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「政府貨幣特権を発動せよ。」(1) [Conganasさん]

2/20、Conganasさんの《「統計偽装問題」であるが、景気状況を示す重要統計について官僚が筆を舐めて調整していたことが次々に明るみに出てきた。》発言に発する議論を追ってメモしてきました。そして今朝読んだのが、安倍首相が閣議を開き額面1000兆円の政府紙幣を1枚作成することにすればそれでいい》。丹羽春善氏については知らないではなかったのですが、財務省洗脳が効いていた時代にはマユツバ感覚が抜けなかったのです。しかしmespesado理論の学習を経た今は、スッと入ってきます。

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98:Conganas :
2019/03/03 (Sun) 00:02:06

政府貨幣特権を発動せよ。.jpg前回予告したとおり丹羽春喜「政府貨幣特権を発動せよ。」という論文に即して政府紙幣発行政策について検討してみたいと思います。

丹羽春喜氏は1930年生まれで2017年に亡くなられています。ケインズ主義経済学者で、60~70年代はソ連の計画経済の研究で数多くの業績を残しました。ソ連崩壊後はケインズ主義の復権を主張。日本の財政政策へは大胆な提言を繰り返しました。

本書「政府貨幣特権を発動せよ。」のサブタイトルは「救国の秘策の提言ー経済再生の唯一の決め手、ケインズ主義の復権ー」です。

その第1章は「救国の秘策」への秘策-政府貨幣と日銀券の本質的な違いに着目せよ! という章見出しがあります。

(ここから引用)
 古来、常に指摘されてきたように、そして、現在でも、経済学や財政学の教科書には必ず明記してあるように、政府の財政収入を得る手段は3つある。
 すなわち、

(1)租税徴収
(2)国債発行
(3)通貨発行

の3つである。
 現在のわが国においては、(1)の租税徴収も(2)の国債発行も、もはや限界に来ているわけであるから、今日の深刻な財政・経済の危機を打開するため財 源調達には、(3)の通貨発行という手段のなんらかのバリエーションを、下記ののごとく工夫するべきだというのが、過去十年以上も繰り返し行なってきた筆者(丹羽)の政策提言の基本ビジョンである。

 単に筆者自身の持論であるというにとどまらず、現在のわが国のように、巨大なデフレ・ギャップが発生していて、経済が停滞と景気悪化に苦しんでいるような時には、増税や国債発行(その市中消化)は民間部門での購買力低下や資金不足をもたらして、経済状況をいっそう悪化させる危険があるわけであるから、それをやってはならない。
(引用ここまで)

冒 頭で丹羽は、現在のようなデフレ・ギャップが発生しているとき(2009年当時からデフレが改善されずに10年経過し、2019年に至るも何も変わらず) に増税や国債発行・市中消化は経済を悪化させるからやってはならないと述べています。にもかかわらず、国債はじゃんじゃん発行し、消費税も増税するという 禁忌への挑戦をやり続けて二極化と人口減少で消費も低迷し、日本経済は活力がありません。

(ここから引用)
 このような状況のときに、内需拡大による景気刺激のための財政政策を発動しようとするさいには、そのための財源調達は、(3)の通貨発行に依拠するべきなのだということこそが、まさに、きわめてオーソドックスに確立されてきた教科書的な経済学上の大原則なのである。

  周知のごとく、わが国の現行法の規定するところによれば、わが国の「通貨」は「政府貨幣」と「日銀券」より成っている。この「政府貨幣」には、金属で鋳造 されたコインだけではなく、「政府が発行する紙幣」すなわち「政府紙幣」も含まれている。また、政府発行の「記念貨幣(記念紙幣)」も「政府貨幣」であ る。

 このように、わが国の「通貨」を構成している「政府貨幣」と「日銀券」のうち、「日銀券」の場合は、言うまでもなく、それを、いくら発行しても、それ自体では、政府の財政収入にはならない。

  仮に、戦前の高橋是清蔵相のときのごとく、新規発行国債の「日銀による直接引き受け」(これは、現在でも、国会の特別決議があれば可能である)が行なわ れたとしても、要するに、それは、政府が日銀からそれだけの額の借金をしたということにすぎないのであるから、政府が「造幣益」という財政収入を得たわけ ではない。しかも、よく知られているように、「銀行券」であるところの「日銀券」の発行額は日銀の負債勘定に計上されるのであるから、日銀にとっても、 「日銀券」の発行ということそれ自体からは「造幣益」は得られない。

 平成10年3月末まで施行されていた旧「日銀法」では、日銀が「日銀券」を発行するときには、担保と見なしうるような所定の金融資産的裏づけを必要とするものと規定されていた。しかし、平成10年4月より施行されている現行の「日銀法」では、「日銀券」の発行には、とくに担保を必要とはしないと いう規定 に改められている。したがって、日銀にとっては負債である「日銀券」が、そのように資産的裏づけ無しのままで、多額に発行されたような場合には、日銀は債 務超過に陥ってしまうことになる。そうなれば、国際的な非難も受け、マスコミなどは大騒ぎをするであろうし、金融政策が姑息なものとなり、その信頼度が低 下することも避けられないところであろう。
(引用ここまで)

