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「東の麓」新藤製造部長の話 1.「山形清酒」GI指定 [地元のこと]

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身近かに自信を持って薦められる酒があるのはうれしく誇らしい。記憶の中に南陽市内5つはあった酒蔵も、今ではひとつだけの「東の麓」。その酒蔵を見学、そのあと席をすぐそばの老舗割烹長門屋さんに移して、新藤栄一製造部長の講義を聴きながらじっくり日本酒を味わう宮内公民館主催の「日本酒と食の講座」。今年で第五回というがはじめての参加。公民館運営委員長ということでの数合わせ的参加だったのだが、たしかにこれは一度参加すればやみつきになる。参加者22名(ほかに公民館3名と新藤部長)同士のいい気持ちになっての交流も楽しかった。初めての出会いも久しぶりの出会いもあった。


長門屋さんに移っての新藤部長の話をメモしてきたのでまとめておきます。


1.山形県産の清酒がGI指定なったこと


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初めて聞いた「GI(ジーアイ)」という言葉。Geographical Indication(地理的表示)の略で、「地域で育まれた伝統と特性を有する農林水産物食品のうち、品質等の特性が産地と結び付いており、その結び付きを特定できるような名称(地理的表示)が付されているものについて、その地理的表示を知的財産として保護し、もって、生産業者の利益の増進と需要者の信頼の保護を図ることを目的」とする「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律」(地理的表示法)があって、日本独自のGIマークと清酒「山形」のオリジナルのGIロゴマークによってブランドイメージが高まることになるという。「山形清酒」が「ボルドーワイン」「シャンパン(シャンパーニュ地方で生産されるスパークリングワイン)」的地位を目指す第一歩を踏み出したということらしいからすごい


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新藤部長から指定に至るまでの経緯が話された。

 

日本酒の需要低下が顕著になり出した40年前頃からそれぞれの酒蔵で生き残りを懸けた方策がとられてきた。しかしその中で、一人勝ちしても所詮長続きは望めない、山形県が一体となって取組まねばという機運が生れ、昭和62年に「研醸会」結成、技術者同士の交流が行われるようになった。その結果するところ、新種鑑評会での高評価、東京の居酒屋での山形清酒のブランド力向上へとつながることになる。その勢いで「GI」指定への挑戦が始まり昨年暮れの決定に至ったとのことだった。一社でも反対があれば取組まないという強力なリーダーシップあってのことで、和田多聞(和田酒造)研醸会初代会長、仲野益美(出羽桜酒造)研醸会現会長の名前をあげられた。その研醸会を支えたのが山形県工業技術センター。畏敬をもって語られる「小関さん」という名前を何度か耳にしたことがあったが、その方が川西町出身で米沢興譲館高校から新潟大学に進み醸造学を学ばれた方というのを初めて知った。ここにも「置賜力(おいたまりょく)」があった!(つづく)


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「山形」酒類GI指定 酒質や醸造技術評価(河北新報 20161216

 国税庁は16日、酒類の産地名を地域ブランドとして保護する地理的表示(GI)制度に清酒の「山形」を指定した。酒類のGI指定は国内8例目で東北では初めて。山形県内の水で仕込んだ高い酒質や、醸造技術の向上に向けた取り組みなどを評価した。/「山形」の特徴は、鉄分の少ない軟水の仕込み水と、冬の厳寒期の低温長期発酵で生み出される、やわらかくて透明感のある酒質。国産米や、県内で採水した水などを原料とし、県内で製造、貯蔵、容器詰めをすることが表示の条件になる。糖類は使用できない。 /山形県酒造組合は2014年7月、指定を要望した。国税庁は、第三者に意見を募集した後、水や気候などの地域特性や、県工業技術センターと県酒造組合が中心になった人材育成、技術向上の取り組み状況について検討。山形ブランドが確立されていると認めた。/ 県酒造組合は県内の全51酒蔵が加盟している。現在、英語表記を配したオリジナルのGIロゴマークを作成中。今後は審査会を年数回開き、条件を満たした商品から随時、マークを表示していく計画だ。/ 県産清酒の15年の輸出量は、約36万リットルで東北トップ。県酒造組合の鈴木啓市常務理事は「国に認められたブランド力を生かし、国内の販売はもちろん、輸出にも弾みをつけたい。酒蔵や県と連携して品質の向上にも努力していく」と述べた。


