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mespesadoさんによる経済談義(130)日米貿易協定最終合意をどう見るか [mespesadoさんによる1億人のための経済講]

1年前、「安倍首相のしたたかさ」と題してmespesadoさんの議論を紹介したことがありました。https://oshosina.blog.so-net.ne.jp/2018-10-13 mesさん曰く《安倍さんは、「隷米軍産複合体の態度を貫い」ていたんだけど、実は面従腹背で、しかも、反ネオコンのトランプが大統領に決まったら、まだオバマが 在任中にもかかわらずトランプに会いに行った。じゃあ「隷米軍産複合体」じゃなくて「隷米政府」なのかな~と思っていると、軍事とは関係ない例のTPP交 渉で「チーム甘利」なんか作っちゃって、米との交渉で日本が逆転優位に立っちゃって、あげく米の方から白旗上げて降りちゃった。これ、どう見ても、安倍総理って本音は国士じゃね?隷米ってタテマエ上の態度に過ぎないんじゃね?

2年前の「やすえちゃん、読んで下さい!」と題したmesさん議論紹介記事https://oshosina.blog.so-net.ne.jp/2017-12-24には、TPPについてこうありました。《TPPが悪いイメージでしか語られなくなった理由は、ひとえに米国のネオコンの暴走が原因ではないでしょうか。金融の世界では消費者を騙してでも儲かればよい。軍需産業では他国の国民が戦争でいくら虐殺されようが武器の販売で儲かればよい…。・・・その「諸悪の根源」の米国が、トランプ大統領になってTPPから「一抜けた」した今、イニシャティブは日本が取ることになりました。・・・基本的に「やったもん勝ち」の西洋の、そのまた急先鋒であるアングロサクソンの権化の米国ではなく、「人類本来の本能に基づく倫理」を持つ日本がイニシャティブを持つTPPは、ですから良心的な国民の監視の下にきちんと運用されさえすれば、消費者にとってメリットこそあれ、酷い結果を引き起こすことなく運営できるのではないか、と考えられるのです。》

今回の日米貿易協定最終合意を冷静に評価するmespesadoさんの議論です。

*   *   *   *   *

496 名前:mespesado 2019/09/29 (Sun) 09:47:15
>>495
 mukuさんみたいな人が主張してそうな意見↓

日米貿易協定 最終合意、農産品下げ車先送り
https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20190926-00000022-jnn-bus_all

>  農産品の関税はTPPの水準まで引き下げ、自動車の関税撤廃は事実
> 上、先送りされるなど日本が大幅に譲歩した形です。

 しかし実際は↓
https://twitter.com/ssomurice_round/status/1177001618245480451

弓月恵太@ssomurice_round
> 『協定全体を見ればアメリカに押し込まれた形で』
> フェイクニュース。
> ま、マスコミがこう書くのは既定路線ww
> TPPより関税下げられないなら、米国がTPPを脱退した意味がない。
> 現実は米国側の敗北だろう。
> あ!
> トウモロコシがあったかww

> 『トヨタ、テキサス州で約4億ドル投資-日米貿易交渉との関連性は否
> 定』
> トヨタの追加投資を、マスコミは追加関税を回避するためと、これまた
> フェイク。
トランプ政権は、カナダ、メキシコを排除し、日本をどこよりも優遇
> た。
> さらに、日本車のシェアは拡大するだろう。

> クレバーな米国民はよくわかっている。
> 通商において、日本の最大取引国は中国
> 米中が分断されると、漁夫の利は日本にいく。
> 現に対中貿易は既に黒字に転じている。
> 少なくとも、日中通商が良好なこの状況を、安倍首相、並びに、習近平
> 氏と李克強氏は歓迎している。

TPPが発動されたため、対日貿易に対し、米国農家は地獄を見た、豪州農
> 家はやる気満々、みたいなのは報道されないからな。
> ツイッターの反応を見るに、TPP同等の関税で、米国農家は喜んでいるよ
> うだ。
> お人好しだよな。
> 自分が米国農家民なら、この結果ではトランプ政権を許さないけどな。

