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「統計偽装問題」から [Conganasさん]

「統計偽装問題」であるが、景気状況を示す重要統計について官僚が筆を舐めて調整していたことが次々に明るみに出てきた。》の指摘から始まるアベノミクス再考議論を追ってきました。ひとまず安倍首相が閣議を開き額面1000兆円の政府紙幣を1枚作成することにすればそれでいい》に至ったところでアップしておきます。

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「統計偽装問題」であるが、景気状況を示す重要統計について官僚が筆を舐めて調整していたことが次々に明るみに出てきた。

2015年1月の賃金指数が民主党政権時よりも低く出されたことに麻生財務相や黒田日銀総裁が強い不満を示し、15年11月4日の諮問会議でこれらを議題に挙げ、高市総務相や甘利経済再生相も加わり「より実態に近づけていく」とのお題目で官僚に統計を操作させたようだ。

問題の焦点は経済政策である。黒田バズーカの日銀異次元緩和でアベノミクスの初期の株価形成には貢献したものの、政策の目的だったインフレ目標が未達で設計した経済効果を計測することができなかったことだ。

黒田日銀総裁は2015年時点で異次元緩和の本来の目的である2%のインフレ目標は達成不可能と悟った感じだ。これは政策が依拠したリフレ理論の誤りが明確になったということだ。政策の失敗が起きた際、ただちにフィードバックして失敗の原因究明、課題解決法の検討、立案というプロセスが不可欠だ。一国の国益がかかる最重要な同工程をスキップして決めたことをやめない惰性運転を続けるなど未必の故意はゆるされない。

たとえば日銀による国債の買い入れを中止し、財政法を改正して政府通貨を発行し、政府の借金を政府通貨発行によって返済することでPB均衡理論の陥穽を回避する政策を打つなど、国家百年の計からすれば、2年間程度の政策の誤りなど、正すにはばかることなかれではないか。

しかし黒田はインフレ目標2%の絶望を認めないまま、こっそり財政ファイナンスに舵を切るという目的変更をひそかに進めたということだ。日銀と政府を連結政府とみなしておこなう財政ファイナンスは、黒田の総裁任期終了後に出口危機が待ち受けている。

2016年から日銀はゼロ金利を実施したせいで16年以降、金融機関が買った国債の将来価格は上がらない。2015年までに買い入れた金利のある国債は満期償還したら利益が出る。しかし金融機関はその国債をゼロ金利の日銀当座預金に振り替えることを拒否して日銀に国債を売らないだろう。金融機関が売らないと日銀は国債を買えない。したがって異次元緩和は劇的に終了し国債暴落金利暴騰が生じる。2020年以降は危険水域なのだ。

黒田の保身の動きは朝日の記事でわかるから、有料記事だが全文引用する。

(タイトル)
閣僚や日銀総裁から批判→見直し開始 賃金の統計調査
別宮潤一 2019年2月17日05時30分


写真・図版

写真・図版
毎月勤労統計の賃金指数15年1月の調査対象入れ替えによる変化

 賃金の動向を示す「毎月勤労統計」の調査手法について、2015年11月の経済財政諮問会議で閣僚らが変更を促していたことがわかった。「統計の司令塔」である統計委員会も指摘を重視し、見直し議論を翌月開始。調査手法はその後、賃金指数の下ぶれを防ぐ方向に変えられた。

 勤労統計は中規模事業所(従業員30~499人)の調査対象を2~3年で全部入れ替えていた。入れ替えで賃金指数(現金給与総額など)は下がりやすい。 調査に継続して応じる企業を集めた旧サンプルに比べ、新サンプルは新興企業や経営難の企業も加わって賃金が低く出やすいためだ。

 そこで厚生労働省は過去のデータを実勢に合わせる修正を実施。「下方修正」が多かった。

 15年1月の入れ替え時も下方修正となり、民主党政権時代の11年を上回ったはずの14年の賃金指数が逆に「下回る」ことになった。

 15年11月4日の諮問会議ではこれがやり玉に挙がった。議事要旨によると、日銀の黒田東彦総裁や麻生太郎財務相ら出席者が相次いで統計問題に言及した。

 「直近の名目賃金のマイナスは統計上のサンプル要因が影響。実勢は緩やかに上昇していると考える」。口火を切ったのは黒田氏だった。勤労統計を念頭に、 統計データを否定したとみられる。民間議員で安倍晋三首相に近い伊藤元重・東大大学院教授(当時)は、勤労統計の問題点を記した資料をもとに「課題のある個別統計を見直すことは非常に大事。サンプル替えの際、足元の基調が変わったり過去のデータがさかのぼって大きく改定されたりする。経済社会の現状をより 客観的に映し出すよう、改善を進めてほしい」と呼応した。

 高市早苗総務相(当時)も「実体経済を反映した統計の検討を進める」と引き取り、統計委を所管していた甘利明経済再生相(当時)が「指摘された課題について来春までに方針を整理するよう統計委にお願いしたい」と述べて統計問題の議論を締めくくった。

 「11月の諮問会議の議論を非常に重く受け止める」。西村清彦・統計委員長は12月11日の統計委部会で明言し、対応を指示した。その際、厚労省の担当課長は勤労統計を「全数入れ替え」から「部分入れ替え」にして入れ替え時の数値変動を縮小する考えを表明。「過去の増減率が変わるのは望ましくない。各方面から意見を頂いた」と修正をやめる方針も示した。

 他の統計委員は「(数値が低く出る)新サンプルの方が真の値に近い。入れ替えのたびに(真の値と)乖離(かいり)する」と指摘し、課長も認めたが「注釈で注意喚起する」として方針を変えなかった。

 統計委は翌16年、部分入れ替え導入を盛り込んだ報告書を作った。勤労統計は18年1月、この結論通りに部分入れ替えを導入。過去データの修正もやめた。その後の賃金の伸び率が上ぶれする要因の一つとなった。

 下方修正については、15年3月に中江元哉・首相秘書官(現・財務省関税局長)が厚労省に「問題意識」を伝達。10月の諮問会議では麻生太郎財務相が調 査対象の入れ替え時に数値の変動があることを問題視し「統計委で具体的な改善策を早急に検討してほしい」と要求していた。

