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『安藤昌益からの贈り物 石垣忠吉の物語』 [安藤昌益]

安藤昌益からの贈り物―石垣忠吉の物語

安藤昌益からの贈り物―石垣忠吉の物語

  • 作者: 萓沼 紀子
  • 出版社/メーカー: 東方出版
  • 発売日: 2000/12
  • メディア: 単行本
安藤昌益の晩年を明らかにした二井田資料の発見者石垣忠吉の物語である。プロローグにこうある。《二井田資料から窺い知ることのできる安藤昌益は、温厚そうな、ごく普通の田舎親父像だ。烈しい革命家でもなく、高邁な哲学者でもない。彼、孫左衛門は医者としての見立ての確実さで村人の信頼を集め、預言者的な不思議な魅力によってカリスマ性を発揮する。あるときは村人独特の猥談で人を笑わせ、その猥談にも理屈のあることを語ってみせる。人はみな平等でなければならないと語り、自己中心主義的行為に激しい嫌悪の情を示す。こうした昌益の姿はあるところで石垣忠吉と重なって見える。昌益と同じようにさまざまなことを独学で習得し、すべての人に差別なく真剣に向き合う。自己中心の考え方に、ことのほか抵抗し、人間の真実を見つめようとする。その忠吉が昌益の足跡を捜し当てたのだ》。安藤昌益という人はきっとこんな人だったのかもしれない、石垣忠吉という人について、たしかにそう思わせられた。何よりもその夫婦の関係についてである。恥ずかしながらドキドキさせられつつ読み終えた。

石垣忠吉の物語.jpg安藤昌益に何より親しみを感じさせられるのはその男女論のゆえである。それは、坂本尚の安藤昌益の思想解説を読んだとき思った。いわく男女の愛による結合は「産む」ことの基本であり、夫婦の営みをこれまた昌益独自の概念「直耕」としてとらえた。男女平等についての論理の奥ゆきは深い。江戸時代に「恋愛」といった言葉はなかった。当時の「好色」という語にかえて「華情」という美しい言葉を創造して男と女の愛を土台にした両性の平等な結合を説いたのである。》「いま何故、農文協が昌益全集か」そしてこのたび、『統道真伝』にこんな生々しい記述があることを知った。《「男は外側に進気が覆っているので、その茎を女の内側に挿し入れて動動させる。一方、女は内側が進気なので、門内に男の茎を引き入れて動動する。男は上に覆う から転 (=天)であり、女は下に横たわるのだから定(=地)である。こうして互いに動動するのは、木火の進気のなせる業だ。」》なんとあっけらかんとしたことか。石垣忠吉という人もこの「あっけらかんさ」で共通である。そしてなにより萱沼紀子という著者自身、この「あっけらかんさ」を持ち合わせてのこの著であろう。みんないい人たちにちがいない、そう思わされた。

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