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mespesadoさんによる1億人のための経済談義(33)財政経済政策から見た現代日本史 [mespesadoさんによる1億人のための経済講]

結城豊太郎ijin01_photo1.jpgmesさんのおかげで、第一次大戦以降大東亜戦争までの現代日本史の流れを、財政経済政策の側面から整理をつけることができました。そうしたら思いがけなく、隣町(赤湯)の生んだ偉人結城豊太郎(1877-1951)という人の位置づけも定まってきたような気がしています。今は同じ南陽市ですが、宮内と赤湯はやっぱりちがう町です。日銀総裁、大蔵大臣を務めた結城豊太郎、水道敷設や地元子弟の教育にも貢献した「偉い人」ですが、宮内出身の小田仁二郎須藤永次芳武茂介に対して感ずるような「通ずるところ」がないのです。吸って育ったその空気がちがうのです。そんなわけで、「南陽の偉人」にはちがいないけれどもどう理解しておけばいいのかわからないままでした。

mesさんが引用したデフレで滅んだ戦前の日本(後編)を読んで、敗戦に至る日本の「大失策」が、浜口雄幸内閣による、為替安定優先のためということでの緊縮財政の金解禁で、金本位制に復帰したことにあったことが理解できました。一連のその政策を担ったのが大蔵大臣井上準之助(1869-1932)でした。その井上準之助と結城豊太郎との深い縁は、結城豊太郎記念館の門が井上所有の薩摩藩江戸屋敷の門を移築したものであることからもうかがえます。

デフレで滅んだ戦前の日本で、金解禁に係る井上蔵相の二つのミスが指摘されています。①円とゴールドの交換レートを以前の水準のままにした結果、金解禁のために準備したゴールド3億円の70%以上がわずか6ヶ月で海外流出したこと ②金解禁前年の世界恐慌の始まり(1929)を甘く見て、結果的に日本の輸出産業を壊滅状態に追い込んだこと、この二つです。結果的に昭和7年(1932)5月15日の犬養首相殺害を経て政党政治の終焉、軍部による実権掌握、そして戦争への道を歩むことになります。とすると結城豊太郎の役割は井上蔵相の失敗の始末をつけることではなかったのか、というのが今朝の段階の私の理解です。ただ結城に「井上蔵相の失敗」という認識があったのかどうか、その辺に関心を向けてみたいと思ったところでした。

結城豊太郎は今の山形東高出身です。つい米沢興譲館と比較してしまいます。さらに、村山気質と置賜気質のちがいも思ったりして、7年前に書いた「日本一の芋煮会」への苦言を思い出したりしてしまいました。

*   *   *   *   *

978:mespesado :
2018/10/08 (Mon) 12:06:00

 めいさんのブログ「移ろうままに」で私の >>971 を取り上げていただきました。ありがとうございます。で、そこで私の過去の記事も参考として引用していただいたのですが、その中で、

デフレで滅んだ戦前の日本(前編)
http://blog.livedoor.jp/archon_x/archives/2466947.html
デフレで滅んだ戦前の日本(後編)
http://blog.livedoor.jp/archon_x/archives/2488245.html

という記事にリンクを貼っていたことがあり、その時はただリンクのみでコメントはしていませんでした。そこで、改めてその記事の内容を要約しておきます。まず基本的な知識として、

 金本位制=金解禁=為替固定+兌換紙幣
 金本位制の停廃止=変動相場制+不換紙幣
ということに注意して、記事内容を時系列で要約すれば、

   貿易の利便のため(当時の日本を含む)世界の大国は金本位制
                ↓
            第一次世界大戦勃発
                ↓
      戦費捻出のために欧州諸国は金本位制を一時停止
                ↓
        第一次世界大戦の特需で米国は大儲け
                ↓
  欧州諸国は、好景気の米国への輸出で儲けようと金本位制に復帰
                ↓
             関東大震災発生
                ↓
    公的資金投入で、日銀が被災企業の不良債権を引き取る
                ↓
 戦後バブル崩壊による経営不振企業がドサクサで日銀に不良債権持ち込み
                ↓
  公的資金投入が想定外に膨らみ、日本は金本位制への復帰を断念
                ↓
         政友会から立憲民政党に政権交代
                ↓
 浜口内閣、為替安定優先のため、緊縮財政の金解禁で金本位制に復帰
                ↓
 円と金の交換レートを昔のままで復帰 + 大恐慌勃発時に金解禁断行
         ↓                ↓
 海外投機筋の円買売で金が大流出 絹産業が米への輸出壊滅で大打撃
         ↓                ↓
     大量失業と景気対策不能で大不況のデフレスパイラルへ
                ↓
   浜口首相と井上蔵相がテロで死亡 + イギリスが金本位制離脱
                ↓
      立憲民政党から政友会へ政権交代、金解禁中止
                ↓
     時すでに遅し~政党政治への不信~5.15事件勃発
                ↓
           海軍大将の斎藤首相就任
                ↓
       金本位制でないため軍事予算拡大で円安に
                ↓
   輸出企業が儲かり空前の好景気で世界で最初に大恐慌から脱出
                ↓
    戦争特需への依存~「国債の日銀引き受け」で費用捻出
                ↓
            第二次世界大戦の破局

