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「国民国家シテスム」を超える(田中宇) [現状把握]

田中宇さんの「★国民国家制の超越としての一帯一路やEU」、読ませられました。17世紀以来の「国民国家システム」が相対化されつつある、そのうねりが伝わってきます。

1648年にスタートした「ウェストファリア体制」は、《世界中のすべての場所がいずれかの一つの国民国家に属し、国民国家が人類の最高の権力機構で、国家どうしは対等であり、国家と国民の関係はその国の法規でのみ規定され、他国の内政に干渉してはならず、国家は自衛権を持ち、国家間の国境線は確定・安定していること》を目指す世界体制であった。その後その体制は、覇権国英国をはじめとする「帝国による支配」と、産業発展のプロセスを経た「資本による支配」のせめぎ合いの中で翻弄され、戦争や混乱をくりかえすことになります。《ウェストファリア・国民国家の体制は、表向き美しく理想的だが、内実は、人殺しや間接支配や濡れ衣・偽善・詐欺・歪曲報道などの、汚くてずるいものに満ちている。この偽善性・独善性は、まったくアングロサクソン的・・・人類が、この偽善から逃れるためには、世界が別の体制に移行していく必要がある。》そこで田中氏の一貫した見立てが「多極化」です。《EUと一帯一路は、米英中心主義を長引かせるウェストファリア体制の縛りから人類を解放する多極型の新世界秩序の試みであるという点で同類だ。》中露などのBRICS、リーマン危機後のG7からG20への変化、安倍政権の日本が進めるTPP11(日豪亜)もその流れということになります。国家が相対化の方向に向かいつつある。

西尾先生講演会.jpgそこであらためて思い出すのが、平成11年『国民の歴史』出版間もない頃、山形市で開催された西尾幹二先生の講演です。その要旨
国家解体傾向の例としてあげられるEUのヨーロッパ統合について考えてみると、19世紀近代になって半ば人為的に成立した英・仏・独・伊といった「国民国家」が、資本主義の成熟及びテクノロジーの発達によって、国家の垣根を低くしようという方向に向かっているのは確かである。しかしそれらの国々は、ヨーロッパ以外の国々との垣根まで低くしようということには決してならない。ヨーロッパ人は国民国家の枠を越えて生きることはできても、ヨーロッパ人の枠を越えて生きることはできないし、しようともしていない。今のヨーロッパの動きは国家の解体などではなく、ラテン語文化とキリスト教を基盤とする新たな国家像への模索であり、むしろ宗教や歴史や人種の共通性に根ざした国家こそがこれからの国家像と言うい新しいイデオロギー傾向と軌を一にしている。/ 一方、明治維新を経て国民国家となったと言われる日本について考えてみると、内部に多様な民族や言語や宗教を抱え込みながら国境紛争を覚悟の上で無理に国境線を引いて出来上がった国民国家とは異なり、太古以来の自然発生的な国家をそのまま延長して国民国家になった特殊な国家です。日本は国民国家になる前からずっと国家でした。したがって、国境の壁が取り払われつつあるのはヨーロッパに限ったことであり、それを日本にそのまま当てはめようとするのはとんでもない考え違いです。明治帷新のはるか以前から国家だった日本に対応しているのは、英・仏・独・伊という各国ではなくてヨーロッパなのです。/ ところが、西洋中心の「東京裁判史観」をまともに受け容れてしまった戦後日本は、「日本人である前に国際人」「国民である前に地球市民」といった一見さももっともらしい言葉によって、太古以来積み重ねてきた私たちに自然に備わった日本人としてのアイデンティティ(自覚と誇り)がずたずたにされつつある。しかしそれは、ずっと前から国だった日本と、近代の国民国家を同列に考えるという誤った認識に基づいていることを知ってほしい。》
戦後叩き込まれたGHQ主導の歴史教育を見直そうという「新しい歴史教科書をつくる会」の運動の中での講演で、当時非常に説得力がありました。あれからちょうど20年、時代はぐんと踏み込んでいます。西尾先生のいう「国」以前、古代にまでさかのぼって「日本」を考えるとどうなるか、のレベルです。ここで飯山史館、栗本史観が表舞台に登場となるはずです。今回の田中宇論文はその露払いのようにも思えました。
雲井龍雄を思い出したので、書き添えておきます。この前書き上げた「置賜発アジア主義」からです。
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同志が集い解盟の宴を催した際、その折の心境を託して詠ぜられた詩があります。「會舊部局將校於。置酒更盟。酔後、賦之」、その一部を引きます。

