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mespesadoさんによる1億人のための経済講座〈Ⅲ〉(6) 「株」を考える基本 [mespesadoさんによる1億人のための経済講]

mespesadoさんによる「株」というものの基本的認識が極めて明解です。

株といえば思い出すことがあります。40年ぐらい前のことです。上場企業に勤める年上の義弟に「ウチの株を買っとくといいよ、必ず騰がるから」と言われたことがありました。余裕がなかったのもありますが、mespesadoさんの説明のような株の基本的知識も積極的関心もなく、結局買いませんでした。当時5〜600円だった記憶があります。妹との結婚式の時に、招かれた同僚たちと「ライバル企業に負けるな」と気勢を上げていたのを思い出しますが、その後ライバルをはるかに追い抜いて大きくなり、いま株価を見たら7800円になっていました。あのとき無理してでも義弟の言う通りにしていたら、もっと金に縁のある人生だったと思います。

もうひとつ皆川基金のことを書いておきます。平成18年の菊まつりでの宮内のがんばりを見た埼玉在住で宮内出身の皆川健次さんから、平成19年に「宮内の菊まつりに使ってほしい」南陽市に5千万円の寄附がありました。(南陽市皆川健次菊まつり振興基金平成20年にはさらに5千万円のはずだったのですが、19年に皆川さんは癌で亡くなられ叶いませんでした)この寄附が現金ではなく投資信託ファンドだったのです。翌年リーマンショックで株価が暴落します。その後の菊まつりの低落傾向とも相俟って皆川基金は忘れられつつありました。それがアベノミクスで俄然息を吹き返しつつあります。昨年度の運用果実80万円とか。これまで南陽市支出の菊まつり補助金の中に紛れ込ませてきたようですが、それでは皆川氏の遺志を生かすことにはなりません。若い人達の自由な発想を引き出すような形で宮内での菊まつりに活かすべきです。ファンドで寄附された皆川さんの先見の明、mespesadoさんの説明であらためて思ったところでした。

*   *   *   *   *

418:mespesado : 2018/04/22 (Sun) 18:42:07 host:*.itscom.jp

>>281
 さて、『アベノミクスによろしく』第5章の「アベノミクスの『成果』を鵜呑みにしてはいけない」。次は株に関する話です。
 著者は、アベノミクスで注目を浴びたテーマとしてGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)日銀による公的資金による“株価吊り上げ”について論じます。
 2007年頃以降は、アベノミクス開始前の2012年末あたりから、それまで1万円あたりで低迷していた日経平均株価が急上昇し始め、2015年の5月には、ついに2万円を突破します。
 著者は、その理由として、①量的緩和、②年金資金の投入、③日銀ETF(上場投資信託)の3つがあると指摘します。
 そして、①の量的緩和で円安になり、外国の投資家が割安になった日本株に向かったこと、②の年金資金が従来の保守的なポートフォリオを2014年からリスク資産である株式に多く配分するようになったこと、更に③で日銀までが株に参入したことなどにより、「公的資金が投入されるから株が上がるかもしれない」という期待により株を購入する投資家が増えたために株価が上昇したのであり、実体経済を反映したものではない。それに国民の大切な年金の積立金をハイリスクの株で運用していいのか、実際、2015年には大きな損失が出たではないか、とアベノミクスの不健全さを訴えます。
 著者はまた、2015年のGPIFの損失は実現損ではなく含み損ではあるが、その後2016年になって株価が持ち直して益が出たのも含み益に過ぎない、確定した利益ではないと言い、更にあまりにも巨額を株に投資してしまったため、それを売却すると株価に影響を与え、時価が下落する危険があるので売るに売れないようになってしまった(つまり益を確定することができない)、と疑問を呈します。そして
> 利益を出したといってもしょせん仮定の利益に過ぎないし、そのまま株
> を持ってても、やがて暴落して大きく損失を被ることが待っているとい
> うことか。そう考えると確かに意味ないね。それ、結局ほぼ間違いなく
> 年金吹っ飛ぶってことじゃん。

