『スマート・テロワール』(2)この本で世界は変わる! [置賜自給圏構想]
(社)置賜自給圏推進機構の事務局から、1月20日の「元カルビー社長 松尾雅彦氏を囲んでの意見交換会の件」の案内が入ったのはその前々日。松尾さんについては「飯豊・農の未来賞」の最優秀論文「いよいよやってきた、豊穣の地飯豊町活躍のチャンス!30年かけて、めざすは『アルカディア』」を読んでいたのでぜひ話を聴きたくて行ってきました。ほんとうに行ってよかった。12月に発刊されたばかりの『スマート・テロワール』を買ってサインをいただいてきました。
昨年8月、置賜自給圏推進機構が社団法人として正式に発足し、部会ごとの活動が始まっていました。私は「地産地消部会」に入れていただいて、2回の会合に出席してきました。10人ぐらいの集まりですが、いいメンバーがそろって、さらに座長役の舟山康江さんのさすがの仕切りで中味の濃い内容でした。ただ、先の展望があるかというと、まだまだ心もとない暗中模索の状態で、「自給圏構想はせいぜい枠外でのあがきなのだろうか」というのが正直のところでした。『スマート・テロワール』の次の記述に重なります。
《「どんなにシビック・アグリカルチャーが広まったとしてもグローバル・フードシステムを代替することはないし、いわゆる、グローバル・フードシステムの外で、あるいは、その内部で、マイナーかつ例外的なサブシステムとしての地位に甘んじて存在し続けるだけではないか。・・・グローバル化の擁護者たちはこういうだろう。『昔はよかった』的な懐古趣味に陥っても、世の中は変えられない。もう昔に戻ることも、グローバル経済を止めることもできないのだから。」》(81p)
しかし、松尾さんの話を聞いて、状況はがらっと変わりました。
参加者ひとりひとりの話を聞いて現状を把握された上で話されたその内容は、期待をはるかに超えるものでした。きちんと構成された『スマート・テロワール』を読んだ後では本の内容の並びが優先してしまいますが、松尾さんからじかに話を聞いていたことでどれだけ理解が深まったか知れません。たとえば「シングルマザーが農村を活性化する」説などは、じかに話を聞いているからこそまざまざと実感できるのです。
話を聞き、本を読んだ今、世界の大きな流れの中に「置賜自給圏構想」を位置づけることができるようになりました。しっかりした思想的裏付けもあります。書評に「著者は、われわれが80年代初頭『パンツをはいたサル』(栗本慎一郎)によって知ったK・ポラニー思想(『大転換―市場社会の形成と崩壊』)紹介の、日本における最先端に位置していたことを「あとがき」で知りました。」と書いたのですが、『パンツをはいたサル』は出てすぐ八文字屋で見つけ興奮して読んだものです。昭和56年のことでした。『週刊置賜』が発刊した年で、たしかはじめて「はぐらめい」のペンネームを使ったのがその暮れに書いた「年末切貼素描」。『パンツをはいたサル』から引用しています。いつだったか、栗本氏が病で倒れた後でしたが、栗本氏が徳田さんの自由連合と交わったことがあり、決起大会だったかで壇上の栗本氏と「『パンツ』以来の栗本さんのファンです」と言って握手を交わしたこともありました。
ともあれ、「『スマート・テロワール』をなんとか多くの人に読んでほしい、この本で世界は変わる!」そういう思いで、これまでになく力を入れて書いたAmazonレビューでした。まだまだ書きたいことがあるし、いろんな切り口が考えられたのですが、「三つのムダ」から入ってみました。また別の視点から書いてみたいと思っています。
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