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mespesadoさんのによる1億人のための経済談義(79)計量経済学批判 [mespesadoさんによる1億人のための経済講]

計量経済学批判:定性的に間違った仮定の下で作られた計量モデルでいくら厳密に定量的な議論をしたってマチガイはマチガイ》計量経済学は、経済理論の導出や活用に使うのではなく、潜在GDPとか全要素生産性のような経済指標を計算するためだけに使えばいい》

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610mespesado:2019/06/04 (Tue) 21:55:22

MMTは論理的に破綻…それを攻撃して消費増税強行に世論誘導する財務省は悪質
https://biz-journal.jp/2019/06/post_28182.html


 ↑反緊縮派ではあるけれどリフレ派の経済学者の田中秀臣さんの記事です。この人も「MMTはモデルを提示しないからイカン」と、高橋洋一さんと同じことを言ってますが、誰かがツイッターで言っていたけれども

# 定性的に間違った仮定の下で作られた計量モデルでいくら厳密に定量的
# な議論をしたってマチガイはマチガイ

なんですよね。
 以下、あまり建設的な議論にならないのですが、この記事に対してコメントしていきたいと思います。

>  だがMMTと、彼ら欧米の経済学者やリフレ派には違う点がある。ひとつ
> は、MMTには理論的な基礎がはっきりしない点がある。いくつかの断片的
> な言い切りや拡張的な財政のスタンスのみが強調されていて、実際に日
> 本でのその同調者たちを含めてMMT側から具体的な理論モデルが提起され
> ていない。

 理論モデルも何も、MMTって管理貨幣制度における通貨の性質を「事実」として述べただけなんですから、理論モデルもへったくれもないんですけどね。だから、私はこういうリフレ派の人の発言の真意が不明だったのですが、どうやら彼らは次のようなことを主張したいようなんですね。
 この記事の最後の方でも出てきますが、彼らは従来の計量経済学のマンデル=フレミング・モデルというのを持ち出して、その帰結として、変動相場制の場合は金融政策は有効だが財政出動は無効になる、ということを主張しているわけですが、MMTでは金融緩和は効果が無く、財政出動は効果がある、という彼らとは反対の結論を導くので、「じゃあお前らはどういうモデルで考えてるんだ!そのモデルを言え!」ということなんだと思います。
 さて、この話は最後の方で考えることにして記事の方を先に進めます。
 氏はMMTの特徴なるものを箇条書きで述べます:

>(1)経済全体でみると政府の財政赤字は、同時に民間の資産増である。
> 民間は政府の借金である国債を購入し、国債を自分たちの財産として保
> 有している。これは政府を通じて、特に不況期には、民間の所得が増え
> ることを意味している。反対に、不況のときに政府が財政黒字になって
> しまうと、それは民間の使えるお金が減ることを意味するだろう。

>(2)私たちの家計や企業は、もちろん赤字を重ねていけばやがて破産の
> ピンチに陥る。ところがMMTによれば、政府には破産はない。なぜならど
> んなに借金をしていても、その借金を帳消しにできる権利を持っている
> からだ。それを「通貨発行権」という。

 この人は、管理貨幣制度における単なる事実をわざわざ「MMTによれば」などと言っています。つまりリフレ派の人は国の会計を家計や企業と同じく赤字を重ねると破産する、と考えているわけですね。つまり国には「通貨発行権」など無いと考えているわけですかね?

>(3)MMTの独創的なところは、税金を利用した物価のコントロールにあ
> る。たとえば、経済がデフレ(物価が持続的に下落する現象)であれば、
> どんどん減税したり公共事業を増やしてでも経済を拡大していく。やが
> て経済が改善し、インフレ(物価の継続的上昇)が起これば、今度は増
> 税して経済を抑制する。増税すれば、私たちの消費や投資が減少するの
> で経済活動が弱まり、それで平均的な財やサービスがそれほど購入でき
> なくなるために、平均的な財とサービスの価格もまた低下する。モノや
> サービスは貨幣と交換される。つまり財やサービスの価格と貨幣の価格
> は反対の方向に向かう。貨幣の価格(通貨価値)をデフレでもインフレ
> でもない安定なものにするのに、税金を課すことが大きな意味をもつ。

 貨幣は国が発行している以上、国に入って来る貨幣は自分の発行した貨幣の回収ですから(←事実!)、確かに税金を使って貨幣の流通量をコントロールできますから、物価のコントロールができそうなことは確かですね。ここまでは単なる事実ですから別にMMTの独創的なところでも何でもないと思いますが。単に従来派の人達が、管理貨幣制度に移っても、税金を国家の収入だと勘違いしていた、というだけのことでしょう?

