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地域通貨構想(「もがみ薪ステーションプロジェクト」に刺激されて) [置賜自給圏構想]

今朝の山形新聞一面トップで、最上総合支庁による「もがみ薪(まき)ステーションプロジェクト」が紹介された。「森林資源をまきや商品券として地元に還元できる制度」という。行き場のなかった森林資源を価値の源泉とすることで地域循環の活性化を図ろうというプロジェクトで、大きな可能性を秘めているのではないか。一石何鳥もの効果が期待できそうな気がする。「置賜自給圏構想を考える会」にとってもおおいに刺激になる構想にちがいない。

薪ステーション.jpg


もっと整理が付いてからと思っていたのだが、そうするといつになるかわからないので、この機会に私の中にある置賜自給圏地域通貨構想についての議論が起こるための叩き台を提供しておきたい。

 

まず「円」にあたる呼称を「たま」とする。「たま」は、置賜の「 賜」であり、「玉」であり、「球」であり、「魂」であり、「霊」でもある。二次元の「円」に対して、「たま」は三次元的さらには四次元的でもあるといえる。(正直言って、そのことが具体的にどういうことを意味することになるのか、いままだわからない。ただ、すごい可能性が秘められていそうな気がする、とだけ言っておこう)

 

地域通貨としての「たま」の出発点(価値の源泉)は「円」である。地域通貨を使おうとする人(消費者)が、「円」を地域通貨交換所で「たま」に替えることから始まる。交換比率は2倍を標準とする。(「円」の通貨環境によって変動させることができる。たとえばハイパーインフレで「円」としての通貨価値暴落の場合は、×1/2のように交換比率を逆にすることで、「たま」の通貨環境を防衛する。ただし、それを適切にコントロールするための「独立国家的」通貨政策主体の存在が必須であることは言うまでもない。)

 

ここでは、交換比率を2倍として考えてみる。(「たま」をTMと記す)

 

消費者 TM交換所 100円→200TM

     店  200TM→商品200円分  消費者は円の半値で買える。


一方、売る側(販売者)はTM使用可能割合を定めておく。その割合は、販売者が扱う商品の価値の創出がどれだけ置賜自給圏内で行われたかに比例して、販売者が定めることとする。

 

販売者(TM100%店) 客  商品200円分→200TM 

販売者(TM50%店)   客  商品200円分→100TM+100円 


それぞれの仕入れについて考える。

 

販売者(TM100%店) 仕入先 商品150円分→150TM(粗利 50TM

販売者(TM50%店)   仕入先(域内) 商品150円分→

                                                           100TM+50円(粗利 50円)・・・A

                              75TM+75円(粗利 25TM+25円)・・・B

              仕入先(域外) 商品150円分→

                                                            100TM50円)+100円(粗利 0円)・・・C 



それぞれ支払うべき税金を課税率10%として考える。ここでは円として支払うことにしているが、TMでの納税の可能性も考えられる。()は税引後利益。


販売者(TM100%店) 税 10TM5円(利益 40TM20円)

販売者(TM50%店)  税  A  5円(利益 45円)

              B  5円(利益 25TM+20円)

                     C  →5円(利益 -5円)

 

ただし、「たま」は半年毎に10%価値を減ずるものとする。(5年後に0となる)


価値の減価は地域通貨にとっての前提条件だが、どの程度が適当なのかは議論が必要。

 

以上はあくまで叩き台。頭の中にしまっておいてもしょうがないので、今後の議論のきっかけになればと、思い切ってアップしてしまいます。ご関心もっていただける方があればうれしいです。ご感想、ご意見、なんでもけっこうですのでコメント欄にお寄せ下さい。

 

【追記 26年10月10日】

昨日の山形新聞。もがみ薪ステーションの続報です。

もがみ薪ステーション261009.jpg


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めい

全ては、いい現実を創るため。そのために科学技術も金融も国家も芸術も、自分自身もある。
http://www.k2o.co.jp/blog2/2014/05/post-1152.php

 これまでの、枠組みが壊れだしているのなら、

 それに頼らないで、生きていけるく暮らしを立てればいい。

 科学技術と、金融と、国家の制度が、既得権を維持する、「ごまかし」のために、

 使われてきて、不幸や醜悪さが拡大した。

 だったら、「ごまかし」を一切しないで、

 いい現実をつくろう。

 それも、出会う人が、どんどん、喜んでくれるような。



 へんな、化学薬品や、過剰な電磁波、放射能のない、 ピュアな自然のなかで、

 高い文化芸術性があって、しかも、快適な暮らしのできる「エリア」 を 造り出そう。

 

 多くの場面で、マネーを介在させないで、どんどん、労働資源を出し合っていく世界。

 自然と一体になる。

 日本列島の中で、定着していた縄文人の観察力と感応力は、精緻を極めた。

 それを、 シュメール発の計測力と分析力で、 法則性を見出して、現実に生かす。



 ここで、問題。 「現実に生かす」とき。

 自分と、自分の行為の対象である他者をどうするか? このとき、人間と、それ以外の扱いは?

 個々人を尊重尊重しながらも、全体で、どうやって調和するか?

 日本国内で、それぞれの視点のもとで、それぞれがいろいろ試す。 いいものは学べばいい。

 カネを増やすことを目的にするのではなく、 いい現実を、作り出すこと。

 大自然を完全に味方につけ、自分のイノチそのものと感じていた縄文人に倣いたい。

 何かを獲得する喜びよりも、生きていることの感動の喜びに、毎日、浸っている。

 喜びって何ですか?

 イノチの大きな流れの中で、「こころ」が、繋がっていること。

by めい (2014-05-05 06:01) 

めい

毎日新聞記事(8回連載)記事がありました。(第2回欠)

   *   *   *   *   *

置賜自給圏の構想:/1 地域主権の流れ発信 まずは住民中心で 米沢で「考える会」発足 /山形
毎日新聞 2014年06月20日 地方版

 悲鳴にも似た声が全国の地方で聞かれる。

 「人口減少が止まらない」

 どうしたら地域再生できるのか。各地で模索が続く中、「置賜自給圏構想を考える会」が米沢市で発足した。

 「圏外への依存度を減らし、圏内にある地域資源を生かし、一方的な富の流出を防いで地域経済を好転・持続させよう」

 4月12日の設立総会で読み上げられた設立趣意書だ。この場には、置賜各地から、地産地消、有機農業など循環型地域づくりに取り組む約300人が集まった。学校・行政関係者、首長、国会議員も参加した。

 呼びかけ人の農民詩人・星寛治さんがあいさつに立った。「グローバリズムの中で地域社会の基盤をなす農業、物づくりなどが窮地に立たされている」と話し始めた。

 「しかし置賜地方には、自然風土と地域資源の豊かなストックがある。食とエネルギーの自給を基に新たな地域再生に立ち向かうとき」。どの自治体も地域活性化に取り組んできたが状況は厳しい。星さんは訴えた。「3市5町が連携して危機を乗り越え、地域主権の流れを置賜から発信したい」