 勤労統計では、従業員500人以上の事業所を全て調べる必要があるのに厚労省が04年から東京都分で「抽出調査」をしていた問題もある。同省は18年1月、抽出調査の結果を本来の全数調査に近づける「データ補正」をひそかに始めていた。(別宮潤一)

毎月勤労統計 主な動き(肩書は当時)
2015年
 1月           中規模事業所の調査対象を全数入れ替え
             →過去の賃金指数も下方修正(発表は4月)
 3月31日        中江元哉首相秘書官が厚生労働省に「問題意識」
 6月3日         厚労省の有識者検討会が調査対象の入れ替え議論開始
 9月16日        検討会が入れ替えを「引き続き検討」とする中間的整理
 10月16日       麻生太郎財務相、経済財政諮問会議で調査対象入れ替え時の数値変動を問題視
 11月4日        経済財政諮問会議で指摘相次ぐ
・黒田東彦日銀総裁    「直近の名目賃金のマイナスは、統計上のサンプル要因が影響。実勢でみた賃金は緩

              やかに上昇している」
・伊藤元重東大大学院教授 「課題のある個別統計を見直すことは非常に大事」
・高市早苗総務相     「実体経済をより反映した統計の検討をしっかり進める」
・麻生太郎財務相     「(毎月勤労統計の課題改善について)前回述べたところを具体化してもらうという

              話になったので結構なことだ」
・甘利明経済再生相    「指摘された課題について来春までに方針を整理するよう統計委員会にお願いしたい」
 12月11日       統計委員会で経済統計の議論開始。西村清彦統計委員長は「財政諮問会議での議論

              は非常に重い」
 16年
 3月22日        統計委、調査対象の部分入れ替え導入を盛り込んだ報告書
 18年
 1月           部分入れ替え導入
https://digital.asahi.com/articles/ASM2J02V1M2HUTFK037.html
23Conganas :

2019/02/22 (Fri) 00:27:59

ままりんさん

> ところでConganasさま、>>10 ですが、
> 引用元・・・まさかの、あ、あさひ、ですが?!

アベノミクスのために安倍さんが日銀に送り込んだ元ザイム城黒田東彦のことですね。

朝日の記事はご指摘のとおりです。しかし反安倍の朝日ならではの嫌がらせのような書きぶりでもなく事実を報じた程度と読みました。

むろん同記事が事実を捏造報道していたのだとすれば問題外ですが。そのような場合は以外な角度から別の媒体が続報を出すはずです。そのときは当方も異なる論じ方になります。

まあ、しかしその程度です。

新聞、マスコミのレベルの低さは朝日だけではないです。NHK、毎日、読売、東京新聞の低レベル放射脳ぶりもたいしたもんです。ゆえに特定の媒体の論調に盲従するようなことは当方の場合はありません。

とはいえ駄目マスコミのクズArticleのなかからでも直感のアンテナにひっかかるものはあるのです。100%クズ記事ということは実際はないです。

当方は安倍さんを良いの悪いの好きの嫌いのと床屋談義をするつもりもありません。安倍政治の功罪のどちらかというと功の部分を評価称揚してきました。

しかし統計偽装問題が浮上したことで事実としてアベノミクスの評価を失敗と判定せざるを得なくなったということです。歴史というのはあとで評価がさだまるのです。起きているその瞬間には評価はむずかしい。現実政治の困難さは超弩級です。つくづくそう思います。

27 名前:ままりん
2019/02/22 (Fri) 11:38:24

>>23 Conganasさん
>しかし統計偽装問題が浮上したことで事実としてアベノミクスの評価を失敗と判定せざるを得なくなったということです。

この統計偽装の騒動が発覚してからまだ1ヶ月?かそこらですよね。
まだまだいろんな材料が出てくることだってあるように思えますが、
随分易々と判定なさるんですね。

>歴史というのはあとで評価がさだまるのです。起きているその瞬間には評価はむずかしい。

ちょっとあたくしの頭では理解することが難しいです。
『起きているその瞬間には評価はむずかしい』とおっしゃるなら、
まだまだアベノミクスの評価を断定するには時期尚早なのではないでしょうか。

この統計偽装の騒動が発覚してから、まだ1ヶ月?かそこらと思いますので。

コメントありがとうございました。

28 名前:Conganas
2019/02/22 (Fri) 13:59:10

ままりんさん
統計偽装発覚は最近のことですが、偽装が始まったのは2015年です。
そしてそれはアベノミクスが始まって2年後です。

アベノミクスを裏で画策した黒子を紹介します。
浜田宏一です。
浜田はリフレ派の経済学者です。

ミルトン・フリードマンを信奉するリフレ派の学説のキモは「物価は貨幣現象である」というものです。

現実にはリフレ派の掲げる「物価は貨幣現象である」という仮説は妄説です。端的にいえば原油価格の上昇で一般物価が上がり下落で一般物価も下がるのはマネーサプライとはまったく無関係だからです。

安倍政権発足で内閣官房参与に就いた浜田宏一が「物価=マネーサプライ」説を安倍首相に吹き込んだことは有名な話です。

しかし白川総裁以下日銀プロパーはリフレ派学説が謬説と知っていたので相手にしませんでした。

そこで浜田の筋書きにもとづいて白川総裁を更迭して、財務省出身の黒田東彦と急先鋒リフレ派経済学者の岩田規久男を日銀に送り込み総裁副総裁コンビで 500兆円規模の量的緩和を実行させたのです。黒田総裁は13年4月に日銀砲をぶちかまし2年で物価を2%上げると豪語しました。

日銀のマネー増発で資産価格(株価と不動産価格)上げと金融機関による大量の米国債・米株買いが生じたが、ついに消費者物価をあげることはできなかったのです。

量的緩和が日本をデフレから脱却させたように見えたのはマネーサプライではなく50%の円安のおかげです。円安が輸入物価を上げたのでデフレが終わったように見えただけです。

