mespesadoさんによる1億人のための経済講座Ⅲ(6) 企業の倒産件数と自殺率の低下

企業にとって「倒産」、個人にとって「自殺」、ここまでは行ってはオシマイ、なんとかこれだけは避けたい、共に切実さの極みです。アベノミクスは「企業の倒産件数」と「自殺率」の低下をもたらしました。

 

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281：mespesado : 2018/04/17 (Tue) 23:07:14 host:*.itscom.jp
>>244
　引き続き『アベノミクスによろしく』第５章の「アベノミクスの『成果』を鵜呑みにしてはいけない」の残りの部分を検証しましょう。
　著者は続いて企業の倒産件数と自殺率の低下を取り上げます。
　まず「企業の倒産件数」ですが、著者は２００２年から２０１５年までの「全国企業倒産状況」の推移のグラフを示し、２００２年から２００５年にかけて低下した後そこから２００８年まで緩やかに上昇し、２００９年から２０１５年に至るまで、再びほぼ直線的に低下していることから、

＞ リーマンショックの時に件数が増えたけど、後はずっと減少傾向なんだ
＞ ね。アベノミクス前後で傾きに違いがあるようには見えないね。

と述べて、リーマンショックが例外的なだけで、それ以外はずっと下降傾向だったんだから、この倒産件数減少もまたアベノミクスとは関係ないよ、という印象を読者に与えようとしています。
　しかし、よく考えると、この説明はおかしいです。

　なぜなら、衆知のように、リーマンショックが発生したのは２００８年のことです。ですから倒産件数の上昇の原因がリーマンショックなのだとしたら、倒産件数は２００８年「から」上昇していなければならないはずです。ところが実際は２００５年から反転上昇しているのです。ですから、それこそリーマンショックこそが倒産件数の増には「関係ありません」。そもそもグラフから明らかなようにＶ字型の反転ではなくＵ字型の緩やかな反転上昇なのですから、景気がじわじわと悪化してきたことが真の原因でしょう。
　一方それでは、一旦上昇したあと２００９年から再び減少するようになったのはなぜなのでしょうか？
　覚えている人も多いと思いますが、実は民主党政権のとき、２００９年に時の亀井金融担当大臣が主導して「中小企業金融円滑化法」が導入されました。リーマンショックの直後にもかかわらず倒産件数が減少し始めたのは、明らかにこの法律が奏功したからと考えるのが自然です。そして大切なこと、それはこの法律は時限立法で、２０１３年に効力を失っているということです。ですから、この法律が無効になったあとの２０１４年以降でも引き続き倒産件数が減少し続けているというのは、やはりアベノミクスにより景気が改善されたからと考えるほかありません。
　さて、次は「自殺率」の低下です。
　著者は１９７８年から２０１５年までの男女別と男女計の自殺率の推移のグラフを掲げ、１９９７年までほぼ一定だったのが１９９８年に急騰したあと２００９年までほぼ一定に高止まりしたのち、２０１０年からほぼ直線的に急減少している様子を指して、

＞ ２００９年からずっと低下が続いているんだね。アベノミクス前後で減少
＞ ペースに変化は見られないから、アベノミクスの影響で自殺が減ったとは
＞ 言えないね。前からの傾向がそのまま続いてるだけだから。

と述べています。しかしこれも実はナンセンスです。次のサイト：

日本の自殺者数はなぜ「激減」したのか？
http://diamond.jp/articles/-/116548
の中ほどに掲載されているグラフを見てください。

「失業率」と「自殺者数」を重ね合わせたグラフですが、両者は非常によく重なっています。つまり、自殺者数は失業率に連動するという現象があり、これは昔から良く知られている経験則です。
　ということは、安倍政権下で自殺者数が下がっているのは、失業率の低下と連動している、ということです。そして失業率の低下が明石氏の主張とは裏腹にアベノミクスのおかげであることは、前回（ >>244 ）説明した通りなのですから、それと連動する自殺者数の減少もまた、アベノミクスのおかげ、ということになるわけです。
　本章における以上の部分までが、最近の好景気の原因がアベノミクスのおかげではない、という著者の主張が述べられた部分ですが、みごとなほどに、すべてが著者の誤解に基づくものであり、正しい主張は一つもなかった、ということが明らかになりました。
　本章の残りの部分は株式や賃金上昇の話題に当てられていますが、長くなるので、ここで一旦切ります。　　　　　　　（続く）