 歌手の加藤登紀子さんからのメッセージも紹介された。「古き時代の精神性が活(い)かされた持続可能な地域自立型の未来ビジョン! これこそ日本のこれからを救う選択だと思います」

    ◇   ◇

 「考える会」の事務局を担当するNPO法人「結いのき」専務理事の井上肇さん(60)に発足の経緯を聞いた。「最初に『地域自給圏構想』の概略をまとめたのは、長井市の菅野芳秀さん。生ゴミを堆肥(たいひ)化する住民参加の循環型システムを考案した一人」と説明する。「その後、自給圏構想に賛同する人たちが集まり、意見交換を重ね、『考える会』設立に結びついた」という。

 この構想には行政や国会議員も賛同しているが、井上さんは「まずは住民中心でなければ実を結ばない」と考えている。「今後は、組織をつくり、どう具体化するのかが問われてくる」。再生可能エネルギー、地産地消、有機農業、教育と人材育成、食と健康などの部会を設立し、総合的に置賜地域の自給力を向上させる。8月2日に一般社団法人「置賜自給圏推進機構」の設立総会を米沢市・置賜総合文化センターで開く。

 エネルギーと食糧などの地域資源を活用して、新たな視点で地域経済の好循環を実現する「置賜自給圏構想」が動き出した。全国に発信できる新しい地方再生のチャレンジになる可能性を秘める一方、課題が多いのも事実だ。「自給圏構想」とは何か−−。構想に合流した置賜各地域での活動を紹介する。【佐藤良一】

置賜自給圏の構想:/3 高畠・有機農業運動40年 消費者から信頼獲得、世界に向けた発信源に /山形
毎日新聞 2014年06月23日 地方版

 高畠町は「有機農業の里」だ。その取り組みを学ぼうと全国から訪問者が絶えない。1973年、同町の農家青年38人が「有機農業研究会」を発足させ、全国に先がけて有機農業運動を始めた。メンバーの一人が渡部務さん(65)。長年にわたる有機農業の経験には、「置賜自給圏構想」につながる自給自立の思想がある。

   ◇    ◇

 「60年代までの農業は、農地拡大と作物集約を掲げる『農業近代化』の時代だった」と渡部さんは説明する。「生産性向上」のかけ声の下、食料増産を目標に掲げ、化学肥料・農薬・除草剤が推奨された。「機械購入や牛を飼うために借金した農家が多かった」

 70年に減反政策が始まる。さらに肉牛が大暴落した。農家青年たちは「これからどうしたらいいんだ」と途方に暮れた。その時、仲間の一人から「有機農業を始めてみよう」と声が上がった。有機にすれば安心・安全な作物を消費者に届けることができる。農民の薬害もなくせる。

 それまでの近代化農業によって、化学肥料・農薬の使用から抜けられない仕組みができ上がっていた。「資本が生み出したものに頼る農業でなく、農家の主体性を取り戻さないとダメだ」という意識がメンバー全員にあった。結果的に有機農業にたどり着いた。土の力を生かした農業だ。

 「有機農業を始めると、最初は収穫量が6割に落ちた。除草剤をやめて3年目から雑草がひどくなり、草取りがたいへんだった。4年目になると徐々に収穫が上向いた」と渡部さんは語る。

 80年代前半に冷害が続き、地域のコメ収穫量が半減した。しかし有機農業で育てた稲穂にはコメが例年通り実った。地温を測ってみると、有機栽培の田んぼは、化学肥料を主に使う慣行栽培と比べて地温が3度ほど高く、根が太く深く張っていた。後に、有機農業は土壌中の微生物を活発化させることを知った。「それでやっと自信が出た」そうだ。

 その後、都会から消費者運動の代表者が訪ねて来るようになった。水俣病など4大公害裁判で食の安全が注目されるようになったからだ。作家・有吉佐和子の「複合汚染」でも高畠の有機農業が紹介された。いまでは内外の消費者から信頼を獲得し、多彩に交流を重ねている。

 90年に「たかはた共生塾」を発足し、毎年公開講座を開いている。97年には町と農協も加わり「有機農業推進協議会」ができた。同町の農家2000世帯のうち約半数が加入している。「まほろばの里農学校」は今年で20回を超え、韓国や台湾など海外からの研修生を受け入れている。

 地域自給を基礎にした循環型の農業を目指してきた「有機農業の里」はいま、世界に向けた発信源になっている。【佐藤良一】=つづく

置賜自給圏の構想:/4 小国・森林資源を活用 小学校で地域自給、林業の人材育成急務 /山形
毎日新聞 2014年06月24日 地方版

 日本は国土の約7割が森林だ。県内では、小国町が鶴岡市に次いで森林面積が広く、町総面積の94・4%、約7万ヘクタールを有する。森林資源は建築材だけでなく、再生可能エネルギーとしても有力な資源だ。今年4月、町内産の木材をふんだんに使って建設した新校舎で、小国小学校が新たなスタートを切った。小国町での森林資源の活用例から、地域自給の必要性と課題が見えてくる。

   ◇    ◇

 新校舎の設計で重視したことがある。豪雪豪雨などの災害に備え、子供たちが安心して学校生活を送れること。木質バイオマスや太陽エネルギーを活用して環境に配慮すること。地産地消の観点から地元の森林資源を建物に使い、町内産の食材を十分に給食に用いることだ。

 教室、体育館、メディアルーム、階段など、校内全体が木目でいっぱいだ。給食は自校調理で栄養士もいる。農協を通じて地元の農産物を使っている。

 校舎に隣接してチップボイラーがある。県内の学校では珍しい。山林の間伐材などを砕いて熱源にした「木質バイオマスエネルギー」で、暖房、融雪、給湯などに活用している。また屋上に太陽光パネルを設置して電力の一部にしている。

   ◇    ◇

 町産業振興課によると、小国の林業は厳しい現状にあるという。木材価格の下落が30年近く続いている。昔のように大工と相談しながら家を建てる習慣が減り、大手ハウスメーカーによる外材建築が約7割を占める。燃料費、人件費も上がった。林業だけで生活が成り立たず、今では兼業のみだ。同課によると、現在、完全な林業後継者はゼロだという。林業再生には、人材育成が急務だ。

   ◇    ◇

 国の「森林・林業再生プラン」(2009年)の推進に農林水産政務官として関わった舟山康江・前参院議員は「日本は欧州と違って森林が公共財であるという意識が薄い」と指摘する。「置賜には木材を一時保管する貯木場も少ない」。木材がもっと活用されるためには、林業の人材育成とあわせて、流通過程の整備も必要になってくる。

 「置賜自給圏構想を考える会」の呼びかけ人でもある舟山さんは、「今のままでは小国の森林資源は生かされない。この構想の中で各市町が交流し、経験を生かせば、いろんなアイデアが出てくるはず」と話す。