> マスコミは、常に強い米国、弱い日本を、日本国民に刷り込む。
> しかし、実際は日本はTPPの議長国、この低関税で米国農家に涙を流させ、
> RCEPや日欧EPA、日中通商では、逆に米国との関係を武器に日本主導で交
> 渉を進めている。
> どう考えても、安倍政権は無双
> マスコミには、極めて不都合な事実。

> 通商に関しては、保守側にもTPPの関税撤廃で日本の農家がー、みたいな
> おバカさんがいる。
> しかし、購入するのは日本国民、つまり日本の消費者だ。
常にニーズがあるものが勝つのは、市場原理
> むしろ対等にした方が日本有利となぜ思えないのか。
> 情けない自虐史観の塊でしかない。

 もともと日本は民主党政権下の米国とTPP交渉に臨んだ時、甘利さんのチームが主体となって「米国とTPPを結ぶつもりで」交渉し、米国がシッポを巻いて逃げ出した経緯がある。ということは、今回の2国間交渉で米国との間でTPP水準での結果が得られた場合、その場合の「日本にとっての悪影響」は「TPP交渉時に織り込み済み」の結果しか齎さず、その時点でシッポを巻いて逃げ出した米国の方が有利になるリクツが無い
 そもそも農業も含めて日本の製造業の品質は米国を上回っているのだから、米国との二国間交渉で日本が不利になる理由はもともとなかったわけである。日本が不利になる要素としては、「米国の方が安いが品質が悪い」ものを日本の消費者がどれだけ受け入れるかどうかにかかっている、と言ってもよい。日本がこのまま緊縮財政をひた走って「オカネが無い」、いやこの表現は誤解を招く表現だから「貨幣が不足している」状態を続ければ、日本も大多数の国民が「品質より値段」という、現在の米国人気質みたいになって日本は今度こそ本当に衰退に向かうだろう。
 一方、緊縮財政をやめるためには、金融マフィアの勢力を削ぐことから始めないとうまくいかないことは、今まで散々論じたとおりであり、そしてこの大計画を遂行するにあたって今のトランプ米大統領はその先頭を切って活躍しているのである。
 日本は本気を出せば、米国との二国間交渉で、もっと日本に有利な結果を得ることさえできたと思うのだが、それをせず、あくまで日本の国益を損ねない範囲でだが、米国にも花を持たせた。これは米国とウィン・ウィンの関係を維持し、トランプ大統領と協力して金融マフィアと闘っていく意思を示したもの、と考えることができる。
 大きなスケールで国際政治を含めた政治を実行する、というのはこういうことを言うのだろう。

504 名前:mespesado 2019/09/30 (Mon) 07:12:44
>>500
 今の政権は、見てくれの対称性ではなく、実効上の利害で考えてると思いますよ。例えば農業の関税にしても、日本の農家が困窮しないレベルをわきまえて、その範囲でむしろ日本の農業の進化を促すレベルだと思うところで手を打つ。最低賃金の引き上げ幅の決め方と同じ。
 これは例えば海外の労働者受け入れに関する政策のときも同じで、これは右派が反対しているが、実は中小企業が労働者不足で悲鳴を上げていることへの応急措置。本気で解決するには負の消費税の導入やAI化、機械化の促進が必要だが、財務省の緊縮財政や開発期間を要するなど、すぐにはできないから悪影響と天秤にかけて、注意深く移民の悪影響を排除しながらこの政策を推進することに決めたのです。で、実際、今のところ問題になっていない。安保法改定や労基法の改定なんかも同じです。
 で、今回の通商交渉。安倍さん自身が「ウィンウィン」と総括したことに注意。もし日本の関係者が今回の締結を不満に感じてたら安倍さんにこんなことを言われたら不服なはずで、安倍さんはこんなあえて不利になるような発言をするはずがない。ということは日本の関係者は実際は不満を感じていないということ。
 一方、安倍さんの発言は米国にも当然伝わるから、もし米国の関係者が今回の内容に不満だったら安倍総理に不快感を持つはずだから、やはりそんなことを言うはずはない、ということは米国の関係者も実際は不満を感じていないということ。つまり、安倍さんは、日本にとっても米国にとっても満足するギリギリの内容で締結したという確信を持っているということ。この自信はどこから来るかと言えば、やはりDS支配下にあったときの米国とのTPP交渉ですらチーム甘利の活躍で「勝った」という実績があるからでしょうね。だからこそ、今回は自国の国益を守っただけでなく、余裕で米国に少し花を持たせることすらできたんじゃないでしょうかね。


