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生産力の借金返済への流出(Paul Craig) [置賜自給圏構想]

本業の染物業、それなりに働いているはずなのに、家内にはいつも「金がない、金がない」と言われて頭が上がらない。一年前に『お金の秘密』(安西正鷹著)を読んでアマゾンレビューにこう書いた。

《お金の仕組みのいかがわしさは「信用創造」において極まる。銀行から借金して通帳に書き込まれる数字には原価も何もない。しかしその数字が記入されるやいなや、その対価として、その数字に利息を加えて「稼ぎ」によって小さくしてゆかねばならない義務が生ずる。こうして国も企業も個人もこの幻に過ぎない数字に追いまくられた日々を強いられる世の中になってしまっている。》

世界中が、この「いかがわしさ」に絡めとられている。置賜自給圏構想が目指すべきは、このことからの解放であると、以下の記事を読んであらためて思った。みんなが豊かになるための道を足もとから築いてゆく。


Paul Craigさんについては、TPPに至る歴史的経過と根底的問題点でも書いています。

 

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マスコミに載らない海外記事
2016年4月 9日 (土)

我々にとって必要な今、マルクスとレーニンは何処に?
Paul Craig Roberts
2016年4月8日

http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2016/04/post-13a6.html

マルクスとレーニンは時代の先を行き過ぎていた。マルクスは、雇用の海外移転と、経済の金融化の前に本を書いた。レーニンは、封建的な要素が資本主義より優勢だった国で、時期尚早に起きた共産主義革命を指揮した。21世紀において、アメリカ資本主義は、資本主義を民主化し、資本主義を社会に役立つようにしていた規制に拘束されていない。今日、資本主義は金融化しつつあり、生産力は借金返済へと流出する結果となっている。

私が若者だった頃、百万ドル所有する個人は大金持ちだった。数百万ドル以上持った人は誰でも途方もない金持ちと見なされた。今は何十億ドルも所有している人々がいる。

消費者に販売する商品やサービスを製造して何十億ドルも稼いだ連中はまれだ。

欧米でのみならず、ロシアや中国でも、経済政策を指示しているネオリベラル経済学者、は、不正確にも、得た金は、稼いだ金だと主張している。実際、1パーセント以下の人々は、一体どのように、連中の何十億ドルを稼いでいるのだろう?

連中は、それを、政治的コネと、もっぱら金融取り引きで稼いでいる。

強硬派共産党幹部が、ゴルバチョフ大統領を拉致した結果、ソ連が崩壊した際、ロシア国内の良いコネを持っていた連中や、ソ連の一地方であるウクライナで特にワシントンとイスラエルと良いコネを持っていた連中が、かつては国有財産だったものを、膨大に所有することになった。

アメリカでは 企業のレバレッジ買収への銀行融資で、億万長者が生まれる。乗っ取りは、企業年金を削減し、乗っ取り融資を清算するのに企業の現金を使い、乗っ取り屋のための富を生み出す。企業と、その従業員が壊滅させられることが多いが、乗っ取り屋連中は、膨大な額の金を持ち去る。新規株式公開の操作も、証券化デリバティブ同様、もう一つの富の源だ。

古典派経済学者と、現代のマイケル・ハドソンは、こうした利益を、実質生産量の増加を必要としない“経済地代”所得と定義している。言い換えれば、こうした億万長者の富の獲得は、本当の生産物の製造ではなく、搾取に基づく一種の寄生だ。利得は、製造からの収入を、借金の返済に流出させた結果だ。

現在の資本主義経済は、マルクスが考えていた以上にひどい機能不全だ。過去二十年間 欧米経済は、非常に裕福な人々以外は、誰のためにも機能しておらず、搾取される大衆は、搾取を甘んじて受け入れている。欧米の大衆は、奴隷と同じようなものだ。

人が何十億ドルも所有する理由などない。金は個人の政治権力を選挙民の権力よりも上に押し上げる。実際、金が選挙民と化すのだ。金は、政治支配力を買収するのに使われ、代議政治を破壊する。シェルドン・エーデルソン、ジョージ・ソロスやコーク兄弟などの億万長者たちが、億万長者の財産を、自分たちの権益のためになるよう、アメリカ政府を支配するのに使っている。共和党が多数派の最高裁が、連中がやり易いようにしたのだ。