  聞説八小洲外別有五大洲  聞くならく八小洲の外別に五大洲あり
  長風好放破浪舟  長風放つに好し破浪の舟
  鳥拉之山太平海  烏拉(ウラル)の山太平の海
  去矣一周全地球  去って一周せん全地球

 尾崎周道の釈、《聞くに日本の外には五大洲があるという、破浪の舟を長風に放ってウラルの山や太平洋と地球を廻り、各邦の俊傑と親しく語り、万国の名勝を観てしかる後、故郷に帰って松菊を伴とすることが出来れば、一世の能事は終りだ》——雲井龍雄にとっての「戊辰雪冤」の念の先は、アジアからさらにウラルを越え、勇躍世界へと羽ばたいていたのです。

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以下、田中論文です。たっぷり30分以上かけて読みました。その価値があります。
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田中宇の国際ニュース解説 無料版 2019年2月4日 http://tanakanews.com/

●最近の田中宇プラス(購読料は半年3000円)
ドルを犠牲にしつつ株価を上げる  http://tanakanews.com/190201dollar.php
英国のEU離脱という国家自滅  http://tanakanews.com/190128brexit.php
米国「国境の壁」対立の意味  http://tanakanews.com/190115wall.php

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★国民国家制の超越としての一帯一路やEU
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多極側に立った地政学分析で知られるペペ・エスコバルが、中国の「一帯一路」について興味深い分析記事を出した。中国が、西アジアや南アジア、東南アジアの経済成長を支援することを通じて、これらの地域の地域覇権国になる50年計画が一帯一路だ。中国はこの計画を、17世紀以来の近現代の国際政治体制の基本である「国民国家シテスム」「ウェストファリア体制」を超越する世界体制づくりであると位置づけている、とエスコバルは書いている。

http://www.atimes.com/article/all-under-heaven-chinas-challenge-to-the-westphalian-system/
All under Heaven, China’s challenge to the Westphalian system

エスコバルは、中国政府系の一帯一路に関する研究所の幹部(Xiang Lanxin)が2016年のシャングリラ対話での発言で、一帯一路の計画を「ウェストファリア体制後の世界体制への道」であると規定したことを紹介している。中国に昔からある政治概念である「天下」が、中国を中心とする世界・国際社会の枠組みを示す概念であり、英語の「グローバル」と同じものであると、エスコバルは書いている。中国の古来・近代以前の世界秩序(中国圏の国際秩序)は「華夷思想」「冊封体制」であり「天下」は、その体制全体を示す概念だ。一帯一路は、中国
が西方や南方の周辺諸国を影響下に入れる「ネオ冊封」「中国地域覇権」「新中華帝国」とも呼ぶべき戦略だ。

http://tanakanews.com/a0417okinawa.htm
沖縄の歴史から考える

ウェストファリア体制(国民国家体制)は、近現代の世界を創設・支配してきた欧米が近代の始めに作った国際政治の基本体制であるが、冷戦後、米国が掲げた「世界強制民主化」や、欧州EUの国家統合など、ウェストファリアの基本線から離れる・超越する動きが相次いでおり、そうした脱ウェストファリアの動き・試みの一つが中国の一帯一路の計画であるという指摘が、私がエスコバルの記事から読み取ったことだ。この気づきは、私にとって、そしておそらく私の記事の精読者たちにとって、衝撃的なものだ。国際政治分析は最高の娯楽だ(娯楽なのに一部を有料配信にしてすみません)。

http://www.zerohedge.com/news/2019-01-14/escobar-all-under-heaven-chinas-challenge-westphalian-system
Escobar: All Under Heaven, China's Challenge To The Westphalian System