 地元の富を置賜全域で循環させるのが「自給圏」の目的だ。舟山さんは「この構想は、置賜3市5町の結びつきを強めるチャンス」と大いに期待する。【佐藤良一】=つづく

置賜自給圏の構想:/5 長井・レインボープラン 地域循環、生ゴミから作物 自治意識持ち継続 /山形
毎日新聞 2014年06月25日 地方版

 長井市には世界に誇れるものがある。市内5000世帯が参加する循環型地域づくりの実践、「レインボープラン」だ。この取り組みは「置賜自給圏構想」を理解する大きなヒントになる。

 レインボープランの正式名称は「台所と農業をつなぐ・ながい計画」。単なるゴミ処理事業ではない。生ゴミを堆肥(たいひ)にして作物を育て、食す。その「循環」のポイントは−−。

   ◇    ◇

 まず各家庭で、台所から出る生ゴミだけを分別する。この時、大事なのは水分を切ること。各家庭はためた生ゴミをゴミ収集所に置かれた大きなバケツに入れる。回収車は週2回、それを集めて堆肥化するためのコンポストセンターに運ぶ。

 センターで生ゴミが堆肥に変わるのに約80日間かかる。家畜のフンやもみ殻を混ぜて発酵させる過程で、生ゴミは最終的に土のにおいのする堆肥になる。微生物の働きだ。堆肥を購入した農家は、農薬や化学肥料をできるだけ使わず、堆肥を基に作物を育てる。

 こうして栄養価が高く、安心・安全な作物ができる。「レインボープラン農産物」のマーク付きで、スーパーマーケット、直売所、学校給食などを通じて市民の食卓に戻ってくる。

   ◇    ◇

 レインボープラン推進協議会の斎藤真知子会長は「レインボープランは、1989年の提案から立ち上げまで約10年かかっています。その間、300回以上の議論を重ねました」と強調する。特に市内の女性団体などが積極的に参加したそうだ。「住民の熱い意識と、行政も市民の一員として参加したからこそ、レインボープランは実現したんです」

 その後、新聞・テレビに取り上げられ、数々の賞に輝いた。現在も年間約800人が見学に訪れる。

 アジア・アフリカの農業指導者も視察にくる。タイ東北部コンケン県のポン市には、すでに「タイ版レインボープラン」がある。長井市に学んで地産地消に取り組んでいる。長井は、地域循環システムのモデルとして海外からも注目されている。

 今後の課題は、若い人にゴミの分別という意識に加えて「循環」の大切さを伝えていくことだという。「住民自治といいますが、それを意識をもって継続することが重要であり、大変です」と斎藤会長。「『置賜自給圏構想』も下からの住民の意識が大切だと思います」。斎藤会長は、そう期待した。【佐藤良一】=つづく

置賜自給圏の構想:/6 農民の危機感 TPP参加反対超えて ローカルなつながり回復を /山形
毎日新聞 2014年06月26日 地方版

 「置賜自給圏構想」の発案者、長井市の菅野芳秀さん(64)は息子と2人で稲作と自然養鶏を営んでいる。生ゴミを堆肥(たいひ)にする同市の「レインボープラン」の実現にも奔走した一人だ。菅野さんの著書「生ゴミはよみがえる」には、循環型自給のヒントが書かれている。

   ◇    ◇

 菅野さんは飼育しているニワトリを観察していて気がついた。ニワトリはエサの他に、土を食べたり泥水を飲んだりする。なぜか。「ニワトリは、その土地の微生物を土や泥水から取っているのではないか」。混ぜて与えていたエサは、県外から取り寄せたものが多かった。

 人間についても同じではないだろうか。国内でも、北から南まで土の中の微生物の割合は異なるはずだ。その土地で育った作物を食べ、排出物を土にもどし、それが肥えた土になって作物が育つ。それをまた人間が食べる。この循環によって人間の健康な生命が維持されている−−。

 この発想から、廃棄物として処理されていた生ゴミを堆肥にすることを思いつき、長井市の市民会議で声を上げた。議論を重ね、菅野さんたちの提案、土壌を再生し、安心な食を確保する循環型の「レインボープラン」が誕生した。菅野さんの原点でもある。

   ◇    ◇

 「『地域自給圏』について最初に問題意識を持ち始めたのは、グローバリズムによって農産物の輸入自由化が拡大されてから。農民の立場で危機感をもった」と菅野さんは話す。

 その後も、日本の農業は徐々に回復不可能なところまで追い込まれていったと感じている。2010年、政府が環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の参加検討を始めた時、「反対するだけではダメだ」と思った。「反対を超えて、本来の農や食や環境、人と人とのつながりを作り出していくことが必要だ」との考えにたどり着いた。

 その思いを全国農業共済協会発行の「月刊NOSAI」(12年1月号)に書いた。「全国にモザイク的地域自給圏を形成しよう。国家的自給の前に地域自給を」と新たなローカリズム構築を訴えた。この巻頭論文「食料・農業・農村への提言」は関係者の間で大きな反響をよんだ。

 12年10月、賛同者が集まり、討議を重ねた。「置賜自給圏構想」の組織設立のための趣意書をつくり、いろんな人に会って理解を求めた。ほとんどの人が「本当にそのとおりだね」と賛成してくれたという。

 菅野さんは「機が熟していたんだよ」と振り返る。そして、「これを仕上げるまで死ねないよ」と豪快に笑った。【佐藤良一】=つづく

置賜自給圏の構想:/7 「身土不二」の教えから 自立で持続可能社会へ 農業は人類の生存基盤 /山形
毎日新聞 2014年06月27日 地方版

 高畠町で40年以上、有機農業運動の先頭に立ってきた農民詩人の星寛治さん(78)。「置賜自給圏構想」の呼びかけ人でもある。農業を通じてたくさんの詩を作ってきた。星さんの念頭には常に「人間の未来」がある。

   ◇    ◇

 「自給圏の発想には『身土不二(しんどふじ)』という中国仏教の教えがある」と星さんは話し始めた。人と土は切り離せないということであり、「地元の食物を食べることが健康と長寿の源」という考えだ。その「地元」を「置賜地域」に置き換えたのが自給圏構想だ。そこで生活する人々が歴史、文化、風土を共有できるエリアでもある。

 星さんは「自給圏構想」に、第九代米沢藩主である上杉鷹山の事業を重ねる。財政難で窮地に陥った米沢藩を、鷹山は自給の精神で再建した。自給の蓄えによって、大飢饉(ききん)の時も領民から餓死者を出さなかった。地場産業も育成した。「鷹山の改革に私たちは学ぶべきだ」と力説する。

 ただ、「自給圏は単なる自給自足ではない」と話す。米沢藩も海運・陸運を用いて幅広く交易していた。「自給圏は閉じられた鎖国でなく、開かれたものでなければならない」

 さらに「置賜の3市5町がそれぞれに取り組んできた地域活性化策を、置賜全域に広げ交流することも狙いだ」と語る。自治体同士が学びあう関係。それこそが、星さんの願っていることだ。