ロシアと中国における金融権力の台頭は、こうした国々の中に、アメリカ国内のもの同様、政府から自立した私的権力中枢を生み出した。こうし権力中枢には、少数者の手中に富を更に集中するべく、政府を占拠して、公職を利用する能力がある。ロシアと中国における民営化は、連中がヨーロッパやイギリスで持っているような、一部の私的権益の独立した権力を強化する。ネオリベラル経済は、最終的に、私的な金が政府を支配することを保障している。

イギリスのオックスフォードを本拠にする国際慈善団体Oxfamが、62人の億万長者たちが、世界の富の半分を所有していると報じている。

自分より、秘書の税率の方が高いと言ったのは、最も裕福な超億万長者の一人ウォーレン・バフェットだ。もし政府がこれを改めなければ、革命が改めるだろう。

だが少なくともアメリカでは、有権者にはどうやらその気がない。1億5300万ドルものクリントン講演料が裏付けている通り、ヒラリーは、1パーセントの代表だが、大統領の座を目指すヒラリーの野望を支持する投票をして、99パーセントは自滅している。圧倒的多数のアメリカ人は能なしだといったH. L. メンケンは、どうやら正しかったようだ。

http://www.marxist.com/sixty-two-billionaires-own-half-the-world.htm

Paul Craig Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリプス・ハワード・ニュー ズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼 の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Order. が購入可能。

記事原文のurl:http://www.paulcraigroberts.org/2016/04/08/where-are-marx-and-lenin-when-we-need-them-paul-craig-roberts/
On 2016/04/09, at 20:31, Facebook wrote:


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めい

TPPとは、《選挙で選ばれる政府より上位で、そうした政府を支配する力を持った、秘密の、責任を負わない政府》を認めることである。

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マスコミに載らない海外記事
2016年4月11日 (月)

大西洋横断 および 環太平洋“パートナーシップ”大企業による完全な世界征服
Paul Craig Roberts
2016年4月9日

こうした“パートナーシップ”が最初に発表された際、私が強調したように、狙いは、大企業に、事業を行う国々の法律から免れる権利を与えることだ。この免責の基本的な仕組みは、大企業の利益を侵害する法律や規制を施行している政府や、政府機関を、大企業が訴える権利を与えることだ。例えば、フランスのGMO食品禁止は、“パートナーシップ”のもとで“企業利益を損なう、貿易に対する制限になる。

“パートナーシップ”は、主権政府の裁判制度外の大企業が要員を配する“裁定委員会”を設定する。訴訟が行われるのは、この大企業裁定委員会なのだ。言い換えれば、大企業が、裁判官で、陪審員で、検事なのだ。連中が負けるわけがない。“パートナーシップ” set up選挙で選ばれる政府より上位で、そうした政府を支配する力を持った、秘密の、責任を負わない政府。

この制度の“ファスト・トラック”を成立させた国会議員連中が一体どれだけの金を大企業からもらい、議員連中が協定を批准すれば、一体どれほど賄賂をもらえるかお考え願いたい。アメリカ、イギリス、ドイツや他国の官僚連中が、大企業による支配を代表して熱心に動いているの目にしているが、彼等はたんまりもらっていることがわかるだろう。

マーガレット・サッチャーの保守党政権で、貿易産業大臣をつとめ、現在もイギリス議会保守党議員のピーター・リリーが、わざわざ、大西洋横断パートナーシップを検討し、警告してくれている。政治家ゆえに、本人が思うほどの強い物言いはできていないが、彼の説明で概要はわかる。それに関するEric Zuesse記事はこれだ。http://www.strategic-culture.org/news/2016/04/09/british-conservative-breaks-ranks-opposes-ttip.html 該当記事の日本語訳イギリス保守党議員が造反し、TTIPに反対。

いささかでも品位と愛国心のある国会議員なら、誰も決してこのような協定を認めるはずはなく、完全には堕落していない、どの立法府も、自らの権限と機能を世界的企業に引き渡すはずがあるまい。

記事原文のurl:http://www.paulcraigroberts.org/2016/04/09/trans-atlantic-trans-pacific-partnerships-complete-corporate-world-takeover-paul-craig-roberts/

by めい (2016-04-11 05:01) 