ここで丹羽は内需拡大による景気刺激のための財政政策発動のための財源調達は通貨発行に依拠するのが良策と宣言します。

新規発行国債の日銀による直接引き受けは政府が日銀に借金することになり、対価として渡す日銀券の量がかさむと日銀も負債が増大する、さらに日銀券が資産的裏づけなく際限なく発行されればいずれ日銀も債務超過に陥ると述べます。

(ここから引用)
  ところが、「政府貨幣」(コインのほか「政府紙幣。をも含み、また、「記念貨幣」および「記念政府紙幣」をも含む)になると、この点がまったく異なる。 すなわち、通貨に関する基本法である「通貨の単位および貨幣の発行等に関する法律」(昭和62年、法律第42号)では、「貨幣」(すなわち「政府貨幣」) の製造および発行の権能が政府に属するという「政府の貨幣発行特権」(seigniorageセイニャーリッジ権限)が はっきりと明記(同法第4条)されており、その発行には、なんらの上限も設けられておらず、政府はそれを何千兆円でも発行することができ、担保も不要とさ れているのである。しかも、発行された「政府貨幤」(「政府紙幣」や「記念貨幤」をも含む)の額は、政府の負債として計上されることもない。その発行額は政府の正真正銘の財政収入となる。 つまり、「政府貨幣」の発行額(額面価額)から、その発行のための原料代や印刷費や人件費などのコストを差し引いた額は「造幣益」 (seigniorage gain)として「国庫」(中央政府の一般会計)に入るわけである。このことこそが、「政府貨幣」が「日銀券」と根本的に違っている点である(大蔵省理財 局・造幣局・印刷局スタッフ共同執筆「近代通貨ハンドブック」大蔵省印刷局、平成6年刊、114ページを参照)。
(引用ここまで)

丹羽は、通貨の単位および貨幣の発行等に関する法律第4条には政府の貨幣発行特権が明記されており、担保不要で上限なく何千兆円でも発行でき、かつ負債として計上されずに財政収入となると述べています。

(ここから引用)
  この両者のあいだの、これほどにも大きな特性の相違は、「日銀券」のような「銀行券」というものの形式的性質が、その銀行が振り出した手形や小切手のよ うなものであるのに対して、「政府貨幣」が発行されるということは、その発行額ぶんだけ、その国の社会が保有あるいは生産・供給しうる財貨・サービスに対 する請求権を政府が持つということを、宣言していることにほかならないからである。つまり、「政府貨幣」は社会の財貨・サービスに対する「請求権証」なの である。これは、まさに「国家の基本権」の一つであり、危急存亡の事態に国が直面したような場合に、政府は、それを大規模に発動して危機乗り切りをはかる ことができるわけである。

  もとより、そのような「政府貨幣」発行による「造幣益」に対しては、政府が利息を支払ったり償還をしたりする必要はまったくない。巨大なデフレ・ギャッ プが存在していて、マクロ的に生産能力の余裕が十分にある現在のわが国のような状況のもとでは、これは、国民(現世代、および、将来世代)の負担にも、 いっさいならない。まさに「打ち出の小槌」なのである。そして、この「打ち出の小槌」を政府財政のための財源として十分に活用して行なわれるように立案された政策案こそが、「救国の秘策」となるべきものである。過去十数年も、筆者自身(丹羽)が提言してきた諸政策案は、いずれも、基本的には、まさに、これにほかならなかったのである。
(引用ここまで)

「日銀券」などの「銀行券」とは、その銀行が振り出した手形である。それに対し「政府貨幣」は社会の財貨・サービスに対する「請求権証」である。政府貨幣発行による造幣益に政府は金利払いや償還の必要もなく国民の負担にもならない打ち出の小槌になると力説するのです。

以上を具体的にイメージすれば安倍首相が閣議を開き額面1000兆円の政府紙幣を1枚作成することにすればそれでいいと いうことです。法案を作成する必要もなければ議会承認もいりません。閣議決定したら財務大臣が1000兆円紙幣を一枚日銀に持参し、日銀総裁に手渡すだけ です。政府紙幣は日銀金庫に保管 し、日銀営業局長に下達して国庫金担当者が政府当座預金口座に1000兆円の残高を端末からインプットすればそれでおしまいです。

 政府紙幣を発行すると既存の日銀券とまぎらわしく国民に混乱が起きるという議論をよく聞きますが、高額政府紙幣は市中に流通する一万円札などと金種が重複しないし、第一国民の目に触れることさえないので何ひとつ混乱が起きません。(つづく)

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