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mespesadoさんによる1億人のための経済講座〈Ⅱ〉(6) 欧米論客のアベノミクス評価 [mespesadoさんによる1億人のための経済講]

「取って食い取って食い」暮らしは「宵越しの金は持たない」感覚と同じレベルです。「金なんて天下の回りもの」「なるようになるから毎日気持ちよく生きてゆこう」(このレベルが「幸福」にいちばん近い? ※関連記事「ゼニカネ」でない日本人の「あたりまえ」)。・・・ところがそのうち使いきれない余るほどの金が入ってくるようになると「将来への不安」が芽生え始めます。「内部留保」は必然です。欧米論客はここのところがわかっていないというmespesadoさんの指摘です。

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375:mespesado : 2018/02/07 (Wed) 23:38:12 host:*.itscom.jp
>> 277
 さて、100近く、だいぶ間が空いてしまいましたが、松尾匡さんの本の書評を続けます。いよいよ色々突っ込みどころが多い最終章の第6章「今の景気政策はどこで行きづまるか」に進みます。
 第6章の最初の節は「欧米左派の大物論客は何に賛成し何に反対しているのか」と題して様々な論客のアベノミクスに対する評価を紹介します。

 まず最初はクルーグマン氏。氏は「消費税増税」を除いて全面支持です。
 次はスティグリッツ氏。氏は「アベノミクスは間違いなく、正しい方向への大きな一歩」とやはり支持を表明。
 また、貧困問題で左派のカリスマとなっているというアマルティア・セン氏は、安倍首相が縮小均衡から方向転換したのは正しいと主張し、日本経済が崩壊すると言うデマは信じるべきでない、とまで言ってくれています。
 また、かの有名なトマ・ピケティ氏は、安倍政権と日銀が物価上昇を起こそうとしているのは正しく、2~4%の物価上昇を恐れるべきではない、と主張しています。
 また、左派系人口学者のエマニュエル・トッド氏も、自分は左派系だが、右派系の安倍政権のアベノミクスは国民の幸福を目指しているから支持すると主張しています。
 このように、多くの著名な欧米左派の論客がアベノミクスを支持していることに言及し、しかし全員が「第三の矢」と称する「新しい古典派」の新自由主義的政策である「民間投資を喚起する成長戦略」と、「消費税増税」には反対している、と説きます。
 まずクルーグマン氏は、法人税減税が成長率と無関係であること、そもそもターゲティング・ポリシー(国家が成長戦略を定めること)自体に反対し、銀行の規制緩和にも反対しています。また第一の矢についてもインフレ目標が2%では不十分だとしています。
 またスティグリッツ氏は、日本の格差はアメリカよりましだがかつてより拡大しており、格差への対抗策によって経済を強くできるとし、規制緩和は不平等を拡大する可能性があり、再考を要すと言っています。また、消費税は消費を冷やす「悪い税金」だと主張します。
 またピケティ氏も消費増税で景気後退に繋がったと批判します。
 このように、大物論客がすべて消費税増税、法人税減税、規制緩和に反対で、トリクルダウンなどもってのほかと考えている、と結んでいます。以上が第1節の概要です。
 これらに対する私の意見ですが、これらの主張の結論の大枠にはほぼ異論はないのですが、結論に至るまでのプロセスのところで気になる点はあります。その一つがピケティ氏の「安倍政権と日銀が物価上昇を起こそうとしているのは正しく、2~4%の物価上昇を恐れるべきではない」というところです。そもそも供給過多なのに、物価が上昇すると考える理由が訊きたいです。実際は(円安による輸入物価の高騰や生鮮食品の不作による高騰以外では)物価は上昇していません。何度も言うように、オカネを増やすと企業の内部留保が増えて将来の不安が無くなるから賃上げが可能になると言うカラクリで景気が良くなっているのであって、インフレターゲットを2%より高く、例えば4%に設定したところで意味はありません。欧米では「将来が不安だから溜め込む」という発想があまりないからでしょうか、彼らの口から内部留保に対する言及が無いのは、アベノミクスがなぜ奏功しているのかのカラクリを本当にわかって発言しているのか大いに疑問を感じるところです。
 この延長線上にあるのが、クルーグマン氏等の主張する「法人税減税」への批判です。法人税を減じたところでその減少分を賃金の上乗せに振り替えるとは限らない、という趣旨だとすれば、それは全くそのとおりですが、そもそも昨今の企業にとっての最大の懸念は「倒産のリスク」なので、とにかく内部留保を溜め込みたくて仕方ないのですから、その内部留保の積み上げの手助けになる法人税の減税は企業にとってメリットがあることは間違いありません。
 いずれにせよ、欧米の主だった論客が、日本人特有の「将来への不安」の要素を軽視していると思われるところが一番気になった点です。     (続く)

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