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mespesadoさんによる1億人のための経済談義(41) オカネの呪縛からの解放こそ [mespesadoさんによる1億人のための経済講]

「景気拡大長さ「いざなぎ」超え 実感ある?成長率1%台」の見出しで《東京五輪の後の1965年に始まり、大阪万博が あった70年まで続いた「いざなぎ景気」は、年間の成長率が平均10%を超えた。「3C」とも呼ばれるカラーテレビやクーラーといった品が急速に普及し、多くの人が豊かさを実感できた。対して、今の景気拡大の平均の成長率は1%台にとどまり、当時のような好景気は実感しにくい。》とある。1966年から1975年まで家を離れていた。学生寮やテレビもない郊外の借家生活は世の中から隔離された世界で高度成長の実感からはほど遠かったが、帰省するごとにモノが豊かになっているのに驚いた。私の知らぬところで両親中心の商売は伸びていたのだった。2008年のリーマンショックを挟むが、21世紀に踏み込んでから20年近く、身の周りさほどモノも金も増えたとは思えないが、仕事そのものは楽になった。AI関連機器の増え方だけはすさまじい。仕事が楽になった分、時間の余裕ができて、私の場合その分パソコンに向けられた。人間は生産活動も昔に比べて楽になっているはずなんです。それなのに、何で労働環境が世知辛くならなければならないのか?≫というmesさんの問題設定。その前に答えは書いてある。根本の問題は、必需品の世帯普及が極限に達したため高度成長が終わり、企業の収益が伸びなくなったので、起業は市場の有限なパイの食い合いで倒産の危機にびくつきながら、 コストカットしないと生き残れなくなった。そのため労働者の職場環境にしわ寄せがきて、給料は抑えられ、一人当たりの労働量も責任分担も厳しくなった。≫その「根本の問題」のさらにその根本が456で解き明かされる。そこから未来も見えてくる。≪理不尽な結果に至る論理の流れ≫とその分析がすごいです。

*   *   *   *   *
455:mespesado: 2018/12/16 (Sun) 08:00:55
 閑話休題。今度は日本の労働環境の話題について。
 まずは「えり」さんという人の連ツイから:

https://twitter.com/yasumilk0923/status/1071738114492653568

えり@yasumilk0923
> 夫の会社はクソなんですけど、私がそのクソぶりを指摘して憤慨すると
> 夫は「定時で上がってたら仕事が回らない」「労基法を遵守していたら
> 利益がでない」などと使い潰される社員の立場なのに経営者目線で会社
> を擁護する徹底した社畜ぶりを見せるので、私の怒りの矛先は二股に分
> かれて夫にも刺さる。

> 残業も休出も出張も今までだって(私の無理によって)乗り切ってきた。
> それはもういい。ただ、私は「そうだよな、あの会社おかしいよな」っ
> て一緒に怒ってほしいし、残業休出出張が私の努力によって支えられて
> ることにちゃんと気づいて、ねぎらいや感謝の言葉を口に出してほしい。

> 夫が自分が労働力を長時間差し出す対価としてもらっている給料に納得
> しているのかもしれないし、今稼ぐ金額が家庭には必要なのだから多少
> のことは仕方ないと思っているっぽいけど、私の労力と心身の健康まで
> 差し出すいわれはない。

> 休んでほしいと言われた日は大体休んでると夫は言った。そもそも、幼
> 稚園や学校に出頭しなければならない日数の1割も私は夫に打診していな
> いということを、この人は知らないんだなあと愕然とした。平日ずっと
> 出張スタイルになる前は伝えてたから、全体量は把握してると思ってた。

> 「定時帰宅週休二日じゃ仕事が回らない」と「保育施設の受け入れ時間
> 及び子供の健全な生活」を比べたとき、相反する部分を誰が埋めている
> のか、前者を主張する人は考えてもいないらしい。負担した人が仕事を
> 続けられなくなったり体を壊したりするルートも見えないらしい。

 よくある“社畜街道まっしぐらな夫”とその妻の愚痴ですが…
 これに対するリプの中での「まるまね」さんと「きなこ」さんの“論争”が
興味深い:

