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安西正鷹『お金の秘密』を読む(6)お金の魔性(後) [30年後]

「利子」について考える。


自然界はあるものが増えればあるものが減るしくみになっている。ところが人間が作り出したお金は時間の経過とともにただひたすら際限もなく増加する。

 

《お金に作用する現象は増加だけなので、均衡していた力のバランスは崩れて歪みを生じ、社会を混乱の極みに陥れるのが歴史の常である。

 この不可解な現象は天の理の気紛れや意地悪などでは決してない。本来ならお金にはたらくべき収縮の力を故意に排除する、人為のなせる業なのだ。

 飽くなき欲望を満たそうとする邪悪な者たちはその他大勢の人々の欲望をも意図的かつ秘密裡に肥大化させ続け、これに寄生してきた。

 利己的な欲望で精神が劣化した人々の意識は、邪悪な者たちの意識と同調して巨大な負のエネルギーの塊となる。これか「増加するお金」となって具現化して社会を破壊し、不幸と苦悩を生み出す温床となっている。

 利子とは、収縮力を排し膨張力だけを加えてお金を魔物に仕立て上げるウィルスなのだ。》242-243P


利率には通常複利が用いられや、複利計算は放物線を描き、幾何級数的に増加する。その行き着くところ「共同体の死」である。


《利子は人類と自然、そして人類どうしを敵対せしめ、競争と終わりなき経済成長を強要し、貧富の差を拡大させ、インフレを起こして残ったなけなしの財産すらも巻き上げる。

 随所に巧妙な罠を仕掛けた利子は、自ら突然変異して毒性を増し続け、いまや人類が築いた文明と地球環境を滅亡の淵へと追いやる凶器と化した。そして、利子を発明した者たちもその返り血を浴びて、存亡の危機に立たされる想定外の事態に周章狼狽している。

 利子という毒性ウィルスが埋め込まれたお金が循環する金融システム。われわれはこのソフトウェアが真理だと思い込み、それが映し出すホログラムの舞台で踊り狂っているのだ。

 悲しいかな、われわれは自らがこの仮想現実の中に幽閉された囚人であり、その悲惨な境遇と運命に同意しているのは他ならぬ自分であることに気づいていない。》244-245P

(「まとめ」につづく)

 

近代以降の金融手法.jpg

これまで書いたことを整理してみる。

 

そもそもモノやサービスの交換は等価であり、お金もそのスタートにおいては「実質価値=名目価値」であったはずが、通貨発行者の思惑介入もあって、「実質価値+シニョレッジ(通貨発行益)=名目価値」となり、さらには紙幣が一般化するに及んで、「実質価値/名目価値」はどんどん極小化へと向う。そして次には、実質価値のともなわない数字だけの名目価値である「信用創造」によってお金の世界に新たな地平が開かれる。その世界には、ただ時間が進むだけで増大してゆく「利子」の存在があり、複利の利率によってお金の世界は幾何級数的に増加する。そのさまが、「近代以降の詐欺的金融手法のイメージ」として図表化されている。


人々がこのお金を受け入れて使用してきたのはなぜか。


《お金の発行者は自らの権威をもとに法律で強制的に使用を義務づけ、名目価値で流通することを保証している。加えて、自分が受け取ったときの交換価値そのままに他人もお金を受け取ってくれると誰もか信じているからこそ、世の中に出回り流通しているのだ。 

 逆に、名目価値を保証している者の権威や信用が失墜したり、他人もお金を同じ価値で受け取ってくれるという幻想がなくなると、名目価値は消滅する。》252-253p

 

「されどお金」ではあるけれども、そのもとをたどれば幻のようなものなのである。だからこそ、30年後の置賜を、「何でもタダでできる世の中」として構想することは、決して奇想天外でもなんでもない、十分そうなりうることなのだ。あるいはそれが「時代の必然」か。「余剰の時代」に突入している今、まさに人類史的大転換の秋(とき)をむかえているに違いないのだから。

 

「置賜自給圏推進に向けて30年後の置賜を夢見ることから始めなさい」という松尾雅彦さんから与えられた課題を考えていたら、物やサービスのやりとりが、ほとんど何でもタダでできる世の中が思い浮かんだ。お金がなくても生きてゆける世の中だ。かつて置賜地域の合併ビジョンを構想した時に、地域通貨とベーシックインカムを考えたのが背景にある。そもそもお金とは何なのか。この問題意識はずっとあって、それに類する本も読んで(持って)はいたが、このたび出会ったのが安西正鷹著『お金の秘密』だった。安西氏は落合莞爾氏とも近いことから、十分本気で読むに値すると思えた。そして読んで、「ほんとうによくわかった」と思えている。もっと読み込めばまだまだ書くことは出てくると思うが、一応ここで締めとしておきます。


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