13年4月から始まった異次元緩和から満2年、15年の段階でこの金融政策の失敗は明確になりました。

ここで本来は効果のない浜田の偽経済学を破棄して、代案を模索する必要がありました。

頭脳明晰な黒田総裁は当然すべてを理解できたはずです。
しかし、そうせず「物価上昇の効果は徐々に現れる」という呪文のような妄言を記者発表するようになったのです。

統計偽装の指示が始まったのはこのころです。
そして翌年16年からは追い込まれるようにゼロ金利を始めます。

異次元緩和開始から6年経過した日銀総裁会見でさえ「物価上昇2%に向けての消費者物価の前年比も徐々に上昇している」と答えています。

もはやこの時点では「物価の上昇は貨幣現象」という黒田日銀が採用した学説をぶらかして、なんと現下国際経済の動きを理由に日本の物価上昇見通しを語る始末です。

黒田総裁が挙げた物価は総務省統計全商品総合で、前年比2018年8月は+1.3%、9月は+1.2%、10月は+1.4%、11月は下がって+0.8です。

総裁の会見内容とは裏腹に直近の10月から11月の動きは逆で、前年比+1.4%から+0.8%へと下落傾向なのです。

何を根拠に「物価は2%に向けて徐々に上昇」と答えたのか追求する記者もなし。

物価が弱含みに転じたのは1バーレル75ドルだった原油が18年9月末から12月には45ドルに40%の暴落をしていることが主因なのに、そこには言及なしです。なめてますね。

統計偽装が発覚したのはこの後ですが、偽装そのものが良いの悪いのいう前に、この確信犯的失政を問題にしなければなりません。

浜田宏一が間違った経済学を首相に吹きこんで黒田日銀に実行させたのです。DSの狙いはじゃぶじゃぶに増発した日銀マネーを米国債と米株買いに向かわせてマネーを横盗りすることでしょう。浜田がヴェネツィア宮廷銀行家のように安倍さんに嘘理論を進言したということです。
29:ままりん :
2019/02/22 (Fri) 23:31:45

Conganasさん
丁寧な説明をありがとうございました。

せっかくご説明いただきましたが、門外漢がConganasさんに対して、
アベノミクスに関しての反論を述べるなどという暴挙?は控えたいと思います。
ただ、失業率、自殺の人数の減少もですし、今年はいよいよ賃上げが
実施されそうに見受けられますが、これはどうなっているのかと思います。

辛うじて話が成り立ちそうなところと言えば、
>確信犯的失政を問題にしなければなりません。
でしょうか。ここが一番おっしゃりたいことと拝察します(色々書いたのに
ぜ~んぶすっ飛ばすんか~い!とお思いでしょうが、あたくしでは
議論が成り立たないと思いますので、インターネット資源の
無駄はしないようにします。申し訳ございません。でもありがとうございます)。

ただ、庶民が何を言おうがどんだけ怒ろうが、屁のつっぱりにもならないと
EG様がよくおっしゃってましたし、『確信犯的失政を問題にしなければなりません』と
おっしゃるならば、安倍政権よりも、もっと問題にしなければいけなかった政権があったと、
自分は思ってます。

すべて、一朝一夕には行かないとも思っていますし、
経済が重要なのはわかりますが、政権の仕事は、決してそれだけでなく、
外交、防衛その他もろもろあると思います。自分に限っては、ですが、
安倍総理を信頼していこうと思っています。

EG様が、いろいろ本を残したことが、今、改めて良く理解できます。

懇切丁寧な説明をありがとうございました。

30:mespesado:
2019/02/23 (Sat) 00:26:39

>>29
 まあまあ、おちついてw
 ままりんさんは、Conganasさんの「アベノミクスは失敗した」という表現に脊髄反射的に異を唱えたくなったんじゃないですか?
 サヨク界隈を中心に「アベノミクスは失敗した」と主張する人は多いですが(例えば明石順平氏など)、サヨク論者の言う「失敗」は、アベノミクスが最初から効果が無かった、と主張していて、雇用の改善についても「安倍政権以前から改善されていた」などと言ってアベノミクスの効果をすべて否定しています。これに対してnganasさんの主張は全然違って、「最初のうちは確かに効果があった。ただし、金融緩和で景気が改善したのはリフレ理論が正しかったからではなく、為替が正常化したからに過ぎない。だから今後金融緩和を続けたって、所得とか消費が上向くという意味で景気が改善することはない」ということであって、正確に言えば「アベノミクス批判」というよりは「リフレ理論批判」なんですね。私も同じようなことを過去に解説してますが、この点でConganasさんは全く正しいことを主張しておられると思います。
 で、Conganasさんは、改善提案としていわゆる「財政ファイナンス(=日銀による国債の直截引き受け)」よりもっと過激な「政府紙幣の発行」を提案しておられますが、まあ、これは実行しようとすれば必ずDSの横槍が入る(米国の暗殺された大統領はすべてこれをやろうとしていた、などとも言われていますし)ので、もっと穏便にやろうとするならば、「金融緩和」と「財政出動」を同時に行えば同じことになります。実際、財政出動で国債を市場に買わせて、金融緩和でこの国債を日銀が購入すれば、市場を経由して財政ファイナンスを行ったのと同じことになりますから。
 ところが財務省が予算枠を決める事実上の権限を握っているため、財政出動したくてももうこれ以上できない状態にされているわけです。ただ、これらの手法は別に法律で禁止されているわけではない(まあ、但し書き条項ではありますが。で、何で但し書き条項などと言う例外規定になっているかと言えば、法律制定時はインフレ退治が最大の要請になっていたからですね)ので、国会議員がすべて同意すればできるのです。ところがほとんどの国会議員がオカネの真の仕組みを解せず、財務省の言いなりだからできないわけですよ。ここを何とかしないと話は一歩も進みません。
31 名前:ままりん
2019/02/23 (Sat) 01:55:51

>>30 mespesadoさま
こんばんは!

