錦啓先生の講演「いま、子どものために親としてできること」 [こども園]
こども園で錦啓先生の講演を聴きました。ひとつひとつの言葉が心にしみる、しっとりしたいい講演会でした。緑文字が先生から用意していただいたレジュメ部分。黒文字が私のメモからです。
* * * * *
いま、子どものために親としてできること
はじめに
・人とチンパンジー
相手の立場に立つことができるかどうか
乳児期を見ると人間よりチンパンジーの方が進んでいる。しかしそのあとの人間の成長が著しい。
人間の「相手の立場に立つ」能力による。この能力を育てるのは、乳児期におけるコミュニケーションである。
1. 見 る
◇親子遠足で目にした、ある園長さんの驚き
電車で移動中、20人中6人の親がスマホに集中!
◇目と目とがあったとき、人と人との間に「線」がつながる
「心のへその緒」(愛着)ができる
◇「愛が足りない だからこの大学がある」(東北芸術工科大学)
0〜5歳で愛は定着する。愛着の関係
◇見るから好きになる
愛=eye
◇「エンゼルスマイル」⇒親から育児する力を引き出す
2.笑 う
◇お母さん・お父さんの笑顔こそ子どもにとって最高の栄養
◇子どもがいるから笑いが増える
◇笑ったら笑ってくれる(応答性)
◇子育ては大変。大変だからこそおもしろい
◇家族をもつことの苦しみに大きな意味がある
鏡は自分から笑えない。相互の響きあいの大切さ。お母さん、お父さんの笑顔こそが最高の栄養
3.呼 ぷ
◇声を出せば声をかけてくれる(応答性)
義理のお母さんを「お母さん」と呼んでいますか?
◇声で包み込む(=声で抱く)
◇たくさん呼ぶ、たくさん話しかける
◇「言葉」が「こころ」をつくる
文学の名文を暗記することで「こころ」が豊かになる。「こころ」が先ではない。深く生きるか、浅く生きるか。子どもがいるから深く生きられる。「かわいい、かわいい」と言い続けること。
4.抱きしめる
◇「しんばいして おもわず ぎゅっと だきしめて おもわず なみだが でることよ」
(内田麟太郎著『おかあさんに なるって どんなこと』)
◇「抱きしめる」ことの三つの効用
(1)誰もが未熟な親、しかし
(2)実は、守られ、愛されている
(3)なかなか言葉で愛を表現できない
自分(錦先生)の子育てを反省していちばんの失敗は、子どもに愛の言葉をかけてあげられなかったこと。
5.時々は「好きだよ」「○○がいるから幸せ』と言葉にして言う
◇「おかあさん、どうして私を産んだの?」(落合恵子さん)
「私は、あなたがほしかった。大好きなお父さんの子供がほしかった」
◇いいところも悪いところもまるごと受け入れる
◇「産まなきゃよかった」は心理的虐待
6.「ありがとう」を言う
◇「これまで一番うれしかった瞬間は?」(小6対象)
「お手伝いをして『ありがとう』といわれたとき」
◇「ありがとう」は最高のほめ言葉
◇しつけは家事参加から
「ありがとう」という機会が増える。家事をしている子に不登校は少ない。
しつけの原則は、「ほめる:ありがとう= 2:8」
7. 子どもが好きなことを見つける手助けをする
◇「ぽく、走るの苦手だから1位になれないんだよ」(小1男子)
「やさしさはクラスでいちばんだろう」とおじいちゃん
◇「ウサギ」と「カメ」
カメはゴールを見ていた。ウサギは競争相手を見ていた!
8. 叱るときもほめるときも《 I(私)メッセージ》で伝える
◇《You(あなた)メッセージ》=「どうしてあなたは……するの?J
夫婦喧嘩のいつものパターン。すさまじいケンカは子どもから離れてするように
◇「Iメッセージ」=「お母さんは(お父さんは)……うれしい、悲しい 喜んでいる、困っている、つらい、
心配だ、こうだといいなと思っているj などなど
IとI、子どもの心のスイッチが入る。子どもからの質問。対話の始まり
Youメッセージは一方通行
9.共感する —うれしいときも悲しいときも—
◇かなしいとき=「つらかったね「ショックだったね」「侮しかったね」「かなしかったね」(過去形で語る)
◇「がんばれ」よりも「がんぱったね」
◇大変な時は「大丈夫、大丈夫」
《あそこまで怒らなくてもよかったのに……。5歳の娘が床についたとたん、後悔が胸に押し寄せてきた。
毎朝早く早くと保育園に送り、仕事に行く。帰りも早く早くとせかして帰り、夕食、風呂に、寝かしつけ、娘のノロノロに私は途端に噴火する。
最近の私は「子どものために叱る」というよりは、都合よく動かない娘に感情を抑えられず爆発してばかりだ。
「ごめんね、いいママじゃなくって」と娘の肩を引き寄せた。「もっと優しいママになるからね」。勝手に涙がぼろぼろこぼれてきた。ごめんねと繰り返す私に娘が言った,「そんなことないよママ。このままでいいよ」そして「大丈夫、大丈夫」と私の背中をたたいた。小さな手を背中に感じ、余計に涙がでてきてしまった。
しばらく娘を抱きしめていると今度はふいに娘が泣き出した。「のんちゃんもいい子になりたかったのに、ママごめんね」。うわーん、と大粒の涙をぱろんぽろんにこぼす。私はあわてて「大丈夫、大丈夫」と娘の背中をなでる。慰めながら、娘が幼い心を痛めていたのだと今更ながらに気づいた。……》(2007.12.3 朝日新聞「ひととき」)
「早く、早く」は、親が子どもに言ういちばん多い言葉
◇子どもは、大人が思っている以上に、大人の考えを読み取っている
最後に
◇弾力性のある親に!
子どもにきちんと向き合い(叱るときはきちんと叱り)、
めんごがるときはめんごがる(いやというほど抱きしめる)
「めんごい」と「ごしゃぐ」の上手な使い分けを
「めんごい」の語源は「目苦し」から。そばで見ているとせつなくなる。(万葉集)
「ごしゃぐ」の語源は「後生を焼く」から。死んでからのことを心配してあげる(「世話を焼く」の「焼く」)→正しい道を示す(仏教)
(語源からわかること—「めんごい」は、心のままに思いっきり。「ごしゃぐ」は、あくまで子どもを思って冷静に。)
※錦先生は、天見玲のペンネームで山形新聞のコラム「気炎」欄に、月2〜3回書いておられます。いつもとってもいい文章です。
コメント 0