>(4)先ほどの子ども銀行の例ではないが、政府は自ら紙幣を刷ることに
> よって財政上の必要を積極的に満たすことができる。これを「財政ファ
> イナンス」という。通常は、各国には中央銀行が存在している。政府は
> 教育、社会保障、防衛、インフラ整備などでさまざまな分野にお金が必
> 要だ。お金の調達は国民などからの税収と国債で行われる。政府の国債
> はマーケットを通じて、民間の金融機関などが購入する。

> 言い換えれば、政府は自分でお金を直接印刷して配ることはしていない。
> 中央銀行(日本では日本銀行)から、民間マーケットを経由して、国債
> の見返りにお金を得ているともいえる。だがMMTではそのようなことは特
> に重要ではない、むしろ政府が直接にお金を刷ることである「財政ファ
> イナンス」が推奨されている。

 ここまで読んで、従来派が何を言おうとしているかわかりました。
 確かに政府は「日本銀行券」の発行権を持っていないから、そういう意味で「政府には通貨発行権は無い」。だから、従来派では、政府も家計や企業と同様に通貨発行権が無い以上、赤字を重ねると破綻すると考えている、というわけです。これで先ほどの疑問は解消しました。
 ところが上の (4) で述べられているのは、国債の日銀直接引き受けが事実上政府による通貨発行と同じことになるので、MMTでは政府が通貨発行権を持つと見做しているのだ、ということを言っているわけですね。
 で、だから何?なんですが、氏は、次の“「財政ファイナンス」の間違いは、すでに証明”という節で次のように述べます:

> 私はこのMMTの内容を最初に聞いたときに、各論では賛同できる点もある
> が、むしろ全体をみると支離滅裂な経済政策を生み出す可能性がある、
> と全面的に否定した。政府が税金の上げ下げによって物価をコントロー
> ルすることは、政府の機能からいって実践的に困難であるからだ。

 出ました!藁人形論法
 MMTでは「税金の役割には政府の財源という役割は無く、物価をコントロールするために使うことはできる」と主張しているだけで、「物価のコントロールはすべて税金でやらなければならない」なんて主張してません。 なので、この節の残りの部分は勝手に作ったニセ主張を攻撃しているだけなので批判として意味がありません。
 次に“IS-LM分析”の節です。

> その点は経済学者たちの何人かが指摘している「IS曲線の垂直化」とし
> て解説が可能である。経済全体をとらえる視点はマクロ経済学だが、そ
> の中核にIS-LM分析がある。IS曲線は、経済全体の財やサービスの市場の
> 様子を示す曲線だ。またLMは経済全体の金融面を示す曲線である。経済
> 全体の均衡はこのISとLMがクロスするところで決まっている。

 出ました!このIS-LM分析というのが、従来派の人達の理論の「モデル」の例なんですが、下の方に出てくるグラフがそのIS曲線とLM曲線です。
 このIS曲線の方が、金利を上げると企業貸し付けを抑える方向に働くから景気の過熱を鎮めるのでGDPが下がり、逆に金利を下げると企業貸し付けを奨励する方向に働くから景気が良くなってGDPが上がる、ということを示しています。
 一方のLM曲線の方は、金融政策において貨幣の流通量を一定にしてインフレやデフレを防ごうと思ったら、GDPが増加、すなわち景気が良くなったら金利を上げて景気をクールダウンさせ、逆にGDPが減少、すなわち景気が悪くなったら金利を下げて景気をヒートアップさせる必要があることを示しています。
 それで、IS曲線とLM曲線の交点が現実の経済状況として実現する、というモデルなわけです。
 で、従来派の主張ではIS曲線は、図の IS(G,T,π) と書いてある曲線と、IS2(G2,T,π2) と書いてある曲線が示すように、右下がりの曲線になっていて、GDPを上げたければ名目金利を下げればよく、しかし金利がゼロになった時のGDPでもまだ物足りないなら、政府支出を増やして曲線そのものを IS から IS2 にシフトさせる必要がある、ということを解説しているわけです。
 で、これに対してMMTでは「金利政策には意味が無い」と主張しているので、これは IS曲線が名目金利を変化させても景気、すなわちGDPは変化しない、と主張しているわけだから、IS曲線は垂直な線、すなわち赤い線になると主張していることになる。 で?ということで氏によれば、

