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地元の幼児教育 支えて ■南陽市 井上達也 62歳 [こども園]

宮内こども園の井上園長先生の投書が今朝の山形新聞に掲載されました。幼稚園教諭、保育士がなかなか集まらない現場からの切実な叫びです。給料は安くとも成長する子どもと共にある喜びが何より、教職員のそうした思いに支えられて存続してきた私たちの園ですが、ようやく待遇改善の方向も見えています。いつの時代にあっても変わらぬ「いい職業」と自信を持って言える仕事だと思います。「夢を求めてもらいたい」、それが可能な職場です。

 

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地元の幼児教育 支えて

                      ■南陽市 井上達也 62


 4月から就任した「こども園」は、幼稚園と保育園が一つ屋根の下で営まれている。目まぐるしく感じられるが「助かるな!」という保護者たちの声に支えられている。

 人口の漸減に対する労働人口の確保のため、結婚や出産でも退職せずに済む対策としてこども園はそれに応えた制度だろう。入園希望者が増加しているということは、正しく現況を捉えた政策だといえる。

 ところが、まだ不足していた。現実は深刻だ。人が足りないのだ。養成校の先生の話では、卒業生たちは都会に流出しているという。都会の学校に行った者はそのまま都会に残り、地方の学校に入った者も都会に流れる。これが収まらなければ、せっかくのこども園も存立できない。

 6月にハローワーク主催の面接会に参加した。しかし、私のブースは完全に孤島化した。何十とある企業のブースは面接者が途切れることなく立ち寄っているというのに、私のブースは、1人も近づく者がいなかった。騒然とした会場で、私のところだけは森閑としていた。8月にもイベントが2度ある。訪問者が現れることを願う。

 テレビで人気の出た職業が中高生たちの進路希望になることがある。「金八先生」が典型だ。ぜひ、地方の幼稚園などで働く者もテレビの舞台に上げてもらいたいと思う。

 地元の養成校に在籍する学生たちには、ぜひとも地元の園に夢を求めてもらいたいと願うのである。

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めい

《・コンビニは24時間オープンしてもらいたい。 ・弁当はできるだけ安く買いたい。 ・宅配便は決まった時間にきちんと届けてもらいたい。・新聞は毎朝毎夕決まった時間に配達してほしい。 ・しかし、私たちが当たり前のように考えているそんな“便利な生活”は、もはや低賃金・重労働に耐えて働く外国人の存在がなければ成り立たなくなっている。いや、彼らがいなくなれば、たちまち立ちゆかなくなる。》
この現実に対して付焼き刃的な対応でしかできていない日本の現状についての指摘です。保育の現場にも外国人労働者が入りつつあるのかもしれません。今後、資格の緩和が問題になりそうです。それがいいのか悪いのか、判断がつきかねます。

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●日本人の思い上がりと法整備 移民は既に事実化している
http://blog.goo.ne.jp/aibatatuya/e/8a4a1d0f7183fd81eab250d7d97d4862

 以下に、「外国人技能実習制度」と云うトンデモナク頓珍漢な国際貢献制度と、「奨学金留学制度」と云う、これまたその場限りのご都合主義制度に支えられて、我が国の一部が構成されている現実は、おそらく、近々、限界に達するだろう。政府や役人、学者たち既得権者たちは、その場その場の都合に合わせた“屁理屈論”を並べ立てるが、真面目に、少子高齢化社会の日本が抱える問題に、本音で議論する時が来ているのは間違いがない。

 都会に住んでいると、外国人らしき労働者に出会うことは、いまや、日常茶飯事だ。日常的には、サービス業において顕著だ。コンビニの店員などは、繁華街では半数以上が外国人だ。限られた日本語でも対応は可能だし、後は、手振り身振りで、何とかなる。外食産業においも、同じような傾向がある。あまり、直接知ることはないが、農業や建設、漁業分野における、外国人労働力は、いまや、日本社会を回す上で、欠かせないものになっているのが、既に実態なのだ。

