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mespesadoさんによる経済談義(97)【シリーズ:検証!消費税①②】 [mespesadoさんによる1億人のための経済講]

前回、「消費税」についての議論、私なりの納得を、
①消費税に関する納税義務は消費者ではなく事業者にある。(間接税ではなく直接税である。)
②商店における「外税」は法的には税金ではない。単なる便乗値上げである。
③「消費納税額 = ( 年間売上高 × 8% ) - ( 年間仕入高等 × 8% ) 」と考えるのではなく「消費納税額 = ( 利益 × 8% ) + ( 従業員給与 × 8% )」と考えるべきである。
④消費税とは赤字の企業からも税金が取れる仕組みである。
⑤輸出企業に輸出還付金を与えるために考えられた仕組みでもある。
⑥もともと消費税の導入が消費者を騙すアコギな動機に基づく税なので、このまま行くと制度の矛盾が噴き出して、何かが起きる。

と書きましたが、⑤については、「輸出還付金が実は輸出業者への補助金なんかになってない」という反論もあるということで、それをめぐる詳論です。

*   *   *   *   *

781:mespesado:2019/06/25 (Tue) 22:24:45

【シリーズ:検証!消費税①】
 湖東京至さんの消費税の話。意外にややこしいので、今の消費税の何が本当に問題なのかをきちんと理解するのは実は難しいのです。
 ためしに湖東さんの話に批判的な人を探すと、次のような人がいました↓

https://twitter.com/orthodoxygkc/status/1142940893692882944

orthodoxy@orthodoxygkc
> 輸出還付金も同じ

> 企業は仕入れ時に消費税を仕入れ先に払っているため、消費者から回収
> できない分を還付されるだけ
> プラマイゼロ

> 還付金は輸出に対するボーナスにはならない

 この人は湖東さんが言うところの輸出還付金が実は輸出業者への補助金なんかになってない、と主張しているわけですが、それを具体的に説明すると次のようになります。
 消費税率を α とすると、事業者にかかる消費税(付加価値税)は、次の算式に拠ります:

 消費納税額 = ( 年間売上高 × α ) - ( 年間仕入高等 × α )

 ところで、この事業者の税込み売上高から年間税込み仕入れ高を差し引いた額(すなわち従業員の給与プラス利益)は、

 年間売上高 × ( 1 + α ) - 年間仕入高 × ( 1 + α )

となります。従って、ここから消費納税額を差し引くと、α が掛かった項はちょうどキャンセルされるので、

 年間売上高 - 年間仕入高

という単純な式となり、あたかも消費税が無かった場合と同じになります。
 これは「消費税の負担者は最終消費者である」という立場からすると当たり前の話で、事業者は消費者の払うべき消費税の支払いを代行しただけなんだから税負担が発生するはずがない、という理屈と整合性が取れています。
 さて、以上は国内に販売した場合です。次に、国外に輸出した場合を考えます。この場合の消費納税額は、最初の式の右辺の初めの α は最終購入者にかかる消費税を表しているので、輸出の場合は外国人が購入するので消費税負担は免除する、という趣旨から、

 消費納税額 = ( 年間売上高 × 0 ) - ( 年間仕入高等 × α )

 すなわち

 消費納税額 = - ( 年間仕入高等 × α )

と定められています。これは納税額にマイナスの符号が付くので、逆に事業者に額「年間仕入高等 × α」を還付する、という意味になります。これがいわゆる「輸出還付金」です。さて、この場合の事業者の税込み売上高から年間税込み仕入れ高を差し引いた額(すなわち従業員の給与プラス利益)を計算すると、今度は輸出時に消費税が上乗せされませんから、

 年間売上高 - 年間仕入高 × ( 1 + α )

となります。そこで先ほどと同様に、ここから消費納税額を差し引くと、マイナスを差し引くとブラスになるので、やはり α を含んだ項はキャンセルされ、

 年間売上高 - 年間仕入高

となり、これは国内で販売した場合と同じになります。
 あれれ?事業者は輸出で全然得してないじゃないか?
 というわけで、上記の orthodoxy さんの主張は正しいように見えます。
 つまり税金を払うどころか還付されるから一見得するように見えただけで、実際に利益も込みできちんと計算すると、プラスマイナスがキャンセルされて、実は得してないんだ!というわけですね。
 一見すると、数式で確かめたんだからこの事実は間違いないように見えますし、湖東さんは何か錯覚してるんじゃないか、と思いたくなりますよね?
 でも、それ、実は議論が表面的なんですね。一見尤もらしいし、なにせこの税法を発案したフランス人が時の欧州や米国の批判者を説得できたくらいなんですから、そう簡単にボロは出ません。
 次回はこの当然と思える反論に、ある観点から疑いを持った人のブログ記事を紹介します。 (続く)


