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mespesadoさんによる1億人のための経済講座Ⅲ(2) アベノミクス「金融政策」  [mespesadoさんによる1億人のための経済講]

生まれてすぐからずーっとかわいがってもらった86歳叔母をお茶の水の順天堂病院に見舞った帰り、何十年ぶりかで神保町の古書店に足を向けた。たまたま入ったのが東陽堂書店という宗教関係専門の店で、知の蓄積の膨大さに圧倒された。アマゾンだけのつきあいでは決して得られない体験だった。一般書店や図書館ともちがう、ここでしか目に触れることの出来ない本の数々。まさに別世界。そこに至る底知れぬ知的営みに謙虚にならざるを得なかった。かろうじて求めた本は、店前の特価本コーナーから『立松和平が読む良寛さんの漢詩』と高校同級錦仁くんの『東北の地獄絵ー死と再生』。そんな折の『飯山一郎の読書論』、これはこれ一味二味で納得。さらにmespesadoさんを評して「かつてない地平を切り開いた」!

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950:飯山一郎 : 2018/04/08 (Sun) 22:36:02 host:*.dion.ne.jp
>>935 >>947 >>948
先ずは,『飯山一郎の読書論』.
「本(書籍)を読む」という行為・営為は百人百様だが…
いっぱしの読書家になる第一条件は,「速読」である.
次に,「ページの斜め読み」である.その次が「飛ばし読み」.
バンバン「飛ばし読み」をしていって…,本当に重要な情報が書いてある何行かを素早く発見し,その部分だけは熟読する!
本屋の店先に横積みの新刊書のほとんどは,じつは,その本の98%位は別に読まなくてもE~!
本当に大切で重要な部分は…,まぁ,30行~40行しかない.
しかし,「古典」と言われる本は別だ.
とくに『日本書紀』と『古事記』は,全文・全行を熟読し,さらに「行間」を読み抜かなければ,古代史の真相・真実は見えてこない.

前置き(読書論)が長くなったが…
>「一見尤もらしいがダメな本」の例として、明石順平氏の『アベノミクスによろしく』
   ↑↑この本は…,こんな↓↓出鱈目そうな本だ.
>経済学の定説的見解や財務省の主張に乗っかってアベノミクスの欠点をあげつらうような議論になっていますが、
>実は経済学の定説的見解や財務省の主張そのものが間違いだったりする
だっからワシなどは,明石順平著『アベノミクスによろしく』を読む気は全くないwww
それを,mespesado氏は熟読して,書評を書こう!ってんだから,奇特!つ~か,感心の至りだ.
しかも,mespesado氏の書評には,かつて氏が浜矩子本や松尾匡本の書評で読み手を魅せた独特の深みがある.

「出鱈目な本でも,“学び”は可能!」という,かつてない地平を切り開いたmespesado氏に,尊敬と称賛の拍手を送りたい.
 