> そのためMMTは、リフレ派などに比べて、財政政策に過度に依存すること
> になる。ときには「財政支出を5000兆円にしても今は大丈夫」という極
> 端な発言にもなるのは、この理論的な背景によるのだろう。ただしMMT側
> は、冒頭にも書いたが、特に日本の論者たちは理論モデルを提示してい
> ない。

という結論になる、というのです。
 氏が何を問題にしているのかはっきりしないのですが、多分氏が言っているのは次のようなことだと思われます。
 IS-LM曲線によれば、金利政策によるGDPのコントロールは曲線の形状が定まれば最適な金利が判明する。しかし政府支出を変化させるとIS曲線そのものがシフトしてしまうが、どれだけ財政出動するとどれだけシフトするのかを知るモデル(数式)が与えられていない。
 従来説だとマンデル=フレミング・モデルが主張するように、変動相場制では財政出動は無効で金融政策が有効だから金融政策だけすればよいので、IS曲線をシフトさせる必要が無いから、このIS-LM曲線だけで最適な金利が求められるが、MMTが主張するように金融政策が無効で財政出動だけが有効だと言うなら、財政出動しか無いから、IS曲線のシフトと財政出動の関係を明確にしないと最適な財政出動額が求められないじゃないか、と言いたいのでしょう。
 しかし、そもそも最適な値を数式で求める必要があるのでしょうか?MMT論者は、どれだけ財政出動すればいいかという問について、少しずつ財政出動を増やしながら現実のインフレ動向を伺い、一定の金利に達したら財政出動をやめる、という方法を提言しているのです。実用上はそれで全く構わないはずです。
 それを、予め数式モデルを作って、その方程式を求めてからその解に従って政策に反映させるべきだ、なんて考え方は、数式オタクの趣味の世界ならそうすることに意味があるのかもしれませんが、経済学を現実に応用するのには要らぬ条件でしょう。
 それに、このIS-LMモデルはそもそも考え方自体が間違っています。なぜなら、単純に金利を上げればGDPが下がり、金利を下げればGDPが上がる、ということをこのIS-LMモデルは示していますが、金利を上げればGDPは下がるけれども金利を下げてもGDPは上がらない(例の紐を引っ張れば手繰り寄せられるが紐を緩めても遠ざけられない、の例)という風に、金利の上下に対して非対称な動きをすることが現実の世界ではあるわけで、ISの関係を一本の曲線で表すこと自体が不適切で、履歴を考慮しなければならない(ちょうど強磁性体のヒステリシス曲線のような感じ)わけで、そういう意味で従来説のモデルだって現実を表してないわけです。
 こうして見ると、もう経済理論を数式によるモデルで考えること自体が不適切だと思えるわけです。計量経済学は、経済理論の導出や活用に使うのではなく、潜在GDPとか全要素生産性のような経済指標を計算するためだけに使えばいいと思うのです。

611:mespesado: 2019/06/05 (Wed) 06:47:02


 リフレ派とMMT派の違いを簡単に言うと、
● リフレ派 = 中央銀行を作り、政府から紙幣発行権を奪ったのは、インフレを防ぐためなんだから、この制度を尊重しよう
● MMT派 = 供給力の向上でインフレよりデフレを心配しなきゃならなくなったんだから、財政ファイナンスで事実上政府が通貨発行権を持つことをジャンジャン利用しよう

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