792:mespesado:2019/06/26 (Wed) 22:54:53

>>781
【シリーズ:検証!消費税②】
 さて、前回解説した orthodoxy さんによる反論を具体的な例で計算して示したサイト↓

「輸出戻し税」という嘘を計算で説明します
https://note.mu/twitthal/n/nf9f1ac140dae
に対して、それに再反論する形で疑問を提示したサイト↓


『「輸出戻し税」という嘘を計算で・・』というゴマカシ
https://note.mu/aka10ao/n/nd033a705f479
消費税の「輸出戻し税」は輸出企業への事実上の補助金ですよね!
https://note.mu/aka10ao/n/n5b7302c8e171

があります。
 後者の再反論というのは、別に最初のサイトに計算ミスがあると主張しているわけではありません。そうではなくて、事業者の販売物が「非課税」の場合には仕入れに対する消費税の控除は受けられないのに、「輸出免税」の場合は仕入れに対する消費税の控除が受けられる、ということになっているのは制度上不整合で、これは輸出企業への優遇措置ではないか、というものです。
 ちょっとややこしくて何を言っているのか分からないかもしれませんので、そもそもこの消費税の仕組みから改めて説明したいと思います。
 ある消費者向けの商品・サービスを考えたとき、これを購入した消費者に購入価格の一定割合で税金を取りたかったとします。この場合、消費者が一々税務署に出向いてその税金を納めるということにしたのでは、消費者の手間が大変なうえ、脱税を防ぐことが困難で現実的ではありません。
 そこで、消費者が税務署で税金を納める代わりに税金分を商品に転嫁して支払ってもらい、販売事業者が代行してまとめて税務署に支払う、という方法があります。この方式を「売上税」というのですが、消費者 a が最後に購入する製品を事業者 b が製造するのに別の事業者 c が製造した製品を使用する、…という場合、最終製品だけでなく、途中に製造される製品にすべて税金を課したのでは税金の多重取りになってしまいます。
 それを防ぐには、各製品に対して、それが別の製品を作るのに用いられた場合は非課税に、そうでない場合には課税対象にする、というややこしい仕分けをしなければなりません。この手間を避けるために考案されたのが「消費税」、欧州では「付加価値税」と呼ばれているものです。
 それは、各製品にいちいち課税対象か非課税かという仕分けをするのではなく、一旦すべて課税対象としたうえで、他の製品の製造に用いられる場合には、その製品に掛かった税金を控除する、というものです。
 この方法だと、消費者に渡る最終製品を作った事業者を添え字 a で表し、その製品の製造に必要な製品の仕入れ先の事業者を添え字 b で表し、その製品の製造に必要な製品の仕入れ先の事業者を添え字 c で表し、…とすると、「年間仕入高等a」は a が b から購入した製品の価格ですから「年間売上高b」に等しいので、

 消費納税額a = ( 年間売上高a × α ) - ( 年間売上高b × α )
 消費納税額b = ( 年間売上高b × α ) - ( 年間売上高c × α )
 消費納税額c = ( 年間売上高c × α ) - ( 年間売上高d × α )
               ………
 消費納税額y = ( 年間売上高y × α ) - ( 年間売上高z × α )
 消費納税額z = ( 年間売上高z × α )

となります。この最後の z は仕入れナシ、つまり無から付加価値を作った事業者を表します。すると、この消費納税額を a の分から z の分まですべて加えると、右辺は一番最初の ( 年間売上高a × α ) を除いてプラスの項とマイナスの項がすべてキャンセルされて、