と主張します。
 さて、このような主張は正当でしょうか?
 まずここは原点に立ち返り、以前も説明したことがあるのですが、株への投資とはそもそも何であったかということを、今一度、復習の意味も兼ねて再度説明しておきましょう。
 そもそも株というのは、企業が起業や設備投資のために、元本を返すということはしないが、そのかわり、儲かったらそれに応じて未来永劫株主配当を毎年支給し続けるからという約束を書いた紙(株券)を渡して、資本家に資金を拠出してもらう、という制度です。
 ですから、株の「現在価値」というのは、将来の業績の変動により配当額がどう推移していくかという「予測」と、その予測がどの程度当たるかという「確率」を考慮したうえで、将来の配当金を投資額に対する「利息」だと考えたときのその「利率」が債券などのリスクの小さい運用と比べてどの程度「割に合うか」という要素によって決まります。これらによって「市場」が判断した株の「現在価値」が、「株価」と呼ばれるものの正体です。
 ここで、かつて放知技版で議論になった株価の「暴落」と「調整」の違いの話になりますが、非常に大雑把に言うと、将来の配当額の予測が急激に悪くなることによって起こるのが「暴落」で、「利率」の要素が変動することによって株価が下がるのが「調整」です。
 つまり、株が「暴落」するかどうかは企業の将来の経営状況に依存するわけで、国全体で見れば、要するに好景気が続けば「暴落」しないし、国が誤った経済政策をとる(例えば増税などの緊縮財政)などして景気が悪化すれば将来の企業は儲からなくなって、株は「暴落」するわけです。つまり、株価が「やがて暴落する」かどうかは今後の政府の経済政策に大きく依存します。政府が民主党政権下のような財務省に洗脳された緊縮財政を取るのでなく、アベノミクスのような正しい景気対策を今後も継続して実施すれば、株式市場が「暴落」するリスクを限りなく減らすことができます
 これに対し、「調整」の方は、非リスク資産の利回りの影響も受けますし、株を売買する投資家の心理のウラを読むとかコンピューター取引の影響とか、更にはそれのウラを掻くなどの影響を受けて絶えず変動する部分を指します。
 しかもです。株の短期売買で利益を得ているデイトレーダーのような仕事にとっては確かに「調整」のような短期の価格変動が重要ですが、年金のような、超長期にわたる資金の運用では、原則として売買を繰り返すのではなく、一旦株を購入したら、(ポートフォリオを逸脱した場合に枠をはみ出した部分を売却する以外は)原則持ちっぱなしで配当金を利息のようにして受け取るという運用形態を取るので、株の現在価値に過ぎない「株価」の変動である「調整」など意に介す必要は無く、しかもデイトレードのように株を売却して「利確」する必要もありませんから、保有が大きすぎて「売るに売れない」ことは何ら問題になりません。ただただ、将来の配当が安定するような経済政策を実行し続けるよう政府とタッグを組めばよいだけの話です。
 以上のような理解の下で、先ほどの引用文で、「そのまま株を持ってても、やがて暴落して大きく損失を被ることが待っているということか。」とか、果ては「年金が吹っ飛ぶ」などとする著者の主張を読むと、著者はこの年金の株式運用について、そもそもの仕組みが分かってないのではないかと疑わざるを得ません。        (続く)
【追記 30.4.26 mespesadoさんによる補足
598 名前:mespesado 2018/04/25 (Wed) 23:10:25 host:*.itscom.jp
>>560
 『アベノミクスによろしく』の書評の、株の話について若干の補足です。
 前々回 >>418 では株の現在価値とは将来の予想「配当額」の「株価」に対する比率がリスクの無い預貯金の利回りと比べて十分「割に合う」利回りになっているかどうかで株価が決まる、ということを述べました。
 ただ、これだけだと誤ったメッセージになるかもしれないと思ったので補足します。
 たしかにこの「配当利回り」を参考に株投資の銘柄を選ぶ人たちはいます。現在の上場企業の「配当利回り」は平均して年2%程度らしいですが、中には配当利回りが7%とえらい高い銘柄も存在します。じゃあ、こういう株はねらい目でしょうか?
 しかし、もしそんなに有利な株があったとすると、みんなが欲しがるからこの株の株価はとっくに値が吊り上り、配当利回りは分母の株価が高くなるのでどんどん下がり、他の株の平均である2%程度になるまで値がとっくにつりあがっているはずです。なのに、配当利回りが7%で放置されているということは、将来の配当額がどんどん下がり、結果として将来の全期間の平均配当利回りはもっと小さくなる(つまり企業に将来性が無い)と市場に判断されている可能性があるわけです。
 一方で、逆に配当利回りが1%程度の株もあります。これは逆に将来配当が増えていくと市場が判断している可能性があるわけです。
 さて、株の中には「無配当株」という不思議な株があります。これについてYahoo!の知恵袋で質問している人がいるのでリンクを貼っておきましょう:

https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10181797710
株はなぜ無配当でも買うメリットがあるのでしょうか
> 株は本来の意味で言うと下記3点のメリットがあるために買う価値がある
> と考えています。

> ・配当がつく
> ・株主優待がつく
> ・経営に関する発言権を得る

> これが無配当の場合、最も価値のあるメリットはなくなり、株主優待と
> いうかなり少ないか無いような利益です。
> また、経営に関する発言権もかなりの資産がなければ大きな発言権は持
> つことができません。

> 株価の変動利益も、株主にとっては副次的なものであって、
> 本質的な価値とは違うと感じるのですがいかがでしょうか。

> よく、”無配当でも企業価値が上がる可能性があるから買う価値はある”
> と言いますが、
> 仮に企業価値が上がったところで、利益を配当として株主に還元しなけ
> れば、いつどこで、どのように還元されるのでしょうか。