 本来、実態に則した法整備が必要になるのだが、政府も役人学者らも、建前論に終始して、事実に蓋をした状況が続いている。この「外国人労働力」の問題と「移民政策」と云う問題は、表裏一体な傾向はあるが、必ずしも「外国人労働力容認」と「移民容認」が、制度的に同じである必要はない。しかし、嘗ての、世界第二位の経済大国ではない。今後も、そのようになる可能性は、限りなくゼロであり、方向的には、下位に向かっているの事実を受け入れることが必要だ。だからと言って、何も、日本の文化価値が下がるわけではない。現在の日本の政党や大人たちが観念的に持っている「経済大国日本」ではない、価値を見出せば良いだけなので、特に嘆く問題ではない。

 それよりも、「日本は、外国人について、単純労働者は受け入れず、専門的・技術的労働者のみ受け入れる」という建前は、 一般の国民が知らないところで、既に大きく崩れている。多くの外国人単純労働者が懸命に働き、日本経済の下支えをしているのは事実であるし、日本人がやり たがらない仕事を引き受けているという事実だ。ただ、最近では、建設、漁業、農業分野、たぶん原発処理分野において、劣悪労働条件が固定化し、日本人労働者との間に軋轢が生じている事実も見逃さない方が良いだろう。

 今後、日本の少子高齢化社会の進捗は、税や社会保障費の負担主体が、見る見る減少するのは確定的なのだから、彼ら、外国人単純労働者に対しても、日本国内の社会保障を含む法的保護と、それに見合う負担を、前向きに考えていくのは当然だ。彼らの、日本への永住権を認めるか(実質的に移民受け入れ)、と同一土俵で論じなくても、この問題は解決する。「移民容認」と云う劇薬に向かう前に、段階的処方箋は、日本社会の準構成員になって貰うことだ。ただし、日本の国際的立場を、冷静沈着にジャッジする能力を、我々日本人が持っていないと、「ご都合主義日本」と評価されるだけで、いずれ、外国人労働力から見放されるに違いない。

 老々介護と大和魂で切り抜ける選択も否定はしない(笑)。遣れるものなら、やってみなはれ!と云うことだ。「AIが発達すると、2030年以降には人口の1割しか職にありつけない」なんて話もあるが、まあ、眉唾だ(笑)。AIとロボットが飛躍的に高度化することは、悪いことだとは思わない。iPS細胞を用いた再生医療や創薬研究なども、劇的に人間の生き方を変えるだろう。しかし、その劇薬的イノベーションを人類に役立たせるも、しないのも、人類の知恵である。筆者は、AI、ロボット、iPS細胞‥等の進捗に、酷く後れを取っている人類の知能、心が心配だ。


≪ 日本が外国人労働者に見捨てられる日 ――丹野清人・首都大学東京 都市教養学部教授に聞く
【 安く使え、必要なくなれば切り離せばいいという発想で企業に受け入れられてきた外国人労働者。しかし、日本を取り巻く環境は様変わりし、これまでのような安直な発想では、いずれ外国人労働者から見向きされない国になってしまうかもしれない。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集部 津本朋子)】
■日系人に代わって増える技能実習生 名目ばかりの「国際貢献」の弊害とは
――人口減少が本格化してくるなか、外国人労働者を受け入れて労働力を確保しようという動きが再び活発化しています。バブル期や2000年代のミニバブル時など、外国人労働者は長らく、雇用の調整弁としての役割を期待されてきました。