[地理的表示制度]気候風土など地域の特色を生かした酒類のブランドを守る仕組み。国税庁の表示基準に基づいて指定されたブランド名は、知的財産として保護される。模倣品の生産者が国の命令に反して名称の不正使用をやめない場合には、罰則を科す。 

【追記 30.5.4】

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【追記 30.5.6】

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 【追記 2018.12.30】

山形新聞「日曜随想」、県酒造組合特別顧問小関敏彦氏の最終回です。IT社会を生きる心構えとして示唆に富む発言です。

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県産酒 山新.jpg   新しい時代 果敢に挑戦

  今年を表す漢字は『災」、新語流行順天賞は「そだね!」に決りました。東日本に住むわれわれにとって「災」の文字は7年前の大震災の記憶と連動し、かなり 暗い気持ちになります。逆に「そだね!」は、平昌冬季五輪カーリグ女子代表チームのかわいい北道弁に気持ちが救われる気がし、うまくバランスが取れている かなと感じました。
 西日本や北海道の天災は本当に大変な被害をもたらしました。県内では豪雨被害に遭ったと思えばや雨不足に見舞われたりと、地 域によって全く天候が異なる年でした。実はこのような現象は世界規模で発生しており、地球温暖化影響が気になります。県産の酒原料については、日本酒用の 原米は高温障害で作柄はやや不良となリ不足気味、葡萄は成長期の水分不足によりやや小粒で糖分は高い状態でしたが、その後の雨の影響で収穫時期により大き な品質差が生じました。
 私は酒造りに40年ほど携わり、その間さまざまなことを体験・学習させていただきました。中には楽しいことも厳しいこともありましたが、仕事というのは常に競争する環境に置かれており、停滞は敗者に繋がるということを教えられました。
  本県の酒造りは、求める酒質を実現するために最適容量のタンク(量を追う大きいタンクではない)を使用し、適切な原料処理や麹などのデータを生かしながら 作業をめるシステムになっています。さまざまな方法や微生物などのデータを駆使して酒質を設計していく方法です。ただし、蓄積されたデータは単に数値とし て存在するのではなく、最終的に製造責任者はデー夕の目的や意義も読み解く感性が必要になります。また、製造責任者の最大の仕事は、年ごとに変化する原料 の特性を予想・把握しそれにマッチする最適な方法を選択することです。
 私が業界に入った頃も同様のことがいわれていましたが、活用する情報量は何倍にもなっていて、しかも酒質レベルは格段に向上しています。数値化されたデータは時間の経過とともに蓄積され、大量に残っていきます。
  パソコンが一般化して約30年ですが、その間の社会環境の変化は本当に激しいものでした。産業や生活の基盤が変わることをパラダイムシフト(枠組みの変 化)と呼びます。そのサイクルがあまりにも短くなり、それに伴い人の価値観や生活様式・社会や企業のありようも変化し、一般の人々にとっては付いていくの がやっとのスピードです。
 日本が経済的に突出して発展している時は、組織を運営するための理性と知識を持ち忍耐強い性格の人々が評価され、効率的に成果を上げてきました。しかし、現代社会は多岐にわたって分化された構造になっており、全体を統括しながら判断し方向性を示せる能力が必要とされています。
 今はIT社会といわれ、例えばスマホに向かって「○○はどういう意味?」と聞くと、ほとんどが即座に回答してくれます。人の根幹として知識と教養を身に付けることは大変重要ですが、これからは人々と共感でき、安定した判断力と精神力を持ち、皆を巻き込んで高みを目指す勇気を持つ人が必要な時代となってきました。
 私が属する業界に厚い暗雲が掛かっていた時、立ち向かっていけたのはリーダーシップのある先輩方や、業界の友人たちと連携できたからだと思います。安心できる家庭環境の中で心身をリラックスしながら未来の発展を考える。仕事においては強い精神力を発揮する。これらの両立が必要ということでしょうか。今は間違いなくパラダイムシフトの時であり、皆をまとめてチャレンジしていく逞しいパーソナリティーが多く出現することが期待されています。
 皆さま一年間ありがとうございました。どうぞ良い年をお迎えください。   (山形市)

