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「よみがえる南陽の青苧」発刊 [青苧]

よみがえる南陽の青苧.jpg
南陽古代織の伝統を守る会事務局長漆山英隆さんの「よみがえる南陽の青苧」が発刊されました。
赤湯温泉からころ館、駅の駅なんよう等で販売しています。1000円です。
「推賞のことば」を寄せました。

     *   *   *   *   *

 上杉謙信公の力の背景は、青苧及び越後縮布(ちぢみ)の生産及びその対外流通に対する課税であることが広く知られるようになってきた。上杉藩の越後からの国替えにともない、若い頃から青苧生産に深く関わっていた直江兼続公はそのノウハウをそっくり置賜に移し、さらに専売制へとつないでゆく土台をつくった。青苧専売制は後に、窮乏する上杉藩の財政を救うことになる。

 置賜産の青苧は最高の品質だった。鷹山公に始まる米沢織、置賜で生まれた世界に誇る優良生糸「羽前エキストラ」、それらの源流をたどると青苧に行き着く。平成元年、その青苧に着眼し、中山間地域ムラおこしの切り札にしようとしたことは実に慧眼であったといっていい。

 

 以来25年、青苧への取組みは南陽市を代表する文化施設「夕鶴の里」という副産物を生みはしたものの、当初本来の目論見は達成されてはいない。その理由は、青苧の栽培から製品化に至るまで、その手間ひまをコストとして積み上げてゆくと、その価格は一般に流通するには到底なじまない、要するに、今の世の中では間に合わない。

 

 行政からの支援が打ち切られたのを機に、平成14年に誕生したのが「南陽市古代織の伝統を守る会」だった。成果の見えぬまま行政が見放した青苧伝承の命脈を、民間で引き継いでゆこうというものだった。青苧栽培を手がける漆山英隆さんと製品化に取り組む川合ひさ子さんが中心を担った。山形県における伝統文化発掘の第一人者菊地和博先生という強力な助っ人もあって、青苧フェスティバルの開催や地元小中校での講習などによって、世の中に青苧について知っていただく役割を果たしてきた。食文化への活用案も出て、さまざまな青苧食品も生まれた。しかし、繊維としての青苧製品復興という当初本来目的の達成にはほど遠い。あくまで命脈を保つ「守る会」だった。

 

 発会当初は50人を超えていた会員も今や10数人、高齢化も進み、25周年を区切りに解散しようという流れだった。そんな展望もなにもない中にあって、漆山さんの執念がこの冊子を誕生させた。この先「南陽市古代織の伝統を守る会」がどうなろうとも、この冊子によって南陽市における青苧伝承の命脈はつながってゆく。

 

 希望がないわけではない。 青苧を育てて刈り取り、剥(は)ぎ削(そ)ぎを経て繊維をとり、績(う)み紡(つむ)いで糸にして機を織る。そこには、カネに換算される以前の人の営みがある。人間社会がゼニカネに振り回されることに愛想が尽きたとき、そのときほんとうの「青苧ルネッサンス(復興)」が始まるにちがいない。この冊子はその時が来るまでのつなぎ役である。ぜひお手元において欲しい。

 

(追記)

よみがえる南陽の青苧 山形新聞.jpg

 


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きしだ

はじめまして。
失礼します。
この本を購入したいのですが、通販などはしていないでしょうか?
もしよろしければお知らせください。

strong45102@yahoo.co.jp
by きしだ (2015-06-29 21:11) 

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