 まず、明確にしておかなければならないのは、日本はまだ「外国人労働者を受け入れていない」というスタンスを崩していないということです。しかし、現実に彼らは存在している。  
 どういうことなのかというと、まずは日系人に関しては、1990年の入国管理法改正を契機として、ブラジルを中心に、ペルーやアルゼンチンといった国から、大勢やってきました。彼らの多くが業務請負の、いわゆる派遣労働者として、自動車産業などを支えてきた。しかし、入管法改正は、あくまでも「定住者として認める」というスタンスで、「外国人の労働を認めます」とは言っていない。ただ、「定住するのだから、働くのも当然アリでしょう」というような、いわば黙認のかたちを取ったのです。
 2008年のリーマンショック後、大量の派遣切りが行われ、多くの日系人が母国へ帰りました。ブラジル人については、08年には約32万人が日本にいたのに、昨年末は18万人弱に減りました。激減した日系人に代わって増えているのが、技能実習生です。
 彼らは3年間、単身で日本にやってきて、指定された対象業務(農業、漁業、建設業など71職種130作業)に従事します。日系人と違って定住はできず、同じ業務での再入国も認められていません。最近、3年を5年に延長することなどが閣議決定され、人手不足解消に役立つのではないかと期待されていますが、そもそも、この「技能実習制度」というのは、「国際貢献」という名目なのです。
 つまり、日本の技術を実習生たちに教えて、自国で活躍してもらおうというのが、本来の趣旨なのです。にもかかわらず、いつの間にか人手不足解消の ためといって、実習制度が濫用されている。これは、実習生たちにとってのみならず、実は日本企業にとっても深刻な弊害があるのです。

――どういうことでしょうか?

 たとえば、造船業界は今や、韓国や中国と熾烈な競争をしていますよね。これは、日本で技術を学んだ人たちが、自国の造船業を発展させたからなので す。米国のように、製造業を捨てて金融に力を入れる、というような流れになっているのならまだしも、日本はいまだに製造業で外貨を稼いでいる。人手不足だといって安易に実習生に頼れば、あちこちで造船業界のようなことが起きるのです。
 また、企業からすれば、同じ仕事を3年かけて教えて送り出し、次に来た人に、またイチから教えなければならない。これは非常に効率の悪いことなのではないでしょうか。
 本来、技能実習生は短期的に活用すべきものだと思います。しかし現状は、ある労働組合の幹部が言っていましたが「頼りすぎてやめられない、麻薬の ようなもの」となってしまっています。今、三大都市圏の野菜のほとんどは、中国人実習生が収穫しています。彼らがいっせいに日本からいなくなれば、われわれは明日から弁当も食べられないのです。
 さらに、実習生たちは現行制度なら3年、延長されても5年で帰国しますし、家族も伴わない単身勤務です。つまり、労働力としては一定の機能をしま すが、日本の人口は増えない。人口減少に対応したいのなら、日系人型、つまり移民受け入れ型の政策を考えていかなければなりません。

■外国人労働者を捨てた日本が 逆に見捨てられる日がくる

――実習生たちにとっても、劣悪な環境で働かされることが問題になっていますよね。

 劣悪な労働環境がしばしば社会問題となってきました。しかし、多くの日本人は「それでも彼らは自国で働くよりは、日本に来て外貨を稼ぎたいのだ」と理解しているのではないでしょうか。以前はその通りでした。しかし現在、状況は急速に変わり始めています。
 技能実習生の国籍トップ3は中国、ベトナム、インドネシア。次にフィリピン、タイと続きますが、いずれも急速に経済発展を遂げています。80年代なら、日本との賃金格差は30倍にも及びましたが、今はせいぜい10倍程度でしょう。それに加えて、昨年から急速に円安が進みました。日本で得られる仕事 は、最低賃金レベルのものばかりですから、彼らにとって賃金面の魅力は色あせてきているのです。
 加えて、イメージも落ちてきています。かつて、日本メーカーの家電製品や自動車がアジア各国でナンバーワンブランドとして君臨していた時代は、日 本に憧れる人が大勢いました。「夢の国・日本で、一度でいいから働きたい」と思ってもらえていたのです。しかし、今では日立や東芝は家電製品を縮小して重電分野に経営資源を特化し、代わりにサムスンやLGがアジアで活躍する時代となりました。“日本ブランド”の力も急速に衰えているのです。
 憧れも抱けず、カネも稼げないのなら、見向きされるはずもありません。日本人の多くは「外国人をこき使い、いらなくなったら見捨ててきた」と考えているでしょうが、実は、「われわれが外国人労働者から見捨てられる」時代がすぐそこまで来ているのです。