まるまね@maruborostar667
> 確かに正論です。残業休出出張を妻の労力などは理解できますが、そん
> な会社にご飯食べさせてもらってるのではないですか?
> 家族の為に社畜となって歯をくいしばって働く事がいけませんか?使い
> 潰されないように、今のポジションを上げる為に頑張ってるとも思いま
> せんか?
  ↓ ↓ ↓
きなこ@hqSnZH9cgZAR6Yb
> これはむしろ企業が雇用者にご飯食べさせてもらってるんです。契約時
> 間に仕事を終えなおかつ子どもを育てられる賃金を支払えない企業を延
> 命させているのが、労働者です。
  ↓ ↓ ↓
まるまね@maruborostar667
> 企業はお金が無いと支払いできないのはわかりますか?
> 権利の主張(契約時間等)良いです。主張できる程の結果は残してるの
> は当たり前ですよね。企業に利益をたくさん残してるのであれば問題な
> いと思います。
> 結果を残さず権利の主張ばかりの人が多いと思います。自らの仕事に対
> する意識の違いです。
  ↓ ↓ ↓
きなこ@hqSnZH9cgZAR6Yb
> あれは資本論なんですがね…。利益と賃金のない仕事をするのはデフレ
> スパイラルと再生産不可で日本は滅亡します。そんなに企業に依存して
> 滅私奉公しても見返りはありませんよ。
  ↓ ↓ ↓
まるまね@maruborostar667
> 博識でうらやましいです。
> そこまで理解しているのであれば、利益を出すところまでは共通認識だ
> と思います。自分が許せないのは、同じ会社の人が利益を出して仕事し
> てるのに対し、権利を使って有給や定時上がりを当たり前のように使い
> 利益を出さない人です。権利を主張する人は後者が圧倒的です
  ↓ ↓ ↓
きなこ@hqSnZH9cgZAR6Yb
> 有給や定時退社は普通の契約内容なのですが、それを守るなという雇用
> 者はある意味逸脱していると思います。日本の雇用慣習として成果をあ
> げてもちゃんと評価するシステムがなく勤務時間の蓄積で測ろうとしま
> すね。昇給あるよ、と言われれば頑張るのが雇用者です。
  ↓ ↓ ↓
まるまね@maruborostar667
> 当然雇用契約は大切だと思います。
> しかし、企業は利益を追求ものです。結果や成果が残せない人は自らの
> 時間を削ってでも結果や成果を出すのが普通だと思います。
> それに雇用慣習?評価するシステムが日本には無い・・・では外国の評
> 価は完璧なのでしょうか。外国ほど結果や成果には厳しいですよね。
  ↓ ↓ ↓
きなこ@hqSnZH9cgZAR6Yb
> もちろん海外はカンタンにクビになりますが、カンタンに昇給できます
> ね。国内の営業に関してのみおっしゃってますが管理部門設計製造部等
> 々ありますね。要は生産性では。例えばニュースのなにかの会議などに
> 女性はほとんどいません。実力を本当にみているならおかしな風景です。
  ↓ ↓ ↓
きなこ@hqSnZH9cgZAR6Yb
> 来し方を振り返るに、リストラの影響で人手を入れずに20年過ごしてき
> て、ダラダラ勤務が常態化してるだけのような気がします。昭和は定時
> プラス1時間くらいで終わってました。