コメント 3

《「アベノミクスは効果が無かった」ということにしたい、という結論先にありきの頭で分析を進めていってしまったために詰めが甘くなって生じた「悲劇」、もとい、「喜劇」》

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283：飯山一郎 : 2018/04/17 (Tue) 23:46:40 host:*.dion.ne.jp
>>281
反安倍のスッポン族には人気があった明石順平著の新書版だが…
７９９円と安い割には，ほとんど売れてないようだ．
スッポン族は悪口を言いまくるんだが，感じのＥ～ものではない．
ワシの金正恩本が売れまくったのは，金正恩を決して悪く言わず，スリルとサスペンス本に仕立て上げたからだ．
おっと！
明石順平著『アベノミクスによろしく』の第５章（「アベノミクスの『成果』）は…
mespesado氏によると↓↓こんなにもヒドイ！ww
＞（第５章は）最近の好景気の原因がアベノミクスのおかげではない、という著者の主張が述べられた部分ですが、
＞みごとなほどに、すべてが著者の誤解に基づくものであり、正しい主張は一つもなかった、
＞ということが明らかになりました。

ワシは（未読だが），明石順平というシトは憎悪心の塊（かたまり）鼠～か，攻撃心が強いシトだと思う．
社会に対して不平不満があると，為政者に対する憎悪心が発心して，攻撃（口撃）的になる．
こ～ゆ～↑↑シトが書いた本，それが明石順平センセの本だとおもいます．

285：mespesado : 2018/04/18 (Wed) 00:45:10 host:*.itscom.jp
>>283
　明石順平さんという人は労働問題専門の弁護士という商売柄、労働者が虐げられているという人々をずっと助け続けているため、とにかく国力を増強することを理念とする安倍政権が、日本を牽引する力を持つ経営者や国防関係などを強化していくための施策が中心であることや、結果の平等主義を忌み嫌うウヨクの支持を強く受けていることが気に入らない、ということが根底にあるんだと思います。そこで何とかして「罵倒」ではなく「客観的」に安倍政権最大の目玉施策であるアベノミクスの効果を否定することによって「仇を討ちたかった」のでしょう。
　それでもって最初はアベノミクスが景気改善に効果が無いことを示そうとしたが、各種経済指標が改善されているのは純然たる事実なので、仕方なく作戦を変更して、今度は景気指標が改善されているのはアベノミクスのおかげではない、ということを証明してやろう、という動機で書いたのがこの本なのだと思います。そして客観性にこだわってグラフを多用した結果、理論的な議論の好きなシロウトに結構絶賛されてしまっています。
　ただ、明石氏は自分が経済のシロウトであるにもかかわらず徹底的にデータに依拠したがゆえにこんな分析が可能になった、と自負しているようですが、残念ながら、経済の専門家なら統計指標のある状態を見たとき、その解釈についての勘所を持っているので、例え定説的見解に異を唱える場合でも、トンチンカンな結論を出すことは無いのですが（あの浜矩子氏ですら、さすがに経済学者なのでそこはしっかりしてました）、明石氏はそこは土地勘が無い悲しさで、ここに解説してきたような（経済のイロハがわかる人にとってはありえないような）マヌケな推論を行ってしまって醜態を晒したわけですね。これは明石氏がシロウトだからというよりは、「アベノミクスは効果が無かった」ということにしたい、という結論先にありきの頭で分析を進めていってしまったために詰めが甘くなって生じた「悲劇」、もとい、「喜劇」だったのだろう、と思います。

by めい (2018-04-18 13:24) 

　いつも私の連載を紹介してくださり、ありがとうございます。
　ただ、今回紹介いただいた記事【4/18 企業の倒産件数と自殺率の低下】と前回紹介していただいた記事【4/16 支離滅裂なアベノミクス批判】の間に、今回の記事の中でも引用されている >>244 の記事：

http://grnba.bbs.fc2.com/reply/16439363/244/

が間に挟まっていますので、余計なことかもしれませんが、念のためコメントさせていただきました。（実は自分で昔の記事を探すときに貴ブログを使わせていただいているので、私自身の利便のためでもあります）。
by mespesado (2018-04-18 23:23) 

mespesadoさん、
コメントに気づくのが遅れてもうしわけありません。
ご指摘感謝！恐縮です。
244の記事、前回分の中に追記させていただきました。

http://oshosina.blog.so-net.ne.jp/2018-04-16

私も自分のためにやっているのですが、ほかでもないmespesadoさんのお役に立っているとしたらうれしい限りです。今後ともよろしくお願い申し上げます。

by めい (2018-04-20 07:25)