■受け入れ制度の充実度で 日本の先を行く韓国と台湾

――同じく少子化が進んでいる韓国や台湾も、外国人労働者の受け入れに力を入れています。

 技能実習制度は、人集め、いわゆるリクルーティングは現地の民間企業や政府系機関が担っており、来日後しか日本政府はタッチしません。一方、介護職は技能実習制度ではなく、2国間協定のEPAによって実施されているので、日本政府がリクルーティングにもからめます。
 韓国や台湾は、日本でいうところの介護職の方式、つまり政府がリクルーティングに関与する方式で進めています。こちらの方が、労働者にかかる負担 は少なくて済みます。というのも、現地でのリクルーティングにかかる費用は結局、労働者が負担することになる。民間企業などがあいだに入ると、その分イニシャルコストが跳ね上がるのです。また、滞在できる年数が日本より長いことも、労働者からすれば魅力でしょう。
 もっとも、政府が直接関与する方式は、現地との調整もあり、簡単にできるものではありません。韓国のケースでも、時間をかけてここまでの体制を作ったのです。いずれにしても、かつては圧倒的魅力を誇っていた日本ですが、現在は韓国や台湾に競り負ける状況になりつつあるということです。

■人材使い捨ての業界には いずれ外国人すら来なくなる

――日本は技能実習制度を改めるべきなのでしょうか?

 人口減少への対応という観点からは、やはり移民型を議論すべき時にきていると思います。ただ、労働力確保といった特定の問題解決ばかりにフォーカスすると、対応を誤るでしょう。
 これだけグローバル化が進んでいるなか、人を「人的資源」と考え、人が移動をした際、その人も受け入れた社会も双方がトクをする、という体制を考 えなければならない。ここをおざなりにすると、必ず失敗します。誰も、子育てもロクにできないような国には、行きたくないでしょう。これまでのような「使い捨て」の発想ではダメです。
 たとえば現在、人手不足が厳しい業種の1つに建設業界があります。建設業界は、ゼネコンをトップに重層下請け構造となっており、下請けの労働者た ちは社会保険すら入れていない人が大勢いる、というような状況がいまだに続いている。これでは外国人労働者うんぬん以前の問題で、業界構造そのものがおかしいと言わざるを得ない。短期的には外国人が来てくれても、しばらくすると誰も来なくなった、という事態になっても不思議ではありません。
 もちろん使い捨ては論外なのですが、だからと言って、いきなり戸籍まで与えろというのではなく、共存できる体制をつくることを念頭に、「どこまで外国人に依存するのか」「どの程度、受け入れるのか」を議論すべきなのです。
 そもそも、日系人にしても実習生にしても、「労働者を受け入れたわけではない」という建前がいまだに存在していること自体がおかしいですよね。実際に受け入れているのですから、どう受け入れるべきかという視点でこそ、真剣に議論されなければなりません。  ≫(ダイアモンドONLINE>経済・時事>シリーズ・日本のアジェンダ 崖っぷち「人口減少日本」の処方箋)