> たとえば、企業が自社株買いをしたり、他社に買収される場合に、
> 株主は株が高値で売ることが必ずできるといったことくらいしか思いつ
> きません。

> お詳しい方がいらっしゃいましたら、教えていただけますでしょうか。

 まことにもっともな質問です。ところが、これに対する回答が、あまり要領を得ないものばかりなのには呆れます。例えばベストアンサーは次の通りです↓

> (前略)ここに更に、

> 残余財産分配請求権=会社が解散するときに、残った財産の分配を受け
> る新株引受権=新株を引き受ける

> があります(中略)では、株主の権利である配当を出さない企業は、株
> 主の権利を侵害しているのでしょうか?
> そうでもありません
> と言うのも、配当を出さないことが嫌気されるような企業であれば、株
> 価にそのことが表れるからです
> 配当を出さないことによって、企業には内部留保として次の投資に充て
> る余力が発生しますが、
> これは、ヤフーファイナンスなどの企業情報でBPSや資産が増えていくこ
> とからもわかりますし、有利子負債を減らすなど財務基盤を強化してい
> っている企業、次の利益の為に投資している企業も数多くあります

 ↑全然質問者の疑問に対する答になっていませんw
 会社の価値が高まるのはわかるけれど、株主に何も還元されないのでは意味が無いじゃないか、というのが質問者の疑問なんですから、これでは答になっていませんね。また別の回答者は、

> メリットを重んじるならキャピタル狙いだよ
> また投資家の考え方1つで購入する銘柄は決まる事ですよ

 これもおかしい。そもそもキャピタルゲインとは株価の変動で儲けることですが、配当も無いのに何でその株価自体がゼロにならないの?というのが質問の趣旨なんですから、やはり答になっていませんね。
 こういう回答状況とかを見てると、株に投資する人でも株のからくりがみな本当にわかっているのかどうか疑問を感じてしまいます。こういう人の中には現物の裏づけが無いビットコインのようなものも株と同じような投機の対象だ、くらいの理解しかない人もいるかもしれませんね。
 それでは正解は?
 今、毎年ずっと堅実に同程度に利益を出し、同じレベルの配当を出してきた実績のある企業がA社とB社の2社あったとします。そこで、ある年、A社は来年以降、配当率を今までの半分に下げる、と宣言したとします。明らかにA社の配当利回りはB社のそれの半分になってしまいます。それではB社の株を買った方が得なんでしょうか?
 必ずしもそうとは限りません。なぜならA社は今まで配当として社外に流出させていた資金を自社に蓄え、その金で研究開発を充実させ、その結果会社の収益力が高くなり、将来の利益が今までより増大し、その結果配当額が今までより増え続ける可能性があるからです。その場合、配当額が当初B社の半分しかなかったA社の配当は、何年か後にB社の配当額を追い越すかもしれないからです。
 さて、それでは更に捻った問題です。上の例題で、A社は配当を半分にするどころか、来年からは無配当にして、もっと研究開発を充実する、と宣言したとします。今度はどうでしょうか?
 配当が半分だったら、幾ら少なくてもゼロではないから、これが増えれば相手を追い越すことは可能ですが、配当をゼロにしちゃったらゼロは何倍してもゼロ。だからA社の株を買うなんてナンセンスだ、と思うかもしれません。しかしそうではないのです。それは、A社は「未来永劫」配当をゼロにするとは宣言していないからです。つまり、当面配当をゼロにして会社の体力を付け、十分業績が伸びてから配当を再開する、という可能性があるからです。A社の株を買う人は、このようなケースを期待して株を購入することになります。もちろんA社がいつ配当を再開するか宣言しないこともありますが、市場がいつか配当を再開して結局は儲かるはず、と判断すれば、そういう期待での現在価値が定まり、株価が定まるわけです。
 以上のような事情から、株の価値を判断するのに「配当額」を「株価」で割った「配当利回り」よりも、一株あたりの会社の「実力」の方が大事だ、という考え方から、一株あたりの会社の利益率というものを考えて、これを「株価収益率(PER)」と呼び、株を購入するかどうかの判断にこちらの方を重視するという考え方もあるわけです。
 以上、株に関する基礎知識で、「そんなの知ってるよ、当たり前じゃん」と言われるかもしれませんが、前々回の私の書き込みを見て配当利回りの高い株を買って損した人がいて文句を言われないためのイイワケをさせていただきました。

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めい

mespesadoさんの補足http://grnba.bbs.fc2.com/reply/16439363/598/を追記しました。「株はなぜ無配当でも買うメリットがあるか」という疑問をめぐってのよくわかる説明です。
by めい (2018-04-26 06:12) 

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