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「政府貨幣特権を発動せよ。」(2) [Conganasさん]

前回の結論、安倍首相が閣議を開き額面1000兆円の政府紙幣を1枚作成することにすればそれでいい》、このことの突っ込んだ説明です。

*   *   *   *   *

110:Conganas :
2019/03/04 (Mon) 00:06:30

前回に引き続き、丹羽春喜「政府貨幣特権を発動せよ。」に即して政府紙幣発行政策の検討の第2回めです。

(ここから引用)
 わが国の現行の法令体系にごく素直(すなお)に則って、この「打ち出の小槌」財源を活用しようと思うならば、政府(中央政府)が、必要な所定額(額面金 額の評価で)の「政府紙幣」をも含む「政府貨幣」(それを記念貨幣・記念政府紙幣とすれば、現行法のままでも高額の額面のものになりえる)を、造幣局また は国立印刷局で鋳造あるいは印刷して製造し、それを、前記の「通貨の単位および貨幣の発行等に関する法律」の第4条2項および3項の規定どおりに日銀に交付し、それに相当する金額を、日銀が政府の口座に電子信号で振り込むことにすればよいわけである。

 しかし、その場合でも、日銀に交付された「政府貨幣」(コインあるいは政府紙幣)の全部を、そのまま、社会で流通させなければならないということでは、 必ずしもない。そのような「政府貨幣」のうち、どれだけを実際に社会で流通させることにするかは、あくまでも、日銀の金融政策的な裁量によることになる。 社会での流通を留保されることになった「政府貨幣」の該当部分は、それを日銀が保管するか、あるいは、流動資産として保有することにすればよいわけであ る。そのようなやり方を適当に工夫すれば、政府が「政府貨幣」についての「貨幣発行特権」(セイニャーリッジ権限)という「打ち出の小槌」財源を十分に活用していながらも、しかも、実際には「政府紙幣」そのものは、それを社会でほとんど流通させずにすますこともできることになる。したがって、「政府紙幣」 と「日銀券」という2種類の紙幣の流通が「社会的混乱をもたらすのではないか?」といった通俗的な心配を招かずにすますことも、このような実際のやり方し だいでは、可能になるわけである。
(引用ここまで)
前回の最後に僕が述べたコメントは、上記引用のあとに挿入する予定でしたが不手際で上記引用部分を掲示せずにコメントしてしまいました。重複になりますが、上記引用のあとで入れるべきコメントとして以下に再掲して続けます。

(ここから再掲)
以 上を具体的にイメージすれば安倍首相が閣議を開き額面1000兆円の政府紙幣を1枚作成することにすればそれでいいということです。法案を作成する必要 もなければ議会承認もいりません。閣議決定したら財務大臣が1000兆円紙幣を一枚日銀に持参し、日銀総裁に手渡すだけです。政府紙幣は日銀金庫に保管 し、日銀営業局長に下達して国庫金担当者が政府当座預金口座に1000兆円の残高を端末からインプットすればそれでおしまいです。

政府紙幣を発行すると既存の日銀券とまぎらわしく国民に混乱が起きるという議論をよく聞きますが、高額政府紙幣は市中に流通する一万円札などと金種が重複しないし、第一国民の目に触れることさえないので何ひとつ混乱が起きません。
(再掲ここまで)

(ここから引用)
  とはいえ、この方式では、法的には問題はないとしても、「打ち出の小槌」財源を政府が活用しようとするたびに、そのつど、「政府貨幣」としてのコインある いは政府紙幣を、巨額に鋳造・印刷しなければならず、しかも、日銀券との併行的な流通による社会的混乱を避けるためには、そのように鋳造・印刷されたコイ ンや政府紙幣の大部分が、日銀によって死蔵されねばならないということは、いかにも不器用で無様であり、また、手間もかかりすぎることも否定しえないとこ ろであろう。