≪ 外国人労働者が絶望する「ニッポンのブラック工場」の実態 安すぎる給料、過酷な労働条件…
【日本の低賃金・重労働に絶望を募らせる外国人が増えている。外国人労働者の実態を取材した『ルポ ニッポン絶望工場』から、その一部を公開する――。】
■外国人労働者の悲鳴が聞こえる
・近年、外国人の働く姿を見かける機会がますます増えてきた。
・都会のコンビニエンスストアや飲食チェーン店では、外国人の店員が当たり前になった。建設現場でも、外国人作業員をよく見かける。田舎に行けば、農業や水産加工業などで外国人は貴重な戦力だ。
・外国人が増えていることは統計でも明らかだ。
・日本で暮らす外国人の数は昨年1年間で約11万人増え、過去最高の約223万人に達した。こうして増加した外国人の半分以上は「実習生」と「留学 生」として日本にやってきている。実習生は15パーセント増えて約19万3000人、留学生も同じく15パーセントの増加で約24万7000人となった。 私たちが普段見かける外国人労働者も、その多くは「実習生」や「留学生」として入国した人たちだ。
・実習生と聞けば、日本に技術を学びに来ている外国人のように思われるかもしれない。しかし、実態は短期の出稼ぎ労働者である。留学生にも、勉強よりも出稼ぎを目的とする者が多く含まれる。
・では、外国人の出稼ぎ労働者たちは、なぜ「労働者」ではなく、「実習生」や「留学生」として日本にやってくるのか。
・少子高齢化によって、日本の労働人口は減り続けている。とりわけ体力が必要で賃金の安い仕事は働き手が不足している。しかし、「単純労働」を目的に 外国人が入国することは法律で許されない。そこで「実習生」や「留学生」と偽って、実質的には単純労働者が受け入れられているのだ。
・私が「外国人労働者」をテーマに取材を始めたのは2007年、ある月刊誌で連載を始めたことがきっかけだった。すでに当時から、一部の職種で人手不足は深刻化しつつあった。外国人実習生の数は15万人を超えていた。実習生と同様、バブル期の人手不足によって 受け入れられ始めた日系ブラジル人の出稼ぎも、全国で30万人以上に上っていた。翌2008年には、東南アジア諸国から介護士・看護師の受け入れも開始されることになっていた。
・そうやって外国人労働者はどんどん増えているというのに、世の中の関心は現在にもまして低かった。 ・欧米諸国を見れば、外国人労働者や移民の受け入れは、国論を二分するテーマになっている。やがて日本でも、外国人労働者や移民の受け入れが大きな議論となるに違いない。そう考え、以来私は、10年にわたって外国人が働く現場を訪ね歩いてきた。

■生臭さが充満する職場で…
・私には今も忘れられない光景がある。外国人労働者の取材を始めた際、最初に訪れた北海道猿払村で目にした光景だ。
・猿払村は、日本最北端の宗谷岬からオホーツク海沿いに少し下った辺りにある。人口は3000人に満たないが、ホタテの水揚げ量で全国一を誇る「ホタテの町」だ。ホタテの殻を剥く作業には人手が要るが、地元では確保できなくなっていた。そこで村では、約100人の実習生を中国から受け入れ、人手不足を 補うことにした。
・実習生の働くホタテの加工場は、殺風景な海岸にポツンとあった。そこに足を踏み入れた瞬間、私は思わず息を止めた。加工場には潮の香りとホタテの生臭さが充満していて、むせ返りそうだったのだ。
・そんななか、中国人実習生たちは顔色ひとつ変えず、黙々とホタテの殻剥きに励んでいた。皆、20代の若い女性である。一緒に働く地元の日本人女性たちは60~70代で、作業のスピードは明らかに実習生たちのほうが早い。
・「実習生なしでは、この加工場、いや村はもうやっていけない」
・加工場の経営者が漏らした言葉に、私は軽い衝撃を受けた。外国人労働者なしでは「やっていけない」職場が、日本のあちこちで増えていくに違いないと悟ったからだ。少子化による人手不足は、なにも猿払村や水産加工業に限った話ではないのである。
・あのときの私の予感は現実のものとなった。コンビニや飲食チェーン店のような目につく職場だけではない。外国人頼みの現場は、むしろ私たちが普段、 目にしない場所に数多く存在する。コンビニやスーパーなどで売られる弁当やサンドイッチの製造工場、宅配便の仕分け現場、そして新聞配達……。いずれも日本人が嫌がる夜勤の肉体労働ばかりである。
・コンビニは24時間オープンしてもらいたい。
・弁当はできるだけ安く買いたい。
・宅配便は決まった時間にきちんと届けてもらいたい。
・新聞は毎朝毎夕決まった時間に配達してほしい。
・しかし、私たちが当たり前のように考えているそんな“便利な生活”は、もはや低賃金・重労働に耐えて働く外国人の存在がなければ成り立たなくなっている。いや、彼らがいなくなれば、たちまち立ちゆかなくなる。
・そうした実態は、日本人にほとんど知られていないのではなかろうか。