511:猿都瑠 :2019/09/30 (Mon) 14:54:41
トランプは次期大統領選を控えている。
安倍政権にとっては、次期大統領もトランプであって欲しい
今回の日米間交渉では、アメリカが勝ったと演出する必要性があった。
TPPを脱退してまで関税の引き下げを狙っているのに、それを下回らないが、(トランプは)引き下げを勝ち取って見せた。
安倍政権は2021年までは続くので、アメリカとの交渉に今破れて(みせて)も影響はない。
破れて(魅せるw)余裕がある。
2021年がトランプ政権であるなら、安倍総理はアメリカ大統領の力を抵抗勢力を押さえる外圧として利用できる。
(今は)損して得とれって事ですな。


513:mespesado :2019/09/30 (Mon) 22:46:15
>>511

> 安倍政権にとっては、次期大統領もトランプであって欲しい。

 はい。今回「米国に花を持たせた」のはそういう思惑があるからですね。しかし、

> 今回の日米間交渉では、アメリカが勝ったと演出する必要性があった。

 いや、今回は別に「アメリカが勝った」という演出はしてないと思います。両首脳が共同で発表したように「ウィンウィン」です。いかにもアメリカが勝ったように思わされているのはマスコミのフェイク報道のせいです。
 例えば、次のサイト↓
日米貿易協定は「和牛の終わり」か、懸念深める国内畜産農家
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190929-00000000-jij_afp-int

なんかはタイトルからして煽りまくり。ですが、農家の声と称して

>「今までのTPP(メンバー国)だと、確かに輸入品は安いけれども、品質
> ではじゅうぶん対抗できる国だった」【中略】「ところが、米国とは
> (オーストラリア産牛肉などと比べ)品質的にはより競合するので、そ
> の点では心配」

なんて言ってますが、前半は「ファクト」。それに対し後半は単なる「懸念」に過ぎない。要するに「事実として」TPP発効以降今まで品質で勝負できてたんでしょ?で、米国とは品質的により競合する?でも同じ記事の中で別の畜産会社の社長は

> 「国産牛はおいしいし、安心、安全でそれを選ぶ消費者もいるかもしれ
> ないが、(中略)米国産牛肉は圧倒的に安いから、それがいいという人
> たちもいる」

て言ってますぜ。「それがいいという人たちもいる」って、そりゃ消費者も様々ですからね。全然「和牛の終わり」なんて状況じゃない。何だ。本当は自信があるんじゃないの、と思わせる発言です。要するに記者が不安の声を無理やり引き出した感が強いのですよね。
 さて、こんな下衆なマスコミの主観的記事などいくら読んでも仕方ないので農水省自身の公式ウェブサイトを見てみましょう。そこには次のように、今回の日米貿易協定の農業部門の成果がファクトとして淡々と報告されています↓
「日米貿易協定」の最終合意について
http://www.maff.go.jp/j/press/kokusai/kokusei/190926.html

> 最終合意においては、農林水産品に係る日本側の関税について、TPPの範
> 囲内とすることができました。

> 我が国の国民の主食であるについて、関税削減・撤廃等からの「除外」
> を確保しました。また、脱脂粉乳・バターなど、TPPでTPPワイドの関税
> 割当枠が設定された品目について、新たな米国枠を一切認めませんでし
> た。さらに、牛肉について、TPPと同内容の関税削減とし、2020年度の
> ーフガードの発動基準数量を、昨年度の米国からの輸入実績より低い水
> 準としました。
> これらのほか、輸入実績がない品目、TPPで関税削減・撤廃した木材・水
> 産品全てを「除外」としました。