現在の世界体制の基盤であるウェストファリア体制・国民国家システムは、国家間の戦争を回避するために作られたとされている。世界中のすべての場所がいずれかの一つの国民国家に属し、国民国家が人類の最高の権力機構で、国家どうしは対等であり、国家と国民の関係はその国の法規でのみ規定され、他国の内政に干渉してはならず、国家は自衛権を持ち、国家間の国境線は確定・安定していることが望ましい、といった内容だ。こうした国民国家システムは、1648年のウェストファリア条約で作られたとされているため、今の世界の国民国家体制は
「ウェストファリア体制」と呼ばれている。

http://en.m.wikipedia.org/wiki/Westphalian_sovereignty
Westphalian sovereignty  Wikipedia

(実は、ウェストファリア条約はそうした意味のものでなく、後付けでそのような歴史認識がでっち上げられたようだが、国民国家の起源がどこにあるかはあまり重要でない。フランス革命など、後世の支配者・覇権運営者たちに都合がよいように歴史的な意味づけが歪曲されている歴史事案はたくさんある。おそらく「歴史的事実」の過半が、意味づけを後から歪曲されている。歴史は詐欺だ。歴史の先生は、ネズミ講の末端の、往々にして下手なセールスマンだ。歴史は、正しく読まず、鵜呑みせず、裏読みするために存在している)

ウェストファリア体制の本質に対する私の見立ては「英国流の世界支配術の一つ」だ。18世紀の産業革命以降の英国覇権の時代は、英国の世界支配を恒久化しようとする「帝国」の動きと、帝国の動きを乗り越えて産業革命を世界に広げて世界的な経済成長を引き起こそうとする「資本」の動きが暗闘相克していた。帝国の側は、英国主導で欧州列強の談合体制を作り、列強が全世界を分割して植民地支配する戦略を採った。資本の側は、列強が支配する植民地において独立運動を扇動し、独立した国民国家にすることで、世界経済の成長力を増強しようとした。植民地の人々はやる気がないので経済成長しにくいが、独立した国民国家の人々は「自国の主人」である(と思い込む)ので士気が高く、経済成長しやすい。

http://tanakanews.com/080228capital.htm
資本の論理と帝国の論理

資本の側が画策した「すべての植民地を独立させ、世界中を国民国家で埋め尽くす」という策略を、理想論として原則化したものが、ウェストファリア的な国民国家の世界体制だ。帝国の側はこの理想論の原則を支持しつつ、それと抱き合わせで、世界を独立させていくに際して(1)「世界中を、英国と似た大きさかそれ以下の中・小型の国民国家で埋め尽くす」、(2)「できるだけ多くの新興諸国の政府中枢に、子弟の英国留学などを通じて英国の傀儡勢力を配置し、国民国家を裏から操作する」という2つの策略を実行した。

http://tanakanews.com/080814hegemon.htm
覇権の起源

(1)は、中小諸国どうしを競わせてそれを英国が仲裁したり、英国が世界のとりまとめ役となり、敵対してくる一部の国々をみんなで経済制裁する、といった「均衡戦略」に基づく覇権運営をやるためだ。そして(2)は、帝国主義(顕然支配)から覇権主義(隠然支配)へと、世界支配を巧妙化・バージョンアップするものだ(英国はアングロユダヤ連合であり、ユダヤ人は昔から欧州諸国の支配者に金を貸し、政府財政を隠然支配する官房政治=諜報活動に長けていた)。今に続くウェストファリアの国民国家体制は「理想論」つまり「正義」であるが、これをうまく使うことにより、英国(帝国側)は、敵性国(後発で英国のライバルになった他の列強など)を「正義を踏みにじる極悪な国」に仕立て、倫理戦で勝利できる利点を得た。