■「反日化」と「復讐」
・取材を続けながら、私が強く実感することがある。それは就労先としての「日本」という国の魅力が、年を追うごとに低下しているという現実だ。
・かつての日本は、世界第2位の経済大国として君臨していた。途上国の人々にとって日本は「夢の国」であり、その日本で働くことには憧れもあった。
・しかし近年、アジア諸国を中心として多くの途上国が急速な経済成長を遂げた。ひとことで言えば、経済格差が縮まったのである。日本は「夢の国」から 「安い国」へと転落し、カネを“稼ぐ”ための場所から“使う”ための国へと変わった。“爆買い”で有名になった中国人観光客を見れば、そのことがよくわかる。
・日本に出稼ぎにやってくる外国人の顔ぶれも大きく変化した。かつて実習生や留学生の7割を占めた中国人は減少が止まらない。中国の経済発展で賃金が上昇し、日本への出稼ぎ希望者が減ったからだ。そして日系ブラジル人も、ピーク時の半分近くまで激減している。
・代わって増えているのが、経済発展に乗り遅れた国の人々だ。
・たとえば、ベトナム人である。
・2010年末には約4万2000人に過ぎなかった在日ベトナム人の数は、わずか5年で約14万7000人と、10万人以上も急増した。ネパール人も 約1万8000人から約5万5000人へと増えている。さらには、ミャンマーやカンボジアといった国々の出身者も増加中だ。彼らが今、「実習生」や「留学生」として増えている外国人労働者の正体なのである。
・職業に貴賎はない。とはいえ、誰もがやりたがらない仕事はある。そうした最底辺の仕事を彼らが担っている。今後も、外国人頼みの職種は増えていくことだろう。老人の介護は外国人が担い、外国人の力なしにはビルや家も建たない時代が近づいている。
・日本人の嫌がる仕事を外国人に任せ、便利で快適な生活を維持していくのか。それとも不便さやコストの上昇をがまんしても、日本人だけでやっていくのか。私たちは今、まさにその選択の岐路にいる。
・貧しい国に生まれ育った外国人であろうと、彼らも同じ人間である。日本人にとって嫌な仕事は、彼らも本音ではやりたくない。これまで私は、日本に憧 れてやってきた若者たちが、やがて愛想を尽かして去っていく姿を何度となく目の当たりにしてきた。“親日”の外国人が、日本で暮らすうち“反日”に変わっていくのである。
・「実習生」や「留学生」だと称して外国人たちを日本へと誘い込む。そして都合よく利用し、さまざまな手段で食いものにする。そんな事実に気づいたと き、彼らは絶望し、日本への反感を募らせる。静かに日本から去っていく者もいれば、不法就労に走る者もいる。なかには凶悪な犯罪を起こす者すらいる。
・自分たちを食いものにしてきた日本社会に対し、彼らの“復讐”が今まさに始まろうとしているのだ。 ■“奴隷労働”が支える新聞配達
・「外国人技能実習制度」(実習制度)で来日した実習生が、日本でひどい待遇を受けているとの報道は多い。「実習」という名のもと低賃金・重労働の仕 事に就き、しかも残業代の未払いやパスポートの取り上げといった人権侵害を受け、悪い企業の餌食になっているというのだ。欧米の人権団体などには、日本の実習生を「現代の奴隷」と呼ぶところまである。
・しかし私に言わせれば、出稼ぎ目的の留学生たちが置かれた状況のほうが、実習生よりもずっとひどい。彼らは多額の借金を背負い入国し、実習生もやらない徹夜の重労働に明け暮れる。そうして稼いだアルバイト代も、留学先の日本語学校などに吸い上げられるのだ。
・現在、日本で最底辺の仕事に就き、最も悲惨な暮らしを強いられている外国人は、出稼ぎ目的の“偽装留学生”たちだと断言できる。
・実習制度の問題については頻繁に取り上げる新聞やテレビも、留学生の実態についてはほとんど報じない。確かに“偽装留学生”たちは「留学」と偽って 日本で働こうとしたかもしれない。だが、そんな彼らを餌食にしているタチの悪い輩が存在する。日本語学校は留学生たちからボッタクり、企業は“奴隷労働” を強いている。にもかかわらず、メディアは知らんぷりである。
・新聞やテレビが留学生問題に触れないのには理由がある。それは、そもそも新聞が、留学生たちの“奴隷労働”に支えられているからだ。
・新聞配達は、人手不足が最も進んだ職種の1つになっている。留学生の存在なしには、配達すらできない現場も少なくない。とりわけ都会では、配達員がすべて留学生という新聞販売所まであるほどだ。
・かつて都会の新聞配達といえば、地方出身の日本人苦学生によって成り立っていた。大手紙の新聞奨学生となれば、大学や専門学校の学費は負担してもら え、そのうえ衣食住も保証された。しかし、最近では希望者が激減している。新聞配達の仕事では、真夜中から早朝にかけて朝刊、加えて午後には夕刊の配達も待っている。人手不足でアルバイトなど選び放題の時代、若者に敬遠されるのも当然だろう。
・そうした日本人の働き手の減少を補っているのが、ベトナムをはじめとする途上国出身の留学生たちなのである。
・もちろん、留学生が新聞を配達しようと構わない。しかし、新聞配達の仕事は「週28時間以内」では終わらない。つまり、留学生たちは初めから違法就労を強いられることになる。
・こうした留学生の問題を紙面で取り上げれば、みずからの配達現場で横行する「違法就労」にも火の粉が及ぶ。そのことを恐れ、新聞は「留学生」がいく ら日本でひどい目に遭っていようが、記事にしようとはしない。そして、新聞社と資本関係のあるテレビ局も、新聞に気を遣い、留学生問題については触れな い。
・新聞配達の現場で今、何が起きているのか。私は東京都近郊の朝日新聞販売所の経営者と交渉し、ベトナム人留学生の新聞配達に密着取材させてもらうことにした――。

