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白井聡著『永続敗戦論』を読んで(2)長谷川三千子氏の「思想力」 [神やぶれたまはず]

そもそも『永続敗戦論』を知ったのは、新井俊介氏のブログでだった。長谷川三千子氏の発言に対する批判的観点から白井氏の著が紹介されていた。新井氏もそうだったのではないかと思われるのだが、私には長谷川氏の『神やぶれたまはず』と白井氏の『永続敗戦論』は対立というより、むしろ補完的な関係にあるように読めた。なぜなら、白井氏が問題にする、戦後日本のダブルスタンダード、それゆえ「真剣なものなど何ひとつ存在しな」くなってしまった(ように見える)戦後日本の世の中。それをいかに止揚すべきかを、それこそ真剣に(13年もかけて)探求して成った著作が『神やぶれたまはず』に他ならないのだから。その答えが「昭和20815日正午を原点としてわれわれの『神学』を打ち樹てる」ことなのだ。実は『永続敗戦論』の考えている答えとは逆の答えなのだが(そのことは後に書くだろう)、私は『神やぶれたまはず』には白井氏の『永続敗戦論』を包摂し得る力があると確信している。私には、長谷川氏と白井氏は戦後日本をどう認識するかについて同じ基盤に立っていると思える。


ちょっと本題から逸れる。

 

NHKの経営委員になったばかりにあれこれ言われながらすっかり有名になりつつある長谷川氏だが、何ら臆することなく御自分のなすべきことをしっかり為して頼もしい姉御ぶりを発揮しておられる。『週刊現代』31日号の記事だ。「安倍ブレーン とても変な女性評論家」と題して4ページにわたって紹介されているがその中にこうあった。

 

《先月22日に参議院議員会館内で行われた、戦争反対を訴える女性団体のシンポジウム。作家の落合恵子氏や社民党の福島みずほ参議院議員らが、憲法改正など安倍総理の政策に異を唱える発表をしたあとで、客席の女性が手を挙げた。

「皆さんがけしからんと言うと、ついつい『安倍応援団』と自称したくなるものですから・・・」と切り出したのは、誰あろう長谷川氏その人だった。

 シンポジウムに発言者として招かれていた、文筆家の北原みのり氏はその時の様子をこう証言する。

「長谷川さんは話し方も聞き方もすごく上手な方でした。笑みを絶やさず、ウンウンと頷いて話を聞く。『彼女は男の世界で、こうして生きて来られたんだろうな』という印象を抱きました。

 何よりひとりであの場にいらっしゃったことが、すごいと思います。100人くらいの(安倍政権に批判的な)女性の集会に単身乗り込んできたわけで、よほど私たちは舐められているのか、国家権力とはそれほどのものなのか、と考えさせられましたね」・・・》

 

長谷川さんは舐めているのでもないし、国家権力をいささかなりとも担って参加されたのでもない、御自分の思いからごく自然なこととして参加されたのであろうことは、私にはよく理解できる。長谷川氏に備わる「思想力」のなせるわざである。

長谷川三千子1 週刊現代.jpg長谷川三千子2 週刊現代.jpg


ユーチューブでその一部始終を聴くことができた。

20140122 戦争反対!女性大集合 http://www.youtube.com/watch?v=1_tuXKn6Tyw (14900から)


《えー、私は今いろいろ話が出ました安倍現総理大臣の応援団をしております長谷川三千子と申します。NHKの経営委員になったばかりです。その私が、今日たまたま別の用事で来ましたら、「戦争反対!女性大集合」というこのタイトルが目に入りましたので、もうこれは駆けつけなければと、まったくみなさんとイデオロギーもその他細かい歴史認識もほとんど多分正反対の方が多いかと思うんですが「戦争反対!女性大集合」というこの一言に惹かれてやって参りました。で、いろんな方のお話をうかがって、これちょっと違うかなというところもあるんですけれども、いろんな話ひとつひとつ、うんそうだね、と非常に心に響くところがいくつもありました。で、その心に響いたところをいくつかご紹介したいと思います。

最初に積極的平和主義という現安倍総理が、今日も多分ダボスでこれをおっしゃると思うんですが、実はこれはもともとの積極平和なんていうのはちょっと違うんだよという解説がありましたね。で、私もそれを見ていて、これはむしろもともとの積極平和というのが大事だなと思いました。このもともとの積極平和というのは、ここでも何度もお話に上がっています。貧困というものがやっぱり世界の平和の一つの大きな引き金になっている。貧困をどうやって解決するか、これはもう非常に大事なことで、こういうことを地道にやっていかないと、いくら言葉で平和主義と言っても、これはほんとにならない。そんなところも耳にピンと響いて同感しました。