 英国人の女性旅行家、イザベラ・バード(1831〜1904)が、米沢盆地の農村風景を「東洋のアルカディア(桃源郷)」と書き残している。だが日本は戦後、自然の風景や町村の景観を守ってこなかった。「しかし置賜地方には、それがまだ残っている」と強調する。

 「自給は自立に通じる」というのも星さんの持論だ。外に依存した社会は永続できない。自給によって自立して、はじめて持続可能な地域社会になれる。星さんが20年前から考えてきたことがある。「わが家の自給、地域の自給、そして国の自給」。下から上への自給論だ。

 4月、毎日新聞東京本社内の店舗「MOTTAINAI STATION」で有機農産物を販売する「青鬼サロン」をスタートさせた。星さんが担当する文化講座も組み込まれている。これまで有機農業運動を支えてくれたのは都市の消費者だった。そのネットワークがまた広がった。

最後に、「人間にとって農業とは何か」を尋ねた。「人間は農業なしには生きていけない。農業は人類の生存基盤」。それが星さんの答えだった。【佐藤良一】=つづく

置賜自給圏の構想:/8止 都市・農村融合「創造地域」を 新ローカリズムに期待 山形大・北川教授に聞く /山形
毎日新聞 2014年06月28日 地方版


北川忠明・山形大学人文学部教授=山形市小白川町で
 「『置賜自給圏構想』は新しいローカリズムだ」。こう発言する山形大学人文学部長の北川忠明教授(政治理論)に、「自給圏」という発想の新しさとその系譜を聞いた。【佐藤良一】

 −−「自給圏構想」をどう見ますか。

 非常に面白いチャレンジだと思います。2008年のリーマン・ショック以降、市場経済重視のグローバリズムに世界の各地域がのみ込まれ、疲弊しています。日本でも11年の東日本大震災で、東京に電力・食料・人的資源を供給していた東北が大きな被害に遭い、東京の基盤のもろさが明らかになりました。これらは、地域に依存しながら進んできたグローバリズムが、世界的に行き詰まってきた表れです。その中で、「置賜自給圏構想」は日本における新しいローカリズムの動きだと見ています。

 −−「自給圏」という発想は世界にもありますか。

 フランスでは1970年代から「郷土圏」という運動があります。パリに政治・経済が一極集中するなかで、地域が衰退していく状況を何とかしようと、ブルターニュ州に自立運動が起きました。その中から「郷土圏」をつくる運動が生まれました。現在では、フランス全土で370以上の「郷土圏」が誕生しています。グローバリズムに対抗するローカリズムの流れです。「競争に対する連帯」と言ってもいい。現地では「地域を雇用のダムに」をスローガンにしています。

 −−グローバル化の中でなぜ自給が大事になるのですか。

 日本でも70年代から公共事業や企業誘致で雇用を増やす政策が進められました。しかし公共事業が終わったり、誘致企業が撤退すれば雇用はゼロに戻ります。こういった「外発的発展」に対して、地域の自給を軸にして雇用を生み出す地域内循環の取り組みが各地で起こっています。これを「内発的発展」と言います。食とエネルギーの自給によって自立する地域再生です。

 −−「自給圏」を閉鎖的ととらえる人もいますが。

 「置賜自給圏構想」の設立趣意書を見ても、けっして閉鎖的ではない。そもそも市場のグローバル化が進んだ時代に、外部に閉ざされた発展はありえません。大切なのは開放性。加えて創造性です。文化・芸術などを産業に生かすクリエーティブな町づくりです。

 −−「置賜自給圏構想」への期待は。

置賜地方には自然・文化・歴史などの宝物がいっぱいあります。イザベラ・バードは米沢盆地を「東洋のアルカディア(桃源郷)」と呼びました。第九代米沢藩主、上杉鷹山の事業は日本全国に知れ渡っています。3市5町が連携し、住民と行政が一体になり、都市と農村を融合した「創造地域」を目指してほしいと思います。=おわり






by めい (2014-08-01 05:41) 

めい

山形新聞2014年6月10日「気炎」より
 山形新聞2014年(平成26年)6月10日(火曜日)7面「気炎」より

 グローバリズムと新自由主義の激流が地域社会をのみ込み、家族農業、中小企業、商店街を直撃している。各地で人口減少と過疎化が激しく進み、地域の存続すら危ぶまれる所も出てきた。
 その現代の危機を座視せず、住民の主体的な力で明日を拓(ひら)こうとする波が置賜から興ってきた。上杉鷹山公の藩政改革に学び、置賜一円を一つの自給圏と捉え、その内発的発展をめざそうというわけである。東洋のアルカディアの豊かな地域資源を生かし、とりわけ食と農とエネルギーの自給を基軸に循環型社会の構築を描く。そして「身土不二」の四里四方のエリアで、健康・福祉・教育・文化の充実を求め、成熟社会の幸せを実現しようと呼びかける。
 3市5町が一体となり、住民団体、行政、協同組合、業界、学校などが垣根を超えて連携し、地域自立の扉を開こうとしている。4月に米沢市の伝国の杜で開催された「置賜自給圏構想を考える会」の設立総会には、各界から300余名が集まり、市町村や国会議員からも熱いエールが送られた。
 構想は大風呂敷を広げ過ぎたのではとの批判もあるが、その骨子となる柱の幾つかは、既に具現化している先進事例や地域もある。その固有の取り組みを広く圏内に普及しつつ、足りない領域は知恵と力を注いで充填(じゅうてん)していく。
 そのためには、構想からの実践の段階へと一歩踏み込む活動が求められ、今月下旬(*1)には法人化を前提とした「置賜自給圏推進機構」の設立総会が予定されている。
 自給圏といっても閉鎖社会ではなく、地産地消の比重を高め、富の流出を抑えながら、かつての最上川舟運の交易と文化交流のように開かれた地域イメージを描く。交流人口の増大は、他社からの眼差(まなざ)しによって地域の宝を確かめ、住民の誇りと自信を生み出す母胎となるだろう。(橅心 庵人)

by めい (2014-08-01 05:48) 

めい

中露で物々交換?! 地域通貨を超える
《日本の地方の市民運動家やシャッター商店街が物々交換や不便でしょぼい地域通貨を発行するのとは違い、横綱がスワップと物々交換を始めた訳ですから、相撲界全体がそれになびくのは時間の問題です。》
コメント欄も秀逸です。

   *   *   *   *   *

中露が、金本位制と物々本位制と部分デフォルトで勝負、為替・株式・商品市場とドル決済不要という提案です。
http://www.asyura2.com/14/cult13/msg/788.html
投稿者 小沢内閣待望論 日時 2014 年 12 月 27 日 11:38:47: 4sIKljvd9SgGs