■ベトナム人が支える新聞販売所
・午前3時、シーンと静まり返った住宅街に原付バイクのエンジン音が響いていた。ハンドルを握るアン君(20代)は、1年前にベトナムから来日し、日本語学校に通いながら新聞配達を続けている。
・奨学生としての生活は厳しい。午前2時に起きて朝刊を配り終えた後、午前中は日本語学校で授業を受ける。そして午後から夕方にかけては夕刊の配達が ある。その後、アパートに戻って夕食を食べ、日本語学校の宿題と向き合う。睡眠時間は毎日3時間ほどだ。仕事が休みになるのは月4日と新聞休刊日だけで、 大晦日も元旦も配達があった。
・「スピード、大丈夫ですか?」
・バイクを後ろから自転車で追いかける私を気遣い、アン君がマスク越しに声をかけてきた。柄モノのマスクはベトナムに残した彼女からのプレゼントだ。
・気温は零度近くまで冷え込んでいた。アン君の顔はマスクとマフラー、ヘルメットで隠れている。新聞配達の姿を見ても、彼が外国人だとわかる人はほとんどいないだろう。
・配達する朝刊は約350部、夕刊が200部以上に及ぶ。外国人であっても、配達部数は日本人と変わらない。バイクのカゴと荷台に分けて積む新聞の重さは約20キロ。1回ではすべて積みきれず、配達の途中で販売所に戻って積み直さなくてはならない。
・「朝、起きるのは大丈夫です。でも、雨の日は大変。風の(強い)日も大変です」
・アン君はベトナムでも日本語学校に通っていたが、言葉はまだ流暢とは言いがたい。配達先の表札にも読めない漢字は多い。そのため仕事中は、いつも「順路帳」が手放せない。絵と記号を使って、配達の順路が記された帳面である。
・バイクを止めては前のカゴから新聞を抜き取り、配達先のポストに入れていく。そんな作業が延々と続く。 ・4時半頃になると、空が白んできた。しかし、道行く人は皆無だ。聞こえてくるのは、他紙の配達員が運転するバイクの音だけである。そんななか、1軒の配達を終えたアン君が、踵を返して私に尋ねてきた。
・「新聞配達がいちばん楽しい日は、いつか知っていますか?」