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948:mespesado : 2018/04/08 (Sun) 21:05:55 host:*.itscom.jp
 まずは第1章「アベノミクスとは何か」から。       
 著者はアベノミクス①大胆な金融政策、②機動的な財政政策、③民間投資を喚起する成長戦略、の「3本の矢」からなることを紹介し、アベノミクスはこの最初の「第1の矢」に尽きると言っても過言ではない、と述べて、この第1の矢である金融緩和の内容と効果を中心に解説していくことを宣言します。
 金融緩和とは、日銀が民間銀行に大量のオカネを供給し、金利を下げて、企業がオカネを借り易くするのだが、ゼロより低い(名目)金利には出来ないため、物価を上昇させることにより、名目金利から予想物価上昇率を引き算した「実質金利」をマイナスにすることによって、オカネを借り易くして経済を活性化する、という政策であると解説します。そして日銀によるオカネの供給(マネタリーベース)とは、具体的には民間銀行が持っている国債を日銀が買い入れ、民間銀行が日銀に持っている当座預金口座にオカネがどんどん溜まっていき、民間銀行はオカネをたくさん貸し出せるようになり、信用創造でオカネが市中に出回る量(マネーストック)が多くなり、その結果オカネの価値が下がってインフレになる、という形で物価が上昇するというメカニズムを説明します。ここまでは教科書的な「金融緩和」の説明です。
 次に著者は「異次元」の金融緩和について、その規模を同じく超金融緩和を2008年から実施した米国の規模と、対GDP比率を取ってから比較することにより、2016年に日本の対GDPのマネタリーベースの延びが米国のそれの4倍にも達する途方もないものであることを指摘します。
 そして、米国の方は金融緩和をやめたのに対して日本はまだ継続中だから、やがてはマネタリーベースが名目GDPを超えるだろう、こんな大規模な緩和政策をやっているのは世界中で日本だけだ、と述べます。
 そして、マネーストックが増えると物価が上がり、「これからもっと物価が上がっていくから、その前に買っておこう」という効果(いわゆる懸け込み需要)により消費も増える効果があると言われていることを説明します。そしてこの「物価が上がれば消費が増えて景気が良くなる」と考える経済学者を「リフレ派」と呼ぶ、と述べています。
 以上が第1節の概要です。ここで、リフレ派による「消費が増える」機序について、私は既に何度も批判していて、「それは欧米人の場合やろ。日本人は将来を不安に感じるから逆に消費を減らして将来に備えるから消費は増えんやろ」と何度も述べましたが、同じ懸念は、この対話形式で書かれた本では、相方に「ほんとに? 物価が上がったら逆の現象が起きると思うけどな……。安い方がみんな買うと思うけど。」と語らせる形で疑問を呈しています。ただちょっとニュアンスがおかしいですけどね。「安い方がみんな買うと思うけど。」じゃなくて、「値段が上がったら買い控えると思うけど。」と書くべきでしょう。
 以上、第1章は金融緩和政策の「説明」のみに特化しているので、著者の意見はあまり書かれておらず、従って、まだ論評の対象になる部分はありません。    (続く)
949:mespesado : 2018/04/08 (Sun) 21:53:34 host:*.itscom.jp
 次は第2章「マネーストックは増えたか」です。 著者はまず、マネーストックと言っても色々な定義があり、「M1」、「M2」、「M3」、「広義流動性」の4種類があることを説明し、このうち代表的なのが「M3」であると説きます。マネーストックとは要するに、「現金+預金」及び、定義によってこれに流動性の高い有価証券を加えたもののことなわけですが、著者は、「マネタリーベース」と「M3」と「銀行及び信金貸付残高」の3者を比較して、「マネタリーベース」は2012年頃から急激に増えているにもかかわらず、「M3」や「銀行及び信金貸付残高」は全く増えていないことをグラフで示し、金融緩和の目的であった「オカネを市中に撒いてオカネを借り易くする」という政策が全然機能していないと説くわけです。
 一方で、第1章でマネーストックが増えるから物価も上昇する、という機序だと述べたので、それならマネーストックは増えなかったから物価も上がっていないのか、と思うとそうではなく、物価の方はしっかり上昇していると述べます。ただし、2014年に消費者物価指数が一挙に3.2ポイント上昇しているのは消費税の3%増税分と同じに見えますが、著者によると、日銀の試算によれば3%の増税による物価上昇効果は2%のみなので、残る1.3%分は増税以外の要因による物価上昇である、と補足説明をしています。そして、これらの物価上昇分は為替の影響であり、円安が進み始めた2013年から物価が上がり始め、一番円安が進んだ2015年が一番高くなっていると説きます。そしてなぜ円安になったかという原因を「金融緩和で円の価値が下がる」と考えた投資家の円売り行動に求めます。
 以上が第2節の概要です。
 さて、著者がこの章で述べていることは、経済学の定説的見解が間違っている、という事実を解説しただけのことに過ぎません。日本では、供給過多の現代では、企業の売り上げは伸びず、将来の経営が不安なため給与も増えず、従って従業員にとっても家計の将来が不安なため消費を抑えるため、企業も家計も内部留保や貯蓄を増やして将来に備えようとします。その結果、日銀がいくらマネタリーベースを増やしても、マネーストック(=現金+預金+流動性の高い有価証券)は増えず、その分内部留保や貯金に回るオカネが高利回りを狙ってどんどん流動性の低い有価証券に流れますから、上記のような結果になるのは当たり前です。従って、マネーストックが増えないので「円」の貨幣価値も変わらず、従ってインフレにはならず、せいぜい為替が円安になった分だけ輸入物価が上昇するのが関の山であり、この影響だけで2%というインフレターゲットが達成することは当然に無理なわけです。
 ですから、ここまでの著者によるアベノミクス批判は、アベノミクスが機能する「定説的な機序」が誤りであることを指摘しているだけであって、アベノミクスそれ自体が機能していないことを示しているわけではないのです。     (続く)

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