>まあまあ、おちついてw
エッ、あたくし至って冷静でございます。
なんか感じ悪かったでしょうかね (•́ω•̀)? ? ?
人間が未熟だからですね。修行します。

>ままりんさんは、Conganasさんの「アベノミクスは失敗した」という表現
>に脊髄反射的に異を唱えたくなったんじゃないですか?
そうじゃない、と言いたいですが、ん~、そうかもしれませんね。

32 名前:ひとことじーさん
2019/02/23 (Sat) 08:20:48

Mespesadoさんの理論が、米FRBでも認識されてきたようです。

「米FRB、低インフレに警戒根強く 労働市場過熱でも」
https://jp.reuters.com/article/ny-forex-idJPKCN1QB2MU?utm_campaign=trueAnthem:+Trending+Content&utm_content=5c705bd53ed3f000013b4ecb&utm_medium=trueAnthem&utm_source=twitter

記事の中にある
>「これまでエコノミストらは、労働市場が過熱すれば、
>インフレも最終的に追随すると指摘してきた。
>ところがFRB内外の新しい研究結果によると、
>両者の関係は弱まった可能性があるという。」

「グローバル化や新技術で旧来のインフレ力学が変わったとの認識がFRB内に広まった」

などなど、
日本だけでなく、アメリカでも「グローバル化や新技術」の出現によって
供給過剰常になっており、デフレ圧力が掛かり続けるのが普通であると、
FRBの中で認識され、共有されつつあるんじゃないでしょうか。

DS金融ムラにおける「通貨発行権のある日米」と、「通貨発行権を制限されたEU」の
主導権争いがいかなる方向に流れていくのか・・・?

34 名前: mespesado
2019/02/23 (Sat) 10:49:44

>>31
> エッ、あたくし至って冷静でございます。
> なんか感じ悪かったでしょうかね (•́ω•̀)? ? ?

 いや、感じが悪かったなんてとんでもない!ただ、

> あたくしでは議論が成り立たないと思いますので、インターネット資源
> の無駄はしないようにします。

なんて「自虐的」、おっと「へりくだ」らなくてもいいのに、と思ったので。
 それよりも『確信犯的失政を問題にしなければなりません』という発言についてですが、もちろん安倍政権以前が安倍政権よりひどかったのは、そんなひどい政治と比べてマシだからいいんだ、というわけにはいかないですよね?やはり安倍政権の経済政策のどこが良くてどこが悪いかということは、はっきり認識しておかなければならない、ということじゃないでしょうか。
 で、「確信犯的失政」ですが、もしも統計偽装問題がなければ誰も「確信犯」ではなかったと言えたかもしれない。なぜならリフレ政策を安倍さんに提言した「黒幕」は浜田宏一内閣官房参与(と、あと第一次安倍内閣の内閣参事官だった高橋洋一氏も「主犯」の一人だと思ってますがね)ですが、彼らは共に根っからの新自由主義者ではあるけれど、リフレ理論を本当に「信じて」いるように見えるので、「効かないと知ってわざと失敗するように入れ知恵」したとは思えない。それを「予想が当たる経済学者のことは信用する」と言って信用した安倍総理もまた「確信犯」ではない、という評価はできたと思うんです。ところが彼らの主張するリフレ理論に従って緩和政策を実行したら、雇用は改善したけれど、一向に賃金も消費も物価も上がらない。
そこで総理は「理論」の方を疑うかわりに「統計」の方を疑って、統計が間違ってるんじゃないか、見直せ、と指示を出しちゃった。それだけなら官僚が「いえ、統計のせいじゃないですよ」と反論すればよかったのですが、そこは官邸と官僚の間ってのは「忖度」のまかり通る世界ですから、官僚は官邸の「意向を受けて」統計に間違いがありましたぁ、と「白状」しちゃったわけですね。で、それを見た官邸が「そらみろ」と、「統計が間違っているからリフレ理論が間違ってるわけではなかったんだ」と「納得」しちゃった。Conganasさんは、この一連の流れを「確信犯的失政」と呼んでいるわけですよね。
 で、この流れを外から眺めている私としては、何が「犯人」かというと、大変不遜な言い方になるけれど、やはり「経済学者がどいつもこいつもアホだから」、と言ったら身も蓋もないんで、も少しちゃんと言うと「経済学という学問が経験則から導き出された法則を元に組み立てられた理論」だから、歴史上はじめて現れた「技術革新が極限まで進歩したために供給力が過剰になったために生じたデフレ」を「従来の経験則ではどうにも説明がつかない」からだ、としか言いようがない。財務省のポチである緊縮派の「御用」経済学者も、保身のためにウソと知ってて緊縮が是だと主張しているわけではなく、逆に緊縮が正論だと思っているから財務省に「可愛がられ」て御用学者になったんでしょう。で、彼らは論外として、じゃあ逆の反緊縮論者が正しいかというと、そういう学者は昔ながらの「リフレ理論」という誤った認識のままでいる人ばかり。つまり「本当に今日の日本のデフレ経済がどういうもので、どうしたら脱却できるかを理解している経済学者」が周りにいない、という事実こそが真の「犯人」でしょう。もちろんわかっている経済学者もいるはずなんですが、主流派でないため表に出てこれないんじゃないでしょうか。

35 名前:堺のおっさん
2019/02/23 (Sat) 12:12:08

こういうアプローチもあるんだなと感心した次第。
>>28 Conganas >>30 mespesado >>32 ひとことじーさん >>34 mespesadoさん
今の経済政策が効果を発揮できない原因は、
政府の財政出動があまりに中途半端な水準で止まっていることにつきます。
そういう意味では、安倍さんも財政出動に確信を持っていないのかもしれません。
財務省の予算編成の壁があるにしても…

で、最近ホンマか? って思うことがありまして。
堺の自民党市議の一人(先の総裁選では石破派かと思われた)が
日本の財政問題は解決しているとSNSで言い始めたことです。
彼が言うには、自分としては分かっているが、支持者に説明ができない…、と。
つまり、現実の政策として思い切った財政出動がない限り政治家としては
説得力を持ち得ないのだと告白しているのです。
国土強靭化を提唱した藤井教授も内閣参与を去り、積極財政論者がいなくなった。
何ぼ言うても政策に反映されないなら仕方がないというところでしょう。
せっかく、通貨発行権を持った日銀を押さえながら、
もう一つの車輪を回さないなら効果は出ません。
アメリカのFRBは通貨発行権を持っているが、政府のものではない。
その意味では、日本の日銀は政府のものですから、
安倍さんは有効な武器を手にしたにもかかわらず、使い方が明確ではない。
そうしたジレンマに陥っているのが現状であると。

余談ですが、日米の株価を比較すると、日本株の回復が遅れ、
アメリカの株価は順調に回復している。
この背景には何かあると思います。

36 名前:mespesado
2019/02/23 (Sat) 13:18:49

>>32
> Mespesadoさんの理論が、米FRBでも認識されてきたようです。
【中略】
>「これまでエコノミストらは、労働市場が過熱すれば、
> インフレも最終的に追随すると指摘してきた。
> ところがFRB内外の新しい研究結果によると、
> 両者の関係は弱まった可能性があるという。」