http://tanakanews.com/080829hegemon.htm
覇権の起源(2)ユダヤ・ネットワーク

第2次大戦後、世界覇権が英国から米国に移譲され、世界的な国民国家体制が確立し、国際連合という国民国家体制の調停役(覇権の機関化)も作られた一方、英国は米国を巻き込んで冷戦を引き起こし、米国好みの国民国家体制を、英国好みの冷戦体制で上書きし、これを40年維持した。冷戦中は、社会主義vs資本主義、国民国家(民主主義)vs全世界の共産化という対立構造だったが、レーガンが英国や軍産をだまして冷戦を終わらせた後、再び国民国家体制が問題になった。

http://tanakanews.com/160301trump.htm
ニクソン、レーガン、そしてトランプ

冷戦終結とは「冷戦体制を、米英金融覇権体制で上書きしたこと」だ。米金融界が新規に発明した「債券金融システム」を使い、このシステムを膨らませて数十年続く大儲け=巨大なバブルの構図に、英国(ロンドンのシティ)も入れてやることで、米国(資本側)が英国(帝国側)を買収し、冷戦構造の破壊を容認させた。英国はカネに目がくらみ、軍事対立の戦略を捨てた。これが冷戦終結だ(リーマン危機や昨年末の株価暴落は、冷戦後の基盤である債券金融システムの終焉・バブル崩壊である)。

http://tanakanews.com/171013hegemon.htm
田中宇史観:世界帝国から多極化へ

冷戦期、帝国側(軍産複合体)の内部には、英国側と米国側があり、冷戦終結で英国に捨てられた米国側の軍産は、対抗策として冷戦後、ウェストファリア体制に「民主主義や人権を侵害している諸国を、国際社会や米国が、武力で政権転覆するのが良い」という新条項を加えるべきだとする「強制民主化」の戦略を提唱した。ウェストファリア体制には「内政不干渉」の原則があるが、民主や人権を踏みにじる諸国には内政不干渉を主張する権利がない、これはウェストファリア体制の改良・バージョンアップである、というのが強制民主化の主張だ。これは、
ネオコン(共和党)やネオリベラル(民主党)の政治運動であり、表向きは「民主化」を標榜する理想主義だが、実のところ、世界に米軍を差し向ける軍産の帝国的な動きである。(ネオコンは、軍産の帝国的な動きを過激にやって故意に失敗させる資本側のスパイだ、というのも私の仮説だが)

http://tanakanews.com/g0331neocon.htm
ネオコンと多極化の本質

強制民主化の戦略は、90年代末のコソボ紛争(ロシアと仲が良いセルビアをいじめるのが目的)や、クリントン政権の「ならず者国家」指定戦略で始まり、01年の911テロ事件によって劇的に開花した。だがその後、イラク侵攻やアフガニスタン占領、イラン核問題、アラブの春、リビアやシリアの内戦などで連続的に失敗し、米国の覇権(国際信用力)を低下させた「負の遺産」と化している。

http://tanakanews.com/e0518hawk.htm
だまされた単独覇権主義

英国は、米国が主導する強制民主化の戦略が、米国の覇権を自滅させるネオコンの策略であることを早くから気づいていた。英国のブレア首相は99年のシカゴ演説で、強制民主化の策をウェストファリア体制を強化改良するものとして支持しつつも、国連などの国際機関を通じて正当性を確保してから、必要最小限の軍事行動で成功させるべきだと慎重論を展開した。しかしブレアの忠告は、その後起きた911事件で木っ端みじんになり、米国の過激なイラク侵攻にいやいやながら付き合ったブレアは英国内で戦争犯罪者のレッテルを貼られた。主犯のネオコンの多くは逃げおおせ、一部はジョン・ボルトンのようにトランプに登用され、米国覇権の自滅策の続きを展開している。

http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/politics/3539125.stm
Blair's 'international community' doctrine

