『羽前国置賜郡宮内村 金幣山照明寺縁起』 [宮内よもやま歴史絵巻]
維盛ハ平氏ガ亡ビシ時、独リ死ヲ逃レ、紀州那智浦ニ到リ、松ノ樹ヲ削リ、平維盛入水ト誌シ、遂ニ頭僧陀ト成テ、熊野ニ隠ルト云ドモ、頼朝捜シ求ムルノ急ヲ恐レ、遂ニ其熊野権現ヲ負去リ、奥州ニ来テ潜ニ堂森(米沢市万世)ニ隠棲シ居ルニ、六七年ニシテ又去テ、宮内ニ至リ、紀州ヨリ負来レル神像ヲ此地ニ安置シ、熊野ヲ建立セリ。(『鶴城地名選』小幡忠明一八〇四)
この維盛が紀州より伴ってきた神像というのは、宮内本町の金幣山照明寺に伝わる秘仏ではないかと言われています。
昭和五十年、地元有志が中心になって厳重に封印された栗の木箱を開けたところ、漆塗りの厨子に納められた高さ七センチの木彫りの阿弥陀如来さまと五センチの金銅製の薬師如来さまがお現れになりました。その箱には、恵心僧都源心(浄土教の基礎となった「往生要集」を著した平安時代の僧侶)の御作で、「吾レ等寂光ノ妙土ヲ出テ此ノ秋津国ニ跡ヲ垂レ熊野権現トアラワレキ尚東ノ方此ノ処ノ衆生ニ縁深キユエニ再此地ニ飛ビ来タレリ紀州熊野権現ノ分身ナリト思ヒモロビトラ崇ブベシ」と記してありました。
五十年毎の御開帳と伝えられ、平成三年に御開帳法要が盛大に執り行われました。
【追記 29.7.9】
米澤新聞に報道されていました。興譲館同窓会サイトに転載されています。
http://www.yonezawakojokan.jp/event/news/20150810.html
寺の縁起を冊子に・秘仏めぐる歴史ロマンも
(2015年8月10日米沢新聞より)
冊子を手にする、編集した菅野昭彦さん(S38卒)
南陽市宮内地内の金幣山照明寺(星良雲庵主)はこのほど、寺の伝承などをまとめた冊子「金幣山照明寺縁起」を発行した。秘仏を巡る歴史ロマンなどが掲載され、多面的に寺の全体像を伝えている。江戸、明治期の火災で史料が焼失した中、地元出身で「宮内の歴史を語る会」に所属する、神奈川県在住の菅野昭彦さん(70・S38卒)が編集した。
照明寺は、江戸初期に建立されたと伝わる曹洞宗の尼寺。平安時代の学僧、恵心僧都源信(えしんそうずげんしん)が作ったとされる阿弥陀如来像と薬師如来像の2体を秘仏とし、50年に1度だけ開帳しているという。
冊子は全6章で構成、カラー写真とともに「縁起」を多面的に伝えている。
例えば秘仏については、源平合戦で入水したとされる平清盛の嫡孫維盛が、生きのびて宮内に逃れ秘仏を熊野神社に安置し、それが照明寺に残されたという伝説を掲載。山号「金幣山」については、秘仏箱の裏に「光れるものとび来て(中略)円座の如なる物の中に金幣七本あり」と記されていたことを由来と紹介しているほか、平成3年の開帳の様子なども載せている。
檀家が記した資料などをまとめてほしいと、照明寺が親交のある菅野さんに編集を依頼した。菅野さんは会社員時代、宣伝や編集などの業務を担当。現在はやまがた育英会の理事も務め、会報などの制作に携わっている。昨年10月ごろから作り始め、ことし6月に完成させた。
菅野さんは「過去を見なければ今は見えてこない。関心のある人に読んでもらえれば」と話している。
冊子はA4判のカラー刷りで、36ページ。自費出版で100部発行された。問合せは照明寺TEL0238(47)2755まで。
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