めい

パナマ文書の波紋はどこまで広がるか。
《高額所得者は、それなりの納税をして国家社会を支える、ということは民主主義の要ではなかったか。・・・「タックスヘイブンは、富裕層や大企業が課税から逃れて負担すべき税金を負担しないことに使われ、犯罪の収益やテロ資金の移送に使われ、巨額の投 機マネーが繰り広げる狂騒の舞台にも使われている。その結果、一般の善良かつ誠実な納税者は、無用で余分な税負担を強いられ、犯罪やテロの被害者になり、 挙句の果てにはマネーゲームの引き起こす損失や破たんのツケまで支払わされている」
 政治は誰が動かしているのか。パナマ文書は民主主義の在り方を問うている。 》

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≪ 「パナマ文書」の税逃れ問題に
  各国が本腰を入れない真の理由

タックスヘイブンに隠匿された資産の一端を暴いた「パナマ文書」が世界を震撼させている。アイスランドで首相が辞任、英国ではキャメロン首相が窮地に立たされている。ロシアのプーチンも中国の習近平も強烈なボディーブローを食った。
 隠匿資産にはいろいろある。権力者が私腹を肥やした財産を隠すのは途上国に多く、先進国では金持ちが税金逃れの財産を隠す。
 どちらも国家・国民に対する重大な背信行為だが、利用者たちは「法に触れることはなにもしてない」と言いつのる。
 先進国はどこも財政難で、増税や歳出削減が叫ばれている。だったら真っ先にすべきは、税金を払うべき企業や個人が、合法的に逃げる「租税回避」の解消ではないか。ところが対策は遅々として進まない。なぜか。
 タックスヘイブンを必要とする勢力が強いからだろう。多くの国で、指導者が関与していたことをパナマ文書は明らかにした。
 「警察署長が事件の黒幕」みたいな話である。背後には、もっと深い闇がある。金融ビジネスの闇である。 「伊勢志摩でタックスヘイブン対策」も 茶番に終わる公算が大  安倍首相が議長を務める伊勢志摩サミットで「タックスヘイブン対策」が話題となる、という。各国では手が及ばない難題こそサミットにふさわしい。首脳が集まりながら「パナマ文書」を無視することはできまい。
 14日のG7財務省・中央銀行総裁会合の議題に上がるという。納税は国家の土台だ。財政・金融の責任者が真剣に向き合う課題だろう。だが、結論は 見えている。「経済開発協力機構(OECD)の作業部会で進められている対策の進展に一層の力を入れる」というような文言が声明に盛られ、お茶を濁すこと になるだろう。
 タックスヘイブンは2013年、北アイルランドのロックアーンで開かれたG8サミットで主要議題として取り上げられた。議長は英国のキャメロン首相。この年は多国籍企業の脱法的節税が問題になっていた。  グーグル、アマゾン、マイクロソフトなどの多国籍企業がタックスヘイブンにペーパーカンパニーを作り、帳簿上の資金を経由させることで税金を逃れ ていた。英国では、スターバックスが積極的な事業展開をしながら税金はほんのわずかしか払っていないことが議会で問題になった。
  「徴税の公平を歪めるタックスヘイブンの利用」を声高に批判していたキャメロンはサミットの議題に取り上げたのである。 納税回避だけではない。「テロとの戦い」はテロ資金を封ずることなしに進まない。対策は米国にとっても重要度を増していた。
 このサミットが茶番だったことは「世界かわら版・第38回」に書いた通りである。議事を仕切ったキャメロンは、形ばかりの対策で問題を先送りした。タックスヘイブンの裏でロンドンの金融街シティが重要な役割を演じているからである。
 英国が敢えてサミットのテーマに選んだのは、フランスやドイツが議長国の時に国際租税問題が議論されることを避けたかったからと推察できる。英国の金融界が節税に一役買っていることにEUの大陸諸国は厳しい目を向けている。 ロンドン金融街シティと英政府、 タックスヘイブンの密接な関係  キャメロン首相は親の代からタックスヘイブンに深くかかわっていたことが今回明らかになった。当事者だからこそ自分の手で穏便に済ませたかったのだろう。
 キャメロン家の構造に、タックスヘイブンと政府の関係が見える。家系はエリザベス女王の遠縁にあたるという。 「近代英国の金融界で重きをなした人物が多く、父・イアンに至るまで代々投資銀行パンミュア・ゴードンの経営に携わっている」  ウィキペディアにそう書かれている。
