訃報 木田元先生 [メルロー・ポンティ]
山形新聞 26年8月18日
お会いすることはなかったが、40年以上も前、メルロー・ポンティの翻訳書(みすず書房)のほか『現代哲学』(NHK出版)や『現象学』(岩波新書)によって、私にとってメルロー・ポンティへの導きの師であった。あの頃、木田先生が山形県出身ということを知ってなんともうれしく親しみを感じたのを思い起こす。吉本隆明や井上ひさしに感じたのと同じものだった。山形に帰ってあらためて「哲学」など考えることのない生活の中でも、木田先生のお名前はいつも気になっていたように思う。昨年あたりになってようやく『闇屋になりそこねた哲学者』を読んでおもしろく、いま『私の哲学入門』が読みかけだ。「哲学」が業(なりわい)と「なる」というのはこういうことなんだなあと思わされる。日本の「哲学業界」の一大革新者だったのではないか。
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