九条についても、私、決して単なる九条改正主義者ではなくて、ある意味こんなすごいユニークな憲法をつくっているのはほんとに世界で日本だけなんですね。でも、それがどういう哲学に基づいてできているのかということについては、ただ「平和主義」という言葉しか世界に発信されていない。多くの男性によって支配されている現在の世界では、平和主義 (pacifism) というのはむしろ、あいつは腰抜けだ、だめなやつだ、そういうニュアンスで受け止められてしまっている。日本の九条というのは、ほんとうにこれから思想をつくりあげてゆかねばいけないと思うんです。ただこれを発信するのに、日本という国だけが九条をもっている、これではほんとうに世界の戦争がなくなるという状態にもっていけないと思うんですね。先ほども多分舟越さんから、境界を超えて連帯してゆくというお話がありましたが、私はこれは平和運動にとってほんとうに大事なことだと思います。ことに、先ほど中国の状況のことがちらっと話に出てきましたけれども、中国では本格的な空母をこれから造るんだと言っている。そしてその予算をたくさんつけることを誇らかに宣言している。そういう国の女性たちと共に手を結んで、そしてそれぞれが自分の政府に女性の立場を声を大にして訴える。そういうことをやっていくことができれば、この「戦争反対!女性大集合」ということがこれからだんだん力を持っていくんではないかと、そんなことを考えながらうかがっておりました。ほんとうにイデオロギーを抜きにしてと、先ほど湯川さんが言っていらっしゃいましたけれども、その一点で私はここにうかがって大変良かったと思っております。ありがとうございます。》


それに対して司会の落合恵子さん、いささか迷惑げに何ともぶっきらぼうで、ここでせっかく盛り上がりのチャンスをみすみす逃してしまっていたのはもったいない限り。サヨクの限界を見る。長谷川氏を無視した発言がふたりほど続いたのだが、しかしそのあと小林緑さんという方が長谷川さんにいい突っ込みで、長谷川さんの議論への参入が生かされ、終盤大いに盛り上がることになる。まず、小林さんの突っ込み。(2:12:05から)


《思いもかけない瞬間に先ほど凍りついてしまったんですけれども、先ほどからたびたび話題になっておりますが、東京新聞でも大きく取り上げられました、ジャーナリストたちによる、安倍政権をいま解任してもらって再選挙しようという運動に私も呼びかけ人となり、末席ながら記者会見にも出席致しました小林緑と申します。実は先ほど、長谷川三千子さんがこの会にいらっしゃったということで、もうすばらしい勇気だなと感心してしまったんですが、それはさておき、ちょっとだけ話が飛んでしまうと困るので、一つだけ確認というかおうかがいというか、でもお答えいただく必要はないと思うんですが、長谷川さんが冒頭に自己紹介で、「安倍政権の応援団をしております長谷川三千子です」とおっしゃいました。これはまったく聞き捨てならない発言だと思います。といいますのは、長谷川さんはご自分でもおっしゃいましたようにNHKの経営委員になられましたが、私も実は経営委員でした。6年間2期務めました。その時に、まあとにかくあそこで発言しにくい、時間もないしそして女性も少ない、委員は5人いたんですけれども理事に女性は一人もいないという場で、ようやく勇気を振り絞ってですね、ETV特集の裁判に関わるあまりにもひどいNHKの対応に対しても意見を申し上げたりして、そのことに注目されて、この間も記者会見にお呼びいただいたのですが、安倍政権の応援団と公言する方は経営委員の資格ではないと私はないと私は思うんですね(会場大きな拍手)。ご存知のように国会で承認され、そしてまた放送法というところにありますように、決して政権の応援団になっては困るんですよ。それではないために経営委員はあるはずです。それからNHKをめぐるさまざまな、・・・今この時代にあってNHKという最大のマスメディアがこの状況に対して、きちんとした客観的な報道を広く伝えるということが絶対必要であるのに、今のNHKの放送はまさしく応援団の意向をそのままですね、安倍さんの宣伝のようなNHKになっている、それをただしていただきたいと思います。(満場の拍手)》


長谷川さんはこの発言をしっかり受け止め、次の発言となる。(つづく)


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