▼ネオコンの世界民主化=政権転覆戦略と、EUや一帯一路が「ウェストファリアの改良型」として競い合う

ネオコン系のボルトンや、その先輩格であるエリオット・アブラムス(レーガン政権時代からの過激戦略の策士)が最近さかんに展開しているベネズエラの政権転覆の試みも「ウェストファリアの改良型」の詭弁に基づく「強制民主化」を過激に稚拙にやって意図的に失敗させて世界を多極化しようとする隠れ多極主義の策略の一つだ。ベネズエラで民主的に選ばれたマドゥロ政権を転覆し、米国傀儡の野党の政権に替えようとする今回のトランプ政権の動きは、うまくいく可能性がかなり低い。

http://original.antiwar.com/paul/2019/01/28/trumps-venezuela-fiasco/
Trump’s Venezuela Fiasco   Ron Paul

http://original.antiwar.com/buchanan/2019/01/28/if-the-army-stands-with-maduro-what-is-plan-b/
If the Army Stands With Maduro, What Is Plan B?

国連はすでに既存のマドゥロ政権の正統性を認め、野党を政権として認めないと宣言しており、米国の謀略が国際的に認知されていく可能性はほぼゼロだ。ベネズエラは、イランなどと同様、すでに長年の米国からの経済制裁に耐えてきたので、今後さらに経済制裁が続いても政権が転覆しない。ロシアや中国が国際的に動き出し、国際社会でのマドゥロ政権の正統性が保たれていく。米国の信用がまた下がる。反米化する国際社会での人気獲得を狙い、トルコのエルドアン大統領がしゃしゃり出てきてマドゥロ支持を声高に表明したりしている。

http://www.presstv.com/Detail/2019/02/01/587387/UN-reject-Guaido-cooperate-Maduro
UN rejects Venezuela’s Guaido, will only cooperate with recognized government of Maduro

http://www.al-monitor.com/pulse/originals/2019/01/turkey-what-is-behind-ankaras-love-for-nicolas-maduro.html
What is driving Ankara’s love for Nicolas Maduro?

冷戦後、米国の軍産・帝国側(と、その一部のふりをしたネオコン)が、強制民主化策を「ウェストファリア体制の改良型」として展開して失敗しているので、軍産側と対抗する多極主義の側も、ウェストファリアの改良型としての多極型の新世界秩序を模索するようになっている。その一つが、冒頭に紹介した中国の「ネオ冊封体制」である一帯一路の戦略だ。

http://tanakanews.com/e0615korea.htm
アジアから出て行くアメリカ

冊封体制は前近代の国際体制なので、近代の体制として作られたウェストファリア・国民国家の体制と比べて洗練されておらず、緻密さがなく曖昧だ。ネオ冊封である「一帯一路」は現時点で、すぐれた国際秩序でない。しかし、善し悪しの問題でなく現実の流れとして、今の傾向がこのまま続いて米国覇権が衰退していくと、中国から西アジア、南アジアにかけての地域の国際秩序は、一帯一路が支配的になることが確定的だ。それにウェストファリア体制には、英国とその後継覇権である米国・軍産(米英イスラエル諜報界)が世界の多くの国々の政権中枢
に入り込んで隠然と介入できる間接支配の機能が付帯されている。ウェストファリアが世界の統一的な体制である限り、英米・軍産イスラエルの好戦的なやり方が通ってしまい、人類は、テロ戦争や冷戦型の対立構造や戦争・軍拡から逃れられない。