ツートップの新横綱が繰り出す電車道は、千手観音のようの張り手を繰り出し、多重債務横綱はタジタジです。
米国は、自力では中露に勝てないと分かっており、欧州の関脇と小結と十両を焚き付けて、数で両横綱を倒そうと必死ですが、ただのぶつかり稽古状態で、それどころか中露が合体ロボのように一体化して更にパワーアップする状態です。
日本の地方の市民運動家やシャッター商店街が物々交換や不便でしょぼい地域通貨を発行するのとは違い、横綱がスワップと物々交換を始めた訳ですから、相撲界全体がそれになびくのは時間の問題です。
その意味は、ドル決済が不要なのは勿論、そのドルを獲得する為の為替市場も不要という事で、米国債や株式をついで買いさせられる事もなく、ネット以前は実際問題として難しかったと思いますが、今となっては無用の両替で、両国がヤフーオークションを始めてしまったという事で、ドル詐欺で食べていた連中にとっては史上最大の脅威です。
そして、両国との取引先もそうでない国も、好きでドル決済をしてきた訳ではないですから、同盟国から元決済では米国が怖くてできなかったが物々交換なら文句を言われる筋合いはなく、それが主流になるのも時間の問題で、米国は、物々交換よりドル決済の方が優れている事を証明しなければなりませんが、不便で高くてなんのメリットもない暴力通貨の利点を説明するのは不可能で、若者のなんとか離れのように、世界中がドル離れを始める事になります。  


コメント
01. 2014年12月27日 12:01:27 : XVDs0TzGPI
現代日本で僕が最も信頼を寄せている評論家の一人が内田樹氏でありますが、
その内田樹師匠も物々交換の利点を説いていらっしゃいますね。
虚構マーケットを経由せずに、人々の相互信頼のもとに財を交換する。
人間は元々他者と交換をすることが凄く好きだったそうです。
交換という行為は一種のコミュニケーションなわけです。
人間の経済活動の原初は物々交換だったのではないでしょうか。
それをされると困るのが偽物なんたらとか似非なんたらと呼ばれる人達ですね。

02. 2014年12月27日 12:59:21 : 132f8rRfcg
2日前のNHK深夜のラジオニュースを聞いていた。 米国が中国政府に向かって民主化活動家たちの異常な取締りを止めるべきだと発表した、すかさず北京政府は外務報道官に米国こそ他国の内政干渉を止めて自分こそ様々な国に体制を転覆させるような民主化と云うテロ活動やテロ組織への支援を即座に改めて反省するべきだと発表させた。 珍しくNHKにしては淡々とした報道だったが、それよりもズバっと真正面から言い返す中国政府ってほんとに羨ましいなと思った 気持ちの良いニュースだった。

03. 2014年12月27日 21:06:39 : EO8ytS4QYC
無理にドル 上げて世界に 威張っても
反撃喰らい すぐに藪蛇

04. 2014年12月27日 21:13:31 : uBaxl9VBL2
ヒラリーのババアが失脚して配下のチンピラや、戦争屋のナイ・アーミテージ・グリーン等の出番が大分減ったみたいですね。
年末年始の役人共の不在の間に世界中を洗濯する中露、米国隷属の安倍黒ヒョットコ朝鮮人売国奴政権崩壊の起爆作戦が粛々と実行されている、来年の統一地方選挙で、自公の売国奴を完全排除消滅させ、米国の奴隷としてせっせと働く売国奴官僚公務員政治家企業集団宗教集団ダマスゴミ統一創価のクソジジくそばばの排除消滅が実行されて、世界中の偽ユダヤ族が徐々にお隠れになります。

05. 2014年12月28日 01:36:01 : XS6jMDaUPg
新聞も1面は本当に酷い捏造詐欺報道を載せている
ラジオやテレビも中露嫌悪イメージ操作の洗脳報道が
ますます酷くなっている現状
すべての八百長・詐欺・ヤラセ・不正を事実として
報道しさえすればそれが現実だと思い込める心理は
まさにキチガイのそれ

06. 2014年12月28日 02:59:26 : 4oyVM3TjU6
ドル決済のもう一つの悪玉は、銀行が為替手数料で稼ぎたい。
実は、世界に対して円建で全然問題ない。

07. 2014年12月28日 04:04:39 : no31X615y2
金融商品とかいう馬鹿げた実体のない商品を廃止すべきか、或いは人々がその本質を見透かして相手しないようにするべきだ。
それと博打と同然のあらゆる相場に手を出さないこと。
本来の資本参加型の株式投資は結構だが、博打同然に考えてる馬鹿がまだまだあまりにも多過ぎる。
「これでだめならFXやめろ」とかいう乱暴な誘い文句は詐欺連中の最後っ屁だ。w

更に、ガン保険とかいう最高にくだらない詐欺商法に金を吸い取られてはならない。
厚労省と病院と製薬害社と医療保険はワンセットで詐欺カルテルを構成している。
会社・学校を通じて労働者や児童に予防注射を義務付ける通達とか疑惑で臭過ぎである。w

もう踊らされてはならない。
テレビなんぞのこうした腐れコマーシャルには鼻つまみながら冷めた目でシレーッと無視するのがよい。

08. 2014年12月28日 04:14:13 : no31X615y2
実体のある経済は、やっぱ物々交換だ。

by めい (2014-12-28 07:01) 

めい

「現物は万国共通」

   *   *   *   *   *

中露は、非ドル決済どころか、非通貨交換を始めた訳で、現物は万国共通で、超巨大フリーマーケットの誕生です。
http://www.asyura2.com/14/cult13/msg/789.html
投稿者 小沢内閣待望論 日時 2014 年 12 月 27 日 14:30:23: 4sIKljvd9SgGs


ドルフリー、外貨準備フリー、為替市場フリーの超巨大フリーマーケットを、育児を終えた主婦が要らなくなった子供服を並べて始めた訳ではなく、金本位も元本位もでき、通貨スワップをした上で、世界最大市場を持つ中国とエネルギー資源世界一のロシアが始めたから、凄みがあるわけです。
これまで暴力の裏付けで、ドルが世界一信用を置ける通貨とされてきましたが、金の裏付けがない事を暴き、二番手市場に転落させた上で、金本位に戻れる態勢も元にシフトできる態勢も整えた上で、ドルの土俵で部分デフォルトという技も使える事を示した上で、巨額の現物交換という古くて
新しい、ドル以上に確かな取引を始めた訳で、現在の八百長通貨制度を鼻で笑う、通貨戦争を仕掛けた米国を幕下扱いする、相撲史上最高の決まり手である肩透かしです。
イスラム国でもウクライナでもガチンコで戦ってもらえず、勝手に土俵際まで突っ走り、徳俵の上でバレーを踊っているような状態にあるのがドル詐欺陣営で、空手8段でもあるプーチンに小指で蹴りを入れられたらおしまいという状況で、それすら不要で、元さんがブルース・リーみたいにアチョーとか叫ぶだけで、勝手に土俵下に転げ落ちそうな感じで、世界も亀田戦の観客みたいに、落ちろーと絶叫している感じで、数少ない亀田応援団みたいなEUも、中露に寝返る気満々です。  

