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mespesadoさんによる1億人のための経済談義(69)結城豊太郎をどう評価するか(3) [mespesadoさんによる1億人のための経済講]

結城豊太郎学生当時.jpg書斎の結城豊太郎.jpg

結城豊太郎書.jpg雲井龍雄は自由民権運動の中で賞揚されたことで後世に名を遺すことになった。では、雲井龍雄が生きていたら、自由民権運動に身を投じていただろうか。宮島誠一郎は「自由民権運動を蛇蝎の如く忌み嫌った」という、むしろその思いに近かったかもしれない(「置賜発アジア主義」)。mespesadoさんの前回記事で、その雲井龍雄を思ったのだが、結城豊太郎が今生きているとして、アベノミクスをどう評価し、また今のデフレに対処するどんな処方箋を書いただろうか。白川方明色紙E799BDE5B79DE6B08FE889B2E7B49914325538702-92b39.jpeg少なくとも、白川方明前日銀総裁とは違っていたにちがいない、それがmespesadoさんによってよくわかった。

*   *   *   *   * 
541:mespesado:2019/05/25 (Sat) 10:52:38

>>539
 白川氏は続いて管理通貨制度について言及します↓

https://oshosina.blog.so-net.ne.jp/2018-10-17-1

>  管理通貨制というのは、お金の量のコントロールを人間自身が自らの
> 合理性に従って行うものです。いわば人知を信用する、人知に賭ける政
> 策です。金本位制と比べると、「人間や社会が合理的に行動する」とい
> う前提が満たされるのであれば明らかに管理通貨制の方が望ましいもの
> です。従って、多くの人が管理通貨制の方が望ましいと言っていますし、
> 私自身もそう考えています。

 管理通貨制度が「人知を信用する、人知に賭ける政策」だというのですが、それは「管理」通貨制度という言葉から見て当たり前です。それより白川氏が「人知に賭ける」ことで本当は何を懸念しているのかを示しているのが次の部分です:

>  こうした大きな流れを振り返ってみますと、私自身は、「時代」ある
> いは「時代の空気」が中央銀行に大きな影響を与えていると感じざるを
> 得ません。国全体として戦争の遂行が国策として決まっている中で、日
> 本銀行だけがそうしたことと全く無関係に超然と金融政策を運営できる
> かと言うと、それはもちろんできないわけです。こう申し上げると、
> 「時代」あるいは「時代の空気」が金融政策を決めていくということに
> なります。

 そしてこう結論付けます↓

> 大勢は世の中の大きな動きで決まってくるかもしれません。しかし、そ
> の中でどういったコースを進むかについては、中央銀行がやはり大きな
> 役割を果たすと、自分自身は信じたいと思っています。

 要するに、白川氏が言いたいことは、管理通貨制度になって、世の中の空気が金融政策を決める傾向が強くなった。それではまずいので、中央銀行が独自に見識を持って金融政策を遂行すべし、ということですよね。
 そして、歴代の日銀総裁を個別に取り上げて、その成果を論評します。
 そんな中で、結城豊太郎については、第二次大戦が近づく中で、臨戦態勢に飲み込まれてしまって、日銀として独自の政策は取り得なかった、として結城豊太郎は悲劇のヒーローの扱いです。また、深井英五副総裁について、

> 深井英五副総裁が関与した日銀引受けは、そのまま大きなインフレの原
> 因になるわけで、深井さんはこのことを明確に自覚し、非常な悔悟の念を
> 持ってこのことをみていました。

と、日銀による国債の直接引受を批判する論調です。しかしこれは当時が供給不足の時代だったからこそ非難される状況になったわけですが、白川さんの講演からは、そこが読み取れません。そして極めつけが、氏がこうした歴史を振り返ってみて、いくつかの教訓があると感じている、として最初に挙げた項目が次のとおりです:

> 第一は、通貨の安定?―一般的に言いますと経済の安定??のためには、や
> はり政治がしっかりとしていないといけないということです。特に、財
> 政バランスが中長期的に維持されるという信認がないと、通貨の安定、
> 経済の安定は最終的には図れないということです。

 ここで「財政バランス」というのは、いくつかの用例で見る限り、「財政収支」あるいは「プライマリーバランス」のことかと思いますが、これこそMMTで否定された、「国の会計を家計と同一視する誤解」に他ならないではありませんか。つまり、中長期的には財政赤字が無いようにする、というのは、金本位制の時代(このときは自動的に収支がバランスする)に戦時だけ例外的に管理通貨制度を採用し、戦争が終わると金本位制に戻したという時代の感覚をそのまま引きずっている、ということですよね?日銀総裁だった白川氏にしてこれです。オカネに対する誤解の根は相当深いと言わねばなりません。そして、こんな「誤れる」プライマリーバランス論で日銀に独自金融政策を遂行されたのではたまったものではありません。
 白川さんは根は善人なんでしょうが、このようなオカネに対する根本を間違えた考え方をしている限りは、やはり金融政策に携わって欲しくなかったなあ、という思いしかなく、酷な言い方ではありますが、せっかく結城豊太郎を正当に評価しているけれども、金融に対する考え方についてはやはり根本に問題があるとしか評価のしようがありません。
 それでは本連載を、現代の財務省OBによるバイアスのかかった高橋是清論へのリンクを貼ることで締めたいと思います↓

アベノミクスの原型・高橋是清の経済政策を顧みる
積極財政の誤解と国債の日銀引き受けから学ぶこと
https://diamond.jp/articles/-/63586

 著者の財務省OBである松元崇さんによると、井上準之助による旧平価による金解禁による超デフレを大規模な財政出動で救ったという印象が強い高橋是清が、実は金融政策の方を重視していて、財政出動は最初だけで、あとは一貫して軍部に対抗して「効率的な金融制度を守るため財政健全化に命を懸けた」というのが実像だ、と述べ、最後の方では

> 世間で滑稽だと言われようとも、部下から「主義として」と言われよ
> うとも、「自分としてはもうこのまま死ぬつもりだ」との覚悟の下、経
> 済成長の基盤である効率的な金融制度を守るために財政健全化に命を懸
> けたのが、高橋是清であった。アベノミクスの是非が問われるようにな
> った今日の財政・金融政策として、高橋是清から学ぶべきことは多いと
> いえよう。

と述べて、安倍政権に対しても、高橋是清と同じように「財政健全化」をよろしく!というトーンで記事を終わっています。
 或る意味天然な白川氏と違って、こちらは「戦時で供給力がギリギリだった時代」と今日の「供給過多でオカネが足りないために不況になっている」という質の違いを無視するのですから、かなり悪質な記事だと思います。
 昔の偉人の業績を詳しく紹介して誤解を解くのは大切ですが、その紹介者自身の思想や思惑で変な方向に誘導されないように、読者はくれぐれも眉に唾を付けて読み込む必要がありますね。(おしまい)

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