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石黒吉次郎専修大教授講演会の御案内(石黒龍一郎さんのこと) [地元のこと]

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小、中、高の一級先輩です。楽しみな講演会です。


お父さんが学校法人南陽学園第2代理事長の石黒龍一郎さん。この方にはいろいろお世話にもなったし、思い出も多くあります。せんべいの生地製造を業としておられましたが、実は知る人ぞ知る明治大学文芸科黄金期に在学され、小林秀雄、山本有三、岸田国士、菊池寛、豊島與志雄といった錚々たる方々から直に薫陶を受けられた方です。龍一郎さんと岸田国士さんとの縁で、宮内幼稚園の園歌は岸田衿子作詞、中田喜直作曲です。『駿河台文芸』にも何度か寄稿され、私もいただいたことがありますが、レベルがかけ離れていてなんの反応もできず、いただきっぱなしでした。そういえば、青山二郎という方をよく知っておられたようで、『眼の引越』という文庫本をいただいたことがありましたが、これも読み切れませんでした。今読めばどうか、探し出してもう一度眼を通してみたくなったところです。朝の散歩が日課で、その途中ふらっと立ち寄られることもしばしばでした。その頃は私も朝から毎日バタバタの時代で、だいたい父が対応していましたが、今思えばまだまだいろいろお話をうかがっておけばよかったと悔やまれます。「千人共働き」という言葉をお聞きしたのも龍一郎さんからでした。


亡くなられた時、「週刊置賜」に追悼文を書いたのを思い出して引っ張りだしてきました。


 私の父親よりもさらに上、三十年を越す大先輩の龍一郎さんのご逝去を、本来なら天寿を全うされての大往生と思うべきなのかもしれません。ご自身も、この世でやるべきことは何もかも果たし終え、文字通り心置きない旅立ちであられたことと思います。羨ましいほどの見事な一生を見せていただいたようにも思えます。にもかかわらず、いま否応なく感じさせられている心残りの混じったさみしさはどこから来るのでしょうか。


 訃報に接した翌朝、龍一郎さんがいつも座っておられた置賜タイムスの応接椅子に座って、私が言った「さみしいね」の言葉に、即座に返ってきたのが「存在感のある人だったものね」というしみじみとした木村さんの言葉でした。決して誇示することのないじやまにならない存在感、固有の歩みからにじみ出るだれも真似しようがない存在感。歳だからしようがないでは済まされない、かけがえのない存在がこの世から消えてしまったさみしさ、会えなくてもいいから、もっとこの世に在って欲しかった、亡くなられた今、つくづくそう思わされているのです。


 ちょうど今から二十年前の昭和五十五年の冬、当時の宮内商工会青年縮か中心になり、赤湯、和郷の商工会青年部とともに、「いかにして『南陽衆』たりうるか」をテーマにシンポジウムを開催しました。そのときバネラーをお願いしたのが私どもと龍一郎さんとの初めての出会いでした。その時のご発言を読み返してみました。宮内の人間には、だれにも思い当たる実に耳の痛い内容でした。今法政大学の学長をしておられる清成忠男先生がメインの講師だったのですが、龍一郎さんの発言は、中央からの講師の発言を食ってしまうほどのものでした。宮内にもすごい人がいた、それが私どもに共通した思いでした。


 あのときから二十年、あの龍一郎さんの提言をどれだけ活かすことができただろうか。私どもを見て、きっと歯がゆく思いつづけ、そしていつかあきらめてしまわれていたのかもしれません。龍一郎さんの思いに何も応えることなく、漫然と二十年を過ごしてしまったのではないか、その思いが今こうして心残りの多いさみしさになっているのです。


 しかし、龍一郎さんは、多くの文章を残されました。とりわけ晩年の「回想記」と「ゴッホ考」は、老いて益々、まさに最後の坂を登りつめようとする龍一郎さんの、あくまで龍一郎さんらしい淡々とした中に気迫のこもった、まだまだ多くの人に読んでいただきたい、値打ちのある作品です。


  [回想記」の出版祝賀会の話を持ちかけたとき、内輪の合評会をして欲しいと言われ、思えばそれが、私が龍一郎さんのためにやれたささやかなたったひとつのことでした。そういえば、その合評の内容をまとめるはずになっていたのがそのままになってしまったのも心残りのひとつです。この拙い追悼文でお許しください。


 思いのこもった多くの文章を残されて亡くなられたという事は、残された者はいつでも好きなときに、肉体を離れ純粋になった龍一郎さんの魂に、ふれあうことができるのだ、といま思い始めています。


 決して人に無理な求めをしなかった龍一郎さん、ついそれに甘えて、その結果の心残りをたくさん残してくださいました。その分、残された文章とともに、私どもの中で生きつづけてくださるような気がします。心の中での存在感は、この世におられた時よりますます大きくなってゆくのかもしれません。


 歯がゆいこととは思いますが、どうかあきらめずに見守って下さい。(平成12921日記)


思いがけず、龍一郎さんのことをいろいろ思い出すことになりました。思い出しついでに、シンポジウムでのご発言をあらためて読んでみたくなりました。                                     


石黒龍一郎さん発言1.jpg石黒龍一郎さん発言2名称未設定-4.jpg石黒龍一郎さん発言3.jpg

【後に記す】
講演会の感想を書きました。



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