 石破茂氏の浜口雄幸記念館訪問に対する高橋洋一さんによる批判記事がありましたが、これは上記中「浜口内閣、為替安定優先のため、緊縮財政の金解禁で金本位制に復帰」という行に該当し、今日では日本の大失策として有名になっています。
 それからもう一つ重要なのは、上記の流れで第二次大戦の悲惨な破局を迎えたのは戦争特需で味を占めたためだ。そしてそれが可能だったのは「国債の日銀引き受け」のせいだ、という「反省」から今日の財政法4条と5条の縛りが作られた、という話題もありましたね。しかしこれは、半分はWGIPの洗脳が絡んできます。こういう「反省」は、よく考えると「日本が主体的に起こす戦争を防ぐため」でしかありません。そしてこれは、今日のサヨクが本気で信じている「憲法9条を改正すると、待ってましたとばかり日本が主体的に戦争を起こすかもしれない」という考えそのものです。つまり「国債の日銀引き受け」という、今日のデフレ環境では可能であった方が明らかに都合がよいはずの政策が禁止されたままでいいという発想が、実はWGIPの洗脳によるものである。だからWGIPに洗脳されたままのサヨク系論者や野党の間では、未だに緊縮財政を熱心に主張する人が多い、ということを肝に銘じる必要があります。

979:mespesado :
2018/10/08 (Mon) 12:27:45
host:*.itscom.jp

>>978
 さて、この記事は、民主党政権下の、まさに緊縮財政下で書かれたものなので、最後は次のように締めくくられています:

> さて、金解禁の失敗から80年が過ぎました。

> 今再び日本は不良債権処理、円高、デフレという同じ試練に直面してい
> るようです。
> 80年前の失敗を繰り替えすことなくこの局面をのりきることができる
> のか。
> 民政党と井上準之助蔵相が出せなかった経済政策の正解を、民主党と与
> 謝野馨蔵相が出すことができるのか。

> 正直あまり期待できないのが、どうも困ったものですが。

 ここで出てくる与謝野馨氏ですが、もともと自民党議員で、小泉内閣では内閣府特命担当大臣(金融、経済財政政策)で、消費者物価指数がマイナスにもかかわらず、量的緩和解除のゴーサインを出し、「デフレのほうが良い。インフレは絶対悪だ。だから物価上昇率がプラスになったら悪魔である」と語っていた、ということですから、バリバリの緊縮財政派ですね。
 のち、自民党を離党し、民主党政権下で政権に加わり、民主党政権下でのデフレ推進に“貢献”したわけですが、もともと消費税増税による財政再建を解く財政再建派で増税派であり、いわゆる霞が関埋蔵金の活用論に対しても批判的な立場をとり、「上げ潮派」(ありましたね、そんな言葉)と呼ばれる人達とも対立する立場をとっていたそうです。
 また、第一次安倍内閣でも内閣発足時に与謝野を内閣官房長官に起用する人事を構想していたものの、与謝野が官僚寄りの姿勢を取っていることから官僚嫌いで知られる塩崎恭久が起用されるという経緯があったようですが、
結果的に第1次安倍改造内閣で官房長官として入閣しています。また、日銀による国債直接引き受けについて、特別な事由がある場合、国会の議決を経れば可能であり、現時点でも日銀は年に10兆円程度の国債直接引受を実施しているにもかかわらず、「法律が禁じているため、不可能だ」と発言し復興増税を推進した、という経緯があります。
 とにかく森永卓郎獨協大学教授にも「財政再建を優先する与謝野の主張は財務省の主張そのもの」と批判されており、与謝野氏自身が「経済書は日銀OBの吉野俊彦の岩波新書を一冊読んだだけだ」と告白していたそうです。
 今になって振り返るとトンデモない政治家ですが、当時はそこまで問題のある政治家だとは考えていなかったな~と今になって反省しています。