ウェストファリア・国民国家の体制は、表向き美しく理想的だが、内実は、人殺しや間接支配や濡れ衣・偽善・詐欺・歪曲報道などの、汚くてずるいものに満ちている。この偽善性・独善性は、まったくアングロサクソン的だ(彼らは、偽善者だからこそ世界の頂点に登り詰めることができたが、それゆえに、偽善者とかウソつきとか強欲と呼ばれることを強く嫌う。ユダヤの伝統はこれと違い、白黒を明確にしない隠然性を大事にする)。人類が、この偽善から逃れるためには、世界が別の体制に移行していく必要がある。偏った経済成長の是正も同様だ。そこに、多極化の必要性がある(この移行を手がけているのもアングロサクソン・ユダヤだ。その他の「天然・ひつじ系」の人々は、永久に騙され、率いられっぱなしだ)。

中国の一帯一路のほか、中露などBRICSも、ウェストファリアを超える新たな世界の枠組みになっている。リーマン危機後にG20がG7に取って代わったのも同様だ。国連も、戦後のウェストファリアのバージョンアップのための機関だが、近年の国連は米英覇権よりBRICSやG20に接近している。先進国の中では、EUの国家統合がウェストファリアの(アングロサクソンの詭弁でない)「真の改良型」になっている。欧州の国家統合は、ウェストファリア条約が作られたころからの構想であり、国家間の戦争を回避するために作られたウェストファリア体制が最終的に行き着くのが諸国間の国家統合であるとされている。実際のEUの国家統合は、冷戦期に英国の謀略の犠牲(米ソが欧州を分割して恒久対立し、欧州とくにドイツが恒久的に弱さを強いられる)になってきたドイツなど欧州大陸諸国を、英米から自立しつつ強化する策として、隠れ多極主義のレーガンが、躊躇するドイツを叱りつけて進めさせたことだ。英国がEU離脱問題でコケて(米国の多極系の諜報勢力によって)自滅させられている間に、EUは軍事統合など英国が反対してきた国家統合をどんどん進めていく。

EUの国家統合は、法治的で洗練されている。前近代風で曖昧な中国の一帯一路と対照的だ。しかしEUと一帯一路は、米英中心主義を長引かせるウェストファリア体制の縛りから人類を解放する多極型の新世界秩序の試みであるという点で同類だ。安倍政権の日本が進めているTPP11(日豪亜)も、まだ曖昧模糊としているが、一帯一路に隣接する対中協調的な経済圏であると安倍自身が言っているとおり「米国覇権後」の多極型・超国民国家的な新世界秩序の一つになりうる。

http://tanakanews.com/170731abe.htm
中国と和解して日豪亜を進める安倍の日本

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めい

堺のおっさんの《トランプの描く新しい世界とは?》
やはり、田中氏の言う「多極化」です。

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960 名前: 堺のおっさん
2019/02/08 (Fri) 23:39:45

トランプの描く新しい世界とは?
グローバリスト、ネオコンに支配された世界で無いことは当然である。
この世界では、アメリカそのものの基盤が放置され
アメリカが存続の危機に立たされたからだ。
トランプの描く新しい世界秩序は…
有力な民族国家、もしくはグループが複数並立する世界秩序だ。
アメリカはその中でも、頭一つ抜けた存在でありさえすればいい。
冷戦時代や中露とアメリカの対立というような世界を二分する力関係ではない。
もっと多くの国家による共存秩序だ。
そのためには、中国の膨張は絶対阻止しなければならないし、
統一朝鮮の非中国化も進めなければならない。
そのほうがより豊かで強力な統一国家になれるからだ。
そして、中国に対する有力な壁となりえる。
米朝会談の進展がトランプ世界戦略の肝と言っても良い課題であることは
このように考えれば、腑に落ちる。

トランプの考えていることは…
今まで、誰も考えたことのない世界観だ。
ある意味、プーチンのそれをも上回るスケールの大きなもの。
彼もまた合理的なリアリストである。
世界を経営感覚でとらえているのだろう。

by めい (2019-02-09 05:22) 

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