『死ぬ前に後悔しない読書術』を読んで [思想]
適菜収著『死ぬ前に後悔しない読書術』(KKベストセラーズ 2016.3)、たまたまめぐりあって一気に読み終え、アマゾンにレビューしてきました。いちばん根幹をまとめたつもりですが、ほかに納得させられるところいっぱいありました。波長が合った感じです。
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近代「悪」の摘発とそこから脱け出るための処方の書
近代に内在する「悪」からいかに自由になるかについての処法の書として読んだ。その論調はおのずと過激にならざるを得ない。
《私は中学校は大嫌いでした。あれは地獄でした。/ただでさえ不機嫌な時期だし、そのうえ毎日学校に行かなければならない。/さらには、授業が終わった後に、合唱コンタールの練習にむりやり参加させられたり。/それをさぼろうとすると、学級委員長みたいな奴につかまえられる。/「先生、収君が帰ろうとしています!」と。/それでいちいち机と椅子を教室の後ろに移動させて雛壇をつくり、そこにクラス全員で上がって『大地讃頌』などのけったいな歌を唄う。/小学校のときも、駄菓子屋で買い食いをしていると、道徳の時間に吊し上げられたりする。女教師がおぞましい顔で、その人民裁判を見守っている。/そのとき、人間とはどうしてここまで卑劣で汚くなれるのかと思いました。この空気は非常に悪いものとつながっているという確信があった。/これを[全体主義」という言葉で説明できるようになったのは大人になってからです。/近代大衆社会が抱える根源的な「悪」です。》(92p 太字は著者)
《善意の人間、悪の存在を理解できない人間が、悪を増長させるのです。/それが近代特有の悪の出現の仕方です。》(172p 同上)
しかし結論は真っ当であり、穏健でさえある。
《「われわれは自分の上にあるものをすべて認めようとしないことで、自由になれるのでなく、自分の上にあるものに敬意をはらうことでこそ、自由になるのだ。」(『ゲーテとの対話』)》(180p)
《「たとえ、世界が全体として、いくら進歩したところで、若者は、やはりいつの時代にも、最初の地点から出発し、個人として世界文化の進化の過程を順を追って経験していく以外にないのだ。」(同上)》(188p)
読み終えてただちに『ゲーテとの対話』を注文した次第。恥ずかしながら古稀にして。
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