 シティの有力者であった父親はカリブ海の租税回避地に会社を設立し、財産を運用していた。息子は上流階級の子 弟が集まるイートン校に入れた。デイビッドはオックスフォード大学に進み哲学・政治学・経済学で優秀な成績を残し、22歳で保守党調査部に入った。サッ チャー・メージャー両政権で政策の作成に従事し、財務大臣のスピーチライターも務めた。
 シティの金融業者は、いわば「ベニスの商人」で、隠然たる力はあっても政治の中枢にはいない。この流れが変わったのが金融資本主義の到来である。貴族に代わって実業家が力を持ち始める。
 製造業が衰退した英国は、サッチャー政権の下でシティの大改革「金融ビッグバン」に踏み切る。大胆な規制緩和で世界からカネを呼び込む金融立国への道は、キャメロンが調査部にいたころ築かれた。
 金融取引には不正や暴走を防ぐ様々な規制(ルール)が設けられている。一方でカネ儲けしたい人たちは規制を嫌う。「抑制的なルール」と「金儲け願望」が綱引きしているのが金融市場である。
 サッチャー首相は「自己責任」を掲げ、金融の自由化に舵を切った。典型が「オフショア市場」だ。シティの銀行が扱う「海岸線の外側での取引」にサッチャーは活路を見出した。 預金者からカネを預かる銀行は、損失や不正が起きないよう厳格なルールが欠かせないが、それとは別に「金融特区」のような別勘定をシティの中に広く認め、国外から来て、国外に出てゆく「外―外取引」はオフショア勘定で自由にどうぞ、という政策である。
 自由=緩いルール=金儲け願望の全開、である。そこにタックスヘイブンがからんだ。 「緩いルール」だけでは安心できない金持ちは少なくない。他人に知られたくないカネを抱えている人だ。オフショア勘定であってもロンドンの街中に置いておくのは心配だ。
 そこで金融業者が目を付けたのが、女王陛下の属領であるカリブ海やドーバー海峡の島である。
 金融街も取引所もないヤシの繁る風光明媚な島が、実体のない「ペーパーカンパニー」の巣窟になった。小さなオフィスビルに数千社が登記されている。 「パナマ船籍」の貨物船が世界中の港にあるように、名義だけがタックスヘイブンにあり、カネを運用するのはシティの投資銀行、という仕掛けだ。キャメロン首相の父親は、こうした仕事をしていたのだろう。
 パナマ文書の漏洩元であるモサック・フォンセカ社は、現地で会社登記など実務を担当する会社だ。いわば司法書士のような仕事である。「口が堅いことで知られていた」というが、経営者が頑固だったからではないだろう。聞かれても言わないで済む、強い後ろ盾があった、ということだ。
 背後には、顧客を紹介し、その財産を管理・運用する銀行が控えている。モ社はその手先という役回りである。
 おカネは現金とは限らない。ほとんどは銀行口座の預金となっている。あるいは国債やデリバティブのような金融商品として口座で管理されている。 タックスヘイブンの会社には現金や財宝は保管できない。会社の登記があるだけで「隠匿資産」の管理運用は銀行抜きにはできない。タックスヘイブンは金融資 本の便利な道具に過ぎない。 英国と香港のコネクションから 習近平首席らの名前も浮上  パナマ文書には、モ社は1万5600社のペーパーカンパニーの設立にかかわった記録がある、という。スイスのUBS、クレディスイス、英国のHSBCなどが関係していた。
 スイスの銀行は元祖タックスヘイブンである。永世中立の国家を盾に個人情報の秘匿を売りに世界から資金を集めていた。ナチに処刑されたユダヤ人の 資産を独り占めにしたことや脱税協力などが問題にされ、秘密主義に風穴があき、海外のタックスヘイブンとの連携が必要となった。 HSBCは、前身が香港上海銀行である。英国が中国支配のために設立した銀行だ。かつては上海の金融街の中心にあり、共産党が政権を取ったあとは香港に拠点を移し、中継貿易を裏で支える銀行だった。
 シティの強みは植民地ネットワークである。カネを糸口に権力とつながり情報ルートや人脈を太くしてきた。香港返還でHSBCは英国に本店を移し、 英国第3位のミッドランド銀行を合併して今や世界屈指の銀行に成長した。膨張する中国経済がビジネスを大きくした。中国の風土で育った銀行である。危ない 橋を渡る銀行としてHSBCは有名だ。