>「グローバル化や新技術で旧来のインフレ力学が変わったとの認識がFR
> B内に広まった」

 これ、技術革新が原因のデフレって、まず日本で世界史上初めて発生した現象で、その当時の世界の経済学界では「日本の特殊性だろう」くらいに考えられていて、従来の経験則ベースの経済学を見直す必要を感じなかった。ところが、ここへ来て、欧米諸国、特に米国でも日本と同じデフレの状況が発生してきて、初めて「今までの経済理論って本当に正しいんだろうか」って疑われるようになってきた、ってことですよね。
 ここには「学問の世界」における2つの問題が顕在化しているように見えます。
 その一つは「西洋人は、昔から日本を『非関税障壁』に代表されるように、何だか通常の理屈が通じない、わけのわからない習慣が支配している特殊な国だと思っている」ということ。
 そしてもう一つは「日本人は西洋の学問の受け売りばかりで、折角自国で今までにない現象が生じているのに、土地勘のある自国の現象であるという利点を使って新しい理論を打ち立ててやろう、という気概がない」という点です。この事情は特に文系の学問で顕著だけれども、私は実は客観的な論理や観察結果がベースとなっている理系の学問でも、表立ってその欠点が顕在化してはいないけれども、土台の所でこの弱点が壁になっているような気がしています。

37 名前:mespesado
2019/02/23 (Sat) 13:43:32

>>35
> 安倍さんも財政出動に確信を持っていないのかもしれません。

 安倍さんも、「政府紙幣の発行」と「財政ファイナンス」と「金融緩和と財政出動の同時施行」が本質的に同じ効果を持つという理屈くらいはわかっていると思うのです。
 ですが、自身が経済学者なわけではないから、誰の入れ知恵でもない一つの仮説にすぎない「オカネをただ刷って一番使ってくれそうなところにばら撒けば景気が良くなる」という手法を「本当にそれが有効なのか」「逆に変な副作用は無いか」について確固たる自信がないのは確かでしょうね。だって、単なる学者なら論文が間違ってても自分の学界での評価が下がるだけで済みますが、総理が一国の経済政策を誤れば、最悪自国を亡ぼすことになりかねませんから、そら慎重にならざるを得ないでしょう。ですから、こと経済の問題については、専門家がちゃんと正しい理論で正しい提言ができないと、政治家だけの独断で思い切ったことができないのは仕方ないと思います。
 やっぱり日本の学者の質、というか、>>36 に書いたような日本や欧米の学界の持つ体質が災いしているんでしょうね。
                                  ・
39 名前:堺のおっさん
2019/02/23 (Sat) 17:59:55

>>37 mespesado
メッさん、
アベノミクスの「異次元金融緩和」は2012年からスタート。
リーマン後の3年間、日本経済は最悪の状態に落ちましたが、
今から思えば(タラレバは禁物ですが…)
リーマン後にすぐさま「異次元金融緩和」が発動されていたら、
まったく別の動きになったと想像されます。
同じく、大胆な財政出動も、
ここぞというタイミングが必要なのかもしれません。
それは、かねて安倍総理が表明している
「リーマン級の事件が起きれば消費税増税は中止する」
というタイミングかもしれません。
これは、一種の非常事態宣言ですが…
財務省も反対できないタイミングを計っているとも。
一庶民の想像にすぎませんが。
43:Conganas :
2019/02/24 (Sun) 00:42:07

>>37

> 安倍さんも、「政府紙幣の発行」と「財政ファイナンス」と「金融緩和と
> 財政出動の同時施行」が本質的に同じ効果を持つという理屈くらいはわかっ
> ていると思うのです。

このくだりは僕がいろいろ述べたいと思っている部分です。

この稿ではこのうち「財政ファイナンス」についてまとめます。

これすなわち現状の日銀と政府(=連結政府)においておこなっているファイナンス政策。年30兆円から40兆円は赤字になる政府財政のファイナンスです。政府の財政資金を日銀が異次元緩和の国債の大量買いによって捻り出すことです。

ところで「財政ファイナンス」は、すでに副作用が露見しつつあります。

(1)資産バブルの崩壊

金融機関が保有している国債は片っ端から日銀が買い上げて円を日銀当座預金に入れていきます。保有国債が現金になった金融機関では過剰流動性(現金の超過)で株価バブルが起こりました。株価は30%は過剰流動性からのバブルでしょう。この過剰流動性部分はかんたんに剥げ落ちる。

人口減で下がっていた不動産土地価格も上昇。0.6%下がっていた3大都市圏の地価は2016年から上昇して2018年は1.0%上げ。商業地では、 3.9%と高い上昇率です。大阪は2018年に4.7%の上昇。1992年からの不動産バブル崩壊のときは大阪が上がったところが終わりの始まりでした。


(2)マネーの米国への流出

国債の現金化で金融機関は莫大な預金を保有することになったが国内企業に対してはこれ以上与信格付けの高い貸出需要を見出すことができない。運用目的で、これをメガバンクなど大手金融機関はほとんどドル転して金利が高い米国債、利回りが見込める米株に振り向けます。

日銀「資金循環表」の2ページに家計・企業・政府・海外と経済主体を4区分した「部門別の資金過不足」があります。
https://www.boj.or.jp/statistics/sj/sjexp.pdf

②の暦年の2017年をみると

【資金余剰部門】
・家計      17.6兆円の資金余剰
・企業  27.3兆円の資金余剰
---------------------------------------------
合計資金余剰 44.9兆円

【資金不足部門】
・政府    21.7兆円(財政赤字からの資金不足)。
・海外    21.7兆円(主に米国の資金不足)
---------------------------------------------
合計資金不足 43.4兆円

家計と企業が、合計で44.9兆円のマネーを余らせ、日本政府と主に米国が43.4兆円の資金不足です。

米国の資金不足分は日本の金融機関がせっせと「米投資」をして米国にマネー供与をする構図です。じっさいこの怒涛のような米国投資のためのドル転が円ドル為替を円安に誘導した原動力となったのです。