コメント

01. 2014年12月27日 14:44:11 : SBztI6XWSY
いよいよ非金銭経済社会へ進むか。
金儲けじゃないものづくり。
金儲けじゃない生産活動。
今まで軽視されてきたんだよね。

そういうのが人間生き生きしている。
趣味と実益でいいんじゃない理想は。

生活のために、生きていくために仕方ないから
我慢に我慢に重ねて、つらい肉体労働だの売れもしない
強引に売らざるを得ない営業職。

「仕事の鬼だの仕事を選ばなければなんでもある。」
米英が労働者を安くコキ使うためのプロパガンダだったのでないか
と思うね。

魚釣りが好きなら漁師やればいいんだよ。
家庭菜園好きなら農業やればいいんだよ。

営業も卸売問屋も死語だろうね。
コンシェルジュコンサルタントへ転換。
それは好きなジャンルじゃないと
勝負にならない。
「生きてためには、自分を押し殺してでも我慢して」
という思考も古く逆に甘い考え方ともいえる。
それは好きでないもの嫌々やったって良い結果はでない。
自己疎外?
逆に好きなパフォーマンスでないとこれからの時代
勝負にならないという考え方もできる。

だから基本ベーシックインカムで人間それぞれ
好きな事特技あるだろうから、そこで人並み以上の結果だして
貰って社会貢献ってのが
非金銭経済、共生主義でいいんじゃね。

by めい (2014-12-28 07:08) 

めい

「中露で物々交換」の情報源か
《ロシアが意図的にデフォルトする?》
http://tanakanews.com/

   *   *   *   *   *

 【2014年12月25日】 ロシア情勢に詳しい米国の在野の分析者の中には、プーチンが来年、ロシアの政府や民間の対外債務を意図的にデフォルトさせることで、ロシアの金融危機を米欧の金融界に逆感染させ、米欧で金融危機を起こす策略をやりそうだと分析する者が出てきている。露政府がデフォルトを宣言すると、欧米の政府や民間が対抗措置として自国内のロシアの政府や企業の資産を没収凍結し、露側はさらにその報復として自国内の欧米企業の資産を没収凍結するとともに、欧州に対する石油ガスの輸出を停止する。対露債権を多く持つ欧米金融機関の不良債権が増して破綻に瀕し、欧州諸国は石油ガス不足に陥って経済が大きく減速する。
by めい (2014-12-28 07:29) 

めい

プーチンvs欧米金融勢力。もう勝負はついていることを解説する記事。難しいが読む価値あり。http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2015/01/post-c100.html

   *   *   *   *   *

達人プーチンのワナ

2014年12月25日 木曜日

ドミトリー・カリニチェンコ(ロシア)

達人プーチンのワナ

欧米の対プーチン非難は、伝統的に、彼がKGBで働いていたという事実に基づいている。そして、それゆえ、彼は残酷で不道徳な人物なのだ。プーチンはあらゆることで非難される。だが、プーチンは知性が欠如していると非難するものは皆無だ。

この人物に対するあらゆる非難は、素早い分析的思考と、明快で、バランスのとれた政治・経済的判断をする彼の能力を強調するだけだ。

欧米マスコミは、この能力を、公開でチェスの多面打ちをする達人の能力にたとえることが多い。アメリカ経済と欧米全般における最近の進展で、アメリカは、プーチンの人物評価と言う点で、欧米マスコミは全く正しいと結論できそうだ。

フォックス・ニューズやCNN風の無数の成功報道にもかかわらず、現在アメリカ合州国が率いる欧米経済は、欧米の誰一人として脱出方法が分からない、プーチンのわなにはまっている。欧米がこのワナから脱出しようとすればする程、益々深くはまりこんでしまうのだ。

欧米とアメリカ合州国が陥った本当の悲劇的な苦境の実情とは何だろう? そして一体なぜ全ての欧米マスコミと主要欧米エコノミストは、しっかりと護られた軍事秘密の如く、これについて沈黙しているのだろう? 現在の経済的出来事の本質を、道徳規範や、倫理や地政学等の側面はさておき、経済という文脈で、理解を試みよう。

ウクライナでの失敗を自覚した後、アメリカが率いる欧米は、ロシア経済を破壊する為、石油価格、更には、主要輸出収入源で、ロシア金準備の主要補充源であるガス価格をも押し下げ始めた。ウクライナにおける欧米の主な失敗は、軍事的でも政治的でもないことに留意が必要だ。だが、プーチンは、ロシア連邦予算を出費して、ウクライナでの欧米の計画を支援することを、実質的に拒否したのだ。おかげで、この欧米プロジェクトは、近未来でも、更なる未来でも、実行可能ではなくなってしまった。

前回、レーガン大統領の下で、同様な欧米による石油価格下落活動が、‘成功し’ソ連は崩壊した。だが歴史は常に繰り返すというわけではない。今回、欧米にとって、状況は違っている。欧米に対するプーチンの反撃は、チェスと柔道の両方に似ていて、敵が用いる力は、敵自身に対して使われるが、防御側が使う力と資源とコストは最小だ。プーチンの本当の政策は公開されているわけではない。それゆえ、プーチンの政策は、常に概して、効果ではなく、効率が狙いだ。

プーチンが現在行っていることは、ごくわずかの人々しか理解していない。そして、彼が将来何をするかについては、ほぼ誰も知らない。

どれだけ奇妙に見えようと、現在、プーチンは、ロシア石油とガスを金の現物でしか売っていないのだ。

プーチンは、それを声高に世界中に叫んでいるわけではない。そして、もちろん、彼は中間的支払い手段として、アメリカ・ドルを、依然受け取る。だが彼は、石油とガスの販売で得たこうしたドルの全てを、すぐさま金の現物に変えるのだ!

これを理解するには、ロシア金準備高増加の動態を見て、このデータを、ロシアが石油とガスの販売で、同時期に得ている外貨収入と比較するだけで十分だ。

しかも、第三四半期にロシアが購入した金の現物は、史上最高記録水準だ。今年の第三四半期、ロシアは、55トンという信じがたい量の金を購入した。これは全世界の全中央銀行を合計したよりも多い(公式データによれば)!