 今回、習近平国家主席ら中国要人たちの親族の会社も明らかになった。中国をカリブ海の島につないだ誰かがいるのだ。キャメロン政権は中国が主導し たアジア国際投資銀行(AIIB)にいち早く賛成するなど、金融では米国と一線を画した政策をとっている。香港を通じてつないできた人脈を生かし、中国マ ネーをシティに取り込む英国の姿が浮かぶ。
 香港、シンガポール、マレーシアのラブアン島。英国がアジアに育てた金融拠点だ。今や発展著しいアジアの資金を吸い込むネットワークとなり、カネと情報が一緒に流れる。
 キャメロン政権がEU内で「英国特別扱い」を主張してきたのは、外交と金融で生きる英国の特殊性を守りたいがためだろう。
 投資銀行の家系に生まれ、絵に描いたようなエリートコースから政界入りしたキャメロン。影の支配者だった金融資本が表舞台に送り込んだ政治家ともいえる。その足元からシティのスキャンダルが噴き出たのである。 近代資本主義・民主主義からの明らかな逸脱 タックスヘイブンは金融危機とも無関係ではない  バドミントンの有名選手が五輪目前に出場資格を剥奪された。違法カジノに出入りしていたことで処分された。有名な元野球選手が覚せい剤で捕まった。
 違法カジノも覚せい剤も、お客が罰せられた。悪事に手を染めたのだから当然の報いだろうが、「悪事のシステム」を作った供給者の責任はどうなのか。当然、捜査の対象になる。
 パナマ文書で「お客の悪事」が世界で大問題になっている。お客に「悪事のシステム」を供給した側、すなわち金融資本の責任追及はどうなっているのか。
 タックスヘイブンは「悪いこと」ではないのか。利用者は「合法的な節税」という。だれもが利用できる制度なら、節税という言い訳も成り立つかもしれない。だが、海外に会社を設立して資金を移す、ということは誰もができることではない。 高額所得者は、それなりの納税をして国家社会を支える、ということは民主主義の要ではなかったか。金持ちはタックスヘイブンで合法的に節税ができる が、中・低所得者は厳格に徴税される、という仕組みで社会は成り立つのか。勤勉と公正を大事な価値として発達してきた近代資本主義や民主主義の思想から明 らかな逸脱が起きている。
 パナマ文書には、日本を代表するメガバンクの名が英文で書かれている。タックスヘイブンで税金逃れを手伝っている疑いがある。事実だったらとんでもないことだが、菅官房長官の反応には仰天した。
  「文書の詳細は承知していない。日本企業への影響も含め、軽はずみなコメントは控えたい」。政府が率先して調査すべき問題ではないのか。
 「タックスヘイブン――逃げてゆく税金」(岩波新書)の著者、故・志賀櫻氏は、「タックスヘイブンは金融危機と無関係ではない」と筆者に次のように力説した。
「10兆ドルともされる隠匿資金は決して眠ってはいない。儲け口を求め世界を駆け巡り、ある時は通貨、またある時は株式に流れ込み、マネー奔流が市場を不安定にする。バブルをかき立てるのは国境を超える投機資金です」
 投機資金の暴走を抑えるため、金融機関には様々な規制が設けられている。それでは商売にならないと業者の要請を受け、サッチャー以後「規制緩和」が金融ビジネスを全開にした。合言葉は自己責任。タックスヘイブンは新自由主義経済が産んだブラックホールでもある。
 投機資金の暴走が招いた典型がリーマンショックだった。加担した銀行・証券は壊滅的打撃を受けたが、自己責任を果たせなかった。公的資金が注入され救済されたのである。
 大金持ちは税金を免れ、銀行はタックスヘイブンを利用してカネを呼び込む。隠匿された投機資金が暴走しても銀行は救われる。投入されるのは納税者のカネだ。負担はいつも中・低所得者。これでは世の中おかしくなる。
 元財務官僚として国際租税の歪みと戦ってきた志賀は昨年末、急逝した。著作の末尾に書かれた一節をここに記す。 「タックスヘイブンは、富裕層や大企業が課税から逃れて負担すべき税金を負担しないことに使われ、犯罪の収益やテロ資金の移送に使われ、巨額の投 機マネーが繰り広げる狂騒の舞台にも使われている。その結果、一般の善良かつ誠実な納税者は、無用で余分な税負担を強いられ、犯罪やテロの被害者になり、 挙句の果てにはマネーゲームの引き起こす損失や破たんのツケまで支払わされている」
 政治は誰が動かしているのか。パナマ文書は民主主義の在り方を問うている。  ≫(ダイアモンドONLINE:山田厚史の「世界のかわら版」)