米国は年間20兆円くらいの国債を日本勢に買わせています。貿易経常収支の黒字分で米国債や株を買って、米国の経常収支の赤字分のドルを米国に還流してやっていると考えることもできますが、米国の対日貿易赤字は6兆円(2017年)ですから米国へのマネー奉仕は過剰でしょう。DSによる誘導があるのかないのか。前回述べたリフレ派のキーマンたちはmespesadoさんがいわれるように悪気じゃなく良かれと思って行動しただけのことなのかもしれないまでも大きなところからDSに操られて動かされている可能性はあります。

というのは今回のアベノミクス=日銀異次元緩和=財政ファイナンス政策で最も割りを食うのが地銀だからです。

異次元緩和のゼロ金利で、じゅうらい日本国債の金利を主な収益源にしていた地銀106行の半分が本業で赤字です。25行は5期連続赤字から抜け出せず営業 数字をつくるために何でもするようになっている。スルガ銀行のよう不正も構造的に横行しています。このままいくと日本の地銀は全滅でしょう。

露見する副作用でもマネーサプライはまったく増えません。マネーサプライの増加率は2%~3%台で異次元緩和の前と変わっていません。これは最初からわかっている人にはわかっているから副作用ではないとはいえ、優良誤認的な副作用はあきらかにあるのです。

国民経済にとって、これほど副作用が多い政策だったとわかってきた以上、惰性で続けることに意味がなくなります。さっさと金融政策の失敗をみとめ、出口戦略をとるとどうなるか。

仮に日銀が国債の買い増しをやめるとすると市場に放出される国債が売れ残って、売れる価格になるまで下がる。国債の下落は金利の上昇です。

政府の財政は金利が3%に上がった時点で長期国債の価格は24%も下がる。このとき政府は財政赤字分の国債(30兆円から40兆円)が売れなくなるので す。これは国民経済からの「増加借り入れ」ができず、年金、医療費、介護費、公務員人件費、公共事業の支払いがすべてはできなくなることが起きるわけで す。

こうなってから追加国債を発行すれば金利が一層上がって国債価格は暴落し政府の利払いは増えるため、政府は国債の新発が事実上できなくなるわけです。

国債の仕組みを活用した連結政府による財政ファイナンスのアイデアは一見あざやかに見えても、国債の売買市場(ゼロサムゲームの賭博場)の存在が政府経営にとってきわめて大きなリスクとしてのしかかるのも皮肉なものです。(つづく)
45:mespesado:
2019/02/24 (Sun) 08:25:04

>>43
 非常に興味深く、かつ鋭い考察ですね。
 日銀が金融機関保有の国債を購入し、代金を当座預金に振り込む。このマネーを国が吸収するために同額の国債を国が発行したら、あにはからんや、国債の利回りが低すぎるからという理由で金融機関はそのマネーで国債を買わずに外国債を購入してしまう。その結果金融機関はマネーが無くなるので国が発行した国債が売れなくなり、価格が下がる(金利上昇)、という筋書きですね。
 今のところ国債金利上昇の兆しは見えないので、恐らく金融機関は為替リスクの危険を冒してまで、あえてちょっと金利が高いからと言ってマネーの多くを外債に振り向けることはしていないのでしょう。「外貨建て保険」の話です。「外貨建て保険」というのは、生命保険というのは顧客から預かった保険料を運用して保険金の支払いが発生するまでの間の利息を稼げることを利用して予め保険料を安く設定しているのですが、国内で運用するとゼロ金利でこの効果が期待できないことから、金利が日本と比較して高い外国債で運用することにより利回りを稼ごうとするのですが、反面為替リスクがこわい。そこで為替リスクを客に転嫁することで外国債の高い利回りを適用しようというものです。もしこれの販売がブームになると、生保各社は外国債の運用比率を増やすインセンティブが増えますから、そうなると国債より外国債に運用がシフトする可能性は増えます。まあ、これは消費者(特に保険や外国債のことをよく知らない高齢者)保護の観点から金融庁が目を付け、規制が厳しくなっていますが。
 で、これよりもっと怖いのが、DSによる意図的な「サムライボンド」の大量発行です。サムライボンド、つまり外国で「円建て」で発行される債券。これを日本の国債金利より高い利回り保証で発行しようものなら、その発行体の信用リスクが十分低ければ、日本国債のライバルに十分なり得ます。こんなものを大量発行すれば、発行体は一時的には赤字になりますが、この結果、日本の金融機関のマネーをこのサムライ債が吸収し、マネーが不足して日本国債が売れ残って暴落した瞬間を突いてこの国債を大量購入し、再び国債不足の状態になって価格が急騰した瞬間を突いて売り抜ける、というアコギな商売をやるようなDSが出て来ないとも限らない。
 まあ、「政府紙幣」→「財政ファイナンス」→「金融緩和と財政出動の抱き合わせ」という風にマネーの発行のスキームが間接的になればなるほど、DSによる悪意の簒奪の機会が増え、リスクが高まる、ということは確かですね。
91:Conganas :
2019/03/01 (Fri) 18:37:44 
財政ファイナンスの副作用を述べたので、次にmespesadoさんの話では「過激な」とおっしゃる政府紙幣発行政策について述べたいと思います。
 
むしろ現在の政府+日銀の連結政府による異次元緩和の財政ファイナンス政策のほうがよほど過激で副作用がある政策だと思うので僕は政府紙幣発行はそれほど過激とは感じておりませんが(笑)。
 
政府紙幣を発行する目的は通貨発行にともなうシニョーレッジを中央銀行から政府が取り戻すことにあります。
 
シニョーレッジというのは通貨発行特恵のことで、昔は王が発行する通貨の発行特恵のことをいったようです。現在では多くの国の政府が王の代わりに中央銀行にシニョーレッジを与えています。
 
通貨発行特恵といってもなんのことかわかりにくいと思いますが、マネー創造に際し、無から有を生み出す際にその生み出された価値を享受する特別な利権ということです。
 
各国の中央銀行設立に深くかかわりのあるヴェネツィアの金融界を800年支配するデル・バンコ一族などが各国のシニョーレッジをかき集めて独占してきたのではないかといわれることもありますが、おそらくそんなところでしょう。
 