980:mespesado :
2018/10/08 (Mon) 14:03:58
host:*.itscom.jp

>>979
 「上げ潮派」という言葉が出たついでに、経済財政に関する4つの主義主張があったのを思い出したので整理してみます。
 (1)財政再建派(増税派)
 (2)積極財政派(バラマキ派)
 (3)上げ潮派(構造改革派)
 (4)リフレ派(金融政策派)
という4つの流儀があるようで、それぞれの定義は まず(1)の財政再建派は、とにかく「国の借金は早く返そう」という主義で、そのためには増税、特に消費税を増税すべきだ、という考え方のことです。
 次に(2)積極財政派とは、民間がオカネを借りないから国が借金して公共事業に投資して経済を活性化しようという考え方。
 次の(3)上げ潮派は、国家による市場への介入を減らして自由に経済活動をしてもらい、その自由な企業活動による経済成長により、法人税や消費増による税の自然増により財政赤字も減少するという効果を狙う考え方。
 最後に(4)のリフレ派は、金融緩和によりインフレを起こし、早くオカネを使わなければ損だと思わせることにより消費を促して経済を活性化しようという考え方、ということになります。
 さて、まず(1)ですが、これこそ通貨発行権のある国の「財政」を家計や企業のそれと同一視することによる「財務省の洗脳」ですから、本来荒唐無稽で、考慮する必要は全くありませんね。ですが、国民も国会議員もほとんどがこの財務省の洗脳下にある以上、こういう主義者の「存在」を「無視」することができないのは実に残念です。
 それから一つ飛んで(3)ですが、この主義はそもそも「新自由主義」という利己的な人たちの主義主張を正当化するためにできた考え方であると言っても過言ではありません。実際、この主義の下で放置しておくと、一部の商売の悪知恵が働く連中だけが得をして、格差ばかりが広がるので、それを「トリクルダウン」理論で上部の儲けが下にも降りていくんだよ、などと主張するのですが、デフレ経済下ではどの階層も将来が不安で自分のところで溜め込もうとするので、富がちっとも下まで行き渡りません。
 そして(4)のリフレ派ですが、これは日銀が金融機関から国債を買い上げて、その代金を民間銀行の当座預金に振り込むから、そのオカネをジャンジャン貸し出しなさい、という政策ですが、そもそもデフレで低成長なのでどこも資金需要が無く、せっかく振り込まれたオカネの使い道が無く、ちっともインフレになりません。それなのに、今の安倍政権はリフレ派の理論を正しいと信じて金融緩和に勤しんでいますが、異常な円高が緩和されるという効果だけは現れたので、輸出企業を中心に連鎖的にあらゆる企業が息を吹き返し、一変して労働者の売り手市場になり、雇用の劇的な改善という成果を挙げているわけですが、反面一向にインフレ目標にはいつまでたっても到達せず、消費も伸び悩んだままです。
 そして最後に(2)の積極財政派ですが、これは日本がデフレに突入した時最初に試みられたのですが、国が国債をジャンジャン発行してオカネを増やしても、今まで借金していた企業が右肩上がり経済が終わって将来に不安を感じ始め、借金を増やすどころか今ある借金を返さなければということで、信用創造の逆で信用収縮が蔓延し、いくら財政出動で政府がオカネを増やそうとしても、他方で信用収縮で市場からオカネが減っていくのですから効果は相殺し、ちっとも景気はよくなりませんでした(いわゆるバランスシート不況)。このため、人々の間に「財政出動は効果が無い」という印象がインプットされてしまったのは残念です。
 結局今の目で見ると、(1)は論外。(4)は「インフレになる」という部分の理論は間違っているが、「金融緩和すべし」という部分は正しい。しかし「金融緩和」だけでなく、これに(2)の「財政出動」をプラスすることで、初めて「国がオカネを刷って、その刷ったオカネを市場にばら撒き続ける」ことができて、企業の収益が、単に円高是正で一時的に増えるだけでなく、増加した収益が安定モードになり、そこでようやく企業は安心して労働者への還元を増やせるようになる、ということで、その先にようやく消費を伸ばす、という最終目標が達成できるようになるのです。
 さて、最後の残る(3)ですが、実は「構造改革」とはそれそれの産業の効率を高める効果がありますが、これを急激に行うと既存の産業を壊滅させることがありますから用心しなければならないのですが、いくら国内で産業を保護して「改革に抵抗」しようとしても、先に海外で改革されてしまったら国内産業を守りようがありません。ですから「慎重に、国内産業のダメージを極小にしながら」改革し続ける方が長い目で見て正解なのです。これは安倍政権が米ネオコンの企みであるTPPを、拒否ではなく逆に受け入れて、逆に「チーム甘利」の必死の逆襲でネオコンの企みを吹き飛ばしてしまったという成功事例が参考になると思います。
 というわけで、経済政策については、古典的な4つの流儀に囚われるのではなく、現状や将来性などを多角的に考え、それぞれのよいところをハイブリッドで混ぜながら最善の方法を探っていくのがよいと思います。

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