2014年の第三四半期に、世界中全ての国の中央銀行は、合計93トンの貴金属を購入した。中央銀行による金純仕入れは、連続15期目の四半期だった。この期間に、世界中の中央銀行が購入した金93トンのうち、驚くべき購入量の55トンを、ロシアが保有している。

さほど遠くない過去、イギリス人科学者が、見事に、数年前、公表されたアメリカ地質調査の結果と同じ結論を出した。つまり、ロシアからのエネルギー供給無しでは、ヨーロッパは存続できないというものだ。英語から世界中の他のあらゆる言語にされており、これはこういう意味だ。“もしロシアからの石油とガスが、世界のエネルギー供給バランスから、無くなってしまえば、世界は存続できなくなる”。

そこで、オイルダラー覇権の上で成り立っている欧米世界は、破局的な状況にある。彼らはロシアからの石油とガスの供給無しでは生きられないのだ。しかもロシアは今、欧米に、石油とガスを、金現物と引き換えでしか売らないようにする用意ができている! プーチンのゲームの巧みさは、ロシア・エネルギーを、金でしか、欧米へ輸出しないという仕組みが、欧米が、ロシア石油とガスに、人為的に安くしている金で支払うことに同意しようがしまいが機能することだ。

ロシアは、石油とガス輸出により、ドルを定期的に得るので、いずれにせよ、欧米により、あらゆる手段で押し下げられた現在の金価格で、金に転換することができるのだ。つまり、市場操作によって、人為的に押し上げられているドルの購買力で、連邦準備制度とESFによって、人為的かつ、細心の注意を払って、何倍も押し下げられている金価格で。

興味深い事実: アメリカ政府の専門部門、ESF(為替安定基金)による、ドルを安定化させる狙いでの金価格押し下げは、アメリカ合州国で法制化されている。

金融業界では、金が反ドルなのは、当然のこととして受け入れられている。

1971年、1944年、ブレトンウッズで、アメリカが保証した、ドルと金の自由交換をやめ、アメリカのリチャード・ニクソン大統領が‘金の窓’を閉じた。
2014年、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、ワシントンの許可を得ずに‘金の窓’再度開けたのだ。
現在欧米は、金と石油の価格を押し下げるのに、努力と資源の大半を費やしている。それにより、一方では、アメリカ・ドルに有利なように、実際の経済的現実を歪曲しながら、その一方で、ロシア経済を破壊し、欧米の忠実な属国役を演じることを拒否している。

現在、金や石油等の資産は、比例的に弱体化されたように見え、アメリカ・ドルに対して、極端に過小評価されている。これは欧米による膨大な経済的努力による結果なのだ。

今やプーチンは、欧米の努力で人為的に押し上げられているアメリカ・ドルと引き換えにロシアのエネルギー資源を売っている。彼はそれで、欧米自身の努力によって、アメリカ・ドルに対し、人為的に低めにされている金を即座に購入するのだ!


プーチンのゲームには面白い要素がもう一つある。ロシアのウランだ。アメリカ電球の6個のうち1個は、ロシアからの供給に依存している。ロシアがアメリカにドルで販売しているのだ。

そこで、ロシアの石油、ガスとウランと引き換えに、欧米はロシアに、石油と金に対し、その購買力が、欧米の努力で人為的に押し上げられているドルを支払う。しかし、プーチンは、アメリカ・ドルを、まさに同じ欧米によって、人為的に押し下げられているアメリカ・ドル建て価格で、金の現物を欧米から回収する為にだけ使っているのだ。

プーチンによるこの実に見事な経済政策の組み合わせは、アメリカ合州国が率いる欧米を、自分のしっぽを積極的かつ熱心にむさぼり食う蛇の様な立場に追い込んだのだ。

欧米に対する、この経済的な金のワナという考えは、恐らく、プーチン自身が発案したものではない。プーチンの経済顧問、セルゲイ・グラジエフ博士の考えである可能性が高い。そうでなくて、一体なぜ、一見事業に関与していない様に見える官僚グラジエフが、多くのロシア人実業家達と共に、ワシントンによって、個人的に制裁リストに含まれているのだろう? 経済学者グラジエフ博士の発想が、中国の仲間、習近平から全面的支持を得て、プーチンによって見事に実施されたのだ。

特にこの文脈で興味深いのは、必要であれば、ロシア中央銀行は、準備金の金を、輸入への支払いに使用することが可能であることを強調した、11月のロシア中央銀行第一副総裁クセニア・ ユダエワの声明だ。欧米世界による経済制裁という文脈の中で、この声明は、BRICS諸国、そしてそもそも中国に向けられたものであることは明白だ。中国にとって、ロシアが、商品に対して、進んで欧米の金で支払うというのは、実に好都合だ。理由は下記の通りだ。

中国は最近、金とアメリカ・ドル建て外貨準備を増やすのをやめる予定だと発表した。アメリカと中国との間の貿易赤字の増大を配慮して(現状では、違いは、中国が五倍優位だ)、この金融語による声明を翻訳すると、“中国は商品をドルで売るのは停止する”ということなのだ。世界中のマスコミは、この最近の通貨制度史上最大の出来事に気がつかないふりをしている。問題は、中国が文字通り、商品を、アメリカ・ドルで売るのを拒否しているということではない。中国は、もちろん、中国商品に対する支払いの中間手段として、アメリカ・ドルの受け取りは継続するだろう。だがドルを得ると、中国は即座に、ドルを処分し、中国の金と外貨準備高構造中で、何か他のものに置き換えるのだ。そうでなければ、中国の通貨当局の声明には意味がない。“我々は、金とアメリカ・ドル建て外貨準備を増やすのをやめる。”つまり中国は、他のあらゆる国との貿易で稼いだドルで、これまでそうしていた様に、アメリカ合州国長期国債を購入することは、もはやしないのだ。

かくして、中国は、アメリカからのみならず、世界中から、その商品に対して得る全てのドルを、中国の金・アメリカ・ドル建て外貨準備高を増やさない他の何かに置き換えるつもりだ。そこで、興味深い疑問がおきる。中国は、貿易で得た全てのドルを、一体何に置き換えるつもりなのだろう? どの通貨、あるいは資産で? 現在の中国通貨政策を分析すると、貿易で得るドル、あるいは、そのかなりの部分を、中国は静かに、置き換える可能性が一番高いが、事実上、既に、金に置き換えつつあることを示している。

我々はドル時代の終焉を目にしているのだろうか?

この点で、ロシア-中国関係の二人遊びゲームは、モスクワと北京にとって大成功だ。ロシアは、中国から商品を購入し、時価で直接、金で支払う。一方、中国は、ロシアのエネルギー資源を、金で時価で購入する。このロシア-中国間の命の祭典では、あらゆるものが取引される。中国商品、ロシアのエネルギー資源と金が、相互の支払い手段だ。アメリカ・ドルだけは、この命の祭典に居場所がない。そして、これは驚くべきことではない。アメリカ・ドルは、中国製品でもなければ、ロシアのエネルギー資源でもないからだ。ドルは、中間的な金融決済手段に過ぎず、しかも不必要な仲介者だ。そして、二つの独立したビジネス・パートナー間の取引から、不要な仲介者は排除されるのが普通だ。

金現物の世界市場は、石油現物供給の世界市場と比較して、極端に小さいことに留意が必要だ。そして、特に金現物の世界市場は、石油、ガス、ウランという商品現物の全世界市場と比べれば、顕微鏡でしか見えないほど小さい。

“金の現物”という言葉を強調したのは、‘紙の’エネルギー資源ではなく、現物のエネルギーと引き換えに、ロシアは現在、欧米から金を回収しているが、紙の上の金ではなく、金の現物だけだからだ。中国も同様に、製品現物の、欧米輸出に対する支払いとして、欧米が人為的に引き下げた金の現物を得ている。