 …以上、どちらかというと、「まるまね」さんは「保守」的、「きなこ」さんは「リベラル」的な考え方をしていると思いますが、前者は「企業は利益を上げてなんぼ。利益が上がらなければ給料も出ないんだから、企業を責めるだけでは問題は解決しない」ということを言っており、対する「きなこ」さんは、「企業は労働者が働くから利益を出せる。労働者が働くかなければ企業は利益を出せないんだから労働者を責めるだけでは問題は解決しない」と言ってるわけですね。うん。どちらも正論ですよ、これは。
 で、根本の問題は、必需品の世帯普及が極限に達したため高度成長が終わり、企業の収益が伸びなくなったので、起業は市場の有限なパイの食い合いで倒産の危機にびくつきながら、 コストカットしないと生き残れなくなった。そのため労働者の職場環境にしわ寄せがきて、給料は抑えられ、一人当たりの労働量も責任分担も厳しくなった。さ あどうする!ということなんですね。
 まず、企業の目的は、消費者にモノやサービスを提供することであり、そのために必要な労働は、そのための手段に過ぎない、ということです(労働そのものは「生きがい」などいろんな側面がありますから、「生産のために必要な労働」と、ここでは限定付きにしました)。
 だから消費者にとって世の中はどうなっているのか、ということがまず第一に観察しなければならない対象なのですが、これはもう傾向は明らかです。技術が未熟だった高度成長期より技術が発展した今の方がモノやサービスが充実しているのは明々白々の事実です。
  ということは、我々の本来の目的である消費生活が豊かになったんだから、我々はみなハッピーになっていなければおかしいですよね。もちろん、この消費生活 の豊かさが、例えばローマ帝国のそれのように奴隷の労働の犠牲のもとに支えられているとか、産業革命直後の女工哀史のような、人間がハードに働いたことの代償としての豊かさであるのなら、労働環境が世知辛くなるのはやむを得ないと納得せざるを得ないんですが、現代の豊かさはこれらとは明らかに違いますよ ね。AIを駆使した高度な機械による生産の自動化により、重労働の部分は人間じゃなくて機械がやってくれてるんですから、人間は生産活動も昔に比べて楽になっているはずなんです。それなのに、何で労働環境が世知辛くならなければならないのか?
 おかしいでしょう?理屈に合わない。じゃあどこに根本の原因があるのでしょうか。(続く)

456:mespesado: 2018/12/16 (Sun) 08:01:37
>>455
 この理不尽な結果に至る論理の流れをもう少し見やすくするために箇条書きの形に整理してみましょう:

① 人は必需品を消費しないと生活できない。
② オカネを手に入れないと消費できない。
③ 人は誰かにモノを生産して売らないとオカネが手に入らない。
④ 必需品の生産は既に満たされ、それに従事できる人数は限られている。
⑤ それにあぶれた人も自らの消費のためにオカネを稼がないといけない。
⑥ そこで必需品でないモノやサービスを見出して提供せざるを得ない。
⑦ 新規ビジネスなので、パターンが決まらないので機械化が困難。
⑧ 必然的に労働集約的にならざるを得ず、労働者にしわ寄せがくる。