あらゆる利権はマネーのデリバリーの過程で介在者にこぼれ落ちるものですが、マネー創造に立ち会うものが創造の瞬間に生じる利権を受け取れるのがこの特恵です。100%政府の中央銀行であれば問題ありませんが、何%かでも民間人がオーナーである中央銀行の場合は、シニョーレッジはオーナーである民間人に流れます。
 
したがって中央銀行が通貨発行をおこなう場合よりも政府が発行するほうが、シニョーレッジを政府が直接確保できるわけです。
 
そこに着目をしたリンカーン米大統領やジョンFケネディ米大統領がFRBからシニョーレッジを取り戻そうとして政府紙幣を発行したものの暗殺され、政府紙幣はFRBによってすべて回収されてしまったという悲惨なできごとが起きたのです。
 
昔と違い今はインターネットで起きていることが非常な速度で伝播されていくので、これから政府紙幣を発行することを民主主義的手続きのもとで決めたら、昔のように闇雲に暗殺して解決するという安易な手段では乗り切ることが難しいように思います。
 
政府貨幣の発行については米国ではベンジャミン・バーナンキ(FRB元議長)やジョセフ・スティグリッツ(コロンビア大学教授)などが唱えていました。日本では昨年亡くなられた正統派のケインズ経済学者の丹羽春喜(大阪学院大学名誉教授)が80年代から「諸君!」「正論」を中心に論文を発表してどうどうたる論陣をはっていました。
 
丹羽教授の影響は大きく、2002年榊原英資(慶應義塾大学教授元大蔵省財務官)が「中央公論」に「政府紙幣の発行で過剰債務を一掃せよ」を発表、財務省の高橋洋一も2004年に政府内で政府紙幣の発行を提案しましたが当時の竹中財務大臣はこれを握りつぶしました。DSの犬が財務大臣のときに建策というのも無理筋だったと思います。
 
政府紙幣発行は弊害としてインフレを制御できなくなるという副作用があることを財務省筋は指摘していました。インフレ・ギャップが潜んでいるマクロ状況下でおこなうとインフレが亢進するというのが論理です。
 
インフレ・ギャップはモノやサービスの需要が潜在供給を上回ってしまった需給のギャップのことです。完全雇用・完全操業であれば達成されるはずの「潜在的GDP」から実際のGDPがどれだけ上回っているかを計算して求めるのですが、バブル崩壊以降はインフレ・ギャップどころかデフレ・ギャップの状態が続いており、今現在にいたっているので、財務官僚がいうような政府貨幣の発行を禁忌する理由はじつはありません。
 
2008年から2009年にかけてリーマン・ショック後の深刻化した景気後退期に渡辺喜美元金融担当大臣が麻生太郎首相に対して政府紙幣の発行を提言。2009年3月、麻生首相は政府紙幣発行の検討を表明したのですが閣内にも中川昭一財務大臣、与謝野馨経財大臣、伊吹文明、高村正彦などが「インフレになる」「財政規律が緩む」等、財務省からの間違った見解を鵜呑みにして反対を唱え、議論の前進をみる前に衆院総選挙で自民党が大敗。悪夢の民主党政権が始まり政府紙幣発行論議は雲散霧消しました。
 
自民党が政権を奪還した際、安倍さんが浜田宏一のようなリフレ派学者ではなく、かりに丹羽春喜教授に助言を求めていれば政策としてのアベノミクスの中身はまったく違うものになっていただろうと思え、悔やまれるところです。
 
丹羽教授の政府紙幣発行論に関する決定版の論文「政府貨幣特権を発動せよ。」(2009年京都総研発行)が僕の手元にありますので、次回からその内容をしばし検討していきたいと思います。(つづく)
98:Conganas :
2019/03/03 (Sun) 00:02:06

前回予告したとおり丹羽春喜「政府貨幣特権を発動せよ。」という論文に即して政府紙幣発行政策について検討してみたいと思います。

丹羽春喜氏は1930年生まれで2017年に亡くなられています。ケインズ主義経済学者で、60~70年代はソ連の計画経済の研究で数多くの業績を残しました。ソ連崩壊後はケインズ主義の復権を主張。日本の財政政策へは大胆な提言を繰り返しました。

本書「政府貨幣特権を発動せよ。」のサブタイトルは「救国の秘策の提言ー経済再生の唯一の決め手、ケインズ主義の復権ー」です。

その第1章は「救国の秘策」への秘策-政府貨幣と日銀券の本質的な違いに着目せよ! という章見出しがあります。

(ここから引用)
 古来、常に指摘されてきたように、そして、現在でも、経済学や財政学の教科書には必ず明記してあるように、政府の財政収入を得る手段は3つある。
 すなわち、

(1)租税徴収
(2)国債発行
(3)通貨発行

の3つである。
 現在のわが国においては、(1)の租税徴収も(2)の国債発行も、もはや限界に来ているわけであるから、今日の深刻な財政・経済の危機を打開するため財 源調達には、(3)の通貨発行という手段のなんらかのバリエーションを、下記ののごとく工夫するべきだというのが、過去十年以上も繰り返し行なってきた筆者(丹羽)の政策提言の基本ビジョンである。

 単に筆者自身の持論であるというにとどまらず、現在のわが国のように、巨大なデフレ・ギャップが発生していて、経済が停滞と景気悪化に苦しんでいるような時には、増税や国債発行(その市中消化)は民間部門での購買力低下や資金不足をもたらして、経済状況をいっそう悪化させる危険があるわけであるから、それをやってはならない。
(引用ここまで)

冒頭で丹羽は、現在のようなデフレ・ギャップが発生しているとき(2009年当時からデフレが改善されずに10年経過し、2019年に至るも何も変わらず)に増税や国債発行・市中消化は経済を悪化させるからやってはならないと述べています。にもかかわらず、国債はじゃんじゃん発行し、消費税も増税するという禁忌への挑戦をやり続けて二極化と人口減少で消費も低迷し、日本経済は活力がありません。

(ここから引用)
 このような状況のときに、内需拡大による景気刺激のための財政政策を発動しようとするさいには、そのための財源調達は、(3)の通貨発行に依拠するべきなのだということこそが、まさに、きわめてオーソドックスに確立されてきた教科書的な経済学上の大原則なのである。

