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「性」問題についての原理的思考―夏目祭子さん [思想]

私にとって夏目祭子さんも原理的思考の系譜に連なる人だ。

≪体はそれ自体、心を持っている。その発する声を無視するわけにはいかない。そして心は時として、肉体的だ。まるで体と同じような運動をして、笑わせてくれることがある。そう思って眺めていると、何だかあたしには、体と心ってやつは、つまるところ同じ一つの物質の気体と固体ってぐらいに密着したもの同士なんじゃないかって気がしてくるんだ。あたしの本体の、重くて底に固まったところが肉体で、だんだん軽く気化していってる部分が心と呼ばれるところ―そんなイメージ図が、例えば下から上までグラデーションで濃淡を塗り分けられた円柱の姿となって浮んでくる。

  まるで
  体は
  心の固まり
  心は
  体の風

体だけ取り出して切った貼ったで片つけようったって、そんなのはじめっから不可能なことで、うまくいくわけがなかったんだよ。≫(『ダイエット破り!』河出書房新社 平成11年)

心と体の関係がイメージとして見事に表現されていると思う。

ダイエット問題でデビューした夏目さんだが、真骨頂は「性」の問題である。

夏目さんを知ったのは、「正論」平成14年5月号に掲載された「『婚外セックス』の蔓延が国を傾ける」だった。第一次採択戦の失敗のあと、陣営建て直しを図っていた「つくる会」山形県支部では、いったん教科書を離れ、広い視野から教育を考えようとした。若手参入もあって「子育てを考える会」
http://www.geocities.co.jp/SweetHome-Ivory/4291/index.html
を立ち上げ、評議会で同席させていただいた田下昌明先生に講演をお願いし、その後第二弾として夏目さんに山形で講演していただいたものだった。
http://www.geocities.co.jp/SweetHome-Ivory/4291/seithink.htm

その夏目さんが、今年の「正論」3月号に『いま、少年少女にもオトナにも必要な性教育とは』と題する論考を寄せておられる。

≪あれあれ、今や果てしなく大勢の人たちが、セックスというせっかくの貴重な行為を、本来の目的とは違う用途で使い、本当は相手にすべきでない人を相手に繰り返している。≫
ずばり結論からはじまるこの論文は、「援助交際」の広がりについての考察を通し、
≪日本人は今、「できるだけ数多く、必要でない相手と、必要でないセックスをやらされる」ように焚きつけられ、仕向けられている。≫
と指摘する。
要するに、
≪射精だけを目的に据えられたセックスは、人間が持つ全身の感受性の満足には至らない、短く味気ないものとなってしまう。また射精を頻繁にし過ぎると生命力が弱まることは、昔の日本人なら心得ていた常識である。・・・本来、夫婦間のセックスが深く充実しきったものであれば、外でムダ遣いする必要はあまりなくなる。そこを「子作りのためだけに」とそそくさと済まさせ、余った性欲を外でまき散らしてムダ遣いさせ、お上に反抗するだけの生命力が養われないようにコントロールしたわけだ。≫
ということなのだ。
≪そもそも、社会制度上のタテマエをはずして原点に還れば、結婚とはイコール、特定の異性をセックスの相方として選ぶこと、と言えるだろう。隠れてコソコソ、でなく堂々と世界に認められたパートナーとして、本物の性の歓びを全身全霊で味わえた二人組は、それまで一人ずつでは不可能だったことが可能になるような、「神通力」と言えるほどの力が湧いてくるようになる。そうなると、その夫婦は共同で大きな仕事ができる、という強みへとつながる。これが「結婚」というものの本当の意味なのだ。≫
まさに「原理的思考」によって「結婚」の「本当の意味」が語られている。
この論考は、
≪「偽らないこと」こそが、セックスを享受するための第一歩だ。誰かにやらされる・強いられるものとしてではなく、自分の本心から発するセックスを、私たちはこれから取り戻してゆこう。≫
と締めくくられている。「自分の本心」がどこにあるかわからなくさせられてしまっている時代なのだ。「日本人としてのアイデンティティーとは何か」という問いにも通底する問題なのだろう。

だれにとっても身近で切実な「性」問題の本質について、世の中との関わりをもしっかり視野に置きつつ真正面から論じることのできる夏目祭子さんは、まだまだ注目されていい人だ。
 




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