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mespesadoさんによる経済談義(103)【シリーズ:検証!消費税⑩】 [mespesadoさんによる1億人のための経済講]

米国の付加価値税批判から、米国の国内事情が浮かび上がります。《米国の場合、自国の製造業の輸出が振るわないのは品質が外国より劣るせいだから、自国で付加価値税を導入して輸出企業に事実上の補助金を出したって輸出が増えないことは、政治家は内心ではわかっているので、欧州各国のような方針は取れない。そこで付加価値税を非難する方針を採用することにした。》

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855:mespesado:2019/07/02 (Tue) 23:23:36

>>852
【シリーズ:検証!消費税⑩】

 前回、米国の実際の主張は「輸出業者が仕入れ業者に消費税分を負けさせているからそれでも全額消費税分を還付するなら事実上の補助金だ」というものだった、と述べました。
 そして、それなら米国の言っていることはウソではない、と言いました。ですが、それでもやはり疑問は残ります。
 というのは、「事業者が仕入れ業者に消費税分を負けさせる」という行為は、なにも輸出業者に限った話ではないはずです。国内向け製品を作っている事業所だって同じことをしていておかしくありません。
 すると、国内向け製品を作る事業所の場合、「輸出還付金」はありませんが、「事業者が仕入れ業者に消費税分を負けさせ」た場合、やはり負けさせた消費税分だけ得をしていることになりますよね?
 なぜなら、国内向け製品を作っている事業所に対しては、課税前価格をP 、課税前仕入れ費を C 、付加価値税率を α とすると、

 T = α × P - α × C

の付加価値税が、輸出業者の場合

 T' = - α × C

の付加価値税(マイナスだから実は還付)がかかります。
 で、国内向けの業者が仕入れ業者に消費税分、すなわち α × C を負けさせた場合、付加価値税課税前の収益は

 D = ( 1 + α ) × P - C

となり、輸出業者が同じことをした場合の付加価値税還付前の収益は、課税ナシ販売価格を P' として

 D' = P' - C

となるので、国内向け業者の付加価値税課税後の収益は

 D - T = P - ( 1 - α ) × C

となり、輸出業者の場合は

 D' - T' = P' - ( 1 - α ) × C

となるので、「課税前価格を国内と輸出で同額にする」という、通常の比較のもとでは、P = P' ですから、国内向けでも輸出でも収益は変わらないことになります。
 つまり、仕入れ業者イジメが仮に存在したとしても、それを「輸出業者に対する」補助金だというのはオカシイでしょ、そうじゃなくて「下請けいじめ業者」への「補助金」というべきでしょ、ということです。
 こうしてみると、米国の「本当の」主張も、実は「輸出業者にかこつけた付加価値税への批判」としては妥当なものではなかった、ということになります。
 では、なぜ米国は、このようなスジ悪な理屈で付加価値税を批判しなければならなかったのでしょうか?
 思うに、これは米国固有の事情が関係していると思うのです。
 米国はドイツや日本の高性能製品の人気に押しやられ、米国内の製造業が衰退していきます。その結果、工業製品では米国は輸入超過、逆に輸出は振るわなくなります。そんなときに、欧州ではフランスが付加価値税を導入することになり、そうなると、フランスは輸入品にも付加価値税を乗せて国内で販売しますから、これはちょうど付加価値税の税率分だけ「関税」を掛けたのと同じことになります。
 すると、米国の政治家は、自国の選挙民に対して受けの良いことを言うために、「フランスは付加価値税を導入することによって事実上の関税をかけようとしている!」としてこれを非難します。欧州のドイツなどの場合だと、自国の製造業に自信がありますから、フランスを非難するかわりに自国もちゃっかり輸出業者に事実上補助金を出せて都合がいいというので、フランスの動きに便乗して付加価値税を導入する方に舵を切ります。
 ところが米国の場合、自国の製造業の輸出が振るわないのは品質が外国より劣るせいだから、自国で付加価値税を導入して輸出企業に事実上の補助金を出したって輸出が増えないことは、政治家は内心ではわかっているので、欧州各国のような方針は取れない。そこで付加価値税を非難する方針を採用することにした。この段階で米国が採用した批判の理由が「付加価値税は、実態が直接税だからGATT違反である!」というもの。
 しかし、これはフランスの屁理屈により神学論争に持ち込まれて失敗。 そこで米国が次に考えたのが、「輸出還付金」が「仕入業者イジメ」の場合に事実上の「補助金」になる、という、冷静に考えれば筋の悪い批判だったのではないでしょうか。とにかく米国は、一度付加価値税を批判した手前、自ら付加価値税を導入することは最早できない。しかし欧州諸国が付加価値税を導入して事実上の輸出奨励金を出して米国に輸出攻勢をかけられたのでは、ただでさえ貿易赤字が膨らんでいる傾向に輪をかけるので、たまったものではない。それで筋が悪いとは知りながら、「輸出還付金」にかこつけて付加価値税を批判する道を選んだのではないでしょうか。
 このように考えると、米国だけが付加価値税を自国に導入せず、外国の付加価値税に批判し続ける理由も筋が通ります。別に、米国は国益に無関係に「正義のヒーロー」を演じているわけではないのです。       (続く) 

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omachi

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内部メールには、「私たちの闘いは摂理ビジネス」「教区長も参加」「国家復帰」「氏族メシア」などの教団用語とともに
「いよいよWAQUA田代島プロジェクト発会式」
「佐藤議員は日本の島防衛の担当者」「自衛隊を支えている特定の愛国者をつかんでいく」
「日本の真の海洋再生(日本復帰)をめざし政府と一体化」
と佐藤正久議員を招聘した意図が書かれていた。  ナチスクリニック

~ 安倍首相側近らが続々と統一教会詣での怪 ~
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~ 安倍首相の池沼答弁が「ご飯論法」と命名され、ネット上で話題に ~

         __________
   y.enjoy.m  竹下陽亮_03-5224-1852_STAFFSERVICE
by ~ ご飯論法 安倍 ~ (2019-07-04 20:47) 

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