 周知のごとく、わが国の現行法の規定するところによれば、わが国の「通貨」は「政府貨幣」と「日銀券」より成っている。この「政府貨幣」には、金属で鋳造されたコインだけではなく、「政府が発行する紙幣」すなわち「政府紙幣」も含まれている。また、政府発行の「記念貨幣(記念紙幣)」も「政府貨幣」である。

 このように、わが国の「通貨」を構成している「政府貨幣」と「日銀券」のうち、「日銀券」の場合は、言うまでもなく、それを、いくら発行しても、それ自体では、政府の財政収入にはならない。

 仮に、戦前の高橋是清蔵相のときのごとく、新規発行国債の「日銀による直接引き受け」(これは、現在でも、国会の特別決議があれば可能である)が行なわ れたとしても、要するに、それは、政府が日銀からそれだけの額の借金をしたということにすぎないのであるから、政府が「造幣益」という財政収入を得たわけではない。しかも、よく知られているように、「銀行券」であるところの「日銀券」の発行額は日銀の負債勘定に計上されるのであるから、日銀にとっても、 「日銀券」の発行ということそれ自体からは「造幣益」は得られない。

 平成10年3月末まで施行されていた旧「日銀法」では、日銀が「日銀券」を発行するときには、担保と見なしうるような所定の金融資産的裏づけを必要とするものと規定されていた。しかし、平成10年4月より施行されている現行の「日銀法」では、「日銀券」の発行には、とくに担保を必要とはしないという規定 に改められている。したがって、日銀にとっては負債である「日銀券」が、そのように資産的裏づけ無しのままで、多額に発行されたような場合には、日銀は債務超過に陥ってしまうことになる。そうなれば、国際的な非難も受け、マスコミなどは大騒ぎをするであろうし、金融政策が姑息なものとなり、その信頼度が低下することも避けられないところであろう。
(引用ここまで)

ここで丹羽は内需拡大による景気刺激のための財政政策発動のための財源調達は通貨発行に依拠するのが良策と宣言します。

新規発行国債の日銀による直接引き受けは政府が日銀に借金することになり、対価として渡す日銀券の量がかさむと日銀も負債が増大する、さらに日銀券が資産的裏づけなく際限なく発行されればいずれ日銀も債務超過に陥ると述べます。

(ここから引用)
 ところが、「政府貨幣」(コインのほか「政府紙幣。をも含み、また、「記念貨幣」および「記念政府紙幣」をも含む)になると、この点がまったく異なる。 すなわち、通貨に関する基本法である「通貨の単位および貨幣の発行等に関する法律」(昭和62年、法律第42号)では、「貨幣」(すなわち「政府貨幣」) の製造および発行の権能が政府に属するという「政府の貨幣発行特権」(seigniorageセイニャーリッジ権限)がはっきりと明記(同法第4条)されており、その発行には、なんらの上限も設けられておらず、政府はそれを何千兆円でも発行することができ、担保も不要とされているのである。しかも、発行された「政府貨幤」(「政府紙幣」や「記念貨幤」をも含む)の額は、政府の負債として計上されることもない。その発行額は政府の正真正銘の財政収入となる。 つまり、「政府貨幣」の発行額(額面価額)から、その発行のための原料代や印刷費や人件費などのコストを差し引いた額は「造幣益」 (seigniorage gain)として「国庫」(中央政府の一般会計)に入るわけである。このことこそが、「政府貨幣」が「日銀券」と根本的に違っている点である(大蔵省理財 局・造幣局・印刷局スタッフ共同執筆「近代通貨ハンドブック」大蔵省印刷局、平成6年刊、114ページを参照)。
(引用ここまで)

丹羽は、通貨の単位および貨幣の発行等に関する法律第4条には政府の貨幣発行特権が明記されており、担保不要で上限なく何千兆円でも発行でき、かつ負債として計上されずに財政収入となると述べています。

(ここから引用)
 この両者のあいだの、これほどにも大きな特性の相違は、「日銀券」のような「銀行券」というものの形式的性質が、その銀行が振り出した手形や小切手のよ うなものであるのに対して、「政府貨幣」が発行されるということは、その発行額ぶんだけ、その国の社会が保有あるいは生産・供給しうる財貨・サービスに対 する請求権を政府が持つということを、宣言していることにほかならないからである。つまり、「政府貨幣」は社会の財貨・サービスに対する「請求権証」なの である。これは、まさに「国家の基本権」の一つであり、危急存亡の事態に国が直面したような場合に、政府は、それを大規模に発動して危機乗り切りをはかる ことができるわけである。

 もとより、そのような「政府貨幣」発行による「造幣益」に対しては、政府が利息を支払ったり償還をしたりする必要はまったくない。巨大なデフレ・ギャッ プが存在していて、マクロ的に生産能力の余裕が十分にある現在のわが国のような状況のもとでは、これは、国民(現世代、および、将来世代)の負担にも、 いっさいならない。まさに「打ち出の小槌」なのである。そして、この「打ち出の小槌」を政府財政のための財源として十分に活用して行なわれるように立案された政策案こそが、「救国の秘策」となるべきものである。過去十数年も、筆者自身(丹羽)が提言してきた諸政策案は、いずれも、基本的には、まさに、これにほかならなかったのである。
(引用ここまで)

「日銀券」などの「銀行券」とは、その銀行が振り出した手形である。それに対し「政府貨幣」は社会の財貨・サービスに対する「請求権証」である。政府貨幣発行による造幣益に政府は金利払いや償還の必要もなく国民の負担にもならない打ち出の小槌になると力説するのです。

以上を具体的にイメージすれば安倍首相が閣議を開き額面1000兆円の政府紙幣を1枚作成することにすればそれでいいということです。法案を作成する必要もなければ議会承認もいりません。閣議決定したら財務大臣が1000兆円紙幣を一枚日銀に持参し、日銀総裁に手渡すだけです。政府紙幣は日銀金庫に保管 し、日銀営業局長に下達して国庫金担当者が政府当座預金口座に1000兆円の残高を端末からインプットすればそれでおしまいです。

 政府紙幣を発行すると既存の日銀券とまぎらわしく国民に混乱が起きるという議論をよく聞きますが、高額政府紙幣は市中に流通する一万円札などと金種が重複しないし、第一国民の目に触れることさえないので何ひとつ混乱が起きません。(つづく)
 
 

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