という連鎖により、労働環境が世知辛くなっているわけですね。何ともバカみたいな話です。
 で、上の話のうち、人間が生き物である以上、冒頭の①は変えようがない“永遠の真理”です。また、④~⑧については、論理的、物理的に必然な現象で、そのとおりなんですから、これらには改善の余地が無い。
 すると、理不尽の諸悪の根源は、残る②と③(と、⑤の後半)の部分にあると考えるほか無い。ところが、これらの部分に共通するのは「オカネ」という単語です。
 そう。オカネの仕組みというかルールの問題に行き着かざるを得ないんですね。
  まず②の部分に風穴を開ける、という話ですが、実はこれ、一部では既に現実化しています。古くは民放テレビなんかがそうですね。それを言うと、「いや、商 品の値段に広告宣伝費が上乗せされてるんだから消費者はオカネを払ってるんだ」という人がいますが、テレビの視聴と商品の購入は別の消費行動です。民放だけ見てスポンサーの商品は買わないという選択は可能ですから、個別には切り離されてますからね。
 また、最近でいえば、インターネットの広告も同じですね。
 あと、他人のボランティア活動に依存した消費もそうです。
 というわけで、②については既に打開している例もあるのですが、全体から見ればわずかな例でしかありません。
 次に③の部分ですが、これを何とかしようというのがベーシックインカムの発想です。ただし、まるっきり労働なしにオカネを貰えることに対する抵抗というか、今までの常識が壊されることに対する世間の不安は大きいと思うので、段階的な方法として③’ 人は誰かにモノを生産して売った以上のオカネが手に入らない。という点に注目して、「売ったときに買い手が払ったオカネより多いオカネが手に入る」ようにしてしまう、という手があります。
 これ、今の日本で問題になっている「キャッシュレス化が遅々として進まない」という問題と大いに関係があります。
  現金で決済をしている限り、買い手が支払った金額以上に売り手が儲かるという発想は出てきませんよね。だって、現金は物理的な「物質」だから。これがキツ ネが化かした木の葉とかだったら、客が千円札を支払ったのに、店が受け取る時には一万円札に化けた、とかしても不思議に思わないかもしれませんが、通常は そのような発想自体が出てきません。
  これに対し、電子決済だとどうでしょう。電子決済が当たり前になると、オカネとは全体の量が決まっていて決済のたびに同じ金額がやり取りされているという意識が、より抽象的になってきます。なので、もし電子決済が今よりはるかに普及すれば、例えば消費税を徴収するのに、誰かがこの決済システムに介入してきて、客と店の間で決済が行われるときに自動的に消費税分を引いた金額が店の方に収入として記録される、というシステムにすることが可能になります。そうすると、その時点で「客が支払った額と店が受け取る額は違っても不思議でない」という意識が人々の間に芽生えます。
 そうなったら、もう一息です:「ということは、逆に客が支払った額より多い金額が店に計上されたっていいんじゃね?」という意識にたどり着くまでには。これ、いわゆる「負の消費税」に他なりません。
 ただし、この「負の消費税」を導入する、という発想には、上記のような「現金の物理的な性質による先入観の克服」の問題のほかに、2つの障害があります。
  その一つ目は、こういう話に対して脊髄反射的に出てくる「じゃあその財源は?」という質問です。これ、「税金は国の収入だ」、あるいはもっと根源の「オカネの総量は決まっていて無から作ることはできない」というもっと根強い先入観が背景にありますから、これを克服するのはなかなか容易ではありません。ただ、現金が物理的な存在で、「オカネの総量は決まっている」という先入観が、物理法則である「質量保存の法則」から来ている、という要素もありますから、キャッシュレス化が進めば、この先入観の牙城がだんだん崩されていくのではないか、という期待はあります。
 次に二つ目です。これは、天下の財務省の利権です。財務省は、たとえ税収が減ろうが「税率」を上げたり新たな税金を創設することがミッションです。これを変えるには、財務省の設立目的そのものを変えるしかない。しかしこれは容易なことではありません。過去において唯一の成功例ともいうべきなのが、通産省 (現経産省)です。かつての通産省は、実質は「輸出奨励省」でした。しかしこれが日米貿易摩擦の激化により輸入の非関税障壁の問題(今にして思えばこの大半はアメリカの単なる言いがかりだった)というすさまじい外圧によって、通産省の目的が「輸入奨励省」あるいは「内需拡大省」に大変革したわけです。
 なので、省庁の設置目的自体を変革する、というのは過去にも実例があるのですから不可能ではないはずです。もしも財務省を今の「徴税利権確保省」から「オカネのルール最適化省」に変えることができさえすれば、問題はほとんど解決するわけです。この変革は、財務省にとっても、今までの「徴税権」という利権が「オカネのルールを牛耳る」という、より高い次元の利権に変わるわけですから、国家規模の権限に執着する彼らにとっても悪い話ではないはずです(ちなみに「敵」がいるとき、これ を無理に倒そうとしても、相手は権力が強大ですから無駄なことが多いですが、倒すのではなく矛先を変えて生き延びさせる作戦の方が成功率は高いと思います)。
 ですが、実際の敵は財務省というより、その背後にいるDSであり、財務省自体がこのDSに牛耳られている、という実態がある。例えば、よくIMFが日本に緊縮財政を要請するのは、IMFの中に財務省の出向者がいるからだ、とはよく言われる話ですが、どうもそれだけではない。IMFは、そもそもが国際金融資本の手羽先です。そのIMFが財務省からの出向を許しているということ自体が、IMF(国際金融資本)が財務省を彼らの「最終目的」を遂行するための手足として使おうとしている可能性が高い。そうなると、財務省の設置目的を変えようとしても国際金融資本から横ヤリが入る 可能性が高い。そういう意味でも、手順として(もちろん同時並行して対策を立てる必要はありますが)、DSの弱体化は当面は最優先の課題であると思います。   (おしまい)

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