  しかし、ちょっと考えれば、すぐに判るように、現在のわが国で、政府がこの「打ち出の小槌」財源を用いようとする場合、現実的には、「コイン形態での政府 貨幣」あるいは「政府紙幣」を実際に巨額に発行する必要は、必ずしもない。つまり、前記の「国(政府)の貨幣発行特権」は、いわば、政府が無限に多く持っ ている一種の無形金融資産であるから、そのうちの、たとえば数十兆円ぶん、あるいは、数百兆円ぶんといった一定額ぶんの「政府貨幣発行の権利」を、政府が日銀に売り、その代価を日銀から政府が受け取る形にすれば、それでよいわけである。

 この方式であれば、「日銀券」とは別個の「政府紙幣」を、わざわざ新たに印刷・発行しはじめるといったことまでやらなくても、よいことになる。このよう なやり方こそが、「打ち出の小槌」財源を活用しようとするさいに政府が採用するべき、現実的には最も簡便でスマートな方策であると、推奨されるべきであろ う。
(引用ここまで)

こ こで丹羽は、政府紙幣をいちいち作成し、それを日銀に持参し、日銀金庫に保管、日銀が政府紙幣を退蔵するという工程は手間がかかりすぎと指摘。「政府の貨 幣発行特権」は政府が持っている無形金融資産とみなすこととし、そのうちの任意ぶんの「政府貨幣発行の権利」を政府が日銀に売り、その代価を日銀から政 府が受け取る形にすればモノとしての政府貨幣の搬送・ひき渡し取引と保管業務の省略と抽象化が可能と述べています。

(ここから引用)
 なにしろ、前述のごとく、現行法では、「日銀券」とは違って、「政府貨幣」は負債として扱われるものではなく、「諸財への請求権証」そのものなのである から、日銀にとっては、その発行権の取得は、超優良資産を 入手しうるということにほかならない。しかも、政府がその発行権の一定額ぶんを日銀に売るにさい して、ある程度の値引きをすることにすれば、日銀は、この「政府貨幣発行権」の所定額ぶんの取得によって、日銀自身の資産内容を大幅に改善することがで き、日銀が債務超過に陥るといった前記の怖れからも脱却することができる。そのことを通じて、そして、わが国の政府財政の脆弱性がこの措置によって払拭さ れるということともあいまって、わが国の金融・信用秩序を安泰・堅固なものにすることにも役立つはずである。つまり、わが国の中央銀行としての日銀の「目的」(日銀法の第1条)にも、よく適うことになるわけである。

  実は、日銀が、「政府貨幣」についての「発行権」の一定額ぶんを政府から購入するといった「特別な業務」を行なうことは、日銀法の第33条および第34条 の規定に定められている「日銀の本来の業務」には含まれてはいない。しかし、同法の第43条の規定に準拠すれば、内閣総理大臣および財務大臣は、このよう な「特別な業務」が中央銀行としての目的達成に必要な業務であるとして、それを日銀が行ないうるように、認可することができるのである。そうしておいたう えで、内閣総理大臣および財務大臣は、このような「特別な業務」を日銀が行なうことになれば、そのことは、とりもなおさず、前記のごとく「わが国の金融・ 信用秩序を安泰・堅固なものとする」ことにも役立つことであると認めて、そのことをも主要な一つの理由として、日銀法の第38条を発動し、日銀が、こ の「政府貨幣発行権の一定額ぶんを政府から購入する」という「特別な業務」を、政府の指示にしたがって実行するようにと、日銀に要望することができること になる。

  その代金の、日銀から政府への支払も、「日銀券」の現金を用いてそれを行なうといったことは不必要で、ただ単に、それだけの金額が記された日銀の保証小切 手が政府の手に渡されるか、あるいは、政府の口座に日銀から電子信号でその金額を振り込むことが行なわれれば、それでよい。したがって、「お札が刷りまく られて社会にあふれ、紙くずの山になってしまう」などと、心配する必要はないわけである。
(引用ここまで)