■日本人の友だちは1人もいない…
・答えに窮していると、彼は笑顔で言った。
・「雪の日です。配達に10時間もかかりました」
・最初は皮肉かと思ったが、配達を終えた後に話を聞いて理解した。
・アン君は以前、大雪のなかで配達したことがあった。ベトナムの故郷では、ほとんど雪は降らない。何度もバイクで転んでしまったが、それでも配達をしないわけにはいかない。仕方なく歩いて配達していると、見かねた近所の人たちが次々と手伝ってくれたのだという。
・日本にやってきてからずっと、アン君は販売所と日本語学校の往復だけの生活を送っている。接する機会のある日本人といえば販売所の従業員と日本語学 校の教師や職員くらいで、日本人の友だちも一人もいない。そんな彼にとって、思わぬかたちで経験することになった日本人のやさしさが身にしみたのだった。
・アン君が働く販売所では、数年前からベトナム人奨学生を受け入れてきた。販売所を経営する男性は、彼らの働きぶりに満足しているという。
・「ベトナム人の若者は皆、真面目です。不着(配達漏れ)もほとんどなく、むしろ日本人よりも優秀。ベトナム人抜きでは、うちの店はもう成り立ちません」
・男性の販売所には10の配達区域があるが、そのうち8つはベトナム人留学生の担当だ。確かに、ベトナム人抜きでは「成り立たない」状況である。
・アン君は、朝日新聞販売所に奨学生を送り込む「朝日奨学会」に採用された後、この販売所に配属された。朝日奨学会では、彼のような外国人奨学生のことを「招聘奨学生」と呼ぶ。招聘奨学生となると、日本人の奨学生と同様、学費を負担してもらえ、アパートも提供される。
・一方、販売所にとっては、日本人よりも外国人の奨学生を採用したほうが金銭的なメリットがある。日本人奨学生の場合、奨学金と給料、アパート代など で月25万~26万円程度の負担となるが、外国人だと月4万~5万円ほど少ない。外国人が通う日本語学校は、大学よりも学費が安いからだ。
・そもそも、最近では日本人の若者で新聞奨学生を希望する者は少ない。珍しく希望者がいて採用しても、仕事が嫌になって短期間で辞めてしまうケースが多い。販売所を逃げ出しても、ほかにアルバイトはいくらでもある。
・その点、外国人の場合は、途中で逃げ出す心配がない。人生をかけて来日している彼らは、簡単に日本を離れるわけにもいかない。販売所を辞めたところで、学費が免除され、しかも衣食住の心配もない新聞奨学生を上回るアルバイト先など、そうそう見つからないからだ。
・社会人の日本人を雇えば、奨学金の負担はなくなる。ただし、販売所の仕事はアパート付きが基本だ。フルタイムで一人雇えば、首都圏では最低でも月 30万円前後はかかってしまう。それでも日本人を雇いたい販売所は多いが、希望者は現れない。そのため仕方なく、外国人に頼る状況が生まれている。
・新聞販売所で働く外国人留学生のなかでも、際立って多いのがベトナム人だ。とりわけ朝日新聞の販売所では、ベトナム人頼みの状況が著しい。朝日奨学会東京事務局が、組織的にベトナム人を奨学生として採用しているからだ。この2~3年は毎年春と秋、100人単位での受け入れが続いている。ちなみに同事務局で採用する日本人奨学生は、1年で100人にも満たない。つまり、ベトナム人奨学生の数が日本人の2倍以上に達しているのだ。 「朝日奨学会」制度の功罪と、さらに過酷な新聞配達の実態に迫る後編はこちら
 ≫(現代ビジネス>社会>社会保障・雇用・労働:出井康博)

*以下、後編は文字制限のため掲載できず。以下URLにてお読みください。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49460

by めい (2016-09-11 02:12) 

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