by めい (2016-04-16 00:12) 

めい

がんばれ!キンコン西野

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キンコン西野の「お金の奴隷解放宣言」はおかしくない! 絵本無料公開を批判する意見こそ「奴隷」の発想だ!
2017.01.28
http://lite-ra.com/2017/01/post-2881.html

 キングコングの西野亮廣が、絵本『えんとつ町のプペル』(幻冬舎)をめぐって大炎上が巻き起こっている。
「絵本を無料で公開します。金を払わない人には見せないとか糞ダサい。お金の奴隷解放宣言です」
 こんな言葉とともに、西野は昨年10月の発売以来20万部も売り上げていた『えんとつ町のプペル』を全ページ、ネットで無料公開したのだ。
 すると、ネット上で西野に対する批判が巻き起こった。いわく「すでに買った人が損」「ほかのクリエイターがもらえる対価まで安くなってしまう」「子どもがお金のありがたみがわからなくなる」「出版社や書店にお金が入らず迷惑」……。
 しかし、はっきりいうが、どれもこれもいちゃもんのレベルにすぎない。たとえば、「出版社や書店にお金が入らず迷惑」というが、無料公開前の時点で20万部を超えており、すでに大きな利益が出ていし、今回の騒動後もその余波でさらに売り上げを伸ばし増刷もしている。
 だいたい、無料公開というのは、プロモーション・販売戦略としては、目新しい方法などではない。たとえば声優の明坂聡美からの批判に対する反論のなかで、西野は音楽のPVの例をもちだしていたが、出版においてもネットで全ページ無料公開というのは過去にいくつも成功例があるすでに確立された方法論だ。
「ほかのクリエイターにしわ寄せがくる」という批判も、たしかに多くのクリエイターが劣悪な環境に置かれているのは事実で、改善されるべきだが、それは西野とはなんの関係もない。西野が無料公開したからといって、ほかのクリエイターの条件が悪化するなんてこともありえないだろう。
 ましてや、「すでに買った人が損」って、何をいっているのだろう。だいたい本(や音楽、映画なども)は単なる商品じゃない。制作にかかる労力やコストに対する対価、作品の金銭的価値、作品の価値はすべてイコールではないし、比例するものでもない、それぞれまったく別問題だ。おもしろい映画もおもしろくない映画も同じ1800円だし、西野の絵本が2000円でドストエフスキーの『罪と罰』も上下巻で2000円弱だ。西野の絵本とドストエフスキーのどちらに価値があるかをここで論じるつもりはないが、少なくともお金ではかれるものではないことは明らかだろう。こういうことをいう人は、自分が買った単行本が文庫化されても同じことをいうのだろうか。

 むしろ、こうした批判を見ていて痛感するのは、日本人が表現や創作さえ、「お金」という尺度でしか見られなくなっているという現実だ。これこそがまさに、西野のいう「お金の奴隷」状態といってもいい。
 もちろん、その表現や創作がただの金儲けの道具になっている現実はある。出版界でも、一部の売れっこ作家や芸能人だけが知名度をバックに大々的にプロモーションを展開してもらい、「有名人の本だから」「売れているから」というだけの理由で買われていく。一握りのベストセラーとそれ以外の売れないたくさんの本。現在の出版界は一強多弱の傾向がどんどん進んでいる。
 そして、西野も強者に属するひとりだ。おそらく、今回の批判には「おまえは売れてるからそういうことを言えるんだろう」というやっかみも入っているはずだ。
 しかし、今回の西野の言動は、逆にそういった状況に風穴を開けようとするものだ。一握りの売れた者が得た利益を独占するのでなく、社会に還元する流れをつくりだすきっかけになるものだ。西野は、そのお金の奴隷解放宣言でこんな指摘もしている。
「《自分は『えんとつ町のプペル』を子供にも届けたいのに、たった「お金」という理由で、受けとりたくても受けとれない子がいる。》
双方が求めているのに、『お金』なんかに「ちょっと待った!」をかけられているのです。
お金を持っている人は見ることができて、
お金を持っていない人は見ることができない。
「なんで、人間が幸せになる為に発明した『お金』に、支配され、格差が生まれてんの?」
と思いました。
そして、『お金』にペースを握られていることが当たり前になっていることに猛烈な気持ち悪さを覚えました。
「お金が無い人には見せませーん」ってナンダ?
糞ダセー。」
  
