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mespesadoさんによる1億人のための経済談義(32)「家計・企業会計」とちがう「国の会計」 [mespesadoさんによる1億人のための経済講]

これまで何度もくり返されてきた議論ですが、しっかり納得しておきたい大事な議論です。関連議論を掘り起こしておきます。

・mespesadoさんによる1億人のための経済講座(2)
https://oshosina.blog.so-net.ne.jp/2017-12-08
・mespesadoさんによる1億人のための経済講座〈Ⅱ〉(番外編3)「 国家財政の破綻 」とは
https://oshosina.blog.so-net.ne.jp/2018-02-03

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971:mespesado :

2018/10/07 (Sun) 09:45:25
host:*.itscom.jp
 へっぴりごしさんのとこで取り上げられていた石破氏の発言についてのアノニマスポストの記事:
石破氏「麻生氏留任はいい。問題は先進国最悪の財政をどうするかだ」
http://anonymous-post.net/post-2505.html
 確かに、石破氏の発言だという
> 今一番大事なことは先進国最悪の財政をどうするか。
という認識は本当にヒドい。まさに財務省の洗脳下になければ出て来るはずのない発言であることは確かです。
 ですが、この発言に対する「ネットの反応」も、中には問題のあるものが散見されます。まず問題のない方はこちら↓

> 石破氏「麻生氏留任はいい。問題は私だ」
> 先進国最低?まさか国債の話してんの?
私は経済オンチです、って自白するスタイル
> こんな間違えた認識で官僚とズブズブだから総裁に離れないし
> 党内にも居場所はないから当初の予定通り野党統一候補の党首となれ

> へー先進国最悪の財政ねぇー
> で、どこが悪いのか具体的に抜き出してみてよ?
> いつものごとく「~であるべき」だとか「~な気がしてならない」しか
> 言えないだろうけど
> こいつはいったいどんなデータ見て言ってるんだ?
> 最悪の財政なのに国債金利は超低いのはなぜですかねぇ
> 石破さんw

> 石破は経済が分かってないことが見抜かれているから、もう首相は無理
> だろうなぁ
万が一首相になったら、また民主党時代並みの最悪の時代になると思う

 これらの論評はいいです。しかし問題なのはこれ↓

> 日本の財政って、言うほど最悪か?

> 財政再建はほぼ終了している
> 経済のことがまるで分かってない
> そんなこといってるから、総裁になれないんだよw

> 27年連続で対外純資産世界一の日本なのに?www
> 資産があるのに借金だけ見てどうするの?低脳。
> 先進国最高の対外債権があるから大丈夫だよドアホw

 ①番目、②番目、④番目の発言は、おそらく高橋洋一さんなんかに感化された「バランスシート」論で、残る③番目と⑤番目は「対外資産があるから大丈夫」論。
 しかし、これらは通貨発行権を持つ国(統合政府)の財政問題としては、はっきり申しまして「間違った認識」です(キッパリ)!
 既に何度か説明したことではありますが、ここで改めて復習しておきます。
  まず最初のバランスシート論、つまり「貸借対照表」を作って、「負債」だけでなく「資産」もきちんと評価して、負債が資産を上回る「負債超過」になってさ えいなければ財政は健全である、というのはあくまでも「家計」や「企業会計」の場合の話です。これは複式簿記といわれる会計制度で、これらの会計では、当 期の収入と支出がバランスしていることを要請する「損益計算書」のほかに、「現時点で契約が確定している項目に関する将来の収入と支出がバランスする」ことを保証する「貸借対照表」を作らなければなりません。つまり、「負債」とは、将来の契約上確定している支出を現在価値に割り戻して合算したもの「資産」とは、将来の契約上確定している収入を現在価値に割り戻して合算したもの、というのが本来の趣旨ですが(特に私のいる生命保険業界ではそうです)、もう一つの意味として、「今会社を畳んだとしたら、資産を現金化して負債を払いきって、不足無く精算できる」ことを保証する、という意味があります。
 ですから、「貸借対照表」=「将来の損益計算書全体の現在価値」ということなので、損益計算書が意味を持たなければ貸借対照表も意味を持ちません。ですから、高橋さんのバランスシート論:「国の会計は資産も考慮に入れれば債務超過ではない」は、国の損益計算書が意味を持つということを前提にした議論です。ところがこの前提自体が成り立たない
 国(正確には政府+日銀の統合政府)は通貨発行権がありますから、「歳入」は国家の収益ではなく、「歳出」は国家のコスト、ではありません。そもそも「円」を発行している発行主体なんですから、当の国が「円」を損した得したという概念そのものが意味を持ちません。通貨発行権を持つ国は、あくまで自ら発行している「円」の価値をコントロールする権利と義務を持つだけ。だから、円を自ら発行しすぎたり信用創造で市場で勝手にオカネが増えて、過度にインフレになりそうだったらオカネを回収するために「税金」という名目で市場からオカネを回収するだけ。ですから国の「歳入」と「歳出」の間には、両者比較してどちらが大きいとか小さいという概念そのものに会計上の意味は全くありません。単に過度なインフレが防げればよい。しかし今の日本では供給力過多なので、オカネが増えすぎてもインフレにすらならない。だから歳出にはまだまだはるかに余裕があるの です(極端なことを言えばヘリコプターで札束をバラ撒いたっていいのですが、大多数の国民が以上のカラクリを理解していない現状でそんなことをすれば、 「円に対する不信」という別の恐怖から、円の受け取りを拒否する商店が現れて、円に対する信用が一挙に失われて通貨としての価値を失う可能性があるので、 今の認識の下では、やはり円の発行には限度があります。が、財務省の言うようなチンケな限度ではありません。国家予算の10倍程度のオカネの増刷くらい余 裕でしょう)。
  さて、初めに戻り、2番目の「対外債権があるから大丈夫」論ですが、確かに外貨を持っていることは「いつでも生活必需品が輸入によって確保できる」という 意味で、また「逆に対外負債を抱えてると、外貨で借金を返さなきゃいけないので不安」になるという意味でたいせつではあります。でも自国の生産供給力が低 いと、いつかは外貨も底を尽きますから、潤沢な対外債権の存在による「安心」は一過性のものに過ぎません。だから、対外債権の存在による安心論も本質を突いていません
 やはり本質は、自国の大きな「生産供給力」こそが本質です。ただ、悲しいかな、この「生産供給力」は会計上それを表す概念が存在しないので、大変わかりにくいものとなってしまっています(例の「全要素生産性」の増加率が「実質GDP」の増加率に占める割合、という指標は、それこそが生産供給力の指標とも言えるものですが、残念ながら、これは「会計学」の概念ではありません)。

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