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【追記 2019.3.7】
3月6日の山形新聞社説です。
 
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増える県産日本酒の輸出
GI生かし「王国」確立を


 米沢市の老舗蔵元示嶋総本店」(小嶋健市郎社長)が2月から、新たに海外最大の市場である米国への輸出を開始した。県産日本酒はこの20年ほど、右肩上がりで輸出実績を伸ばしてきたが、海外の和食ブームに伴い日本酒の需要も高まる中、県産日本酒は国税庁の地理的表示(GI)制度で国内初の指定を受けるなど、他県と比べても優位にある。もう一段の輸出拡大によって、「日本酒王国」の確固たる地位を築いてほしい。
 農林水産省が昨年10月に発表した資料によると、日本酒の国内出荷量はピーク時の1973(昭和48)年には170万キロリットルを超えていたが、他のアルコール飲料との競合などから近年は50万キロリットル台前半まで減少。ただ吟醸酒や純米酒といった特定名称酒の出荷量は、毎年少しずつ増えつつある。一方、近年の海外での和食ブームなどを背景に輸出量は増加傾向にあり、2017年は2万3482キロリットルと、10年前に比べ倍増、全出荷量の4・2%を占めるまでになった。
 県産の日本酒輸出は20年前まで、数軒の酒蔵がほそぼそと手掛けるだけだったが、1998年に県酒造組合が本格的に輸出を主導し始めてからは右肩上がりでいる。
 県産日本酒の輸出が好調なのは、種類別の販売比率と無縁ではない。全国的な販売比率は普通酒が66%を占め、特定名称酒は3分の1にすぎないが、本県の場合は逆に特定名称酒が78%に上り、普通酒は22%しかない。海外では近年、和食が高級食として扱われ、それに付随して輸出量を増やしてきた。ここ10年を見ても2008酒造年度(7月〜翌年6月)の計162キロリットルから、17酒造年度は456キロリットルと、3倍近くに急増するなど、全国を上回るペースで実績を伸ばしている。同年度は県内53酒蔵中39酒蔵が約70カ国に輸出、全出荷量に占める割合は約4・5%と、これも全国平均を上回って日本酒も高級酒の輸出が伸びる傾向にある。特定名称酒が主力の本県にとって、この傾向は大変心強い。
 さらにGIも強い味方だ。いわば国の”お墨付き”であるGIは、認証制度が盛んな欧州はもちろん、欧州産ワインを多く輸入している東南アジアでも、「信用度が桁違い」(小関敏彦県酒造組合特別顧問)なのだという。
 2月には日本と欧州連合(EU)間の経済連携協定(EPA)が発効、日本酒の関税が撤廃された、県産日本酒の輸出先はこれまで、米国や中国、香港、韓国、台湾、東南アジアが中心で、EU向けは離脱見込みの英国を含めても全体の数%にすぎなかったが、関税撤廃は欧州向けの輸出拡大に向けた大きな追い風になるだろう。
 輸出の成否は信頼できる現地のバイヤーに巡り合えるかどうかが大きく影響するという。しかしそこをクリアできれば県産日本酒の輸出には好条件がそろっている。小関特別顧問は「将来的には全販売量の10〜15%は輸出できるまでにしたい」と言うが、毎年10%台の伸びを続ける現状が続けば、5、6年先にはクリアできそうだ。県内の各蔵元には、「世界と勝負する」気概を持ち、GI「山形」に一層磨きを掛けてほしい。

【追記 2019.3.7】
3月8日の山形新聞です。仲野氏は、遠藤孝蔵社長が亡くなられた後、東の麓酒造株式会社の社長を引き受けられました。今回の記事に「小関(敏彦)さんがいなければ今日の私はない。」とあります。
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 【追記 2019.3.29】
 平成 酒造り1.jpg平成 酒造り2.jpg
 
 

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めい

2019.3.7、追記しました。
by めい (2019-03-07 06:01) 

めい

2019.3.8、東の麓酒造(株)仲野益美社長の山新記事追記しました。
by めい (2019-03-08 07:28) 

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