「お金を持っている人は見ることができて、お金を持っていない人は見ることができない」。そのことに「猛烈な気持ち悪さ」を感じるというのは、真っ当な感覚ではないか。
 ところが、驚いたことに、「お金の大切さ」を知ることのほうが大事だという意見が多くきかれる。たとえば声優の明坂聡美はツイッターで、
「勿論ブログも読みました。子供が「2000円は高くて買えない」って事が発端だとも書いてありましたが、だからこそだよ。 少ないお金を一生懸命貯めて買うから、お金の大切さや物の価値を理解するのに「じゃあタダであげよう」なんて言っていたらその感覚がなくなってしまうよ。」
「タダで提供できるものが良いもの程、作品の価値も、クリエイターに支払う対価も下げてしまう可能性がある。 だって「○○みたいな有名作品がタダなのに、それより無名な作品にお金を払う価値があるの?」ってなるもの。 えんとつ町のプペルが何十人もの人と作り上げた素晴らしい作品だけに残念。」
 などと西野に対する批判をツイート。『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)でも藤村幸司リポーターが「子どもたちにお金の大事さを教えるのも大人じゃないの」などとツッコんでいた。
お金がなくて本を読めない体験から学べることって、いったい何なのか。本を読んで新しい世界を知りたいと思ってもお金のない者にそれは許されない。学びたいという意欲があってもお金がなければ結局かなわない。大事なのはやる気より、お金。お金のない者は、がんばっても報われない。そんなことを学んで、何の意味があるのか。
 お金の大切さなんかより、本を読むよろこびを知ることのほうがはるかに価値がある。
 しかも言っておくが、いま日本では親の所得格差がそのまま教育格差に直結しているうえに、子どもの貧困はどんどん進行している。いま日本にいる子どもは、お金のありがたみも本を読めることのありがたみもとくに知ることなくいくらでも本を読める子どもと、お金がなくて永久に本が読めない子どもに二極化していて、なおかつ後者がどんどん増えているのだ。
 お金がなくて本を読むことができなかった体験から学べることなんて、そうした不平等を受け入れろということでしかない。本を読みたい、新しい世界を知りたい、学びたいという意欲もお金がなければかなえられない。それのどこが教育なのか、どこが子どものためなのか。それこそが、西野の言う“お金の奴隷”ではないか。お金がなくても、読むチャンスを与えられたという体験のほうが、よっぽど価値がある。
 本を読むよろこびを知る人間が少なくなれば、結局市場は小さくなるし、本の多様性も失われていくだけだ。実際、いますでにそのスパイラルに入っている。それに抗う西野の試みは、「お金は大切」と繰り返している人たちにも広い目で見ればプラスになるはずだ。
 
 ネットで無料公開するよりも図書館に本を寄贈するべきだったという意見もあるが、どちらがより広く多くの人に届くか考えれば、明らかに前者のほうだろう。
 西野のなかには、今回の無料公開がプロモーションとして成功するという計算もあったかもしれない。無料公開以上に、“お金の奴隷解放宣言”がよくない、炎上商法だという批判もある。
 それが炎上商法だったとしても、売れた者が正義で、お金のない者は自己責任という新自由主義のはびこる今の日本で、「お金を持っている人は見ることができて、お金を持っていない人は見ることができない」とあえて問題提起したことの意味は大きい。
『ミヤネ屋』では「西野は、生理的に無理」などという声もたくさん紹介されていたが、西野の問題提起にもうちょっと真剣に耳を傾けてもいいのではないだろうか。
(酒井まど)

by めい (2017-01-29 06:09) 

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