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平成27年度『光の子ども』 「共感」の輪 [こども園]

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卒園記念親子文集「光の子ども」が届きました。卒園児の親子と教職員全員の文集です。私も毎年、その時々いちばん頭にあることを書かせてもらっています。今年で11回目になります。1回目分からずっとここにアップしているはずです。11年前、思ったこともなかった理事長の役でしたが、この文集は、幼稚園からこども園へ、その園との関わりの私なりの歴史が刻まれています。人生、自分の意志通りに事が運ぶことなどごく一部の枝葉であり、大もとは何かに動かされている、園との関わりはほんとうにそんな感じがして今に至っています。まさに「移ろうままに」、その象徴が園との関わりです。


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「共感」の輪

 ちょうちょう組のみなさん、そして保護者のみなさん、ご卒園おめでとうございます。まもなく小学校、ここまで育てあげるまで、多くの喜びと共に大変なこともいろいろあったことと思います。卒園はひとつの節目、まだまだ道半ばです。

 一月末のNHKスペシャル「ママたちが非常事態!?―最新科学で迫るニッポンの子育て」は若い母親が抱える不安と孤独がテーマでした。

 出産後五年間は妊娠することなくわが子の育児に専念するチンパンジーとちがい、人間は立て続けの出産が可能です。というのも、エストロゲンというホルモン分泌のしくみによって、人間は共同保育によって子育てするようにできているのだそうです。カメルーンのピグミー系バカ族(森を移動する人の意)が登場します。赤ちゃんを仲間に渡して森での仕事に出かけます。渡された人はごく自然に赤ちゃんに乳を含ませます。生まれてすぐ子どもを他人に預けるのは人間だけとのことです。大家族や親しい地域社会が子育てを支えているのです。

 ところが現在の日本は核家族率が八割を超えています。地域とのつながりもすっかりうすれてきています。本来子育てを支える環境が崩壊してしまっているのです。そこからママたちの孤独と不安が生じます。「自分は子育て失格?」・・・それに対して番組は「子育てがつらいのはあなたのせいではありません!」と訴えます。

 オキシトシンというホルモンが紹介されました。これまでオキシトシンは「信頼ホルモン」「愛情ホルモン」とも言われ、ポジティブ面のみ取り上げられていたのですが、「攻撃ホルモン」でもあることがわかりました。愛するものに敵対する相手に対して攻撃的になるのです。それはしばしば、妻のストレスが理解できなく子育てに非協力的な夫に対して向けられます。ほんとうはそんなとき、父親は何の言葉も要りません。ひたすら母親の気持ちを理解しようと寄り添う姿勢があればいいのです。おのずと思いは伝わり、ふたりの間に共感が生まれます。ストレス状態からリラックスへ、そのときオキシトシンは「攻撃ホルモン」から「愛情ホルモン」に働きを替えているのです。

 番組は次の言葉で締めくくられました。

 「人類の誕生以来、みんなで協力して子どもを育てるよう脳や身体を変化させてきました。その進化の流れに逆らうように、ニッポンの母親たちは孤独と戦いながら、子育てと向き合いつづけています。この現実を私たちが知ることが、子育ての苦しみを喜びに変える第一歩になる、最新の科学はそう教えてくれています。」

 「経済第一」のアベノミクスが惨憺たる結果を招いているように、オカネ中心に未来を考えると決して明るくはありません。でも、人類の未来はその方向を向いているとは思えません。

 文明評論家リフキンが『限界費用ゼロ社会』という本の中で「幸福は物質主義ではなく、共感に満ちたかかわりの中に見出される」と言っています。これから世の中は、カネ本位の資本主義社会から、「共感に満ちたかかわり」本位の「社会関係」資本主義に変わってゆくといいます。それが文明化のゆきつくところです。富の偏りを均せば、人類が生きてゆける生産能力は十分達成しています。これからはひとりひとりにとって何が幸せかを大事にしてゆけばいい。リフキンは言います。「最高に幸せな瞬間とはつねに、最も大きな共感を覚える瞬間にほかならない」。

 まずは身近なところから共感の輪を広げてゆくことです。


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