株価を下げてドル詐欺が逃げ出すように仕向ける荒療治が必要かもしれません。/そうすれば、原油安と円高を消費者と共に喜ぶ事ができ、輸入と内需で食っていけますし、輸出企業も例外ではありません。》

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原油が高くなると上がる米株、円安になると上がる日本株、消費者の利益に相反する株式市場、もはや公害の域にあります。
http://www.asyura2.com/15/cult15/msg/681.html
投稿者 小沢内閣待望論 日時 2016 年 2 月 25 日 18:08:19:

原油が安くなるという事は、電気やガソリンが安くなり、それを使う企業がコストダウンできて、消費者に安く提供できるという事です。
円高は、それを更に加速させるもので、本来は喜ばしい事で、それは輸出企業も例外ではありません。
なのに、それが正しく株価に反映されないのは、株価は全体の利益とは違う論理で動いているからで、一言で言えば、ドル詐欺による八百長です。
だから、いつまでも不正な株価に左右される企業であってはならず、実力に見合った株価を維持できる体力を持たなければいけません。
具体的には、ドル詐欺の株主を追い出さなければ駄目で、中露の肉を切らせてドルを断つ原油安政策のように、株価を下げてドル詐欺が逃げ出すように仕向ける荒療治が必要かもしれません。
そうすれば、原油安と円高を消費者と共に喜ぶ事ができ、輸入と内需で食っていけますし、輸出企業も例外ではありません。
ペーパーで食ってる連中はドル詐欺と背乗りと心中するしかありませんが、元々ふざけた儲け方の片棒を担いできた連中ですから、彼らが落ちぶれようが大した話ではなく、実体経済にはマイナスはなく、むしろプラスになる位です。
子供の理屈を言いなさんなと言われるかもしれませんが、資本主義詐欺の断末魔にあたり大事な事は、資源詐欺や貿易詐欺や為替詐欺や株価詐欺を大掃除して、経済をシンプルにする事が大事で、それは多少の血を流してもやらねばならない事で、いつまでも植民地のぬるま湯にいては、風邪をこじらせて死ぬか茹で蛙にされるかのどちらかですから、原油安と円高を逆手にとり、連中と一蓮托生の立場を離れて、消費者と利害が一致する道を歩まねば先はありません。
政治の独立も大事ですが、経済の独立があって実現するもので、いつまでもカツアゲのバックリベートを喜んでいる日本であってはいけません。  

by めい (2016-02-27 06:00) 

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