 消費納税額の合計 = 年間売上高a × α

となります。つまり、税務署にとっては、すべての税金を足し合わせると、最終消費者が購入した製品の代金である「年間売上高a」に税率 α を乗じた金額を手に入れることができる、というわけです。これだと一々他の商品の製造に使われたかどうかを調べなくて済むため手間もかからず脱税も防げる非常にうまい方法なわけです。
 さて、問題は、消費者に渡る最後の製品、すなわち事業者a が製造した製品が「非課税品」に該当する場合です。この場合は、この商品が課税するような商品・サービスに当たらない、ということですから、この業者a の製造行為は、この税の観点からは「商品・サービスの製造行為とは見做さない」ということですから、この場合の最終製品というのは、事業者b が作った製品、すなわち事業者a が“部品”として使用した製品ということになり、税金は、この事業者b が作った製品に掛かるということになります。つまりこの場合の納税額の合計は、

 消費納税額の合計 = 年間売上高b × α

となっていなければなりません。そのためには先述の数式の羅列において、一番上の「消費納税額a」だけ

 消費納税額a = 0

に変更し、消費納税額b ~ 消費納税額z は先述の式のままとすればよいことがわかります↓

 消費納税額a = 0
 消費納税額b = ( 年間売上高b × α ) - ( 年間売上高c × α )
 消費納税額c = ( 年間売上高c × α ) - ( 年間売上高d × α )
               ………
 消費納税額y = ( 年間売上高y × α ) - ( 年間売上高z × α )
 消費納税額z = ( 年間売上高z × α )
-----------------------------------------------------------------
 消費納税額計 = 年間売上高b × α

 つまり、事業者a の製造した最終製品が「非課税」の場合は、事業者a の支払う税金は 0 になります。ところが前回示したように、事業者a の製造した最終製品が「輸出免税」の場合は、事業者a は税金がゼロになるどころか逆に「年間売上高b × α」の「還付金」が貰えるのです!
 これは、「非課税」と「輸出免税」で言葉が違うだけで、実体は同じなのに課税額が違うのは不公平じゃないか!というわけですね。
 以上が冒頭で2番目と3番目にリンクを貼った先の筆者が主張していることなのです。
 なるほど、一理あります。ですが、冷静に考えると、その考え方が絶対正しいか、というと疑問があります。
 なるほど、「輸出免税」というのは「非課税」と同じく税金が掛かりません。しかし、これは本来なら税金が掛かるはずなのに、消費者が外国に住んでいる人になってしまうために、徴税権が及ばず、税金を課すことができないというだけの話で、もしその外国で独自に消費に対する税金が掛かっていれば、その外国の税率で課税されるはずのものです。ですから、事業者a が輸出業者の場合は、課税対象となる最終製品はやはり「事業者a」が製造した製品であり、それに対する税金は、その製品を購入した「外国人」が負担すべきなのだけれど、外国に住む人に対して徴税権を及ぼすことができないから、やむを得ず免税にしている、というだけですから、この輸出に対する税金を免除するということは、

 消費納税額の合計 = 0

とせざるを得ない、ということになるわけです。つまり、本来なら「年間売上高a × α」が欲しい税金なのだけれど、外国には徴税権が及ばないからやむを得ず 0 にしている、というだけなのですから、そのいずれでもない中途半端な金額である「年間売上高b × α」には税として何の根拠もない数字なわけです。そして、「消費納税額計 = 0」となるためには、前稿で解説したように、「消費納税額a」を

 消費納税額a = - ( 年間売上高b × α )

に変更しなければならない。そして実際こう変更すれば、全部足し合わせたとき

 消費納税額a =            - ( 年間売上高b × α )
 消費納税額b = ( 年間売上高b × α ) - ( 年間売上高c × α )
 消費納税額c = ( 年間売上高c × α ) - ( 年間売上高d × α )
               ………
 消費納税額y = ( 年間売上高y × α ) - ( 年間売上高z × α )
 消費納税額z = ( 年間売上高z × α )
-----------------------------------------------------------------
 消費納税額計 = 0

となるから問題ないでしょ、というわけですね。
 こうしてみると、一見尤もらしい再反論だったけれど、説得力はイマイチと言わざるを得ません。では orthodoxy さんの主張の方がやはり正当なのでしょうか?
 実は、ここから先の議論は、与えられた消費税の定義をいくら解釈し直したり数式だけ弄ったりしても出てこない、もっと根源的な問題に踏み込む必要があるのです。次回はその前段となる直接税と間接税の定義や、消費税が税法上どのように規定されているのか、という話に踏み込むことにします。      (続く)

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