> 今後の農林水産業の発展にとって重要な輸出の促進についても、意義あ
> る成果を獲得することができました。まず、牛肉について、現行の日本
> 枠200トンと複数国枠を合体し、複数国枠65,005トンへのアクセスを確保
> しました。また、醤油、長いも、柿、切り花などで関税撤廃・削減を獲
> 得しました。

 何だ。しっかり守るべきものは守ってるじゃないの。それから肝心なことですが、マスコミは日米間の通商交渉になると、「農業で米国の言い分を聴く代わりに製造業で日本の主張を通す」ようなバーターをしている、というイメージで語りますが、農業は農業で閉じていることを無視している。上で、最後の段落では「日本の農業の輸出」についての成果も掲げています。先ほどの記事では日本の畜産農家が輸入にやられる話ばかり取り上げていましたが、逆に日本から牛肉を輸出していることには頬かむり。日本からの輸出枠を広げることにも成功してるではないですか。
 ところで、「あれれ、例のトウモロコシの話はどうなったの?」と思う人がいるかもしれませんが、その件も含めて例の高橋洋一さんですが、今回の協定の成果について簡単に論評しているサイトがあります↓

日米貿易交渉~メディア報道とは違うその内容
http://www.1242.com/lf/articles/202209/?cat=politics_economy&pg=cozy

> 高橋)いろいろなニュースで日本が譲ったものが多いと言いますが、そ
> うではありません。過去の日米貿易交渉のなかで、最も楽だったと思い
> ます。

> 飯田)最も楽だった?

> 高橋)何もやっていないのですから。はっきり言えばTPPで終わりですよ。
> 甘利さんは苦労しましたが、その後の茂木さんはサッとやってしまいま
> した。あるのは自動車関税だけでしょう。これも2.5%になるのはいつか
> という先の話なので、文書にするかどうかという話をしても仕方のない
> ことです。これが争点だと聞いて、こんなものは争点にはならないだろ
> うと思いました。逆に言えば、これくらいしか話題がなかったというこ
> とです。

といきなりブチかましています。で、例のトウモロコシについては

> 高橋)つまらない話をしていると思いました。これくらいしか話すこと
> がなく、あとは関係のないトウモロコシを買うことで終わったでしょう。
> あれは誰が買うのかわからないのですよ。政府が買うか誰が買うか、は
> っきりしていません。

> 飯田)買主の主体などもまだ。

> 高橋)ふわふわとした話でしょう。

> 飯田)もともとは、トランプ大統領のツイッターから始まった話ですよ
> ね。

> 高橋)日本側からすると、たぶん民間が買うだろうというレベルかもし
> れません。アメリカ側からすれば誰が買うかわからないけれど、安倍総
> 理が買うと言っているという話です。

> 飯田)アメリカ側からしてみれば、その辺はあとで上手くやってくれと
> いう。

> 高橋)リップサービスで、買わなくても何の問題もないレベルですよ。

> 飯田)確かに、正式に文書を交わしたものではないですよね。

 正式に文書にしたものじゃないんだったら、農水省のページで報告されてないのもアタリマエですね。
 さて、冒頭の引用にもある、例の自動車関税の話ですが

> 飯田)【前略】自動車に関しても2.5%の関税を撤廃、もともとのTPPで
> もかなり先ですよね。10年や20年くらい。

> 高橋)すごく先ですよ。細かい協定を決めたところで話を書くかという
> レベルです。書いても書かなくても、どちらでも関係ありません。

 そもそも日本の輸出企業にとって、関税も円高も同じ影響しかありません。自動車関税の2.5%など、民主党政権時の70円代の超円高時の為替の変動幅に比べたら誤差みたいなもの。こんな関税率の撤廃云々なんてシンボリックな意味しかありません。
 というわけで、とにかく「日米貿易交渉」で読者の関心を引き付けるためにはセンセーショナルなネタが欲しいだけのマスコミの印象操作に染まるのは全く愚かなことです。

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