ロシアと中国が、両国のエネルギー資源や商品への支払いとして“シット・コイン”つまり、様々な種類のいわゆる“紙の上での金”を受け入れるという欧米の願いも実現しなかった。ロシアと中国は最終支払い手段として、金と現物の金属にしか興味はない。

参考: 金先物市場における紙の上の金取引高は、月3600億ドルと推定される。ところが、金現物の引き渡しは、月にわずか、2億8000万ドルだ。そこで、紙の上の金、対、金現物取引の比率は、1000対1というわけだ。

欧米に人為的に押し上げられている別の金融資産(米ドル)と引き換えに、欧米によって人為的に押し下げられている金融資産(金)を、市場から積極的に回収する仕組みを利用して、プーチンは、オイルダラーの世界覇権を終わらせる秒読みを始めたのだ。かくして、プーチンは、欧米を、いかなる前向きな経済見込みも不在の、手詰まり状態に追い込んだのだ。欧米は、人為的にドルの購買力を高め、石油価格を下落させ、金の購買力を人為的に引き下げる為、努力と資源はいくらでも費やせる。欧米にとっての問題は、欧米が所有している金現物の在庫が無限ではないことだ。それゆえ、欧米がアメリカ・ドルに対して、石油と金を押し下げれば押し下げる程、価値を低くしている金を、無限でない準備高から、より急速に失うことになる。プーチンの経済的組み合わせという、この素晴らしい手によって、金の現物は、欧米の準備高から、ロシア、中国、ブラジル、カザフスタンとインド、BRICS諸国へと、急速に移動しつつある。金現物備蓄減少の現在の勢いでは、欧米は、欧米オイルダラー世界全体の崩壊まで、プーチンのロシアに対して何をする時間も、もはやない。チェスでは、プーチンが、アメリカが率いる欧米を追い込んだ状況は、“タイム・トラブル”と呼ばれるものだ。

欧米世界は、いままさに起きている様な、経済的事態や現象には決して直面したことはない。ソ連は、石油価格下落の際に、金を素早く売却した。ロシアは、石油価格下落に際して、素早く金を購入している。かくしてロシアは、オイルダラーによる世界支配というアメリカ・モデルに対して、本当の脅威を与えているのだ。

世界オイルダラー・モデルの基本原理は、世界通貨制度(GMS)で支配的なアメリカ通貨の役割に基づいて、他の国々や人々の労働力と資源を犠牲にして、アメリカ合州国が率いる欧米諸国が暮らせるようにするものだ。GMSにおける、アメリカ・ドルの役割は、それが究極の支払い手段であることだ。これはつまり、GMS構造において、アメリカ合州国の自国通貨は、それを他のあらゆる資産と交換する為の究極的な資産蓄積手段というのが、意味をなさなくなってしまうのだ。ロシアと中国が率いるBRICS諸国が現在行っていることは、実際、世界通貨制度における、アメリカ・ドルの役割と立場を変えつつある。究極的な支払い手段と、資産蓄積から、アメリカの自国通貨は、モスクワと北京の共同行動によって、単なる中間的支払い手段へと変えられてしまうのだ。別の究極の金融資産、つまり金と交換する為に意図された、単なる中間的支払い手段にされてしまうのだ。そこで、アメリカ・ドルは実際、究極的な支払い手段、兼資産蓄積という役割を失い、両方の役割を、別の広く認められて、特定国家のものでなく、政治的要素が取り除かれた金融資産である、金に譲り渡すことになる。

伝統的に、欧米には、世界における、オイルダラー・モデル覇権と、結果としての、欧米の極端な特権に対する脅威を抹殺する二つの方法がある。

こうした手法の一つは、カラー革命だ。第二の方法は、通常万一、前者が失敗した際に、欧米によって行われるもので、軍事攻撃と爆撃だ。

だがロシアの場合、この方法のいずれも、欧米にとって、不可能だったり、受け入れ不能だったりする。

なぜなら、そもそもロシア国民は、他の多くの国々の国民と違い、自らの自由や、孫子の将来を、欧米のソーセージと交換しようと望んではいないからだ。これは主要な欧米格付け機関によって定期的に公表されるプーチンの記録的支持率から明らかだ。ワシントンのお気にいりナヴァルニーと、マケイン上院議員の個人的友情は、彼にとっても、ワシントンにとっても極めて否定的な効果しかなかった。この事実をマスコミで知った98%のロシア国民は、今やナヴァルニーを、単なるワシントンの傀儡で、ロシア国益の裏切り者としか見ていない。従って、まだ正気を失っていない欧米の専門家連中は、ロシアでは、いかなるカラー革命をも夢想することはできない。

直接軍事攻撃という欧米の二つ目の伝統について言えば、ロシアは確実に、ユーゴスラビアでも、イラクでも、リビアでもないのだ。アメリカが率いる欧米による、ロシア領へのあらゆる対ロシア非核軍事作戦は、失敗する運命にある。またNATO軍指導部を本当に掌握しているペンタゴンの将軍達もこれを理解している。同様に、いわゆる“予防的武装解除核攻撃”という概念も含め、対ロシア核戦争にも見込みはない。NATOは、厳密に言えば、ロシアの様々な形の核能力を完全に武装解除する一撃を加えることはできない。敵に対する大規模核報復攻撃や、敵の遺体の山が不可避だ。しかも、ロシアの総合能力は、生き残った人々が死者をうらやむほど十分ある。つまり、ロシアの様な国との核攻撃の応酬は、迫り来るオイルダラー世界崩壊の問題に対する解決策ではない。最善の場合は、歴史上、核戦争の最後の和音、最終点となるだろう。最悪の場合は、核の冬と、放射能で突然変異したバクテリア以外の地球上のあらゆる生命の絶滅だ。

欧米の経済支配層は、状況の本質が見えており、理解している。主要欧米エコノミスト達は、プーチンの金という経済的ワナによって、欧米世界がおかれた状況の、苦境の酷さと絶望感を確実に把握している。結局、ブレトンウッズ合意以来、我々全員が黄金律を知っている。“より金を多く持っている者が、ルールを決める。”だが欧米でこれについて全員が沈黙している。沈黙しているのは、この状況からの脱出法を誰も知らないせいだ。

もし欧米大衆に、迫り来る経済的大惨事の詳細全てを説明すれば、大衆は、オイルダラー世界の支持者達に、最も恐ろしい質問をするだろうが、それはこういうものだろう。

ロシアから、金の現物と引き換えに、石油とガスを、欧米は一体どれだけ長期間買い続けられるのか?
そして、ロシアの石油、ガスやウランや、中国商品に対する支払いとして払う金の現物が欧米で尽きた後、アメリカ・オイルダラーに一体何が起きるのか?

現在、欧米では誰一人として、この一見して素朴な質問に答えられる人はいない。

これは“チェックメイト”と呼ばれており、紳士淑女の皆様、勝負はついたのだ。

by めい (2015-01-04 07:43) 

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