ここで丹羽は、高度にデリケートな政府と中央銀行との本質的緊張関係を踏まえて、利益相反と対立闘争の歴史を超克し、大人の共存の可能性、未来につながる対処方法を述べています。

政府が銀行(のちの中央銀行)から借金をすることで、その貸出金利が銀行(のちの中央銀行)の利益になってきたことは歴史的事実です。こんにちの日本銀行もまったく同様のビジネスモデルで利益をあげているわけです。

政府紙幣発行は、日本銀行からの借入にはならないから政府負債にならず利払いも償還も不要で国民の負担にもならない素晴らしさがありますが、日本銀行からみれば利益相反=不利益となることはあまりにもあきらかです。

そこで丹羽は政府紙幣のモノ取引からコト取引への抽象化(電子取引化)に際し、省力化分について日銀に(値引きという)ベネフィットを与える知恵を提言 し、それがわが国の金融・信用秩序を安泰・堅固なものにすると述べています。(政府から日銀への政府貨幣発行権の譲渡にともなう代価支払いも電子取引で完結することを詳述しています)  (第2回ここまで。つづく)

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めい

くっきりイメージが浮かぶ、堺のおっさんが描くシナリオです。とりあえずここにメモっておきます。

   *   *   *   *   *

140:堺のおっさん:
2019/03/06 (Wed) 22:36:12

ここのところ、中国を批判する記事を書き続けているが、
けっして中国が嫌いだからではない。
中国ほど、潜在力のある国家は他にないだろう。
しかし、政策を間違えると世界的なバブル崩壊の震源地になりうる。
そして、私には着々とその道に進んでいるように見える。
成長率を下方修正するとかは本質ではない。

かつてリーマンショックに真っ先に対応したのは言うまでもなく中国。
そして真っ先に恢復した。スゴイ対応力であると。
その後も国家主導のバブル政策を継続し、今日に至る。

中国では「国に政策あれば、下に対策あり」と言われる。
国家が国家なら、国民もまた実にしたたかな国民である。
中国の成長企業で巨額の補助金をせしめていない企業はないだろう。
如何に巨額の補助金を引き出すのかこそ「対策」。
この中国型資本主義はこれまた世界でも類例のない実験でもある。
半分は上海閥を手先にネオコンが仕掛けたものでもあるが、
底値でどれくらい買いあさったのか、想像もできない。
今再び国家主導でバブル化し始めている中国は、大変危険な状態でもある。
ウォール街は株だけでも、買いで儲けて最後に売りで儲ける。
日本が20年前にくらったのと同じ道だ。
実は、中国を封じ込めるには軍事力なんかよりも
中国バブルを崩壊させればよい。
問題はその影響をアメリカをはじめ世界がどれくらい受けるのか。
巨大であるだけに中国だけがどん底に突き落とされるということは不可能。
日本のバブル崩壊が日本限定であったのに対して、
世界中が返り血を浴びることとなる。
流れを見誤った金融会社はつぶれるだろう。
この過程はおそらく不可避だと思う。
と同時に、そこから新しい秩序が生まれてくる。
その時こそ、金融も刷新される。

最近取り上げられている政府貨幣などにも出番が来る。
現実に生産を継続し、国民生活を維持するための最高の政策となる。
ウォール街に依存しない国家主導金融のさきがけも
何らかの対価を支払わねば実現していかないのだろう。
そして、どの国家でもできるというものではない。
おそらく実践できるのは、中国、日本、朝鮮くらいのものではないか。
これが実現したときに、世界の覇権はアジアに移る。
政府発行貨幣に対応した生産力や資源を持つからだ。
彼らは、しばらくは余力で命脈を保ち続けるだろうが
こうしてウォール街のドル体制は終わる。
一つのシナリオです。

by めい (2019-03-07 05:02) 

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